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終. 優しい貴女
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そんなこんなでアナスタシアは安静期間を終えても、ダニエルの家で暮らしている。ついでと言わんばかりに、研究室暮らしからも卒業させられた。そして、まだゆっくりしていた方が……というダニエルたちの言葉に甘えて、ゆるりとのんびりしている。これではいけない、仕事復帰の日取りくらいは決めなくては!とアナスタシアは漠然とした危機感を感じていた。しかし、まだいいか、久しぶりの休みだしと思い、ゴロゴロしていると、メイド長のマイヤーさんがアナスタシアの元にやってきた。
「あの……、妹さんがいらしています」
非常に言いにくそうにマイヤーさんは用件を伝えた。
「……少しだけ顔を見てきます」
アナスタシアは一回くらい……と考え、妹のいるらしい客室に行った。
「お姉様!」
キャシーはアナスタシアが部屋に入ってくるやいなや姉にドンッと抱きついた。マイヤーさんは怪我をしていたため安静にさせておくようにとダニエルから言われていることもあり、アナスタシアの様子を心配し、怪訝な顔でキャシーの方を見た。
「お金がほしいの!!」
キャシーは場の雰囲気を気にすることなく、自分の用件や現状を伝えた。ドーロン伯爵邸の経済事情はやはり火の車で、伯爵夫人も趣味を活かして針仕事などをしているらしい。そして、アランは実家に回収されたが、頑張って働いて、仕送りをしているようだった。しかし、このような状況下に置かれても、キャシーはお金を稼ごう、働こうといった行動はしていないようだった。
「お願いよ、お姉様!」
キャシーは綺麗なドレスを着て、さまざまな装飾品を身につけている。まだまだ妹がやりくりできる箇所がありそうだ。
「……誰のせいで困窮しているとでも?」
アナスタシアは踏ん張ろうとしない妹を見た。今変わらないと妹はもう二度と変わることはないという確信がアナスタシアにはあった。
「自分で何とかしなさい」
妹のためにならないだけではなく、実家の援助となると、ダニエルやこの家の人に迷惑をかけることは必至だ。優しい人たちの負担や面倒事は増やしたくなかった。
「ひどいわ!自分ばっかり!!」
キャシーは子どものようにじたばたと暴れ、悪口を吐いた。しかし、アナスタシアとマイヤーさんが一ミリも動揺しないということが身に染みると、もういいと言わんばかりにぶすくれた。
「本当に意地悪ね!!」
「…………」
妹は捨て台詞を吐いて出て行った。アナスタシアはその背中を見送った。妹の性格は両親のせいではないか、甘やかされ過ぎたせいで妹の幸せは阻害されたのではないか、とぐるぐる考えている。
そして、ダニエルが仕事を終えて、帰ってくると今日のことを一応話した。
「お昼頃に妹がここを訪ねてきました」
「えっ……!大丈夫だった?」
「ええ、お金がほしいとせがまれただけです。マイヤーさんもいてくれましたし」
「そっか」
ダニエルはホッと一安心と息をついた。
「でも、全然変わっていなくて……。人のせいにする癖がなくならないとあの子は……」
すぐ姉のせいにするばかりで、ただただ両親に甘え縋る子どものままではダメだと妹に気づいてほしいと考えている。アナスタシアが言ったところで反発を招くだけであるため、ただ願うことしかできない。
「優しい人だ」
「え……?」
「だって、あんな目に遭ってたのに両親も妹も憎んでないでしょう?」
「……そんなことはありませんよ。あの人たちのことは昔から嫌いです」
アナスタシアはふっと浅く笑った。やや自嘲気味である。
憎んでもいないし恨んでもいないし、復讐する気もない。そして、改心したら受け入れるんだろうなぁとダニエルはアナスタシアの甘さと紙一重の優しさを愛おしく感じた。
「そういえば、ハンバーグ作ろうと思うんだけれど、食べる?」
「いただきます!」
ここに来て、ダニエルの料理を食べる機会が増えたため、ちょっと体重が増えたかなとアナスタシアは感じていた。健康的になったねとダニエルは言うが、甘やかされすぎな気がする。何とかしないとは思うが、ゆったりできてあったかくて居心地が良すぎる。
この人の隣は誰にも譲れそうにない。
「あの……、妹さんがいらしています」
非常に言いにくそうにマイヤーさんは用件を伝えた。
「……少しだけ顔を見てきます」
アナスタシアは一回くらい……と考え、妹のいるらしい客室に行った。
「お姉様!」
キャシーはアナスタシアが部屋に入ってくるやいなや姉にドンッと抱きついた。マイヤーさんは怪我をしていたため安静にさせておくようにとダニエルから言われていることもあり、アナスタシアの様子を心配し、怪訝な顔でキャシーの方を見た。
「お金がほしいの!!」
キャシーは場の雰囲気を気にすることなく、自分の用件や現状を伝えた。ドーロン伯爵邸の経済事情はやはり火の車で、伯爵夫人も趣味を活かして針仕事などをしているらしい。そして、アランは実家に回収されたが、頑張って働いて、仕送りをしているようだった。しかし、このような状況下に置かれても、キャシーはお金を稼ごう、働こうといった行動はしていないようだった。
「お願いよ、お姉様!」
キャシーは綺麗なドレスを着て、さまざまな装飾品を身につけている。まだまだ妹がやりくりできる箇所がありそうだ。
「……誰のせいで困窮しているとでも?」
アナスタシアは踏ん張ろうとしない妹を見た。今変わらないと妹はもう二度と変わることはないという確信がアナスタシアにはあった。
「自分で何とかしなさい」
妹のためにならないだけではなく、実家の援助となると、ダニエルやこの家の人に迷惑をかけることは必至だ。優しい人たちの負担や面倒事は増やしたくなかった。
「ひどいわ!自分ばっかり!!」
キャシーは子どものようにじたばたと暴れ、悪口を吐いた。しかし、アナスタシアとマイヤーさんが一ミリも動揺しないということが身に染みると、もういいと言わんばかりにぶすくれた。
「本当に意地悪ね!!」
「…………」
妹は捨て台詞を吐いて出て行った。アナスタシアはその背中を見送った。妹の性格は両親のせいではないか、甘やかされ過ぎたせいで妹の幸せは阻害されたのではないか、とぐるぐる考えている。
そして、ダニエルが仕事を終えて、帰ってくると今日のことを一応話した。
「お昼頃に妹がここを訪ねてきました」
「えっ……!大丈夫だった?」
「ええ、お金がほしいとせがまれただけです。マイヤーさんもいてくれましたし」
「そっか」
ダニエルはホッと一安心と息をついた。
「でも、全然変わっていなくて……。人のせいにする癖がなくならないとあの子は……」
すぐ姉のせいにするばかりで、ただただ両親に甘え縋る子どものままではダメだと妹に気づいてほしいと考えている。アナスタシアが言ったところで反発を招くだけであるため、ただ願うことしかできない。
「優しい人だ」
「え……?」
「だって、あんな目に遭ってたのに両親も妹も憎んでないでしょう?」
「……そんなことはありませんよ。あの人たちのことは昔から嫌いです」
アナスタシアはふっと浅く笑った。やや自嘲気味である。
憎んでもいないし恨んでもいないし、復讐する気もない。そして、改心したら受け入れるんだろうなぁとダニエルはアナスタシアの甘さと紙一重の優しさを愛おしく感じた。
「そういえば、ハンバーグ作ろうと思うんだけれど、食べる?」
「いただきます!」
ここに来て、ダニエルの料理を食べる機会が増えたため、ちょっと体重が増えたかなとアナスタシアは感じていた。健康的になったねとダニエルは言うが、甘やかされすぎな気がする。何とかしないとは思うが、ゆったりできてあったかくて居心地が良すぎる。
この人の隣は誰にも譲れそうにない。
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