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第20話 銀髪のナンパ男
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まさか図書室でナンパされるなんて思わなかった。
悪い気はしないけど、ちょっと困っちゃうね。
「君って、いま噂になっているあの令嬢のところの子でしょ?」
「う、噂の令嬢?」
「王太子の婚約者になったっていうカレジ王国の姫のことさ」
たしかに私は王族の血は色濃く引いているから、姫といわれれば姫だね。
でもずっと研究室に籠っていたせいで姫なんて言われたことがなかったから、なんだか恥ずかしい。
「当てようか。君はお姫様と一緒にこの国にやって来た侍女だろう?」
惜しい!
そのお姫様が、私なんだよね。
「だってお姫様がこんな薄暗い図書室に来ることはないしさ。それに君はドレスじゃなくて白衣を着ているしね」
そうだった。
いま私、白衣を着ているんだったよ!
他所の国からきた貴族の令嬢が、まさか白衣を着て城内を散歩しているなんて誰も想像できないよね……。
なんだか勘違いされちゃってるし、早めに誤解を解かないと。
「あのう、言いにくいのですが、実は私……」
「あ、断るのはやめてくれる? 僕、君に一目惚れしちゃったから」
流れるような、こなれたウインク。
きっとこういうことをするのに慣れているんでしょうね。
だけど、なんだろう。
ちょっとだけ、この人のことが気になってしまった。
私がアイザック以外の人間に興味を持つなんて珍しい。
アイザックを除けば、竜にしか目がいかないはずなんだけど。
「すまない。そろそろ行かないと……父上に呼ばれているんだった」
「あ、ちょ、ちょっと!」
「また明日、ここで待ってるよ!」
「待ってくださいって!」
私の静止を振りきり、銀髪の男は図書室から出ていきました。
追いかけてみたけど、すでに彼の姿はどこにもない。
「ど、どうしよう」
ナンパなんてされたの、人生初めてかも!
ずっと研究一筋で、パーティーでは白衣女と馬鹿にされてきた私が、可愛いから一目惚れしたなんて言われる日が来るとは思わなかった。
これも竜国に来た影響かな?
とはいえ、嬉しくないといえば嘘になるけど、彼の気持ちには答えられない。
だって私には、アイザックがいるから。
アイザック以外の男性を選ぶことはあり得ないし、私がアイザックを裏切ることはもっとない。
「誰だかわからないけど、ごめんなさいね」
私、アイザックと竜以外には興味がない女なの。
どんなにイケメンでも、私の心にあなたが残ることはないのだから。
「明日、しっかりと断ろう」
このまま保留にしておくのも、あの人が可哀そうだし。
何があっても、あの人のことを好きになることなんてないからね。
きちんと誠意を見せて、お断りをしよう。
それがお互いにとって、一番なのだから。
そんなアクシデントがあったあと、寝室へと戻りました。
ドアを開いて中へ入ると、聞きなれた声が私を出迎えてくれます。
「ルシル、おかえり」
「アイザック! 仕事はどうしたの?」
「ルシルに会いたいから、ちょっと抜けてきた」
ここはアイザックの寝室でもあるけど、彼はいつも深夜に帰ってきて、早朝に出かけてしまう。
だというのに、先に寝ている私に気を使っているのか、一度も私はそのことに気づいたことはなかった。
なんだかアイザックが大変すぎて、申し訳ない気分になってしまうね。
「待ってて、いまお茶を淹れるから」
「ありがとうルシル……この香り、懐かしいな」
「ドラッヘ商会に頼んで、カレジ王国の茶葉を手に入れたところだったの」
「だからか。こうしていると、二人で研究室に籠っていた時のことを思い出す」
「そうね。いつもこの紅茶を飲みながら研究をしていたから……」
「あの時も忙しかったが、毎日が楽しかったな」
どんなに私が大変な時でも、アイザックは必ず私の側にいてくれた。
そのおかげで、私がどれだけ助けられてきたことか。
だから今度は、私がその恩に報いる番。
アイザックの側にいて、彼を支えたい。
それがいまの私の願い。
「そういえば先日の婚約式から、ルシルの評判はかなり良い。ある程度、みんなから認められたようだ」
「特に何もしてないんだけどね」
「少なくとも、ルシルのことを人族だからと見下す者はいなくなった。これはルシルの実力だ」
そう言われると、なんだか嬉しくなってしまう。
知らない国で自分のことを認めてもらえると、こんな気持ちになるのね。
「だが、ルシルの評判を落とそうとする連中がいる……それが、第二王子派だ」
「第二王子派?」
「第一王子である俺ではなく、第二王子を次期国王にしようと企む連中のことだ」
「アイザックに弟がいたなんて初耳ね」
アイザックの凱旋式兼私たちの婚約式にも、第二王子は顔を見せなかった。
王族であればいてもおかしくないのに。
「第二王子は、長らく別の国に留学させられていたからな。帰国したのはつい先日のことだ」
「先日、ね……」
銀髪のナンパ男のことを思い出します。
突如現れた、謎の男。
たしかあの図書室は、王族であれば誰でも自由に出入りができたはず。
まさか、ねえ……。
悪い気はしないけど、ちょっと困っちゃうね。
「君って、いま噂になっているあの令嬢のところの子でしょ?」
「う、噂の令嬢?」
「王太子の婚約者になったっていうカレジ王国の姫のことさ」
たしかに私は王族の血は色濃く引いているから、姫といわれれば姫だね。
でもずっと研究室に籠っていたせいで姫なんて言われたことがなかったから、なんだか恥ずかしい。
「当てようか。君はお姫様と一緒にこの国にやって来た侍女だろう?」
惜しい!
そのお姫様が、私なんだよね。
「だってお姫様がこんな薄暗い図書室に来ることはないしさ。それに君はドレスじゃなくて白衣を着ているしね」
そうだった。
いま私、白衣を着ているんだったよ!
他所の国からきた貴族の令嬢が、まさか白衣を着て城内を散歩しているなんて誰も想像できないよね……。
なんだか勘違いされちゃってるし、早めに誤解を解かないと。
「あのう、言いにくいのですが、実は私……」
「あ、断るのはやめてくれる? 僕、君に一目惚れしちゃったから」
流れるような、こなれたウインク。
きっとこういうことをするのに慣れているんでしょうね。
だけど、なんだろう。
ちょっとだけ、この人のことが気になってしまった。
私がアイザック以外の人間に興味を持つなんて珍しい。
アイザックを除けば、竜にしか目がいかないはずなんだけど。
「すまない。そろそろ行かないと……父上に呼ばれているんだった」
「あ、ちょ、ちょっと!」
「また明日、ここで待ってるよ!」
「待ってくださいって!」
私の静止を振りきり、銀髪の男は図書室から出ていきました。
追いかけてみたけど、すでに彼の姿はどこにもない。
「ど、どうしよう」
ナンパなんてされたの、人生初めてかも!
ずっと研究一筋で、パーティーでは白衣女と馬鹿にされてきた私が、可愛いから一目惚れしたなんて言われる日が来るとは思わなかった。
これも竜国に来た影響かな?
とはいえ、嬉しくないといえば嘘になるけど、彼の気持ちには答えられない。
だって私には、アイザックがいるから。
アイザック以外の男性を選ぶことはあり得ないし、私がアイザックを裏切ることはもっとない。
「誰だかわからないけど、ごめんなさいね」
私、アイザックと竜以外には興味がない女なの。
どんなにイケメンでも、私の心にあなたが残ることはないのだから。
「明日、しっかりと断ろう」
このまま保留にしておくのも、あの人が可哀そうだし。
何があっても、あの人のことを好きになることなんてないからね。
きちんと誠意を見せて、お断りをしよう。
それがお互いにとって、一番なのだから。
そんなアクシデントがあったあと、寝室へと戻りました。
ドアを開いて中へ入ると、聞きなれた声が私を出迎えてくれます。
「ルシル、おかえり」
「アイザック! 仕事はどうしたの?」
「ルシルに会いたいから、ちょっと抜けてきた」
ここはアイザックの寝室でもあるけど、彼はいつも深夜に帰ってきて、早朝に出かけてしまう。
だというのに、先に寝ている私に気を使っているのか、一度も私はそのことに気づいたことはなかった。
なんだかアイザックが大変すぎて、申し訳ない気分になってしまうね。
「待ってて、いまお茶を淹れるから」
「ありがとうルシル……この香り、懐かしいな」
「ドラッヘ商会に頼んで、カレジ王国の茶葉を手に入れたところだったの」
「だからか。こうしていると、二人で研究室に籠っていた時のことを思い出す」
「そうね。いつもこの紅茶を飲みながら研究をしていたから……」
「あの時も忙しかったが、毎日が楽しかったな」
どんなに私が大変な時でも、アイザックは必ず私の側にいてくれた。
そのおかげで、私がどれだけ助けられてきたことか。
だから今度は、私がその恩に報いる番。
アイザックの側にいて、彼を支えたい。
それがいまの私の願い。
「そういえば先日の婚約式から、ルシルの評判はかなり良い。ある程度、みんなから認められたようだ」
「特に何もしてないんだけどね」
「少なくとも、ルシルのことを人族だからと見下す者はいなくなった。これはルシルの実力だ」
そう言われると、なんだか嬉しくなってしまう。
知らない国で自分のことを認めてもらえると、こんな気持ちになるのね。
「だが、ルシルの評判を落とそうとする連中がいる……それが、第二王子派だ」
「第二王子派?」
「第一王子である俺ではなく、第二王子を次期国王にしようと企む連中のことだ」
「アイザックに弟がいたなんて初耳ね」
アイザックの凱旋式兼私たちの婚約式にも、第二王子は顔を見せなかった。
王族であればいてもおかしくないのに。
「第二王子は、長らく別の国に留学させられていたからな。帰国したのはつい先日のことだ」
「先日、ね……」
銀髪のナンパ男のことを思い出します。
突如現れた、謎の男。
たしかあの図書室は、王族であれば誰でも自由に出入りができたはず。
まさか、ねえ……。
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