【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ

O.T.I

文字の大きさ
137 / 151
剣聖の娘、裏組織を叩き潰す!

最後の罠

しおりを挟む


 古代の劇場跡地での戦闘後。
 拘束された者たちに縄を打ち、これから撤収しようとしていた矢先のことである。


「……うっ!!?」

 他の者たちと同様に縛られていたアロンが、突然うめき声を上げ膝をついた。


「どうした?傷が痛むのか?」

 縄を手にして彼を連行しようとしていた騎士が立ち止まって声をかけた。
 アロンはエステルの力で一命は取り留めたものの、完全には回復していない。
 なので身体のどこかが痛むのだろう……と思われたのだが。

 彼はそのまま地面に蹲って頭を激しく振りだした。
 その様子は、痛みに耐えているものとはとても思えない。


「どうした?さっきみたいに、また何か……」

 様子がおかしいことに気付いたアルドがやって来る。
 そして、先ほどアロンが意識を取り戻したあと、モーゼスの名を聞いた時のことを思い出した。

 アルドがアロンに声をかけようとすると、それよりも前に彼は顔を上げて叫びだした。


「早くここから……いや、王都から逃げろ!!あの方の…………違うっ!!やつ・・の仕掛けがもうすぐ発動してしまう!!」

「「「!!?」」」

 アロンのあまりの剣幕にアルドや周りの騎士たちは圧倒され、彼が何を言っているのか即座には理解できなかった。

 しかしアルドはすぐに気を取り直して聞き返す。

「いったいどういう事だ?『やつ』とは?『仕掛け』とは何だ?」

 アロンの様子から、ただ事ではない何かが起きると言うことは理解したものの、その言葉だけではどうすれば良いのか判断できない。
 アルドはさらに詳しい話を聞き出そうとしたのだが……


「急げ…………これ以上罪を重ねぬよう………頼む……」

 そう言い残してアロンは気を失ってしまった。

「お、おい!!……王都から逃げろ、だと?いったい、何が起きるというんだ?」

 





 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 ディラック率いる小隊は、もう王都の目前まで迫っていた。
 これまで無理をさせて飛ばしてきた馬はもう限界で、いつ倒れてしまってもおかしくはないが、もう一踏ん張りすればお役御免となるだろう。

 しかし……


「ディラック様!!?そっちは……!!」

 ディラックの馬が街道から外れて脇道に入ろうとするのを見て、部下の騎士が驚いて彼に声をかける。

「そっちは『聖域の森』ですよ!?勝手に入ったら……」

「構わん!!責任は俺が取るから黙ってついて来い!!」

 ディラックはその先が神殿の管理下であることを承知の上で強行しようとしているのだ。
 それを聞いた部下たちも、彼からそう言われれば覚悟を決めて付き従う。


「それも『勘』ですか!?」

「『勘』だ!!」


 あくまでも彼は勘だと言うが……もはやそれは彼の中では確信に至っている。


 そして、彼の確信が正しかったことは直ぐに証明される。



「……!?な、何だ……あれは……」

「ディラック様!!あ、あれを……!!」

 何人かの騎士がそれ・・に気付いて進む先の空を指し示して言う。

 ディラックがそちらに視線を向け、そこに見たものは……


「……そうか。アレ・・がここまで持ち込まれていたというわけか」

 自分の直感が告げていたものと、自分たちが任務で追っていたものの正体が、彼の中で繋がった瞬間である。


「お前たち!!あれを王都に向かわせてはならなん!!民を守るのが騎士の務め!!!覚悟を決めろ!!!!」

「「「お、応っ!!!」」」

 ディラックが鼓舞し、騎士たちは怯みそうになりながらも何とか応える。


 そして彼らは、これが最後だとばかりに馬を加速させる。
 その向かう先には……巨大な何かが姿を現そうとしていた。




 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 結局、国王やエステルに会うことができなかったジスタルとエドナは、レジーナと別れたあと外壁近くにある宿に戻っていた。

 長旅の疲れ……というほど疲れてはないが、特にやることもなく客室で寛いでいた二人は、なにやら外が騒がしいことに気付く。
 王都は常に賑やかではあるが、普段のそれとは別の……ともすれば不穏な空気を感じて窓の外を見る。

 すると、彼らが見たのは……


「おいおいおい…………ここ、王都だよな?」

「まあ……私たちがこの街を出ていってから、あんなものが出るようになったのね」

「いやいや、んなわけないだろ。どう見たって異常事態だ」

 妻に突っ込みを入れつつ、ジスタルは目を凝らして外壁の外に現れたそれ・・を観察する。

 まだ距離は離れているようだが……
 いや、遠くに見えるからこそ、その巨大さはよりいっそう際立っていた。


「ドラゴン……ありゃあ、辺境に出るやつよりデカいぞ。上位竜エルダードラゴン……いや、下手すると古竜エイシェントドラゴンかもしれん。騎士団の手には余るだろ、あれは。……仕方ない、行ってくるか」

 いかに精鋭と名高いエルネア騎士団と言えど、あれほどの巨大な竜の相手は流石に厳しすぎる。
 自分でもどれほど力になれるのかは分からないが、放っておくことも出来ない……と、ジスタルは加勢することを決めた。

 そして、エドナも……

「私も行くわ。聖女の力が必要でしょ?」

 激しい戦闘になるのは間違いない。
 そうであれば、『癒しの奇跡』を持つ聖女の存在は非常に頼りになるだろう。
 それがよく分かってるので、ジスタルは不本意ながら妻の同行を承知した。

「……無理はするなよ」

「ええ。それにしても…………あれだけ大きいと、お肉もたっぷり取れそうよね?分けてもらえるかしら?」

「……倒せればな」

 この母にしてあの娘あり……と、ジスタルは思った。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

処理中です...