【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ

O.T.I

文字の大きさ
135 / 151
剣聖の娘、裏組織を叩き潰す!

祈り

しおりを挟む


 謎の男達に捕らえられてしまったレジーナは、自分の軽率さを激しく後悔していた。
 モーゼスの行動を訝しみ、誰にも相談することなく一人で追跡を行った。
 その浅はかな行動が招いた結果がこれである。

 もっとも、誰にも告げずに単独行動を取った……という点においてはモーゼスも同じだ。
 二人とも、自分自身の手で何とかしたいという焦りにも似た気持ちが先走ってしまったのである。



「モーゼス、剣を捨てよ。あの小娘が何者かは知らぬが、見捨てるわけにはいくまい。お前は、仮にも聖職者だろう?」

「……どの口が言う」

 ミゲルは勝ち誇ったように命じ、モーゼスは苦々しく悪態をつきながらも言われたとおりに剣を手放した。


「モーゼスさん!!」

 レジーナが悲痛な叫びを上げる。
 首筋に当てられた短剣も無視して彼女は飛び出そうとするが、男の一人が彼女の腕を捕らえて後ろ手に捻り上げた。

「あぅっ!?」

「よせ!!乱暴するな!!…………私はどうなっても構いませんが、彼女の身の安全は保証してください」

 既に覚悟を決めている彼はミゲルに嘆願する。
 彼らが大人しくレジーナを解放してくれる可能性は低いかもしれないが、せめてそれだけでも……と。

 彼にとってレジーナは、大神官ミラと共に幼い頃から面倒を見てきた大切な相手。
 そして、やはり大切に思っていた姉妹の……リアーナが命と引き換えに遺した娘。
 絶対に守らなくてはならない。


(……やはり女神様は、まだ私の罪を赦してはいなかった)

 彼はミゲルが追放されて以来、彼の悪事に加担していたことを後悔し罪を償う道を選んだ。
 精神干渉を受けていた事など言い訳にせず。

 そして人々の心の安寧のために日々活動し、地道に努力を重ねて生きてきた。
 そんな彼を周りの者たちも認め、ついには大神官補佐の地位にまで至ったが……犯した罪が赦されたなどとは思っていなかった。
 だからこそ、今ここで報いを受ける時が来た……と。

 しかし、レジーナには何の罪も無い。
 自分のせいで彼女が巻き込まれるのは耐え難い苦痛である。
 それに……報いというならば、この場には更に罪深い者がいる。

(女神エル=ネイアよ、私は今ここで報いを受けます。しかし、彼女だけはどうかお救い下さい。そして……願わくば、悪業深き者共に裁きの炎を!)

 彼は心の中で女神に祈りを捧げながら、目を瞑って両手を組み、その場に跪いた。


「……どうやら観念したようだな。まあ、安心しろ。お前の願い通り、その娘の命は保証してやろう。命はな・・・

 モーゼスが抵抗を諦めたことを察したミゲルは、下卑た笑みを浮かべながら言った。
 彼のセリフからすれば、命の保証はしても解放する気は無いことが読み取れる。
 しかし彼女を人質にされている状況では、モーゼス一人だけではもはやどうすることも出来ない。


「しかし、その娘……レジーナと言ったか?どこかで……」

 ミゲルがふと呟いた言葉に、モーゼスはギクリとなる。
 レジーナが前王バルドの娘であることを知る者はそれほど多くはない。
 しかし、神殿の上層部や貴族階級の者たちにはそれなりに知られている。
 裏組織の情報網がどれほどのものかは不明だが、ミゲルがどこかで耳にした可能性はあるだろう。

 そして、もし彼女の素性が知られれば……果たしてどういうことになるのか?
 もしかしたらレジーナ自身にとってはむしろその方が良い結果となるかも知れないが、エルネア王国としてはどうなのか?
 モーゼスにはその判断がつかなかった。


 おそらくミゲルは、エルネア王国を敵対視する他国に通じていると思われる。
 そう思ってモーゼスが謎の男達を見れば……リーダーと思しき男の佩剣、その鞘に刻まれていた紋章が目に止まった。

(あれは……そうか。全てが繋がった……!しかし……)

 彼は紋章が示す国に心当たりがあり、それが一連の事件の黒幕であることを知ったが……それを知っても、もはや他の誰かに報せる機会がない。
 こうなってしまうと単身行動だったのが悔やまれる。



 もはや彼には女神に祈ることしか出来ない。

 ミゲルはその様を見てほくそ笑む。
 彼はかつて大神官という地位にありながら、女神の存在など信じていなかった。
 祈りが……信仰がもたらす力など信じていなかった。


 しかし。


 その祈りは天に届いた。









「ぐはぁっ!!?」

「「「!!?」」」

 レジーナを捕らえていた男が、突如として悲鳴をあげて倒れる。
 その場にいた誰もが何が起こったのか分からず、驚きのあまり立ち尽くした。


 そしてその場に現れたのは……


「庭先がずいぶん騒がしいと思って来てみれば……こんなところに鼠が紛れ込んでいようとはな。我が娘にその薄汚い手で触れることの愚かさ、身をもって知るがいい」

 あくまでも無表情に……しかし瞳には怒りの炎を宿し、前王バルドは言い放つ。
 その腕の中に、愛するレジーナを抱きながら。


しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

処理中です...