マチ恋 ―君に捧げるLove song― 一夜の相手はスーパースター。誰にも言えない秘密の恋。【完結】

remo

文字の大きさ
41 / 88
3章. ゆい

machi.40

しおりを挟む
昨夜、稜さんの腕の中で大泣きした後の記憶がない。
気が付いたら朝で、翔と一緒にベットで寝ていた。

『呼び出しがあったから出てくる』

リビングのテーブルに稜さんからのメモが置いてあった。

冷蔵庫の中身やキッチンを好きに使ってもいいこと。
道がわからないだろうから、タクシーを使うようにということ。

稜さんの、優しい指示が続いていて、タクシー代も置いてあった。

「稜さん、ごめんなさい。私…」

「いいよ。わかってる」

稜さんの心臓の音が聞こえる。いつも、私を包み込んでくれる。

「しばらく、俺のうちに居ろ。ゆいの部屋は注目されているだろうから」

稜さんの優しさに身が縮む。


『気の毒にね』


私は稜さんに優しくされる資格がない。

「…稜さん」

私が、よほど情けない顔をしていたんだろう、稜さんは私の頭に手を乗せて、下から私の目をのぞき込んだ。

「大丈夫だから。心配するな」

稜さんの手は温かい。

どうして、自分の気持ちでさえ、思い通りにできないんだろう。

保育園のお迎えも、稜さんが一緒に行ってくれた。

園の入り口で報道関係者と思われる人に囲まれたけれど、
稜さんがかわしてくれた。

「新しい彼氏さんなの?本当のお父さんとは、どうされているの?」

面と向かって尋ねてきた顔見知りのお母さんもいたけれど、
話せることがない。

園の保護者や先生たちが遠巻きに見ている。
稜さんの存在が、新しい話題を提供しているのかもしれない。

翔が、不安そうに私にしがみついて離れなかった。
翔を抱きしめて、うつむいて通り過ぎた。

夜になって、翔がせき込み、熱を出した。
稜さんが診てくれて、まもなく寝入った。

赤い顔をして浅い呼吸を繰り返す翔の頭をなでる。

しっかりしろ。
翔を守れるのは私だけだ。

稜さんがお風呂に入った時に、手帳からメモを取り出した。

見るだけで、胸が掴まれるような、悠馬の字。

翔のことを話して、謝って、
悠馬の生活を邪魔するつもりはないことを伝えよう。

携帯電話の番号を押す指が震える。

悠馬への初めての電話が、さよならを確認するためなんて、皮肉だ。

数回呼び出し音が鳴った後、電話が通じる。

「…もし、もし」

緊張で声がかすれた。
この電話の向こうに、悠馬がいる。

「あ、…あの、…水村、ゆい、です」

息がうまく吸えなくて、言葉が途切れてしまう。

電話の向こうから、冷たい沈黙が届く。
悠馬の状況がわからなくて怖い。

「…悠馬?」

恐る恐る呼びかけると、

「消えてよ」

いきなり、刃物で切り裂かれるような、鋭く尖った言葉が投げつけられて、電話が切れた。

こんなにはっきりとした憎悪の塊を向けられたのは初めてで、
途切れた電話を耳にしたまま、動けなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

好きな人の好きな人

ぽぽ
恋愛
"私には何年も思い続ける初恋相手がいる。" 初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。 恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。 そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。

【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~

塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます! 2.23完結しました! ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。 相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。 ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。 幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。 好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。 そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。 それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……? 妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話 切なめ恋愛ファンタジー

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。

【完結】彼を幸せにする十の方法

玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。 フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。 婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。 しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。 婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。 婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。

「好き」の距離

饕餮
恋愛
ずっと貴方に片思いしていた。ただ単に笑ってほしかっただけなのに……。 伯爵令嬢と公爵子息の、勘違いとすれ違い(微妙にすれ違ってない)の恋のお話。 以前、某サイトに載せていたものを大幅に改稿・加筆したお話です。

私、これからいきます。

蓮ヶ崎 漣
恋愛
24歳のOL・栗山莉恵は、恋人に騙され、心も人生もどん底に突き落とされていた。 すべてを終わらせようとした夜、高層ビルの屋上で出会ったのは、不思議な青年・結城大虎。 「死んだら後悔する」 そう言って彼は、莉恵の手を強く掴んだ。 それが、止まっていた彼女の人生が再び動き出すきっかけだった。 年下の彼との出会いが、傷ついた心を少しずつ癒していく―― 絶望の先で“生きる選択”と“恋”を見つける、大人の再生ラブストーリー。 ※完結しました※ ここまで読んでくださり、 本当にありがとうございました。 少しでも誰かの心に残っていたら嬉しいです。 このあと番外編も公開予定ですので、 よろしければ引き続きお付き合いください。

Short stories

美希みなみ
恋愛
「咲き誇る花のように恋したい」幼馴染の光輝の事がずっと好きな麻衣だったが、光輝は麻衣の妹の結衣と付き合っている。その事実に、麻衣はいつも笑顔で自分の思いを封じ込めてきたけど……? 切なくて、泣ける短編です。

処理中です...