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第29話 竜木の調査
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会議室で私が倒れてから、一週間が経ちました。
ずっと寝室で安静に過ごしていた私は、お見舞いの来客対応という業務をすべて終わらせます。
そうしてやっと体調が万全に治ったところで、私は久しぶりに城の外へ出ました。
「こうやって街を歩くのは、何日ぶりかしら」
今日は丸一日、お休みをもらいました。
なので、竜茶について調査することにしたのだ。
城下町を歩きながら、隣を歩く赤髪の男性に声をかけます。
「ブラッド、今日は付き合ってくれてありがとうございます」
ドラッヘ商会の商会長であるブラッドは、アイザックの側近でもある。
私とは旧知の仲ということもあって、今日一日私のお供をしてくることになったです。
「いえいえ、ルシル様のお呼びとあらば、たとえ火の中、水の中、竜の巣の中だろうとも駆け付けますとも」
「その軽口は竜国に来ても変わらないのね。でも、なんだか安心しちゃった」
ブラッドとの付き合いは、アイザックの次に長い。
商会が実家に融資をしてくれたこともあって、心を許している数少ない友人の一人です。
「そういえばブラッドは私と同じ人族だけど、やっぱりジェネラス竜国生まれなの?」
「はい、私はジェネラス竜国の人族の夫婦から生まれました。とはいっても物心つく頃には国を出たので、育ちはルシル様と同じカレジ王国ですよ」
「だから王国の文化に詳しかったのね」
ブラッドからは、この竜国特有の竜人族贔屓を感じない。
私と同じ価値観を持っていることもあり、この国ではかなり頼もしい。
調子に乗るから、本人には絶対に言わないけどね。
「ですが私は、ルシル様と違って、私は純血の人族ではないのです。四分の一、竜人族の血が混ざっています」
「え、そうなの!?」
ブラッドの体には鱗がないから、まったく気が付かなかったわ!
「祖父が竜人族でした。ですので竜人族としてはクォーターなのです。これでも、普通の人よりはちょっとだけ体が頑丈なんですよ」
いくらクォーターとはいえ、ブラッドはこの国では人族として扱われるようです。
「ジェネラス竜国で人族というと、ハーフだったりクォーターだったりと混血が当たり前ですね。移民も多くないですが、ルシル様のような純血の人族は珍しいです」
「そうだったのね……ねえブラッド。今度あなたの血を採取してもいいかしら?」
「もしかして私を実験台かなにかにするつもりじゃないですか? ひどいですよ」
「あら、全然ひどくないわよ。だって私、アイザックも実験台にしたことあるから」
「え……それ、本当ですか!?」
「もちろん。裸にひん剥いて、全身くまなく観察させてもらったんだから!」
「それはそれは、お熱いことで……ルシル様は夜は激しいタイプなのですね」
たしかにアイザックのドラゴン姿の観察は、夜になるまで続いた。
だからといって私は、昼間も積極的に動くタイプの研究者なんだけどね。
「これはお世継ぎの顔を拝めるのもそう遠くはなさそうで、このブラッドの楽しみがひとつ増えました」
「お、お世継ぎ!?」
もしかして夜は激しいって、そういう意味?
それ、勘違いしているから!
アイザックとはまだ、そういうのは一度もないんだから!
「ち、違うわ! そういう意味じゃなくて……」
「はいはい、お二人の仲がよろしいことはこのブラッド、重々承知していますとも…………あ、目的地に着きましたよ」
「ちょっとブラッド、待ちなさい!」
私の弁解をまったく聞かないブラッドは、王都の外れにある畑へと案内してくれました。
「ここが竜木畑です。ジェネラス竜国ではこういった畑が、全国に広がっていますね」
「この木、竜都に来る道中で、竜車から見たわ。あれが竜木だったのね」
竜茶は竜木から作られるのだから、お茶のチャノキのようなのを想像していた。
だけど、実物はまったく違いました。
竜木はチャノキのような小さな木ではなく、立派な樹木でした。
高さは、私の身長の五倍以上ある。
葉っぱもたくさん茂っていて、なんだか見た目が竜に似ているかも。
「この葉から竜茶が作られるのね……触ってもいい?」
「アイザック様より許可をいただいているので、どうぞご自由に」
背伸びをしながら、竜木の葉を一枚取ります。
そして、葉っぱを顔の近くに持っていきます。
──ツンとした香りがする。
「竜茶を飲んだときと、同じ匂いがするわね」
「その甘い香りが、竜人族には大人気なんですよ。アイザック様も幼少の頃はお菓子よりも大好物だったとうかがっております」
「これが甘い……?」
いくら嗅いでも、まったく甘い香りがしない。
ツンとして、なんだか嫌な感じしかしませんでした。
「ねえブラッド。これをちょっと嗅いでみてくれない?」
「いいですとも……ううん、やはり少々甘い香りがしますね」
「それ本当!?」
「はい、ツンとした感じが少し強くてわかりにくですが、ほんのり甘い香りがします」
ツンとした感じは、ブラッドも私のようにしている。
だけど私よりも感じ方は少ないようで、しかも甘い香りがするみたい……。
「変ね。私には甘い香りはまったくしないわ」
鼻が詰まっているわけでもないし、嗅覚に自信がないわけではないのだけど。
念のため、サンプルとして、竜茶を数枚採取します。
もちろん他の竜木からも取ることも、忘れません。
「ちなみにブラッドは、竜茶をよく飲むの?」
「竜茶ですか? 一度も飲んだことないですね。なにせ成人したころには、私はジェネラス竜国ではなくカレジ王国にいましたから」
「成人してから? 成人するのと竜茶に、何か関係があるの?」
私の質問を受けて、「ああ、そうか」とブラッドは一人で勝手に納得します。
そして私に向かって、気になることを言いました。
「死んだ祖母から、こう教わっていたんです。人族は成人するまで、竜茶を飲んではいけないって」
ずっと寝室で安静に過ごしていた私は、お見舞いの来客対応という業務をすべて終わらせます。
そうしてやっと体調が万全に治ったところで、私は久しぶりに城の外へ出ました。
「こうやって街を歩くのは、何日ぶりかしら」
今日は丸一日、お休みをもらいました。
なので、竜茶について調査することにしたのだ。
城下町を歩きながら、隣を歩く赤髪の男性に声をかけます。
「ブラッド、今日は付き合ってくれてありがとうございます」
ドラッヘ商会の商会長であるブラッドは、アイザックの側近でもある。
私とは旧知の仲ということもあって、今日一日私のお供をしてくることになったです。
「いえいえ、ルシル様のお呼びとあらば、たとえ火の中、水の中、竜の巣の中だろうとも駆け付けますとも」
「その軽口は竜国に来ても変わらないのね。でも、なんだか安心しちゃった」
ブラッドとの付き合いは、アイザックの次に長い。
商会が実家に融資をしてくれたこともあって、心を許している数少ない友人の一人です。
「そういえばブラッドは私と同じ人族だけど、やっぱりジェネラス竜国生まれなの?」
「はい、私はジェネラス竜国の人族の夫婦から生まれました。とはいっても物心つく頃には国を出たので、育ちはルシル様と同じカレジ王国ですよ」
「だから王国の文化に詳しかったのね」
ブラッドからは、この竜国特有の竜人族贔屓を感じない。
私と同じ価値観を持っていることもあり、この国ではかなり頼もしい。
調子に乗るから、本人には絶対に言わないけどね。
「ですが私は、ルシル様と違って、私は純血の人族ではないのです。四分の一、竜人族の血が混ざっています」
「え、そうなの!?」
ブラッドの体には鱗がないから、まったく気が付かなかったわ!
「祖父が竜人族でした。ですので竜人族としてはクォーターなのです。これでも、普通の人よりはちょっとだけ体が頑丈なんですよ」
いくらクォーターとはいえ、ブラッドはこの国では人族として扱われるようです。
「ジェネラス竜国で人族というと、ハーフだったりクォーターだったりと混血が当たり前ですね。移民も多くないですが、ルシル様のような純血の人族は珍しいです」
「そうだったのね……ねえブラッド。今度あなたの血を採取してもいいかしら?」
「もしかして私を実験台かなにかにするつもりじゃないですか? ひどいですよ」
「あら、全然ひどくないわよ。だって私、アイザックも実験台にしたことあるから」
「え……それ、本当ですか!?」
「もちろん。裸にひん剥いて、全身くまなく観察させてもらったんだから!」
「それはそれは、お熱いことで……ルシル様は夜は激しいタイプなのですね」
たしかにアイザックのドラゴン姿の観察は、夜になるまで続いた。
だからといって私は、昼間も積極的に動くタイプの研究者なんだけどね。
「これはお世継ぎの顔を拝めるのもそう遠くはなさそうで、このブラッドの楽しみがひとつ増えました」
「お、お世継ぎ!?」
もしかして夜は激しいって、そういう意味?
それ、勘違いしているから!
アイザックとはまだ、そういうのは一度もないんだから!
「ち、違うわ! そういう意味じゃなくて……」
「はいはい、お二人の仲がよろしいことはこのブラッド、重々承知していますとも…………あ、目的地に着きましたよ」
「ちょっとブラッド、待ちなさい!」
私の弁解をまったく聞かないブラッドは、王都の外れにある畑へと案内してくれました。
「ここが竜木畑です。ジェネラス竜国ではこういった畑が、全国に広がっていますね」
「この木、竜都に来る道中で、竜車から見たわ。あれが竜木だったのね」
竜茶は竜木から作られるのだから、お茶のチャノキのようなのを想像していた。
だけど、実物はまったく違いました。
竜木はチャノキのような小さな木ではなく、立派な樹木でした。
高さは、私の身長の五倍以上ある。
葉っぱもたくさん茂っていて、なんだか見た目が竜に似ているかも。
「この葉から竜茶が作られるのね……触ってもいい?」
「アイザック様より許可をいただいているので、どうぞご自由に」
背伸びをしながら、竜木の葉を一枚取ります。
そして、葉っぱを顔の近くに持っていきます。
──ツンとした香りがする。
「竜茶を飲んだときと、同じ匂いがするわね」
「その甘い香りが、竜人族には大人気なんですよ。アイザック様も幼少の頃はお菓子よりも大好物だったとうかがっております」
「これが甘い……?」
いくら嗅いでも、まったく甘い香りがしない。
ツンとして、なんだか嫌な感じしかしませんでした。
「ねえブラッド。これをちょっと嗅いでみてくれない?」
「いいですとも……ううん、やはり少々甘い香りがしますね」
「それ本当!?」
「はい、ツンとした感じが少し強くてわかりにくですが、ほんのり甘い香りがします」
ツンとした感じは、ブラッドも私のようにしている。
だけど私よりも感じ方は少ないようで、しかも甘い香りがするみたい……。
「変ね。私には甘い香りはまったくしないわ」
鼻が詰まっているわけでもないし、嗅覚に自信がないわけではないのだけど。
念のため、サンプルとして、竜茶を数枚採取します。
もちろん他の竜木からも取ることも、忘れません。
「ちなみにブラッドは、竜茶をよく飲むの?」
「竜茶ですか? 一度も飲んだことないですね。なにせ成人したころには、私はジェネラス竜国ではなくカレジ王国にいましたから」
「成人してから? 成人するのと竜茶に、何か関係があるの?」
私の質問を受けて、「ああ、そうか」とブラッドは一人で勝手に納得します。
そして私に向かって、気になることを言いました。
「死んだ祖母から、こう教わっていたんです。人族は成人するまで、竜茶を飲んではいけないって」
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