迷子の僕の異世界生活

クローナ

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報告と警告

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同日、フランディール王城内第三会議室では冬夜の披露目式について細部の取り決めを行うため冬夜の庇護者である第一皇子アルフレッド、王族や要人警護責任者の王国近衛騎士長ユリウス、城内の防犯の魔道具を管理する王都魔法士ルシウス、専属護衛騎士クラウス、そして宰相首席補佐官が同席していた。

「治癒魔法士様の滞在頂くお部屋のご用意はすでに完了していると管理部から連絡が来ております。それとお披露目式のご衣装の手配も完了しております。国王陛下とは前日に謁見の時間を設けましたが翌日のお支度もございますので治癒魔法士様には謁見後そのままそちらにお泊り頂きたいのですが。」

「わかった。そう申し伝えて置こう。そうだクラウス……どうかしたか?」

第一皇子はクラウスが僅かに顔をしかめたのを見逃さなかった。その声に手元の書類に目を向けていた面々も顔を上げ、王国魔法士ルシウスがその理由に気付き声を掛けた。

「クラウス、ピアスがどうかしたかい?」

「いや、なんだか凄く冷たくて……」

左耳のピアスがまるで氷の様に冷たいのだ。冬夜の身に異変が起きたなら熱を帯びる。それとは違う反応に戸惑いが隠せない

「そうか、クラウス小鳥ちゃんの位置を探せるか?」

その要求に胸がざわりとするがルシウスの冷静さを保った声に従い、前にしたようにピアスに触れ目を閉じて念じると脳裏に王城から冬夜の元へ向かう道程が見えてくる。

「ここは‥…教会?教会の随分奥まった部屋…」

「外出の予定が?」

「いえ、連絡は来ておりません。」

「クラウス、すぐに向かうんだ。そこにトウヤ君がブレスレットを外した状態でいるはずだ。急ぎなさい。腕から外れた状態ではあれはただの石ころだ。」

その声にクラウスは会議室を飛び出した。

「教会でブレスレットを外す必要がどこにある?」

「わかりません。兄さん不審人物はいないのでは?」

「飾り紐に関しての不審なものは上がっていない。」

「あの……」

睨み合う三人に口を挟んだのは宰相首席補佐官だった。

「トウヤ殿とは治癒魔法士様の事ですよね。なにかあったのですか?護衛騎士とは言え昇格されたばかりのクラウス殿お一人でよろしいのですか?」

ユリウスが敢えて難易度を上げた昇格試験をあっさり切り抜けたクラウスならば実力は充分。強化魔法を使えば四半刻足らずで到着するだろうが確かに近衛騎士の持つ権限を全て把握出来ているわけではない。

「ユリウス、お前も行ってこい。何かあるようなら好きなようにしろ、俺が責任を取る。」

「御意。」

短い返事が聞こえたかと思った時宰相首席補佐官の目にはもうユリウスの姿は見当たらなかった。




──同時刻より少し前──

教会の建物の中庭には天井までをガラスで囲まれた大きな薬草園がある。希少な薬草も栽培されているため部外者からは見ることが出来ないこの場所の隣に併設された『薬剤課』ではカイとリトナが大きな麻袋に無造作にいれられてしまった薬草の選別に追われていた。

「あ〰〰〰いつになったら終わるんだよ薬草の選別〰〰〰〰。」

「ルーデンス先生の合格が出るまでだ。」

「もうっ、これが終わらないと『桜の庭』に行けないとか酷いよ。」

昼休憩も終わったばかりだと云うのにカイは机に顎を乗せてぼやいている。でも誰も注意しないのはこの作業に就いてすでに4日になるからだ。
あの日、密かに?恋心をいだいていた人に恋が始まる前に失恋した。見習いで無くなった時告白しようと決めていたのにすでに朝帰りをするような相手がいたなんて。頬を染めたトウヤの顔が可愛かったからこそ事実であることの証明に他ならなかった。そしてあまりのショックに大事な大事な最終試験を落とした。

「でも良かったじゃないかこれで単位貰えることになったんだから。」

トウヤが『桜の庭』に来て以来欠かすことのなかった食事の配達をリトナに任せ教官室で試験に身が入らなかった理由を必死に訴えているところへ救世主が現れた。ルーデンスだ。
カイは素晴らしい診断力があるからもう1年も見習いにしておくのは勿体無い、追加の課題を与えることで合格にして欲しいと言ってくれたのだ。
それがまさか早朝の水やりから薬草園の温度管理、ギルドから送られてくる薬草の選別に至るまで1日中『薬剤課』にこもる羽目になるとは思っていなかった。

「よ、『不治の病』少しは良くなったか?」

上司のお使いで薬剤科に来る同僚が来るたび声を掛けていく。普段から誰にでも笑顔で挨拶をし人懐こくて素直な性格のカイは教会で皆に慕われている。なので試験直後の教官室への突撃はすぐに周囲に知れ渡っていた。もちろんその原因が薬の効かない厄介な『恋の病』だということも。

「なんだよみんなして。そりゃトウヤさんに恋人がいたのはショックだったけどさぁどうせ高嶺の花なんだからもう眺めてるだけで充分なんだよ。あ~あ、トウヤさんの淹れてくれるお茶を飲まないとなんだか調子が上がらないんだよなあ。」

「お前は自業自得だけど俺はただの巻き添えだぜ?あ~あ、俺だけでも解放してくれないかな?」

みんなにからかわれすっかりやる気をそがれ机に伏したカイの髪についた薬草を取ってやりながらもリトナは確実に目の前の薬草を選別していく。

ギルドから送られてくる薬草は乾燥されているので見分けが難しい。その上本職の薬師達は普段から人手不足で手の回らなく放置されがちの仕事をしてくれる都合の良さにこれ幸いと倉庫から未選別の薬草を大量に持ち出した。1人じゃ無理だと確信してすぐにリトナを引きずり込んだ。

「なぁなぁお前の『不治の病』の相手、多分今教会きてるぜ?」

次に声を掛けてきたのはカイたちが『桜の庭』に行けなくなって噂の相手を見るために1度だけ食事を運んだ見習い治癒士だった。

「え!ホントに!?」

驚いて立ち上がると同時に座っていた椅子が大きな音を立てて倒れみんなに笑われた。

「そんな事あるわけ無いだろ、からかうなよもう!」

「え~?じゃあ見間違いか?ルーデンス先生と研究棟の方へ歩いて行くの見たぜ。あれだろ?黒髪で随分小柄な女の子。」

その男は自分の胸の辺りに手をやって身長を表したが流石にそこまで小さくないのは毎日見てきた自分が一番良く知っている。

「トウヤさんは女の子じゃありません~そんなのお前の見間違いですぅ。だいたい検診でもないのにトウヤさんがルーデンス先生に会う理由なんてないだろっての。」

いじられやすい事は本人も自覚しているが何もありもしないことををでっち上げてまでからかう必要があるのかとカイは思う。
むくれながらもう誰も相手にするまいと気持ちを切り替え手元の薬草に目をやった所に再び声を掛けられた。



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