異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭

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序章 清掃員、異世界に召喚される

【短編外伝】「魔法少女ステッキ、ルミナス爆誕!?」

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これは、俺とフィーが城塞都市ヴァルディアへ向かう道中での出来事だ。

城塞都市へ向かう街道を歩き続け、気付けば空は茜色に染まっていた。

「もう日も暮れてきたな……今日はこの村で一泊するか」

俺がそう呟くや否や、隣のフィーがぱっと顔を輝かせる。

「キョーマさん! 早くごはんにしましょう!」

子どものように無邪気な声でせかしてくる。

「……おいおい、まずは宿探しが先だろ」

あきれつつも歩を進めると、通りに古びた木の看板――宿屋の目印が見えてきた。

重い扉を開けて中へ入る。
石造りのロビーは薄暗く、木のテーブルと椅子が並んでいる。

店主に金を払い、二人分の部屋を取る。
フィーに鍵を渡し、思わずロビーにあった椅子に腰を下ろした。

「ふぅ……やっと休める」

顔を上げると、さっきまで隣にいたはずの少女の姿が見当たらなかった。

「あれ?フィーは?」

さらに気付く。
背中にあるはずの相棒の重みが消えている。

「ルミナスまで……なんでだよ」

嫌な予感を抱えたまま二階へ上がり、フィーの部屋の前に立つ。
中から妙な息遣いが漏れている。
しばらく耳をすませると、フィーの声が聞こえてきた。

「…るみなすちゃん……かぁいいよぉぉ……!」

…………今なんて言った?

「ふふっ、このリボン似合ってますね……やっぱり天使さんです……!」

中で何が起こっている分からず、俺は慌ててノックした。

「おいフィー!いるんだろ?ルミナスも一緒か?」

中ではドタバタと音がしているが返事はない。
なんだ、この状況……。

「おい!フィー!開けろ!!なにがあった」

やがて勢いよくドアが開く。

「キョーマさんっ!」

そこには鼻息荒く、目をキラキラさせたフィーが立っていた。

「み、見てください! かぁいいるみなすちゃんです!」

嫌な予感しかしない。

おそるおそる部屋に入ると――。

「…………おい」

ルミナスはリボンや紐でぐるぐるにデコられ、
完全に「魔法少女のステッキ」だった。

「どうですか!? かぁいいでしょう!!」

……いや、かわいいとかじゃない。  
ルミナスは――モップだ!清掃道具だ!!

「よし、とりあえずリボン外してやるからな」

俺がルミナスに手を伸ばすと――。

「ぷえぇぇ!」

フィーが謎の奇声を上げ、俺の前に飛び出し、両手を広げた。
目を細めて「シューッ!」と小動物みたいに威嚇してくる。

「る、るみなすちゃんのリボン外しちゃだめですっ!!」
「……どけ」

あっさり両腕をすり抜けてルミナスに手をかける。

次の瞬間。

ドゴォッ!!

「ぐふぉっ!?」

ルミナスがみぞおちに直撃。
完全に肺の空気を持っていかれる俺。
床に崩れながら見上げると、フィーは真っ赤な顔で叫んでいた。

「るみなすちゃんは……かぁいいんですっ!!!」

宙に放り出されたルミナスがくるりと回転し、光粒子を撒き散らす。
その様は――魔法少女のステッキそのもの。

「かぁぁぃぃぃぃ!!かぁっぃぃぃぃ!!!」

部屋中にフィーの声が反響し、俺はただ呆然と突っ伏すしかなかった。

ルミナスは結局、その格好を気に入ってしまったらしい。
翌日からの道中、俺がどれだけ頼み込んでもリボンを外してくれなかった。

「おい……その姿で村の掃除依頼受けるの、やめてくれ……」

床を磨こうとするたび、デコレーションされたルミナスがキラキラと光り、粒子が舞いちる。
ルミナスを動かすごとに、ハートマークやら星やら意味不明な魔法少女的エフェクトが俺の周囲で炸裂した。

「……なんで掃除してるだけで、俺の横にピンクのハートが飛んでんだよ……」

通りすがりの村人が目を丸くし、フィーは両手を頬に当てて身をよじる。

「キョ、キョーマしゃんも……かぁぃぃぃ!!!」

……いや、お前のかわいいの基準どうなってんだ。

結局ルミナスがリボンを外してくれたのは――三日後のことだった。
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