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第三章 不穏な侍女生活
少しづつ生じる綻び
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(殺したのと同然? 誰を? 話の流れからすると私?)
たぶん生まれ変わってから過去一番、いや、今後も入れて人生の中で一番驚いたと思う。
「陛下の珠玉」という発言についても色々物申したいことがあるが、先ずは……。
(私、フローラと会ってないんだけど)
牢屋に収監された後は一度も会ってないし、私が無実の罪で囚われていたのは全て陛下の策略だ。フローラが策略に噛む位置はない。
(皇女殿下が亡くなっていた場所も皇宮で、周りに神官もいなかった。何ら神殿が関係する場所はないのに)
考えることが多すぎて頭が痛くなってくる。
(陛下の思惑を知っていて、手助けをしていたということ? だとしてもあのお方に助けなんていらないはず)
皇宮は陛下の意のままに動く。陛下が「黒」と言えば、咲いている白薔薇も「黒薔薇」となるし、彼の一言で使用人の首は飛ぶ。
そんな場所でわざわざ聖女を使うだろうか。外部の者を入れるとなるとリスクがつきものであるし、必要ではない以上その選択をわざわざ取りに行く必要は全くもってない。
「確認したいのですが……イザベル・ランドールのことを策略にはめたということですか」
「さあどうでしょうか」
曖昧な返答。昔は考えていること全て表情に出ていて丸わかりだったのに、今では腹芸が上手くなっている。
(フローラは〝同然〟と言った。直接手を下しているわけではない。かと言って手を貸した可能性はまだ残っているけれど……)
私にはどうしても彼女がそんなことをしたとは思えないのだ。
(それに陛下に脅された可能性もある)
私はリヒャルト皇帝と対面した時のことを思い返す。あの時は本当に背筋が凍って、有無を言わさない気迫に圧倒された。あの方の前では、自分は如何に無力なのかを思い知らされた。
であれば私と同じ状況にフローラも置かれていたのかもしれない。例えば、手を貸さなければお前を殺すと直接脅されたかもしれないし、神殿に対して不利な政策を採ると告げ、神官や信者達を人質に取ったのかもしれない。
そうなると私はフローラのことを責められないと思ってしまう。まあ、違う理由も全然考えられるので決め付けられないけれど。
「あの──」
「──テレーゼさんが詳しく聞きたいと思うのも理解できます。しかしながらこれ以上はお答えできかねます。知りたければ陛下にお聞きください。では」
一方的に話を切り上げ、フローラは湖を立ち去る。
私は追いかけることもできたけれど、彼女の最後の発言を整理し、自分の中に落とし込むことを優先して、結局追いかけることはしなかった。
◇◇◇
次の週、天気は快晴、春の陽気から夏のからりとした日差しへの移行が空気で感じ取れるような日。
予定されていた夏告げの祭祀が執り行われようとしていた。
伯爵家の私は湖畔に設置されている会場の中でも中程のところに席が用意されていて、そこでエディトの祭祀を今か今かと待ち侘びていた。
季節ごとに行われるこの祭祀は、三大公爵家の直系の血を継いでいる女性が担当し、例外の春は聖女フローラ、夏はアエステッタ公爵家のエディト様、秋はメインウッド公爵家、冬はスタイナー公爵家が担当している。ちなみに冬は私の同級生だったヨハネス様の妹様が今代の代行者だ。
エディトが登場する前に大司教様、次に聖女フローラが布越しに言葉を述べる。大司教様は私の知っている優しいお爺様から若い神官の方に代替わりをしていて、あまりよく知らない。
二人のお言葉が終わるといよいよエディトの登場だ。
今回は短時間ではあるけれど私が祝詞の読み方を指導したのもあって、これで彼女の祭祀が以前と変わらなかったら自分の責任だとガチガチに緊張してきた。
(発音以外に治すところはなかったもの。エディトもきっとあの後もたくさん練習しているだろうし、努力は裏切らない。彼女ならできるわ)
とはいえ、無意識に両手を絡ませて祈るような仕草をしてしまう。
そうこうしているうちに天幕の中から装束に身を包み、儀式用の花冠を携えたエディトが一人で姿を現した。
彼女は堂々とした足取りで湖に設置された桟橋へ歩いていく。
桟橋の先頭で止まり、湖向かって深く頭を下げたのち、エディトは祝詞を読み上げる。
少し離れた場所に座っていた私にははっきりとは見えなかったけれど、粛々と儀式は進行していって最後の一文を読み上げるところまでいく。
「新たな息吹が宿る春に別れを告げ、新しい夏へいざ変わらん。女神よ我らの声を聞きたまえ」
玲瓏な心地よい幼子の声が響き渡り、エディトの手を離れた花冠が湖に沈んでいった途端。
花冠が落ちた箇所から円形に波紋が広がり、鮮やかな色の変化が起こる。
しっとりとした風は一瞬にしてからりと乾いた風となり、辺りを通っていって出席していた女性たちのスカートの裾をふわりと持ち上げる。
周りに生えている植物はぐんぐんと背をのばし、木々は青々とした葉を増やす。
「完璧だわ」
これ以上ないほど完成度が高いのを遠くから成功を祈っていた私でも瞬時に悟った。許されるのであれば今すぐエディトのところに駆け寄ってその小さな体をぎゅっと抱き締めたい。
しかしながらこのような人の目のある公の場で流石に公爵家のご令嬢に声はかけられない。
なので心の中でめいいっぱいエディトのことを褒めちぎった。
◇◇◇
無事に儀式を遂行でき、ほっとしていたエディトは関係者席となっている天幕の中で待機していたエリーゼにぎゅうっと抱きしめられた。
「エディ! 貴女ならできると思っていたわ。よく頑張ったわね」
綺麗に結われた髪がぐしゃっとなるくらいまで頭を撫でられ、エディトはとても嬉しくなる。
「発音が前よりも随分と良くなっていたわ。もしかして聖女様に教えて頂いたのかしら」
だとしたらあの発音を知っているのも腑に落ちる。そう思い、エリーゼが問うと、満面の笑みを浮かべているエディトはふるふる首を横に振った。
「ううん違う人」
「え?」
「お姉さんに教えてもらったの」
「お姉さん……? 誰のこと?」
「ええっとね、テレーゼお姉様よ。シルフィーア語がとってもお上手だったわ」
初めて聞く名前にエリーゼは虚を突かれた。
(聖女様であれば神殿の中でも女神に愛され、神力に長けたお方。似ていてもおかしくないと思ったけれど……エディトの発音は──あの子にそっくりだった)
──エリーゼが失ってしまったかつての友人と。
「…………テレーゼ様というお方の家名はお聞きした?」
「んっとね、デューリング伯爵家よ」
(……伯爵家の娘ではシルフィーア語に触れる機会なんてないはず。ただ、デューリング家のご令嬢が生まれたのは処刑後だわ)
顔を合わせたことはないけれど、仮にも社交界のトップに立つ公爵家としてエリーゼは貴族の家系図は大雑把ではあるものの把握している。
「まさか、ね」
(流石にありえないわ)
娘の大事な日ということで自身もここ最近眠れなかったのがきているのかもしれない。
テレーゼという娘がイザベルの生まれ変わりだったりして……と突拍子もないことを考えてしまった自分はきっと疲れているのだろう。そうに違いないとエリーゼは頭から今考えたことを追いやった。
たぶん生まれ変わってから過去一番、いや、今後も入れて人生の中で一番驚いたと思う。
「陛下の珠玉」という発言についても色々物申したいことがあるが、先ずは……。
(私、フローラと会ってないんだけど)
牢屋に収監された後は一度も会ってないし、私が無実の罪で囚われていたのは全て陛下の策略だ。フローラが策略に噛む位置はない。
(皇女殿下が亡くなっていた場所も皇宮で、周りに神官もいなかった。何ら神殿が関係する場所はないのに)
考えることが多すぎて頭が痛くなってくる。
(陛下の思惑を知っていて、手助けをしていたということ? だとしてもあのお方に助けなんていらないはず)
皇宮は陛下の意のままに動く。陛下が「黒」と言えば、咲いている白薔薇も「黒薔薇」となるし、彼の一言で使用人の首は飛ぶ。
そんな場所でわざわざ聖女を使うだろうか。外部の者を入れるとなるとリスクがつきものであるし、必要ではない以上その選択をわざわざ取りに行く必要は全くもってない。
「確認したいのですが……イザベル・ランドールのことを策略にはめたということですか」
「さあどうでしょうか」
曖昧な返答。昔は考えていること全て表情に出ていて丸わかりだったのに、今では腹芸が上手くなっている。
(フローラは〝同然〟と言った。直接手を下しているわけではない。かと言って手を貸した可能性はまだ残っているけれど……)
私にはどうしても彼女がそんなことをしたとは思えないのだ。
(それに陛下に脅された可能性もある)
私はリヒャルト皇帝と対面した時のことを思い返す。あの時は本当に背筋が凍って、有無を言わさない気迫に圧倒された。あの方の前では、自分は如何に無力なのかを思い知らされた。
であれば私と同じ状況にフローラも置かれていたのかもしれない。例えば、手を貸さなければお前を殺すと直接脅されたかもしれないし、神殿に対して不利な政策を採ると告げ、神官や信者達を人質に取ったのかもしれない。
そうなると私はフローラのことを責められないと思ってしまう。まあ、違う理由も全然考えられるので決め付けられないけれど。
「あの──」
「──テレーゼさんが詳しく聞きたいと思うのも理解できます。しかしながらこれ以上はお答えできかねます。知りたければ陛下にお聞きください。では」
一方的に話を切り上げ、フローラは湖を立ち去る。
私は追いかけることもできたけれど、彼女の最後の発言を整理し、自分の中に落とし込むことを優先して、結局追いかけることはしなかった。
◇◇◇
次の週、天気は快晴、春の陽気から夏のからりとした日差しへの移行が空気で感じ取れるような日。
予定されていた夏告げの祭祀が執り行われようとしていた。
伯爵家の私は湖畔に設置されている会場の中でも中程のところに席が用意されていて、そこでエディトの祭祀を今か今かと待ち侘びていた。
季節ごとに行われるこの祭祀は、三大公爵家の直系の血を継いでいる女性が担当し、例外の春は聖女フローラ、夏はアエステッタ公爵家のエディト様、秋はメインウッド公爵家、冬はスタイナー公爵家が担当している。ちなみに冬は私の同級生だったヨハネス様の妹様が今代の代行者だ。
エディトが登場する前に大司教様、次に聖女フローラが布越しに言葉を述べる。大司教様は私の知っている優しいお爺様から若い神官の方に代替わりをしていて、あまりよく知らない。
二人のお言葉が終わるといよいよエディトの登場だ。
今回は短時間ではあるけれど私が祝詞の読み方を指導したのもあって、これで彼女の祭祀が以前と変わらなかったら自分の責任だとガチガチに緊張してきた。
(発音以外に治すところはなかったもの。エディトもきっとあの後もたくさん練習しているだろうし、努力は裏切らない。彼女ならできるわ)
とはいえ、無意識に両手を絡ませて祈るような仕草をしてしまう。
そうこうしているうちに天幕の中から装束に身を包み、儀式用の花冠を携えたエディトが一人で姿を現した。
彼女は堂々とした足取りで湖に設置された桟橋へ歩いていく。
桟橋の先頭で止まり、湖向かって深く頭を下げたのち、エディトは祝詞を読み上げる。
少し離れた場所に座っていた私にははっきりとは見えなかったけれど、粛々と儀式は進行していって最後の一文を読み上げるところまでいく。
「新たな息吹が宿る春に別れを告げ、新しい夏へいざ変わらん。女神よ我らの声を聞きたまえ」
玲瓏な心地よい幼子の声が響き渡り、エディトの手を離れた花冠が湖に沈んでいった途端。
花冠が落ちた箇所から円形に波紋が広がり、鮮やかな色の変化が起こる。
しっとりとした風は一瞬にしてからりと乾いた風となり、辺りを通っていって出席していた女性たちのスカートの裾をふわりと持ち上げる。
周りに生えている植物はぐんぐんと背をのばし、木々は青々とした葉を増やす。
「完璧だわ」
これ以上ないほど完成度が高いのを遠くから成功を祈っていた私でも瞬時に悟った。許されるのであれば今すぐエディトのところに駆け寄ってその小さな体をぎゅっと抱き締めたい。
しかしながらこのような人の目のある公の場で流石に公爵家のご令嬢に声はかけられない。
なので心の中でめいいっぱいエディトのことを褒めちぎった。
◇◇◇
無事に儀式を遂行でき、ほっとしていたエディトは関係者席となっている天幕の中で待機していたエリーゼにぎゅうっと抱きしめられた。
「エディ! 貴女ならできると思っていたわ。よく頑張ったわね」
綺麗に結われた髪がぐしゃっとなるくらいまで頭を撫でられ、エディトはとても嬉しくなる。
「発音が前よりも随分と良くなっていたわ。もしかして聖女様に教えて頂いたのかしら」
だとしたらあの発音を知っているのも腑に落ちる。そう思い、エリーゼが問うと、満面の笑みを浮かべているエディトはふるふる首を横に振った。
「ううん違う人」
「え?」
「お姉さんに教えてもらったの」
「お姉さん……? 誰のこと?」
「ええっとね、テレーゼお姉様よ。シルフィーア語がとってもお上手だったわ」
初めて聞く名前にエリーゼは虚を突かれた。
(聖女様であれば神殿の中でも女神に愛され、神力に長けたお方。似ていてもおかしくないと思ったけれど……エディトの発音は──あの子にそっくりだった)
──エリーゼが失ってしまったかつての友人と。
「…………テレーゼ様というお方の家名はお聞きした?」
「んっとね、デューリング伯爵家よ」
(……伯爵家の娘ではシルフィーア語に触れる機会なんてないはず。ただ、デューリング家のご令嬢が生まれたのは処刑後だわ)
顔を合わせたことはないけれど、仮にも社交界のトップに立つ公爵家としてエリーゼは貴族の家系図は大雑把ではあるものの把握している。
「まさか、ね」
(流石にありえないわ)
娘の大事な日ということで自身もここ最近眠れなかったのがきているのかもしれない。
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※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。
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