異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭

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第一章 魔道都市ルーメンポートと魔族の影

#34「魔道都市ルーメンポートと、ごろつき騒動」

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門を抜けた瞬間、巨大な大通りが目に飛び込んできた。

両脇では商人の呼び声が響き、杖やローブ姿の人影が行き交う。
ただ歩いているだけなのに、肌に魔力のざわめきが刺さるようで、他の町とは空気そのものが違っていた。

通り沿いには等間隔で街灯が立ち並ぶ。
昼間の今は光っていないが、魔道具仕掛けなのは一目で分かる。

そして正面にそびえるのは、空を貫くような巨大な塔。
都市のどこにいても目に入る象徴であり――ここが魔道都市ルーメンポートだと、嫌でも理解させられた。

塔を見上げて唖然としていると、横でチャピがくすりと笑った。

「どう? さすがに驚いたでしょう、これがルーメンポートよ」

人の波、魔力のざわめき、魔道具の数々。
確かに圧倒されるしかない光景だった。

チャピは得意げに肩を揺らすと、急に俺の袖を引っ張った。

「さ、まずは御飯にしましょ。ここの食堂は他の町とは一味違うわよ」

俺はため息をつきながらも、人の流れに押されるようにチャピのあとをついていった。

チャピに連れられて入ったのは、大通りから少し外れた洒落た店だった。
石造りの外壁に木の扉、窓からは柔らかな光が漏れている。

中へ足を踏み入れると、ほの暗い空間が広がっていた。
頭上にはランプのような器具が吊るされているが、火ではなく魔法の光が灯っている。
炎よりも落ち着いた、蝋燭とも違う柔らかさ――まるで月光を閉じ込めたようだった。

テーブルは磨き込まれた木製で、客たちは静かに食事を楽しんでいる。
店員の身なりも整っていて、街の喧噪から切り離されたような落ち着きがあった。

「……なるほどな。ここじゃ店内の照明まで魔法なのか」

俺がぼそっと呟くと、チャピが肩をすくめる。

「ここは魔道都市でも人気の店なのよ。せっかくだから食事を楽しみながら、今後のことを話しましょう」

背中のルミナスがふさを揺らし、店内の柔らかな光に同調するようにきらめいた。
まるでこの静かな空間を気に入ったとでも言うみたいに。

料理が運ばれてきて、香ばしい匂いが鼻をくすぐる。
チャピは香草の香りが漂うスープを味わいながら何気ない調子で口を開いた。

「さて、風の大陸に渡るには魔道飛行船を使うわけだけど――」
「…さっき見たバカでかい船か」

「そう。あれは五大陸に十隻しかない貴重なもの。だから出航は決まった日だけなの。
シルフィード行きは次の便で……五日後になるわ」

「五日後!?そんなに待つのかよ」

俺が思わず声を上げると、チャピはくすっと笑う。

「仕方ないわよ。船より早くて安全なんだから。
それに――せっかくの魔道都市よ。観光くらい楽しみましょう」

「観光……俺には縁がないな。水回りの汚れ掃除でもしてたほうが落ち着く」

ため息をつきつつも、周囲の華やぎに目を奪われる。
街のざわめきも、灯りの魔法も、見慣れぬ人々の姿も――掃除屋には縁遠すぎる景色だった。

食事を終えて店を出る。
俺たちは今夜の寝床を探すため、宿を探して街を歩き始めた。

その時だった。

路地の先で、荒っぽい声が耳に飛び込んでくる。

そちらを見ると二人のごろつきが、若い娘に絡んでいた。
娘は必死に睨み返してはいるが、声は震えている。

「いい加減に手放せよ。小娘が土地なんざ抱えてどうする」
「判を押せば楽になれるんだぜ」

娘は首を振るだけで、両手をぎゅっと握りしめていた。

通りを行き交う人々は足を速め、目を逸らす。
誰も助けようとはしない。

胸がざわついた。
止めろ、と頭のどこかが叫んでいるのに、足は勝手に前へ出ていた。

膝は笑い、心臓は喉までせり上がっている。
怖くて仕方がない――なのに、引き返せなかった。

「――闇にまみれた穢れよ! この俺が浄化してくれ、る……っ!」

足はがたがた震え、膝が今にも折れそうだ。
声も裏返っていて、途中で噛みそうになる。

それでも両腕を大きく広げ、胸を張ってみせる。

「ひっ……光は! 必ず闇を打ち払う!」

言葉とは裏腹に、肩は小刻みに揺れ、手のひらには冷や汗が滲んでいた。
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