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第45話 サンセット子爵の決断
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「ルシルお嬢様!」
サンセット子爵邸に到着すると、屋敷の女主人が出迎えてくれました。
侍女であるセシリアです。
セシリアと抱き合いながら、久しぶりの再会を喜び合います。
「セシリア、会いたかったわ!」
「お嬢様、わたしもです! もう二度と会えないと思っていたのに……」
セシリアと最後に会ったのは、独房の中でした。
処刑されることが決まった私のことを、セシリアは助けようとしてくれたんだよね。
結局セシリアたちは私を救うことはできなかったけど、気持ちだけでも嬉しかった。
狭くて冷たいあの独房へ、セシリアが危険を冒してまでもわざわざ会いに来てくれたことは、生涯忘れません。
「せっかくお嬢様が会いに来てくれたところ申し訳ないのですが、いまカレジ王国は大変なことになっていて……」
「知っているわ。私はセシリアたちを助けに来たんだから!」
「助けに? でも、いったいどうやって……」
困惑するセシリアの肩に、手を置く人物が現れます。
セシリアの夫である、サンセット子爵です。
「ルシル様、またお目にかかることができて光栄です」
「サンセット子爵、お久しぶりです。積もる話もありますが、いまは時間がありません。私たちは、皆さんを助けにきました」
「助けるとおっしゃってくれるのはありがたいのですが、お気持ちだけで十分です。サンセット子爵領は、もう……」
空から見たので、よくわかる。
このサンセット子爵領が、そう長くはもたないことを。
川は干上がり、大地は割れ、畑は荒地に戻り、食料にしてしまったのか家畜の姿もない。
街は悲壮感に包まれています。
井戸も枯れてしまったのか、さきほどから水を求める民たちが屋敷に訪れている。
だというのに、屋敷にも備蓄の食料や水はほとんど残っていない。
せめてどこかへ逃げたいのに、逃げる場所がない。
近隣の街や村も、すべて同じような状況になっているから。
民たちは嘆き、苦しみ、そして絶望している。
「このままここにいてもダメだわ。早く逃げないと!」
「逃げるといっても、どうやって? 運良く国外へ出られたとしても、いったいどこに行けばいいのですか?」
サンセット子爵は、もうどうしたら良いかわからないといった様子です。
顔を下げるサンセット子爵に声を掛けようとしたら、アイザックがアイコンタクトで待ったをかけてきました。
あとは俺の役目だというように、アイザックが私の前に出ます。
「サンセット子爵。俺の名前はアイザック・ジェネラス。ジェネラス竜国の王だ」
「ジェネラス竜国の王!? ルシル様が嫁ぐことになったという、あの……!」
「我々には、カレジ王国の民を救う覚悟ができている。国外へ脱出するための誘導だけでなく、その後の身の廻りの世話もするつもりだ」
「……それは、難民として、支援をしてくれるということでしょうか?」
「ジェネラス竜国では、カレジ王国の民を移民として受け入れる準備ができている。土地と住居を与え、望めばジェネラス竜国の民として生活してもらって構わない」
「それは、本当ですか!?」
「本当だ。すでに本国へ使者を送っている」
その使者というのは、第二王子であるイライアスのことです。
竜の姿へと戻ったイライアスであれば、今日中にジェネラス竜国へと帰ることができる。
そこでアイザックからの伝言と指示書を、王城へいる大臣たちへと渡す予定になっています。
「カレジ王国は、我がジェネラス竜国の旧友だ。助けることに依存はない」
アイザックは本気で、カレジ王国の民を救うつもりです。
カレジ王国のすべての民を、ジェネラス竜国に移民させてでも、民を守るつもりだ。
「国を捨てるのは辛いだろう。だが、決断してほしい」
「しかし、私は国王陛下からサンセット子爵領を任された貴族で……」
その瞬間でした。
地面が大きく揺れ、爆音が轟きます。
近くの山が、噴火したのだ。
窓の外には、もくもくと煙を上げる火山が見えました。
どうやら溶岩が流れているようで、噴石も空を舞っている。
いずれ火山灰がこの地を覆うことでしょう。
それだけで済めば、まだなんとなる。
だけどこの災害は国を滅ぼすまで続くことを、私たちは知っていました。
「そ、そんな……我が領地は、もうダメだ……」
サンセット子爵は貴族です。
貴族は自分の土地を、最も大事にする。
だから決めかねていたのでしょう。
だけど、サンセット子爵はセシリアが選んだ相手。
愚かな人ではなく、優秀な人であることを私は知っている。
そして、それは私の侍女をしていたセシリアも一緒。
セシリアがサンセット子爵の手を握りながら、「旦那様……」と優しく微笑みかけます。
愛する妻から勇気をもらったサンセット子爵は、まるで人が変わったかのように目力が強くなります。
「大切なものを間違えるところだった……領地は失うことになるが、命には変えられないな」
「旦那様、わたしはどこまでもお供します」
「ああ、セシリア。愛している」
セシリアとサンセット子爵は、私がきっかけで結婚しました。
しかも、貴族では珍しい恋愛結婚です。
だからこの二人が幸せそうにしてるだけで、私は嬉しい。
「みなに命令する。我がサンセット子爵領は、国外に避難する。そしてジェネラス竜国王の助力を得て、新天地を目指すぞ!」
サンセット子爵の号令に応じ、屋敷にいる従者や騎士たちが「おー!」と雄たけびを上げました。
みんな、このままここにいることが最善ではないことが、よくわかっていたのだ。
こうしてサンセット子爵領の避難が開始されました。
街へ向かっていた溶岩流は、竜の姿へと戻ったアイザックが防ぎ留めます。
これで逃げる時間はできた。
そのことだけでも、サンセット子爵領の民はアイザックを称え始めます。
あとは無事に、みんなを守りながら避難させるだけ。
滅びゆく故郷を、ただ見ていることは私にはできない。
だから少しでも多くの人を救いたい。
待っていて、みんな。
私たちが、絶対に救ってみせるから!
サンセット子爵邸に到着すると、屋敷の女主人が出迎えてくれました。
侍女であるセシリアです。
セシリアと抱き合いながら、久しぶりの再会を喜び合います。
「セシリア、会いたかったわ!」
「お嬢様、わたしもです! もう二度と会えないと思っていたのに……」
セシリアと最後に会ったのは、独房の中でした。
処刑されることが決まった私のことを、セシリアは助けようとしてくれたんだよね。
結局セシリアたちは私を救うことはできなかったけど、気持ちだけでも嬉しかった。
狭くて冷たいあの独房へ、セシリアが危険を冒してまでもわざわざ会いに来てくれたことは、生涯忘れません。
「せっかくお嬢様が会いに来てくれたところ申し訳ないのですが、いまカレジ王国は大変なことになっていて……」
「知っているわ。私はセシリアたちを助けに来たんだから!」
「助けに? でも、いったいどうやって……」
困惑するセシリアの肩に、手を置く人物が現れます。
セシリアの夫である、サンセット子爵です。
「ルシル様、またお目にかかることができて光栄です」
「サンセット子爵、お久しぶりです。積もる話もありますが、いまは時間がありません。私たちは、皆さんを助けにきました」
「助けるとおっしゃってくれるのはありがたいのですが、お気持ちだけで十分です。サンセット子爵領は、もう……」
空から見たので、よくわかる。
このサンセット子爵領が、そう長くはもたないことを。
川は干上がり、大地は割れ、畑は荒地に戻り、食料にしてしまったのか家畜の姿もない。
街は悲壮感に包まれています。
井戸も枯れてしまったのか、さきほどから水を求める民たちが屋敷に訪れている。
だというのに、屋敷にも備蓄の食料や水はほとんど残っていない。
せめてどこかへ逃げたいのに、逃げる場所がない。
近隣の街や村も、すべて同じような状況になっているから。
民たちは嘆き、苦しみ、そして絶望している。
「このままここにいてもダメだわ。早く逃げないと!」
「逃げるといっても、どうやって? 運良く国外へ出られたとしても、いったいどこに行けばいいのですか?」
サンセット子爵は、もうどうしたら良いかわからないといった様子です。
顔を下げるサンセット子爵に声を掛けようとしたら、アイザックがアイコンタクトで待ったをかけてきました。
あとは俺の役目だというように、アイザックが私の前に出ます。
「サンセット子爵。俺の名前はアイザック・ジェネラス。ジェネラス竜国の王だ」
「ジェネラス竜国の王!? ルシル様が嫁ぐことになったという、あの……!」
「我々には、カレジ王国の民を救う覚悟ができている。国外へ脱出するための誘導だけでなく、その後の身の廻りの世話もするつもりだ」
「……それは、難民として、支援をしてくれるということでしょうか?」
「ジェネラス竜国では、カレジ王国の民を移民として受け入れる準備ができている。土地と住居を与え、望めばジェネラス竜国の民として生活してもらって構わない」
「それは、本当ですか!?」
「本当だ。すでに本国へ使者を送っている」
その使者というのは、第二王子であるイライアスのことです。
竜の姿へと戻ったイライアスであれば、今日中にジェネラス竜国へと帰ることができる。
そこでアイザックからの伝言と指示書を、王城へいる大臣たちへと渡す予定になっています。
「カレジ王国は、我がジェネラス竜国の旧友だ。助けることに依存はない」
アイザックは本気で、カレジ王国の民を救うつもりです。
カレジ王国のすべての民を、ジェネラス竜国に移民させてでも、民を守るつもりだ。
「国を捨てるのは辛いだろう。だが、決断してほしい」
「しかし、私は国王陛下からサンセット子爵領を任された貴族で……」
その瞬間でした。
地面が大きく揺れ、爆音が轟きます。
近くの山が、噴火したのだ。
窓の外には、もくもくと煙を上げる火山が見えました。
どうやら溶岩が流れているようで、噴石も空を舞っている。
いずれ火山灰がこの地を覆うことでしょう。
それだけで済めば、まだなんとなる。
だけどこの災害は国を滅ぼすまで続くことを、私たちは知っていました。
「そ、そんな……我が領地は、もうダメだ……」
サンセット子爵は貴族です。
貴族は自分の土地を、最も大事にする。
だから決めかねていたのでしょう。
だけど、サンセット子爵はセシリアが選んだ相手。
愚かな人ではなく、優秀な人であることを私は知っている。
そして、それは私の侍女をしていたセシリアも一緒。
セシリアがサンセット子爵の手を握りながら、「旦那様……」と優しく微笑みかけます。
愛する妻から勇気をもらったサンセット子爵は、まるで人が変わったかのように目力が強くなります。
「大切なものを間違えるところだった……領地は失うことになるが、命には変えられないな」
「旦那様、わたしはどこまでもお供します」
「ああ、セシリア。愛している」
セシリアとサンセット子爵は、私がきっかけで結婚しました。
しかも、貴族では珍しい恋愛結婚です。
だからこの二人が幸せそうにしてるだけで、私は嬉しい。
「みなに命令する。我がサンセット子爵領は、国外に避難する。そしてジェネラス竜国王の助力を得て、新天地を目指すぞ!」
サンセット子爵の号令に応じ、屋敷にいる従者や騎士たちが「おー!」と雄たけびを上げました。
みんな、このままここにいることが最善ではないことが、よくわかっていたのだ。
こうしてサンセット子爵領の避難が開始されました。
街へ向かっていた溶岩流は、竜の姿へと戻ったアイザックが防ぎ留めます。
これで逃げる時間はできた。
そのことだけでも、サンセット子爵領の民はアイザックを称え始めます。
あとは無事に、みんなを守りながら避難させるだけ。
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待っていて、みんな。
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