16 / 54
第16話 蒼竜のドレス
しおりを挟む
アイザックの凱旋式兼、私たちの婚約式が行われる会場へと移動します。
その際、城の使用人と通り過ぎるたびに、みな驚いたように私のほうへと振り返っていたのが気になりました。
私の姿を見るたびに、使用人たちがなぜか感嘆の声を漏らしている。
そんなに人族が珍しいのかな。
「アイザック、待たせたわね」
「いいや、俺もいま来たところ…………ルシル、その格好……!」
「どう、似合うかしら?」
くるりと、一回転してみます。
ふわりと舞い上がったスカートに、アイザックの視線が釘付けになるのがわかりました。
控室にいる従者たちが「おおっ」と声を漏らし、アイザックは驚きのあまり息を飲んでいる。
反応が上々だったことで、ひと安心してしまいました。
そしてなぜか私の姿から目を離さないアイザックが、頬を赤く染めながら囁いてきます。
「ルシル、綺麗だ……!」
「ありがとう。アイザックのおかげよ」
このブルードレスは、アイザックが用意してくれたものだ。
誰にでも好感度が高い色だし、お披露目にはもってこいでした。
凱旋式の主役であるアイザックを食うこともなく、それでいて存在感もアピールできる。
竜を模した金の刺繍も、ジェネラス竜国らしくて素敵です。
──なんだかドレスが素晴らしすぎて、まるで自分も綺麗になってしまったように錯覚してしまうわね。
というか、新しく侍女になたマイカが気合を入れすぎなのよね。
こんなにおめかししたのは、生まれて初めてかも。
「やはりルシルの美しさがあれば、どんなドレスでも似合ってしまうんだな」
「冗談やめてよ。こんな高そうなドレス、初めて着たんだから」
この装飾品ひとつで、家が一軒建ってしまうくらいの価値があるはず。
恐ろしくて、ドレスの値段は聞けないわね。
「アイザックも素敵よ。軍服なんて、着てるの初めて見たわ」
アイザックの正装は、まさかの軍服でした。
ジェネラス竜国の王太子が帰還した際は、軍服を着るのが習わしなのだとか。
「俺の軍服なんて、ルシルからしたら変に思うかもしれないな」
「ううん、そんなことない。むしろまたその格好をして欲しいくらい」
軍服姿のアイザックが、格好良すぎるんだけどー!
竜のデザインがちりばめられた礼服は、私の好みのドストライクでした。
心に刺さりすぎて、油断するとよだれが垂れてしまいそう。
その姿、最高すぎるよー!
「国に戻って来た王太子は、軍に所属する決まりなんだ。そのせいでこんな格好しているんだが、ルシルは気に入ってくれたみたいだな」
「ええ。今度、私のためにだけにその軍服を着て欲しいくらいには」
「ルシルのためなら、俺はなんだってするよ。俺の竜天女様」
「……竜天女?」
聞きなれない言葉が出てきたところで、婚約式のスタッフがアイザックへと近づいて来ます。
「殿下、ちょっとよろしいでしょうか?」
「ああ、ルシル、ちょっとだけ待ってくれ」
アイザックが、側近と最後の打ち合わせを始めました。
その隙を見たかのように、ドラッヘ商会の商会長であるブラッドが、恭しく頭を下げてきます。
「ルシル様はいつ見てもお美しいですね。最高級のドレスをご用意いたしましたが、まさかここまで着こなすとは御見それいたしました」
「ブラッドにも苦労かけたみたいね。私のために、ありがとう」
「その蒼竜のドレスは、あの竜天女様を模して作ったものですから、かなり奮発させていただきました」
竜天女──またその言葉だ。
どういう意味なのか尋ねようとしたところで。ブラッドが周囲に視線を動かします。
周りに誰もいないことを確認すると、私に近付いてこっそりと耳打ちしてきました。
「ルシル様はもうお気づきかもしれませんが、我々人族はこの国では、かなりマイナーな種族です」
「ええ、そうみたいね」
あんなに私に尽くそうとしてくれているあの侍女のマイカからですら、人族を見下すような態度を取っていた。
無意識なのかもしれないけど、マイカの言葉の端に人族への蔑みのニュアンスを感じてしまうのだ。
「この国では、竜に近いほど崇高な存在だと思われています。竜の血を受け継ぐ竜人族は貴族のように傲慢であり、ただの人族は平民のような扱いを受けているのが実情です」
ブラッドは優しい。
おそらく私はこれから、多くの竜人族からの侮蔑の視線を受けることになる。
それを事前に、こっそりと教えてくれようとしているみたい。
「アイザック殿下の婚約者が人族なのは許せないと、揶揄する官僚や大臣もいることでしょう」
「大丈夫。竜の血を受け継ぐ竜人族から、馬鹿にされるかもしれないってことでしょう? なら大丈夫」
「ルシル様……」
心配するブラッドをよそに、私はアイザックのもとへと足を動かします。
アイザックの打ち合わせは終わったみたいで、私に手を伸ばしてエスコートしてきます。
「ルシル、行こうか」
「ええ、お願いします」
──竜人族。
つまり、彼らの中には、あの竜の血が流れているということ。
「それってつまり、竜みたいなものってことじゃん。最高じゃない!」
「ル、ルシル?」
あら、イヤだわ。
興奮して、つい心の声が漏れてしまったわね。
唖然とするアイザックの手を、しっかりと握り返します。
「さあ、行きましょうかアイザック!」
竜人族という名の、竜の受け継ぐ者たちを観察しに!
その際、城の使用人と通り過ぎるたびに、みな驚いたように私のほうへと振り返っていたのが気になりました。
私の姿を見るたびに、使用人たちがなぜか感嘆の声を漏らしている。
そんなに人族が珍しいのかな。
「アイザック、待たせたわね」
「いいや、俺もいま来たところ…………ルシル、その格好……!」
「どう、似合うかしら?」
くるりと、一回転してみます。
ふわりと舞い上がったスカートに、アイザックの視線が釘付けになるのがわかりました。
控室にいる従者たちが「おおっ」と声を漏らし、アイザックは驚きのあまり息を飲んでいる。
反応が上々だったことで、ひと安心してしまいました。
そしてなぜか私の姿から目を離さないアイザックが、頬を赤く染めながら囁いてきます。
「ルシル、綺麗だ……!」
「ありがとう。アイザックのおかげよ」
このブルードレスは、アイザックが用意してくれたものだ。
誰にでも好感度が高い色だし、お披露目にはもってこいでした。
凱旋式の主役であるアイザックを食うこともなく、それでいて存在感もアピールできる。
竜を模した金の刺繍も、ジェネラス竜国らしくて素敵です。
──なんだかドレスが素晴らしすぎて、まるで自分も綺麗になってしまったように錯覚してしまうわね。
というか、新しく侍女になたマイカが気合を入れすぎなのよね。
こんなにおめかししたのは、生まれて初めてかも。
「やはりルシルの美しさがあれば、どんなドレスでも似合ってしまうんだな」
「冗談やめてよ。こんな高そうなドレス、初めて着たんだから」
この装飾品ひとつで、家が一軒建ってしまうくらいの価値があるはず。
恐ろしくて、ドレスの値段は聞けないわね。
「アイザックも素敵よ。軍服なんて、着てるの初めて見たわ」
アイザックの正装は、まさかの軍服でした。
ジェネラス竜国の王太子が帰還した際は、軍服を着るのが習わしなのだとか。
「俺の軍服なんて、ルシルからしたら変に思うかもしれないな」
「ううん、そんなことない。むしろまたその格好をして欲しいくらい」
軍服姿のアイザックが、格好良すぎるんだけどー!
竜のデザインがちりばめられた礼服は、私の好みのドストライクでした。
心に刺さりすぎて、油断するとよだれが垂れてしまいそう。
その姿、最高すぎるよー!
「国に戻って来た王太子は、軍に所属する決まりなんだ。そのせいでこんな格好しているんだが、ルシルは気に入ってくれたみたいだな」
「ええ。今度、私のためにだけにその軍服を着て欲しいくらいには」
「ルシルのためなら、俺はなんだってするよ。俺の竜天女様」
「……竜天女?」
聞きなれない言葉が出てきたところで、婚約式のスタッフがアイザックへと近づいて来ます。
「殿下、ちょっとよろしいでしょうか?」
「ああ、ルシル、ちょっとだけ待ってくれ」
アイザックが、側近と最後の打ち合わせを始めました。
その隙を見たかのように、ドラッヘ商会の商会長であるブラッドが、恭しく頭を下げてきます。
「ルシル様はいつ見てもお美しいですね。最高級のドレスをご用意いたしましたが、まさかここまで着こなすとは御見それいたしました」
「ブラッドにも苦労かけたみたいね。私のために、ありがとう」
「その蒼竜のドレスは、あの竜天女様を模して作ったものですから、かなり奮発させていただきました」
竜天女──またその言葉だ。
どういう意味なのか尋ねようとしたところで。ブラッドが周囲に視線を動かします。
周りに誰もいないことを確認すると、私に近付いてこっそりと耳打ちしてきました。
「ルシル様はもうお気づきかもしれませんが、我々人族はこの国では、かなりマイナーな種族です」
「ええ、そうみたいね」
あんなに私に尽くそうとしてくれているあの侍女のマイカからですら、人族を見下すような態度を取っていた。
無意識なのかもしれないけど、マイカの言葉の端に人族への蔑みのニュアンスを感じてしまうのだ。
「この国では、竜に近いほど崇高な存在だと思われています。竜の血を受け継ぐ竜人族は貴族のように傲慢であり、ただの人族は平民のような扱いを受けているのが実情です」
ブラッドは優しい。
おそらく私はこれから、多くの竜人族からの侮蔑の視線を受けることになる。
それを事前に、こっそりと教えてくれようとしているみたい。
「アイザック殿下の婚約者が人族なのは許せないと、揶揄する官僚や大臣もいることでしょう」
「大丈夫。竜の血を受け継ぐ竜人族から、馬鹿にされるかもしれないってことでしょう? なら大丈夫」
「ルシル様……」
心配するブラッドをよそに、私はアイザックのもとへと足を動かします。
アイザックの打ち合わせは終わったみたいで、私に手を伸ばしてエスコートしてきます。
「ルシル、行こうか」
「ええ、お願いします」
──竜人族。
つまり、彼らの中には、あの竜の血が流れているということ。
「それってつまり、竜みたいなものってことじゃん。最高じゃない!」
「ル、ルシル?」
あら、イヤだわ。
興奮して、つい心の声が漏れてしまったわね。
唖然とするアイザックの手を、しっかりと握り返します。
「さあ、行きましょうかアイザック!」
竜人族という名の、竜の受け継ぐ者たちを観察しに!
68
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!
ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。
相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。
結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。
現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう…
その時に前世の記憶を取り戻すのだった…
「悪役令嬢の兄の婚約者って…」
なんとも微妙なポジション。
しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い
腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。
お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。
当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。
彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。
巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。 〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜
トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!?
婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。
気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。
美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。
けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。
食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉!
「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」
港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。
気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。
――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談)
*AIと一緒に書いています*
婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。
拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。
「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」
仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。
普段は地味子。でも本当は凄腕の聖女さん〜地味だから、という理由で聖女ギルドを追い出されてしまいました。私がいなくても大丈夫でしょうか?〜
神伊 咲児
ファンタジー
主人公、イルエマ・ジミィーナは16歳。
聖女ギルド【女神の光輝】に属している聖女だった。
イルエマは眼鏡をかけており、黒髪の冴えない見た目。
いわゆる地味子だ。
彼女の能力も地味だった。
使える魔法といえば、聖女なら誰でも使えるものばかり。回復と素材進化と解呪魔法の3つだけ。
唯一のユニークスキルは、ペンが無くても文字を書ける光魔字。
そんな能力も地味な彼女は、ギルド内では裏方作業の雑務をしていた。
ある日、ギルドマスターのキアーラより、地味だからという理由で解雇される。
しかし、彼女は目立たない実力者だった。
素材進化の魔法は独自で改良してパワーアップしており、通常の3倍の威力。
司祭でも見落とすような小さな呪いも見つけてしまう鋭い感覚。
難しい相談でも難なくこなす知識と教養。
全てにおいてハイクオリティ。最強の聖女だったのだ。
彼女は新しいギルドに参加して順風満帆。
彼女をクビにした聖女ギルドは落ちぶれていく。
地味な聖女が大活躍! 痛快ファンタジーストーリー。
全部で5万字。
カクヨムにも投稿しておりますが、アルファポリス用にタイトルも含めて改稿いたしました。
HOTランキング女性向け1位。
日間ファンタジーランキング1位。
日間完結ランキング1位。
応援してくれた、みなさんのおかげです。
ありがとうございます。とても嬉しいです!
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる