時間を止めて ~忘れられない元カレは完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な人でした 【完結】

remo

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If someday the future will come, … ①

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竹取物語の翁は、かぐや姫が月に帰る時、ひどく嘆き、泣き、
何が何でも引き留めようとしたという。

でも、天人にはまるで歯が立たず、天の衣を着せられた姫は、
すべてを忘れて月に帰っていったという。

「…ん」

ベッドの中で柔らかな寝息を立てながら、ここが身じろぐ。
寒くなったのかと、掛け布団をその肩までかけて、そっと髪を撫でた。

吸いつくようなきめ細やかな肌。柔らかい髪。
安心したように瞼を閉じて、時々まつげを揺らしながら、
ぷっくり膨らんだ唇をかすかに開けて眠る。

…ここ。

『極悪パンダ‼』

キャンキャン吠える威勢のいい姿を思い出して、頬が緩む。

その生意気な唇に何度キスしただろう。
溶けそうに柔い肌を何度抱きしめただろう。

4月に俺の下に配属された佐倉ここは、
要領が悪くて不器用で、ミスを多発させるから目が離せず、
最初はめんどくさい奴が来たもんだ、と思っていた。

なのに。

お人好しで一生懸命で、
簡単に誰かの術中にはまって泣くくせに、
しなやかで折れない強さを持っていて、

気が付いたら。

守りたい。
俺の手で。

俺の腕の中で。
こいつを傷つけるすべてのものから。

他の誰にも感じたことのない強烈な思いが沸き上がってきて、
手を伸ばしてしまった。

月から迎えが来たら、あっさり帰ってしまうというのに。

あいつの元に。

窓から月明かりが差し込む。
世界はこの小さなベッドだけ。
2人きり取り残されたような静寂に、夜が降り積もる。

『常盤千晃です。経営顧問をしています』

CEOがその才能を見込んで、特別待遇で連れてきたアドバイザーは、
まだ二十歳そこそこの若さで、恐ろしく見目が良く、
鮮やかな立ち振る舞いで、会う人の心を瞬時につかんだ。

CEOの娘と婚約しているとかいないとか。

第一印象。嫌味な奴。

欲しいものは何でも持っていて、
何一つ苦労なんてしたことがなさそうな顔で、

ここを、泣かせる。

でも。奴は。

『俺は、また、…忘れてしまうから』

一番大切なものを手放さなければいけない、
残酷な運命を背負わされていた。

「チ、…?」

ここが寝ぼけ眼で俺を探す。
涙に潤んだ瞳は、俺の向こうにあいつを探している。
呼びたいのは「チーフ」じゃなくて「チアキ」だ。

「…どうした?」

何も身にまとっていないここの素肌を引き寄せる。
滑らかに濡れて。温かく潤って。柔らかく色づく。

それでも。離せない。
一時でも。今だけだとしても。

ここが甘えるように俺にすり寄ってくる。
全部。俺に溶けてしまえばいい。

唇を塞いで舌を差し入れてここを絡めとって誘う。
ここの奥深くまで入り込んで自分を刻む。

今だけでも俺に溶けて。俺だけでいっぱいにして。
悲しみも切なさも苦しみも憂いも置いて。
ただ。快感だけを追い求めて。
一緒に。心地よさだけに溺れて。

1ミリの隙間もないくらい張り付いて。
感じて震えて泣いて、昇りつめて恍惚にとろけて
全てを俺にゆだねて、どこまでも甘く俺を受け入れて
俺の腕の中で眠っているのに。

目を離したら、触れている手を離したら、
消えてなくなりそうな気がする。
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