【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ

O.T.I

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剣聖の娘、裏組織を叩き潰す!

聖域の森

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 果てしなく続くかのように思えた地下通路。
 神殿地下に連れてこられた時とは、また違った雰囲気のそれ。
 いったいいつの時代のものなのか……石壁の所々が崩れていたり、完全に崩落して塞がれている箇所があったりするのが、いっそう不安を煽る。
 湿気がこもりかび臭い地下施設……いや、その規模からすれば地下都市と言っても過言ではないだろう。
 いかにも廃墟と言った風情ではあるが、ところどころ真新しい補強の跡も見られ、少なくともそれらが施されている通路は現役で使用されていることが分かる。
 そもそも、そうでなくては魔道具と思しき照明が完備されてることも無いだろう。


 そんな怪しげな場所を、不気味な仮面の男たちに囲まれながら不安と緊張の面持ちで進む少女たち。
 一歩、また一歩と。
 もう後戻りはできず、ただ破滅と絶望に向かうだけ……少女たちの誰もが、まるで処刑台に向かうかのような暗澹あんたんたる気分となっていた。


 ただ一人だけ、そんな負の感情とは無縁の者がいる。


「ね~ね~、まだ着かないの~?もう一時間以上も歩いたと思うんだけど~。あと、お腹すいた」

 悲壮な空気感などどこ吹く風。
 我らがエステルはブレない。
 彼女はついでとばかりに空腹を訴えるが、食事は移動する少し前に出されて食べたばかりである。


 そんな彼女の揺るぎなさは、絶望の縁にある少女たちが、ギリギリで精神の均衡を保つための最後の拠り所になっているのかも知れない。
 彼女の態度はそれを狙った上でのもの……ではなく、完全に素が出てるだけだ。

 そして他の少女たちとは明らかに毛色が異なるエステルに仮面の男たちは無言を貫いているものの、どこか戸惑いや呆れが混じったような空気だ。
 もちろん、そんな空気を読むような彼女ではない。



 何とも奇妙で微妙な雰囲気の集団は、一人を除いて黙々と進んでいく。
 ここに至るまでに幾つかの道が合流し、その都度道幅が広がって、既に王都の目抜き通り程にもなっていた。

 やがて緩やかな下り坂となり、更に数十メートルほど進んだところで大きな扉が現れる。
 仮面の男の一人がその扉を叩くと、向こう側からくぐもった声が聞こえ、何らかの言葉が交わされた。

 そのやり取りは他の少女たちにはよく聞こえなかったが、超高性能エステル・イヤーはしっかりと言葉を拾う。

(意味のよくわからない言葉の羅列……たぶん、合言葉かな?)

 エステルの想像通りそれは合言葉だったらしく、大扉が内側から開かれていく。


(……ついに決戦の地に到着だね。あとはタイミングを見計らって……。陛下やクレイたちは準備できてるかな?)

 いよいよ自分の出番が近いと、エステルはいっそう気合が入る。
 そして、地上から追跡しているはずの部隊の準備はできているのか……彼女はそれを確認するために、アルドに念話を飛ばす。




 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 エステルからのリアルタイムな報告と、地下遺跡の地図情報によって闇オークションの会場となりそうな場所を割り出したアルドは、先行していた部隊と合流する。
 そして市街を抜け、外壁北門より王都外へと繰り出した。



「この先は……『聖域の森』ですけど、大丈夫ですか?」

「ああ、問題ない。捜索許可は既に得ている」

 部下の騎士の懸念の言葉に、アルドはそう返す。
 王都の外に出た部隊は、しばらくは街道を進んでいたが、途中からは木々の生い茂る森の小径こみちへと分け入っていた。


「なあ、『聖域の森』……って、何だ?」

 まだ王都に来て日の浅いクレイは、小声でギデオンに聞く。

「あぁ、お前は知らないか。『聖域の森』ってのはな、神殿が管理していて一般人は立ち入り禁止なんだ。何でも、女神様ゆかりの遺跡があちこちにあるらしいんだが……」

「考古学者連中が調査をしたくても神殿が許可を出さないから、その来歴は未だ謎に包まれている。……もっとも、神殿には何らかの伝承はあったのかもしれんが」

 ギデオンに続いて、アルドも補足してクレイの疑問に答える。

 彼らが説明した通り、『聖域の森』には古代の遺跡群が点在する。
 いま彼らが進んでいる小径の周囲も、よく見れば小さな祠や、元は何らかの建物らしき瓦礫などが見られた。


「じゃあ地下にあるって言う遺跡も、それに連なるものって事ですか?」

「おそらくはな。全く……王と言っても名ばかりだな。自分の膝下の事すら何も分かってなかったとは」

 そんな自嘲めいた言葉が苦笑とともにアルドの口から溢れる。
 先代からの情報の引き継ぎ不足ということであれば大神官ミラと似たようなものだが、彼は事件が解決したら一度は前王……伯父であるバルドと話をしてみようと思うのだった。


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