マチ恋 ―君に捧げるLove song― 一夜の相手はスーパースター。誰にも言えない秘密の恋。【完結】

remo

文字の大きさ
9 / 88
1章. ゆい

machi.8

しおりを挟む
次に目を覚ましたのは、隣で身じろぎする翔の気配を感じたから。

「…翔?」

翔がすぐそばでじっと見ている。
いつの間にか、点滴は外されていた。

「翔。具合、悪くない? 大丈夫だよ。ここは病院だからね」

翔はきれいな瞳いっぱいに私を映して、

「わかった」

こっくりうなずく。
翔は成長するにつれて、悠馬に似てくる。
ぱっちりした大きな瞳。柔らかい栗色の髪の毛。

…大好き。

翔の頭をなでると、翔はふんわり微笑んだ。

「起きたのか」

カーテンが開き、結城先生が顔を出す。

「あ。はい」

起き上がると、結城先生は私の頭に手を乗せて、

「急がなくていい」

「…はい」

「翔はだいぶ回復したし、心配はないと思うが、できるだけ今日はおとなしく過ごしたほうがいいな」

先生が私の頭をなでるから、自分が小さな子どもになったようなおかしな気分になる。

「あ…、の。先生。…私、大丈夫なら今日、仕事に行きたいんですけど、翔は…」

伺うように見上げると、結城先生は虚をつかれたようで、

「…翔は保育園か。昨日の今日じゃ、あまりお勧めできないが…」

ちょっと考えるそぶりを見せてから言った。

「分かった。俺が見ている」

「…は?」

驚きのあまり、ぶしつけな声を出してしまう。

「俺は医師だ。保育士よりも今の翔にはいいだろう」

や。
問題はそこではなく…

「お前の職場はここだよな。俺の勤務は8時までだから、一度家に帰るのは無理だな。今日はそのまま行け」

結城先生はどんどん話を進めていく。

「え、いや、先生。そんな訳には…」

やっと口をはさむと

「お前は仕事を優先せざるをえない。だったら、翔のために保育園はあきらめろ」

有無を言わせず、切り捨てられた。

「で、でも。先生は当直明けだし、…それに、そんな迷惑は…」

「ゆい」

結城先生がやや屈みこんで、私と目線を合わせる。
吸い込まれそうな、強い瞳。

「翔のために、使えるものは何でも使え」

そ、そんなの、許されるのかな?
だって、…そんなの。

落ち着きのない私の様子に何を思ったのか、

「心配しなくても、ちゃんと院内にいる。…携帯寄こせ」

言って先生は手をだし、私から携帯電話を受け取るとさっさと操作して、

「何かあったら、連絡しろ。俺もする」

ぽいっと電話を渡す。

「え…、でも……」

話が急展開過ぎてついていけず、携帯を手にしたまま、翔と先生を交互に見る。

「翔」

結城先生は、私の頭に乗せていた手を翔に移すと、

「俺は、結城 稜ゆうき りょうだ。今日は俺と一緒だ」

翔の眼を見てゆっくりと言い聞かせた。
翔は黙ったまま、頷く。

「翔はいい子だな。おいで」

結城先生は翔を抱き上げると、私を一瞥し、

「ゆいも、いい子で聞き分けたら抱いてやるぞ」

にやりと妙な色気をにじませる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。

各務課長が「君の時間を十分ください」と言った結果

汐埼ゆたか
恋愛
実花子はカフェで恋人と待ち合わせしているが、彼はなかなか来ない。 あと十分でカフェを出ようとしたところで偶然上司の各務と会う。 各務から出し抜けに「君の時間を十分ください」と言われ、反射的に「はい」と返事をしたら、なぜか恋人役をすることになり――。 *☼*――――――――――*☼* 佐伯 実花子(さえき みかこ) 27歳  文具メーカー『株式会社MAO』企画部勤務  仕事人間で料理は苦手     × 各務 尊(かがみ たける) 30歳  実花子の上司で新人研修時代の指導担当  海外勤務から本社の最年少課長になったエリート *☼*――――――――――*☼* 『十分』が実花子の運命を思わぬ方向へ変えていく。 ―――――――――― ※他サイトからの転載 ※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。 ※無断転載禁止。

君に何度でも恋をする

明日葉
恋愛
いろいろ訳ありの花音は、大好きな彼から別れを告げられる。別れを告げられた後でわかった現実に、花音は非常識とは思いつつ、かつて一度だけあったことのある翔に依頼をした。 「仕事の依頼です。個人的な依頼を受けるのかは分かりませんが、婚約者を演じてくれませんか」 「ふりなんて言わず、本当に婚約してもいいけど?」 そう答えた翔の真意が分からないまま、婚約者の演技が始まる。騙す相手は、花音の家族。期間は、残り少ない時間を生きている花音の祖父が生きている間。

嘘をつく唇に優しいキスを

松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。 桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。 だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。 麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。 そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。

【完結】付き合ってもいないのに、幼なじみの佐藤がプロポーズしてきた

ぽぽよ
恋愛
「俺らさ、結婚しない?」 三十二歳、独身同士。 幼なじみの佐藤が、たこ焼きパーティの最中に突然言い出した。 付き合ってもないのに。 夢見てた甘いプロポーズじゃないけれど、佐藤となら居心地いいし、給料もあるし、嫁姑問題もないし、性格も知ってる。 断る理由が、ない。 こうして、交際0日で結婚することが決まった。 「とりあえず同棲すっか」 軽いノリで決まってゆく未来。 ゆるっとだらっと流れていく物語。 ※本編は全7話。 ※スパダリは一人もいません笑

俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛

ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎 潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。 大学卒業後、海外に留学した。 過去の恋愛にトラウマを抱えていた。 そんな時、気になる女性社員と巡り会う。 八神あやか 村藤コーポレーション社員の四十歳。 過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。 恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。 そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に...... 八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。

処理中です...