127 / 151
剣聖の娘、裏組織を叩き潰す!
竜人/情報提供者
しおりを挟む異形の者から不可視の波動が放たれる。
それは真の強者のみが持ち得るもの。
力なき者は、それを浴びただけで恐れ慄くほど。
白仮面の手練れの男……人間だったはずの彼の姿は、全く別のものに変じていた。
身体の大きさこそそれ程変わってないが……
その相貌は竜種のように。
頭には二本の長い角が生え、口の中には無数の鋭い牙。
同様に、硬質の鱗がびっしりと体表を覆い尽くし、更には長く太い尻尾まで生えている。
一言でそれを表すなら……『竜人』とでも言うべきか。
あまりにも非現実的な光景に、誰もが立ち尽くしていた。
……いや、エステルやクレイ、アルドは、最初こそ人間が異形に成り果てた事に驚いたものの、今は冷静さを取り戻して『竜人』と対峙する。
「……エステル、どうだ?」
クレイが短く問う。
どれほどの強さを持っているのか、エステル評を確認するためだ。
「……『強い』よ。でも、人間じゃないから底が読めない」
先程までのどこか余裕がある態度とは異なり、厳しい表情で彼女は答えた。
それを聞いたクレイとアルドは、更に気を引き締めた。
彼女が『強い』と評する……それも、未知数と言うほどの相手なのだから当然だろう。
「……稽古なら一対一で手合わせしたいところなんだけど」
「そうも言ってられんだろ。遊びじゃないんだから」
「分かってるよ。これは『極秘任務』なんだからね!」
正々堂々を好むエステルではあるが、流石に優先順位を取り違えたりはしない。
今この場で一番大事なのは、攫われた少女たちと味方の被害を出さないこと。
強さが未知数の敵に対してリスクを取る必要など何もない。
「ヤツとの戦いは俺たち3人に任せろ!!ギデオン!!お前は戦いが始まったら、巻き添えをくらう前に隙を見て少女たちを外に逃がせ!!」
「は、はっ!!」
アルドがギデオンに指示を出すと、その叫びが引き金となったのか『竜人』は腰に佩いていた長剣を抜き放ち構えをとった。
その姿は人間の剣士のように見えるが……果たして理性は残っているのだろうか?
そして、激戦の幕が上がる……!
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
同刻。
アルドの部隊とは別行動をとっていたディセフ率いる小隊は、『情報提供者』からもたらされた地図を頼りに王都内のとある場所にいた。
神殿から程近い立地の、表向きはとある商会が所有する屋敷。
しかし、『地図』上では地下遺跡への出入口が記されている場所だったことから急ぎ調査したところ……その商会は名義だけで、取引実績のない幽霊商会であることが判明したのである。
当然ながら裏組織との関わりが強い……ともすれば組織の本拠地である可能性が高いと思われ、ディセフたちはそこを制圧しようとしていたのだが……
「ディセフ様、やはり誰もいません。ここはもぬけの殻です」
屋敷内の捜索を行っていた部下の騎士がディセフに報告する。
彼らは屋敷を囲むように配置されたあと、一斉に突入したのだが、結局は誰とも遭遇することがなかった。
ただ、更なる報告によれば……組織に繋がるような直接的な証拠は見つかっていないが、つい最近まで人が暮らしていたような痕跡はあったとのこと。
であるならば、ここが組織の拠点となっていたのは間違いないだろうとディセフは考える。
「……商会のセンは?」
「そちらも……登記内容は全て偽装らしく、有益な情報は何も……。代表者への連絡手段も不明です」
「はぁ~……そこは担当部署がしっかり確認しない事にはなぁ……」
重要な手続きにも関わらず、チェックが雑であったことを彼は嘆く。
この作戦が終わったあと、文官の長であるフレイは彼から苦情を聞かされる事になるだろう。
(……オークションが想定より早く開催された事からすれば、こちらの動きが察知されていたと言う事か。考えたくはないが、騎士団に内通者がいるのか?……いや、それよりも神殿の方が怪しいか。こうなると、あの『情報提供者』……モーゼス殿も逆に怪しく見えるが……)
頤に手を当てて考え込むディセフ。
地下遺跡の地図を提供してくれたのは、大神官補佐のモーゼスだった。
ディセフの聞き取り調査によれば、彼はかつての『事件』の際に前大神官ミゲルの部下として行動する傍ら、彼の悪事を告発する準備をしていたという。
今回提供された『地図』は、その時にこっそり写したものらしい。
それら証言の音声記録をフレイにも確認してもらったが、嘘は含まれていないとの事だった。
(嘘はつかずとも人を騙すことはできる。だが、地図自体は本物のようであるし……仮に彼が組織の者だとして、それをわざわざ我々に提供するメリットなど無いように思える。そうすると、やはり彼はシロということになのか……?)
ディセフは考えてみるものの、今ある情報だけでは答えは出そうにない。
ならば、直接本人に確認しよう……と、彼は部下に指示を出す。
「モーゼス殿の所在を確認してくれ。おそらく神殿に戻ってるはずだと思うのだが……もう一度話をしたい」
「はっ!!直ちに!!」
部下の騎士はディセフの指示を受け、急ぎ神殿に向かった。
(今のところ、こっちは空振りに終わったが……陛下の部隊が幹部の誰かを押さえてくれる事に期待するか)
それからしばらくして……
神殿に向かった部下が戻ってきたのだが、モーゼスの行方は分からなかったという。
106
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる