23 / 54
第23話 大臣からの提案
しおりを挟む
「アイザック、なんでここにいるの!?」
「……ちょっと、ルシルのことが気になってな」
アイザック、仕事が忙しいって言っていたのに……!
なんだか照れちゃうわね。
わざわざ仕事を抜け出して、私に会いに来てくれるなんて!
お茶会に参加しているご令嬢たちも、「キャー」なんて黄色い声をあげているわよ。
「あら、アイザック。そちらのお隣の方は?」
「こちらはヴォーテックス大臣だ」
ヴォーテックス大臣──それってもしかして、リップルさんのお父さんなんじゃないの!?
「吾輩、大臣を務めておりますヴォーテックスと申します。以後、お見知りおき」
ヴォーテックス大臣の第一印象は、長いあごひげが目立つお方でした。
しかもリップルさんのように、あごひげが縦ロールのように渦巻いている!
もしかしてヴォーテックス家には、縦ロールをしなければならないという決まりとかあるのかな。
「アイザック殿下は、吾輩が誘わせていただきました。吾輩も娘のリップルのことが気になりましてね」
私は瞬時に、アイザックへと視線を向けました。
やや申し訳なさそうな顔で、アイザックは視線をそらします。
わかっちゃった、私。
アイザックじゃ私のことが気になったから、会いに来たわけじゃないんでしょ!
私の無言の言葉を察知したのか、アイザックが私に近付いてきて耳元で囁きます。
「大臣の口車に乗ったのは事実だが、ルシルのことが気になっていたのも本当だ」
「はいはい、そういうことにしておきますとも」
それでも、アイザックの顔が見れただけで嬉しい。
アイザックが私を気にしていたのは、本当みたいだし。
そんな私とアイザックのやり取りを見ていたヴォーテックス大臣が、「コホン」と咳払いをしました。
そして、私に提案してきます。
「実はこれから殿下と一緒に会議をするのですが、ルシル様の故郷であるカレジ王国についての議題もございます。よろしければ、ルシル様のお知恵を拝借したいのですが、いかがですかな?」
「カレジ王国の議題……それは、最新のカレジ王国の状況のことを取り上げられているのでしょうか?」
「ええ、もちろんでございますとも」
守護竜信仰を捨てたカレジ王国には、災害の兆しがあった。
本来であれば黒竜様である守護竜が自らを犠牲にすることでその災害を収めることができるのだけど、その守護竜はカレジ王国から去った。
竜山での地鳴りの様子からしても、伝承通りであれば、そろそろ災害が次の段階へとシフトしていてもおかしくない。
処刑されそうになったとはいえ、カレジ王国は私の故郷。
大切な家族や友人がいまも住んでいる。
だからカレジ王国の情報が得られるのなら知りたいし、私の知識が会議の役に立つなら、喜んで提供したい。
そう思ったところで、私の背後に立っているアイザックが「ルシル、やめたほうがいい」と小声で伝えてきました。
でも、その言葉を無視して、立ち上がります。
「私で良ければ、是非とも参加させてください」
「では、決まりですな」
ヴォーテックス大臣がニヤリと笑みを浮かべる。
そして、先導するように城へと歩き出す。
「会議室はこちらです、アイザック殿下、ルシル様」
私はリップルさんに「途中ですが失礼いたします」と断りを入れてから、庭園を後にします。
彼女とは、お互いに宣戦布告をした。
アイザックの婚約者として、そして幼馴染として、絶対に負けるわけにはいかない!
「ルシル、待ってくれ」
城へと向かっていると、後ろからアイザックが追いかけてきました。
そのまま二人して並んで、会議室へと向かいます。
「いまからでも遅くない。お茶会に戻れ」
「なに、アイザック。私が会議に参加するのがそんなに嫌なの?」
「嫌というより、ルシルが心配なんだ」
「大丈夫、知識だけなら自信はあるから」
「違う、そうじゃないんだ。大臣がルシルを会議に誘うなんておかしい。絶対に何か裏がある」
そう言われてみると、たしかにおかしいかも。
それに大臣の娘のリップルさんと、さきほどあんなことがあったばかりだ。
その父親である大臣からも、なにか仕掛けられないという保証はない。
「ヴォーテックス大臣は第二王子派だ。俺を陥れるために、婚約者であるルシルを攻撃する口実を作るつもりかもしれない」
「それくらい望むところよ。返り討ちにしてやるんだから」
「その自信はいったい、どこから来るんだ……」
アイザックは頭が痛いと、ため息をつきます。
それからアイザックのお小言を聞き流しながら、城内の会議室へとたどり着きました。
「いいか、絶対に余計なことは言うな」
「余計なことってなによ? 私の実力はアイザックが一番よくわかっているでしょ?」
「だからこそだ。ルシルは優秀すぎるんだよ」
「優秀……んふふふ」
アイザックに褒められちゃった。
なんだか気分がいいわね。
「わかっているわよ。今日は大人しくしているから、安心して」
「どうだかな。だが、なにかあれば俺がすぐに割って入るから、気を楽にしてくれ」
「ありがとう。いつも通り、サポートは任せるわ」
アイザックが会議室のドアを開けてくれます。
お礼を言いながら、室内へと足を踏み入れる。
会議室内には、細長い大きなテーブルが置いてありました。
テーブルの両側に、数名の竜人族が座っている。
そして、そのうちの一人と目が合います。
「あ……」
「君は昨日の……」
ど、どういうこと!
会議室に、昨夜の銀髪のナンパ男がいるんだけど!
こんなところにいるなんて、こいついったい何者なの!?
「……ちょっと、ルシルのことが気になってな」
アイザック、仕事が忙しいって言っていたのに……!
なんだか照れちゃうわね。
わざわざ仕事を抜け出して、私に会いに来てくれるなんて!
お茶会に参加しているご令嬢たちも、「キャー」なんて黄色い声をあげているわよ。
「あら、アイザック。そちらのお隣の方は?」
「こちらはヴォーテックス大臣だ」
ヴォーテックス大臣──それってもしかして、リップルさんのお父さんなんじゃないの!?
「吾輩、大臣を務めておりますヴォーテックスと申します。以後、お見知りおき」
ヴォーテックス大臣の第一印象は、長いあごひげが目立つお方でした。
しかもリップルさんのように、あごひげが縦ロールのように渦巻いている!
もしかしてヴォーテックス家には、縦ロールをしなければならないという決まりとかあるのかな。
「アイザック殿下は、吾輩が誘わせていただきました。吾輩も娘のリップルのことが気になりましてね」
私は瞬時に、アイザックへと視線を向けました。
やや申し訳なさそうな顔で、アイザックは視線をそらします。
わかっちゃった、私。
アイザックじゃ私のことが気になったから、会いに来たわけじゃないんでしょ!
私の無言の言葉を察知したのか、アイザックが私に近付いてきて耳元で囁きます。
「大臣の口車に乗ったのは事実だが、ルシルのことが気になっていたのも本当だ」
「はいはい、そういうことにしておきますとも」
それでも、アイザックの顔が見れただけで嬉しい。
アイザックが私を気にしていたのは、本当みたいだし。
そんな私とアイザックのやり取りを見ていたヴォーテックス大臣が、「コホン」と咳払いをしました。
そして、私に提案してきます。
「実はこれから殿下と一緒に会議をするのですが、ルシル様の故郷であるカレジ王国についての議題もございます。よろしければ、ルシル様のお知恵を拝借したいのですが、いかがですかな?」
「カレジ王国の議題……それは、最新のカレジ王国の状況のことを取り上げられているのでしょうか?」
「ええ、もちろんでございますとも」
守護竜信仰を捨てたカレジ王国には、災害の兆しがあった。
本来であれば黒竜様である守護竜が自らを犠牲にすることでその災害を収めることができるのだけど、その守護竜はカレジ王国から去った。
竜山での地鳴りの様子からしても、伝承通りであれば、そろそろ災害が次の段階へとシフトしていてもおかしくない。
処刑されそうになったとはいえ、カレジ王国は私の故郷。
大切な家族や友人がいまも住んでいる。
だからカレジ王国の情報が得られるのなら知りたいし、私の知識が会議の役に立つなら、喜んで提供したい。
そう思ったところで、私の背後に立っているアイザックが「ルシル、やめたほうがいい」と小声で伝えてきました。
でも、その言葉を無視して、立ち上がります。
「私で良ければ、是非とも参加させてください」
「では、決まりですな」
ヴォーテックス大臣がニヤリと笑みを浮かべる。
そして、先導するように城へと歩き出す。
「会議室はこちらです、アイザック殿下、ルシル様」
私はリップルさんに「途中ですが失礼いたします」と断りを入れてから、庭園を後にします。
彼女とは、お互いに宣戦布告をした。
アイザックの婚約者として、そして幼馴染として、絶対に負けるわけにはいかない!
「ルシル、待ってくれ」
城へと向かっていると、後ろからアイザックが追いかけてきました。
そのまま二人して並んで、会議室へと向かいます。
「いまからでも遅くない。お茶会に戻れ」
「なに、アイザック。私が会議に参加するのがそんなに嫌なの?」
「嫌というより、ルシルが心配なんだ」
「大丈夫、知識だけなら自信はあるから」
「違う、そうじゃないんだ。大臣がルシルを会議に誘うなんておかしい。絶対に何か裏がある」
そう言われてみると、たしかにおかしいかも。
それに大臣の娘のリップルさんと、さきほどあんなことがあったばかりだ。
その父親である大臣からも、なにか仕掛けられないという保証はない。
「ヴォーテックス大臣は第二王子派だ。俺を陥れるために、婚約者であるルシルを攻撃する口実を作るつもりかもしれない」
「それくらい望むところよ。返り討ちにしてやるんだから」
「その自信はいったい、どこから来るんだ……」
アイザックは頭が痛いと、ため息をつきます。
それからアイザックのお小言を聞き流しながら、城内の会議室へとたどり着きました。
「いいか、絶対に余計なことは言うな」
「余計なことってなによ? 私の実力はアイザックが一番よくわかっているでしょ?」
「だからこそだ。ルシルは優秀すぎるんだよ」
「優秀……んふふふ」
アイザックに褒められちゃった。
なんだか気分がいいわね。
「わかっているわよ。今日は大人しくしているから、安心して」
「どうだかな。だが、なにかあれば俺がすぐに割って入るから、気を楽にしてくれ」
「ありがとう。いつも通り、サポートは任せるわ」
アイザックが会議室のドアを開けてくれます。
お礼を言いながら、室内へと足を踏み入れる。
会議室内には、細長い大きなテーブルが置いてありました。
テーブルの両側に、数名の竜人族が座っている。
そして、そのうちの一人と目が合います。
「あ……」
「君は昨日の……」
ど、どういうこと!
会議室に、昨夜の銀髪のナンパ男がいるんだけど!
こんなところにいるなんて、こいついったい何者なの!?
62
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!
ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。
相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。
結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。
現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう…
その時に前世の記憶を取り戻すのだった…
「悪役令嬢の兄の婚約者って…」
なんとも微妙なポジション。
しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い
腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。
お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。
当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。
彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。
巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。 〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜
トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!?
婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。
気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。
美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。
けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。
食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉!
「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」
港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。
気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。
――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談)
*AIと一緒に書いています*
婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。
拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。
「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」
仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。
普段は地味子。でも本当は凄腕の聖女さん〜地味だから、という理由で聖女ギルドを追い出されてしまいました。私がいなくても大丈夫でしょうか?〜
神伊 咲児
ファンタジー
主人公、イルエマ・ジミィーナは16歳。
聖女ギルド【女神の光輝】に属している聖女だった。
イルエマは眼鏡をかけており、黒髪の冴えない見た目。
いわゆる地味子だ。
彼女の能力も地味だった。
使える魔法といえば、聖女なら誰でも使えるものばかり。回復と素材進化と解呪魔法の3つだけ。
唯一のユニークスキルは、ペンが無くても文字を書ける光魔字。
そんな能力も地味な彼女は、ギルド内では裏方作業の雑務をしていた。
ある日、ギルドマスターのキアーラより、地味だからという理由で解雇される。
しかし、彼女は目立たない実力者だった。
素材進化の魔法は独自で改良してパワーアップしており、通常の3倍の威力。
司祭でも見落とすような小さな呪いも見つけてしまう鋭い感覚。
難しい相談でも難なくこなす知識と教養。
全てにおいてハイクオリティ。最強の聖女だったのだ。
彼女は新しいギルドに参加して順風満帆。
彼女をクビにした聖女ギルドは落ちぶれていく。
地味な聖女が大活躍! 痛快ファンタジーストーリー。
全部で5万字。
カクヨムにも投稿しておりますが、アルファポリス用にタイトルも含めて改稿いたしました。
HOTランキング女性向け1位。
日間ファンタジーランキング1位。
日間完結ランキング1位。
応援してくれた、みなさんのおかげです。
ありがとうございます。とても嬉しいです!
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる