副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜

有明波音

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誰かに頼るということ

4.

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「ダメです。荒木さんからも『また無茶しそうなので、見張りをお願いします』って言われましたし。念のため、次回の受診が終わってからにしましょう」

「そんな……やっと澪を抱けると思ったのに……やっぱり大成のこと、この間もっとシメておけばよかったかな」

「そんな怖いこと言わないでくださいっ! 」


飛鳥さんとはついつい甘い雰囲気になってしまうけれど、喧嘩になってしまった時のことを解消しなければと決心する。ご飯も食べ終わったので、ソファに座ってゆっくり話すことにした。


「この間の電話で私が何に怒ったかというと、椿さんとの関係を『そんな話』って飛鳥さんが言ったことなんです。飛鳥さんにとっては大したことがなくても、私にとっては大した話だったんです」

「そうか……それは、悪かった」


飛鳥さんがしょぼんとする。でも、話を続けた。


「椿さんと付き合っていて、結婚の話も出ていたんですか?」

「いや、正確には、表向きには付き合っていることにした、だな」

「え、どういうことですか?」

「俺の親も麗香の親も、早く結婚しろとうるさくて、それなら幼馴染同士でちょうど良いじゃないかって俺らに白羽の矢が立ったんだよな。まぁ、事業的にプラスになることも考えたんだろうけど。

 俺はまだ仕事も頑張り時だし、澪のことも忘れられなくて、麗香は麗香で意中の男がアメリカにいたから、表向きには付き合っていることにして親達を黙らせることにした」

「そうだったんですね…」


愛し合っていた2人が結婚の話までしていたのだったら、何で私に偽装婚約を提案したんだろう……と、引っかかっていた。けど、そういう訳じゃなかったのか。


「あと、探偵がついている件を言わなかったのは、写真が出回る前はまだ確証が無かったのと、俺も大成も側にいないのに澪に不安を煽るのは避けたいと思った」

「そういうことだったんですね……」


「とはいえ、ちゃんと伝えておいた方が良かったな。反省した。本当に悪かった」


飛鳥さんが深々と頭を下げた。
そして突然顔を上げたかと思うと、ニヤリと揶揄うような顔をこちらに向ける。


「……で? 澪、やきもち焼いてくれたの?」

「うっ……はい、焼きました」


素直にそう伝えると、飛鳥さんは嬉しそうな顔をしている。そして、突然思い出したかのように、飛鳥さんは別の話題を話し始めた。


「そういえば、澪と竹田は何であんな写真撮られちゃったの? 竹田が一方的に抱きしめてるように見えたけど」

「それが……ゲストからのお土産を渡したいというのと、飛鳥さんのことで話したいことがあるって言われて、ご飯に行ったんですよね。それが椿さんのことだったんですけど。
 その帰り道に、酔った竹田さんに『前から好きでした』って告白されました…」

「そうか、それは……上書きしないとな」


そう言って、飛鳥さんにぎゅぅっと抱きしめられる。そして優しく頭を撫でられた。飛鳥さんの存在が近くに感じられて、ドクンドクンと鼓動が早くなった。


「……澪は誰にも、渡さない」

「飛鳥さん…ごめんなさい、私に隙があったからですね」

「そうだな、澪は仕事ではしっかりしてるけど、ちょっと抜けてる所もあるからな。今回の件は、お仕置きだな」

「へっ!?」


飛鳥さんがニヤリと笑ってこちらを見る。
何を悪だくみしているんだろう……と少し、いや、かなり心配になってきた。

その日はお互いゆっくりマンションで過ごし、夜もいつも通り各自の寝室で眠りについた。次の日の日曜日は私も仕事だったので、忙しく過ごしていた。

そんなすっかり忘れた頃に、飛鳥さんの「お仕置き」が待っていたのだった。


***
 
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