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小話2. 泣き虫パピー
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ダニエルの父は数多くの武功を立てた歴戦の将軍である。国の北側を荒らしていた盗賊の討伐や交易の妨害をする海賊・山賊の撃退、街を荒らす魔獣の退治など、彼の力なくしては現在の繁栄や平和はないと評されるほど功績が讃えられている。
肩にかかるほどの黒髪を首元で束ね、がっしりとした体つきはまさしく屈強の騎士そのものである。右目の傷は皇帝陛下を守るために負った名誉の傷だが、少々強面の印象を抱かせ、人を遠巻きにさせるが、勇ましいと部下には評判だった。
国のため、仲間のため、家族のためと身を粉にして働いている父は多忙のため、特に若い頃は家にあまりいなかった。そのため、家族の多くのイベントに顔を出すことができず、息子のダニエルやその弟のジョージが生まれた時に立ち会うこともできなかった。
「ダニエル、知ってる?ジョージが生まれた時、俺はハザマブルクで災害に乗じて暴れる盗賊捕まえててさぁ。終わったと思ったら、すぐ北に行かされてさぁ、ヒャッハーな野郎をボコボコにしてたのぉ、ぐすっ、そんで、ぜーんぜんジョージに会えなくてさぁ……」
そんな将軍は家だと息子相手にぐたぐた管を巻いていた。ダニエルは高い酒が飲めるからというただ一つだけの理由で父との晩酌に度々付き合っていた。
「やっと帰れたと思ったらぁ、すんごい大泣きされるし。後ろにひっくり返ってわんわん泣いてんの……、怖いひとが来たうえーんみたい感じでさっ、ぐすっ」
父は成人となったダニエルと酒を交わし、酔っ払う度に、息子たちの誕生に立ち会えなかったとわんわん泣いていた。キリッとした目や右目に走る傷跡は顔の厳つさを示し、部下たちの叱咤激励に役立てていたが、今その面影はない。屈強な背を丸くさせ、目をぐしょぐしょにし、鼻をぐすぐすいわせている。
「お前の時もそう!!グスッ、よくわかんないやつの護衛させられてさぁ、引っ張り回されて……、グスッ。あんなのに、俺絶対いらなかったって!仕事だからやりますけれどねぇ!んで、それが終わったら、なんか魔獣が大発生してさぁ、マジ、タタリ神×100みたいな?倒し終わったら、町の復興とかも手伝って……、グスッ。なんやかんやして、家帰ったらお前はもう二歳になっててね!そんでお前は俺になんて言ったと思う?」
「覚えてませんからね」
覚えてはいないが、ダニエルは父から毎回毎回酒の席で聞かされていた。もううんざりしていた。
「おじさんだれ」
うぇーん、うぇーんと父は泣き伏した。酔うといつもこうなのだ。歴戦の将軍も安心できる家でお酒を浴びると、泣き喚き、ひどい時は駄々をこねるときさえもある。床に転がって長くて太い手足をバタバタさせるのだ。家の外での立派で勇ましい姿とはとってもかけ離れている。
「ダニエル~、ほんとでっかくなったなぁ。いつの間にこーんなになったんだろ……。俺の知らないうちにでかくなりやがって……!」
「そーですね」
ダニエルは感極まったと言わんばかりに抱きついてきた父親を雑にいなした。デカくてむさくて分厚いとダニエルはうんざりした。もう相手をしたくないなと思った頃合いで、廊下に母が水を持って歩いている姿が見えた。
「お母様が来ましたよ」
「え?ほんと!」
父はパッと顔を上げて、ダニエルが指差す方を見た。母は水をコップに注ぎ、ダニエルに渡し、残った水を父の頭にぶっかけた。
「つめたーい!!」
「また、こんなに飲んでー、もう。お酒弱いんでしょう?」
「だって~、おいしーんだもん」
「何がもんよ。ほら寝ますよ」
びしょびしょになってもめげない父は母に連れられ寝室に向かった。お酒を飲んで酔っ払って泣き喚いてなんやかんやで母に連れてかれる、ここまでがお約束の流れだった。
家にいる時と仕事モードの時の差が激しすぎるが、なんであれ、父は母を愛し、息子たちを愛しているという事実に変わりはない。
肩にかかるほどの黒髪を首元で束ね、がっしりとした体つきはまさしく屈強の騎士そのものである。右目の傷は皇帝陛下を守るために負った名誉の傷だが、少々強面の印象を抱かせ、人を遠巻きにさせるが、勇ましいと部下には評判だった。
国のため、仲間のため、家族のためと身を粉にして働いている父は多忙のため、特に若い頃は家にあまりいなかった。そのため、家族の多くのイベントに顔を出すことができず、息子のダニエルやその弟のジョージが生まれた時に立ち会うこともできなかった。
「ダニエル、知ってる?ジョージが生まれた時、俺はハザマブルクで災害に乗じて暴れる盗賊捕まえててさぁ。終わったと思ったら、すぐ北に行かされてさぁ、ヒャッハーな野郎をボコボコにしてたのぉ、ぐすっ、そんで、ぜーんぜんジョージに会えなくてさぁ……」
そんな将軍は家だと息子相手にぐたぐた管を巻いていた。ダニエルは高い酒が飲めるからというただ一つだけの理由で父との晩酌に度々付き合っていた。
「やっと帰れたと思ったらぁ、すんごい大泣きされるし。後ろにひっくり返ってわんわん泣いてんの……、怖いひとが来たうえーんみたい感じでさっ、ぐすっ」
父は成人となったダニエルと酒を交わし、酔っ払う度に、息子たちの誕生に立ち会えなかったとわんわん泣いていた。キリッとした目や右目に走る傷跡は顔の厳つさを示し、部下たちの叱咤激励に役立てていたが、今その面影はない。屈強な背を丸くさせ、目をぐしょぐしょにし、鼻をぐすぐすいわせている。
「お前の時もそう!!グスッ、よくわかんないやつの護衛させられてさぁ、引っ張り回されて……、グスッ。あんなのに、俺絶対いらなかったって!仕事だからやりますけれどねぇ!んで、それが終わったら、なんか魔獣が大発生してさぁ、マジ、タタリ神×100みたいな?倒し終わったら、町の復興とかも手伝って……、グスッ。なんやかんやして、家帰ったらお前はもう二歳になっててね!そんでお前は俺になんて言ったと思う?」
「覚えてませんからね」
覚えてはいないが、ダニエルは父から毎回毎回酒の席で聞かされていた。もううんざりしていた。
「おじさんだれ」
うぇーん、うぇーんと父は泣き伏した。酔うといつもこうなのだ。歴戦の将軍も安心できる家でお酒を浴びると、泣き喚き、ひどい時は駄々をこねるときさえもある。床に転がって長くて太い手足をバタバタさせるのだ。家の外での立派で勇ましい姿とはとってもかけ離れている。
「ダニエル~、ほんとでっかくなったなぁ。いつの間にこーんなになったんだろ……。俺の知らないうちにでかくなりやがって……!」
「そーですね」
ダニエルは感極まったと言わんばかりに抱きついてきた父親を雑にいなした。デカくてむさくて分厚いとダニエルはうんざりした。もう相手をしたくないなと思った頃合いで、廊下に母が水を持って歩いている姿が見えた。
「お母様が来ましたよ」
「え?ほんと!」
父はパッと顔を上げて、ダニエルが指差す方を見た。母は水をコップに注ぎ、ダニエルに渡し、残った水を父の頭にぶっかけた。
「つめたーい!!」
「また、こんなに飲んでー、もう。お酒弱いんでしょう?」
「だって~、おいしーんだもん」
「何がもんよ。ほら寝ますよ」
びしょびしょになってもめげない父は母に連れられ寝室に向かった。お酒を飲んで酔っ払って泣き喚いてなんやかんやで母に連れてかれる、ここまでがお約束の流れだった。
家にいる時と仕事モードの時の差が激しすぎるが、なんであれ、父は母を愛し、息子たちを愛しているという事実に変わりはない。
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