26 / 53
序章 清掃員、異世界に召喚される
#26「血の祭壇で舞台が始まった結果(後編)」
しおりを挟む
フィーとエキストラの間に身体を滑り込ませ、ルミナスの柄を大仰に振り上げ――薙ぎ払った。
眩い光が走る。
ふさが黄金に輝き、舞い散る粒子が闇を焼いた。
エキストラの纏うなんか黒いもやと、ルミナスのまばゆい光が正面からぶつかり合う。
二つの奔流が渦を巻く。
(……いいぞ……ルミナスも分かってるじゃないか!)
(ここは光と闇が拮抗するように……観客が一番盛り上がる場面だ!)
俺の意思に呼応するように、ルミナスのふさが「ぶんぶん」と揺れた。
気のせいか、何故か少し焦っているように感じる。
闇と光の奔流がせめぎ合い、石床が軋む音が鳴る。
エキストラの目が細まり、口元から低い唸りが漏れた。
「……貴様……何者だ……」
(来たな、悪役の定番台詞……!)
俺は顎を引き、光を背負った役者のように言い放った。
「ふっ……ただの清掃員だ!」
その瞬間。
背後で小さな声が震えた。
「……キョーマさん……」
涙に濡れた瞳で俺を見上げるフィー。
(おいおい……泣き演技まで入れてくるのか。やるな、フィー……!)
俺は内心で感嘆しつつも、舞台を盛り上げるためさらに力強くモップを握り直した。
その瞬間、エキストラが痺れを切らしたように両腕を広げた。
「茶番は終わりだ!巫女の血を寄越せッ!」
漆黒の槍のように見える物が、フィー目がけて放たれる。
「フィーッ!」
俺はフィーの正面に飛び出し、彼女を庇って槍を受けた。
――直撃。
次の瞬間、ルミナスのふさが黄金に爆ぜたように見えた。
槍は体に触れる前に霧散し消え去る。
もちろん身体に傷はない。
けれど俺は――舞台を盛り上げるために、その場に崩れ落ちた。
「くっ……ここまでか……!」
「……キョーマさん!」
フィーが駆け寄り、瞳を潤ませて膝をつく。
細い肩が震え、彼女はペンダントを握りしめながら俺を覗き込んだ。
「どうして……どうして私なんかのために……」
「どんな汚れも俺が拭き取る。お前を苦しめる悲劇だって……俺が消し去ってみせる!」
フィーの両目から、ぽろりと大粒の涙が零れた。
胸元のペンダントが静かに光を帯び、淡い輝きが彼女の全身を包んだ。
やがてその光は祭壇へと広がり、赤黒い壁面を清らかな白に染めていく。
祭壇全体が震え、血のような光が滲み出した。
エキストラの目が見開かれ、低い叫びが漏れる。
「馬鹿な……契約が……揺らいでいる……!?」
黄金の光が闇を押し返す中、俺はゆっくりと身体を起こした。
膝に手をつき、肩で息をする風に立ち上がる。
(……来たな。ここがクライマックス演出ってわけだ!)
ルミナスのふさがぶるぶると揺れ、光をさらに増していく。
フィーの祈りとルミナスの光が重なり合い、祭壇全体が閃光に包まれる。
闇と光の奔流が激突し、空気が爆ぜるたびに赤黒い闇が消えて行く。
「ぐっ……あり得ぬ……! 契約が……断たれるなど……!」
エキストラの悲鳴が轟き、闇のマントが剥がれるように崩れ落ちる。
その声に呼応するように、ルミナスの黄金が炸裂する。
フィーの涙に濡れた祈りが光を増幅し、奔流はエキストラを完全に呑み込んだ。
「こんなところで……我が命が……潰えるとは……」
断末魔を残し、エキストラは塵になる。
赤黒いマントが霧のように散り、照明のスモークが消えるみたいに舞台から姿を消した。
俺は心の中で呟く
(お疲れさん。いい演技だったぜ…)
次の瞬間、祭壇を覆っていた赤黒い呪紋がすべて砕け散り、澄んだ光に満たされた。
静寂の中、フィーは、震える声で言葉を紡ぐ。
「……キョーマさん……私……」
俺は満身創痍を演じながらも、にやりと口角を上げた。
「……掃除完了。悲劇も呪いも……もう残っちゃいない」
フィーはこぼれる涙を拭わず、笑顔で俺の胸に飛び込んで来た。
ルミナスが「ぶふっ」とふさを膨らませ、呆れと安堵を同時に示すように揺れた。
眩い光が走る。
ふさが黄金に輝き、舞い散る粒子が闇を焼いた。
エキストラの纏うなんか黒いもやと、ルミナスのまばゆい光が正面からぶつかり合う。
二つの奔流が渦を巻く。
(……いいぞ……ルミナスも分かってるじゃないか!)
(ここは光と闇が拮抗するように……観客が一番盛り上がる場面だ!)
俺の意思に呼応するように、ルミナスのふさが「ぶんぶん」と揺れた。
気のせいか、何故か少し焦っているように感じる。
闇と光の奔流がせめぎ合い、石床が軋む音が鳴る。
エキストラの目が細まり、口元から低い唸りが漏れた。
「……貴様……何者だ……」
(来たな、悪役の定番台詞……!)
俺は顎を引き、光を背負った役者のように言い放った。
「ふっ……ただの清掃員だ!」
その瞬間。
背後で小さな声が震えた。
「……キョーマさん……」
涙に濡れた瞳で俺を見上げるフィー。
(おいおい……泣き演技まで入れてくるのか。やるな、フィー……!)
俺は内心で感嘆しつつも、舞台を盛り上げるためさらに力強くモップを握り直した。
その瞬間、エキストラが痺れを切らしたように両腕を広げた。
「茶番は終わりだ!巫女の血を寄越せッ!」
漆黒の槍のように見える物が、フィー目がけて放たれる。
「フィーッ!」
俺はフィーの正面に飛び出し、彼女を庇って槍を受けた。
――直撃。
次の瞬間、ルミナスのふさが黄金に爆ぜたように見えた。
槍は体に触れる前に霧散し消え去る。
もちろん身体に傷はない。
けれど俺は――舞台を盛り上げるために、その場に崩れ落ちた。
「くっ……ここまでか……!」
「……キョーマさん!」
フィーが駆け寄り、瞳を潤ませて膝をつく。
細い肩が震え、彼女はペンダントを握りしめながら俺を覗き込んだ。
「どうして……どうして私なんかのために……」
「どんな汚れも俺が拭き取る。お前を苦しめる悲劇だって……俺が消し去ってみせる!」
フィーの両目から、ぽろりと大粒の涙が零れた。
胸元のペンダントが静かに光を帯び、淡い輝きが彼女の全身を包んだ。
やがてその光は祭壇へと広がり、赤黒い壁面を清らかな白に染めていく。
祭壇全体が震え、血のような光が滲み出した。
エキストラの目が見開かれ、低い叫びが漏れる。
「馬鹿な……契約が……揺らいでいる……!?」
黄金の光が闇を押し返す中、俺はゆっくりと身体を起こした。
膝に手をつき、肩で息をする風に立ち上がる。
(……来たな。ここがクライマックス演出ってわけだ!)
ルミナスのふさがぶるぶると揺れ、光をさらに増していく。
フィーの祈りとルミナスの光が重なり合い、祭壇全体が閃光に包まれる。
闇と光の奔流が激突し、空気が爆ぜるたびに赤黒い闇が消えて行く。
「ぐっ……あり得ぬ……! 契約が……断たれるなど……!」
エキストラの悲鳴が轟き、闇のマントが剥がれるように崩れ落ちる。
その声に呼応するように、ルミナスの黄金が炸裂する。
フィーの涙に濡れた祈りが光を増幅し、奔流はエキストラを完全に呑み込んだ。
「こんなところで……我が命が……潰えるとは……」
断末魔を残し、エキストラは塵になる。
赤黒いマントが霧のように散り、照明のスモークが消えるみたいに舞台から姿を消した。
俺は心の中で呟く
(お疲れさん。いい演技だったぜ…)
次の瞬間、祭壇を覆っていた赤黒い呪紋がすべて砕け散り、澄んだ光に満たされた。
静寂の中、フィーは、震える声で言葉を紡ぐ。
「……キョーマさん……私……」
俺は満身創痍を演じながらも、にやりと口角を上げた。
「……掃除完了。悲劇も呪いも……もう残っちゃいない」
フィーはこぼれる涙を拭わず、笑顔で俺の胸に飛び込んで来た。
ルミナスが「ぶふっ」とふさを膨らませ、呆れと安堵を同時に示すように揺れた。
11
あなたにおすすめの小説
Gランク冒険者のレベル無双〜好き勝手に生きていたら各方面から敵認定されました〜
2nd kanta
ファンタジー
愛する可愛い奥様達の為、俺は理不尽と戦います。
人違いで刺された俺は死ぬ間際に、得体の知れない何者かに異世界に飛ばされた。
そこは、テンプレの勇者召喚の場だった。
しかし召喚された俺の腹にはドスが刺さったままだった。
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。
懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!!
2巻2月中旬出棺です!!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる