時間を止めて ~忘れられない元カレは完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な人でした 【完結】

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チーフに会いたい。

『…お前を守りたい』

会って、お礼が言いたい。
願わくは。
抱きしめて欲し、…

なんか欲深いことを思いかけて、慌てて首を振ると、
千晃くんに至近距離からのぞき込まれた。

「ストーキングされてたんだって?」

千晃くんの琥珀色の瞳が翳りを含んで揺れている。

「…何も、されてない?」

千晃くんの辛そうな表情にどんなに心配をかけたか分かって、急いで頷いた。

「大丈夫。催涙スプレー、持ってたから」

言うと、

「…よく頑張ったね」

千晃くんが私を慰めるように頭を撫でてくれた。

まるで話が通じない絶望感。
現実が見えていないような目。
足を舐められたおぞましい感触。
絶叫を上げてのたうち回る緑川さん。

改めて、あの状況を無事に脱せたことに感謝する。

『僕がこんなに愛してるのに』

緑川さんの言葉が悲しい。
それが愛だと言うなら悲しすぎる。

だから、千晃くんの夢を見たのかな。
と思った。

私に愛を教えてくれたのは。

「…ありがとう、千晃くん」

千晃くんだから。

千晃くんが手の甲で私の頬を優しく撫でた。

「あの人は、通報されて警察に連行されたから、ひとまずは大丈夫だと思うけど。…気になるのは、どうやって会社に侵入したか、だね」

その通りだった。

会社にはエントランスフロアにセキュリティゲートが設置されている。

IDカード認証か生体認証、会談相手を呼び出して開けてもらうか、…が通常の入場方法なんだけど。

緑川さんは、どうやって入ったんだろう。

それに。

3階に来たわけじゃなく、地下で待ち構えてたみたいだった。
私が地下会議室に行くってどうやって分かったんだろう。

そもそも。
自宅を知られていた時点で怖かったんだけど、
他にも情報が漏れてたってこと?

まさか、盗聴器とかつけられてないよね?

「まあ、本人の供述とセキュリティシステムの確認を待つか」

考え込んでしまった私に気を遣ってか、千晃くんが明るく言って、

「今日はどうする? 高野さん、帰っていいって言ってたけど、…」

小首をかしげる。

千晃くんの子犬な表情は全人類のハートをわしづかみにするわけで。
思考がどこかに飛んでいきそうになるわけで。

「…会社に、戻ろう、かな」

無駄にドキドキしながら、ベッドを降りかけたところ。
靴がないことに気づいた。

そうだ。
逃げるのに夢中で会社の地下に捨ててきた。

「うん、じゃあ、行こうか」

千晃くんはとっくに気づいていたらしく、
軽々と私をベッドから抱き上げると、そのままスタスタと病室を出た。

「…千晃くん⁉」

これは。いわゆるところの。

病院の通路に居る人全員に見られている気がする。
いや、まあ、そりゃあ振り返りますよ。

「大丈夫、歩けるからっ」

国宝級イケメンの千晃くんが、いわゆるところのお姫様抱っこをご披露されたら。

降りようともがくと、ちょっと拗ねた顔で抱え込まれた。

「ダメ。…高野さんだけずるい」

イケメン拗ねてもかっこいい―――っ
とか、思ってる場合じゃな―――いっ
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