婚約破棄された竜好き令嬢は黒竜様に溺愛される。残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ

水無瀬

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第23話 大臣からの提案

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「アイザック、なんでここにいるの!?」

「……ちょっと、ルシルのことが気になってな」


 アイザック、仕事が忙しいって言っていたのに……!

 なんだか照れちゃうわね。
 わざわざ仕事を抜け出して、私に会いに来てくれるなんて!

 お茶会に参加しているご令嬢たちも、「キャー」なんて黄色い声をあげているわよ。


「あら、アイザック。そちらのお隣の方は?」

「こちらはヴォーテックス大臣だ」

 ヴォーテックス大臣──それってもしかして、リップルさんのお父さんなんじゃないの!?


吾輩わがはい、大臣を務めておりますヴォーテックスと申します。以後、お見知りおき」


 ヴォーテックス大臣の第一印象は、長いあごひげが目立つお方でした。
 しかもリップルさんのように、あごひげが縦ロールのように渦巻いている!

 もしかしてヴォーテックス家には、縦ロールをしなければならないという決まりとかあるのかな。


「アイザック殿下は、吾輩が誘わせていただきました。吾輩も娘のリップルのことが気になりましてね」


 私は瞬時に、アイザックへと視線を向けました。
 やや申し訳なさそうな顔で、アイザックは視線をそらします。

 わかっちゃった、私。
 アイザックじゃ私のことが気になったから、会いに来たわけじゃないんでしょ!

 私の無言の言葉を察知したのか、アイザックが私に近付いてきて耳元でささやきます。


「大臣の口車に乗ったのは事実だが、ルシルのことが気になっていたのも本当だ」

「はいはい、そういうことにしておきますとも」


 それでも、アイザックの顔が見れただけで嬉しい。
 アイザックが私を気にしていたのは、本当みたいだし。


 そんな私とアイザックのやり取りを見ていたヴォーテックス大臣が、「コホン」と咳払いをしました。
 そして、私に提案してきます。

「実はこれから殿下と一緒に会議をするのですが、ルシル様の故郷であるカレジ王国についての議題もございます。よろしければ、ルシル様のお知恵を拝借したいのですが、いかがですかな?」

「カレジ王国の議題……それは、最新のカレジ王国の状況のことを取り上げられているのでしょうか?」

「ええ、もちろんでございますとも」


 守護竜信仰を捨てたカレジ王国には、災害のきざしがあった。

 本来であれば黒竜様である守護竜が自らを犠牲にすることでその災害を収めることができるのだけど、その守護竜はカレジ王国から去った。

 竜山での地鳴りの様子からしても、伝承通りであれば、そろそろ災害が次の段階へとシフトしていてもおかしくない。

 処刑されそうになったとはいえ、カレジ王国は私の故郷。
 大切な家族や友人がいまも住んでいる。

 だからカレジ王国の情報が得られるのなら知りたいし、私の知識が会議の役に立つなら、喜んで提供したい。


 そう思ったところで、私の背後に立っているアイザックが「ルシル、やめたほうがいい」と小声で伝えてきました。

 でも、その言葉を無視して、立ち上がります。


「私で良ければ、是非とも参加させてください」

「では、決まりですな」

 ヴォーテックス大臣がニヤリと笑みを浮かべる。
 そして、先導するように城へと歩き出す。

「会議室はこちらです、アイザック殿下、ルシル様」


 私はリップルさんに「途中ですが失礼いたします」と断りを入れてから、庭園を後にします。

 彼女とは、お互いに宣戦布告をした。
 アイザックの婚約者として、そして幼馴染として、絶対に負けるわけにはいかない!


「ルシル、待ってくれ」

 城へと向かっていると、後ろからアイザックが追いかけてきました。
 そのまま二人して並んで、会議室へと向かいます。


「いまからでも遅くない。お茶会に戻れ」

「なに、アイザック。私が会議に参加するのがそんなに嫌なの?」

「嫌というより、ルシルが心配なんだ」

「大丈夫、知識だけなら自信はあるから」

「違う、そうじゃないんだ。大臣がルシルを会議に誘うなんておかしい。絶対に何か裏がある」


 そう言われてみると、たしかにおかしいかも。

 それに大臣の娘のリップルさんと、さきほどあんなことがあったばかりだ。
 その父親である大臣からも、なにか仕掛けられないという保証はない。


「ヴォーテックス大臣は第二王子派だ。俺をおとしいれるために、婚約者であるルシルを攻撃する口実を作るつもりかもしれない」

「それくらい望むところよ。返り討ちにしてやるんだから」

「その自信はいったい、どこから来るんだ……」


 アイザックは頭が痛いと、ため息をつきます。
 それからアイザックのお小言を聞き流しながら、城内の会議室へとたどり着きました。


「いいか、絶対に余計なことは言うな」

「余計なことってなによ? 私の実力はアイザックが一番よくわかっているでしょ?」

「だからこそだ。ルシルは優秀すぎるんだよ」

「優秀……んふふふ」

 アイザックに褒められちゃった。
 なんだか気分がいいわね。


「わかっているわよ。今日は大人しくしているから、安心して」

「どうだかな。だが、なにかあれば俺がすぐに割って入るから、気を楽にしてくれ」

「ありがとう。いつも通り、サポートは任せるわ」


 アイザックが会議室のドアを開けてくれます。
 お礼を言いながら、室内へと足を踏み入れる。


 会議室内には、細長い大きなテーブルが置いてありました。
 テーブルの両側に、数名の竜人族が座っている。

 そして、そのうちの一人と目が合います。


「あ……」

「君は昨日の……」


 ど、どういうこと!

 会議室に、昨夜の銀髪のナンパ男がいるんだけど!


 こんなところにいるなんて、こいついったい何者なの!?
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