異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭

文字の大きさ
50 / 53
第二章 風の大陸シルフィードと五柱の使途

#49「飛行船出港、豪華すぎる船内散策」

しおりを挟む
ようやく騒ぎがひと段落し、俺は改めて部屋を見渡した。

ロイヤルスイートというだけあって、きらびやかさが桁違いだ。
大きなベッドが二つ、隣り合うように置かれていて、真ん中には金の縁取りが施されたソファーが鎮座している。
奥へ進むと、ガラス扉の先に小さなバルコニーがあり、そこからはターミナル全体と遠くの街並みまで見渡せるようだ。

さらに横の扉を開けてみると、中には豪奢な風呂場や磨き上げられたトイレまで完備されていた。
壁には魔石で温度調整する仕掛けが施されていて、蛇口をひねれば温水が出るらしい。

「……これ、一泊いくらするんだ?」

思わず身震いする。
現世での感覚に置き換えれば、たぶん高級ホテルのスイートルームよりさらに上。
こんなの、もし後でチャピから請求書を突きつけられたら、俺の銅貨カラカラ財布じゃ即死確定だ。

背筋に冷たいものを感じ、俺はそっとチャピの顔を盗み見た。

彼女は胸を張って得意げにソファーへ腰かけていた。
その余裕ぶった姿をそっと盗み見て、俺は思わず心配になる。

……まさか本当に、あとで金額を請求してきたりしないよな?

「ふふ……お気に召しましたか?」

突然バルコニーの方から声がして、思わず肩を跳ねさせる。
ノアが風にスカートを揺らしながら、優雅な笑みを浮かべていた。

「な、なんだよ急に!」
「ここはキョウマ様にふさわしいお部屋ですから」
「はぁ!?あんたはなにもしてないでしょ!」

すかさずチャピが噛みつく。

――また始まった。

このまま放っておいたら、また昨日と同じ口喧嘩に突入するのは目に見えている。
俺は慌てて二人の間に割って入った。

「おい!喧嘩はダメだからな!」

二人を手で制してから、俺はチャピの方へ振り返る。

「で、この船はいつ出発するんだ?」

「もうすぐのはずよ!」

チャピは胸を張って答え、次の瞬間に俺の手をぐいっと掴んだ。

「どうせだから甲板から出港するところを見ましょう。すごいんだから!」
「ちょっ、引っぱるなって!」

強引に手を引かれ、俺は部屋を飛び出す。
そして螺旋状の階段を上がり――甲板に出た。

瞬間、一陣の風が吹き抜けた。
冷たい空気が頬を撫で、背筋がぞくりとする。

眼下に広がるのは、煌びやかな魔道都市ルーメンポート。
その合間を縫うように石畳の大通りが真っ直ぐ伸びている。

さらに奥へ視線を向けると、初めて街に来た時に見えた、巨大な塔がそびえ立っていた。
天を突くほどの高さで、周囲の建物をすべて見下ろしている。
その根元には広大な敷地が広がり、要塞のような巨大建築群が佇んでいた。

「あれがこの街の象徴とも言える魔道塔」

チャピが誇らしげに指差す。

「そしてその下にあるのが、この大陸で唯一の魔法学校――ルーメン魔導学院」

俺はしばし視線を奪われたまま、巨大な塔と学院の敷地を見下ろした。
街に来てからずっと慌ただしく動き回ってばかりで、観光なんてまともにできていない。

(……次に訪れるときは、のんびり街を見て回るのも悪くないかもしれないな)

そのとき――低く響く轟音が空気を震わせた。
現世で言う汽笛のような音だが、耳に残るのは蒸気ではなく魔力の共鳴音。
その荘厳な音が、甲板から鳴り響いていく。

足元がわずかに震え、船体が淡く光を帯び始めた。
次の瞬間、甲板の下から重々しい浮遊感が押し寄せる。

「動いた……!」

街並みがゆっくりと遠ざかり、やがてルーメンポート全体が眼下へと沈んでいく。
空気を切り裂くように風が吹き抜け、人々の歓声が混ざり合った。

船体がさらに持ち上がった瞬間、甲板の周囲に薄い膜のようなものが張られた。
さっきまで吹き荒れていた風が、嘘のようにぴたりと止む。

「な、なんだこれ……?」

驚いて辺りを見回す俺の腕に、チャピが自然に絡みついてきた。

「ね!船内のお店を見てみない?この船の中、すごいんだから!」

そのまま右手を引っぱられる形で、俺は甲板を後にした。
何故かノアも左手に絡みついたまま…。

右手にチャピ、左手にノアに引っ付かれたまま船内へ足を踏み入れると、そこはもう別世界だった。
シャンデリアが輝く広いホール、豪華な食堂、金色に輝く装飾品を並べた商店――
どこを見ても煌びやかで、高級感に満ちあふれている。

「……ほー……へぇ……」

あまりのすごさに、気づけば俺の語彙力は完全に消失していた。

「朝から何も食べてないでしょ?それに、今後のことも話さなきゃ」

チャピがにこりと笑い、一軒の高級そうな食堂を指差す。

どう見ても高そうな店構えに、俺は思わず後ずさった。

「いや……俺は遠慮しとくわ。ここ値段いくらかかるんだよ……」

「大丈夫よ、キョーくん」

チャピは胸を張り、得意げに言い放った。

「ロイヤルスイートの宿泊客は、船内の食堂は全部無料で利用できるの」

「……マジかよ」

目の前に広がる、異世界の豪華食堂。
俺の胃袋が、ぐぅと鳴った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Gランク冒険者のレベル無双〜好き勝手に生きていたら各方面から敵認定されました〜

2nd kanta
ファンタジー
 愛する可愛い奥様達の為、俺は理不尽と戦います。  人違いで刺された俺は死ぬ間際に、得体の知れない何者かに異世界に飛ばされた。 そこは、テンプレの勇者召喚の場だった。 しかし召喚された俺の腹にはドスが刺さったままだった。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武
ファンタジー
テンプレのように異世界にクラスごと召喚された主人公──イム。 与えられた力は面倒臭がりな彼に合った能力──睡眠に関するもの……そして催眠魔法。 そんな力を使いこなし、のらりくらりと異世界を生きていく。 「──誰か、養ってくれない?」 この物語は催眠の力をR18指定……ではなく自身の自堕落ライフのために使う、一人の少年の引き籠もり譚。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。  そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。  しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!  命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。  そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。 ――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。

魔境育ちの全能冒険者は異世界で好き勝手生きる‼︎ 追い出したクセに戻ってこいだと?そんなの知るか‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
15歳になり成人を迎えたリュカは、念願の冒険者ギルドに登録して冒険者になった。 そこで、そこそこ名の知れた冒険者Dランクのチームの【烈火の羽ばたき】に誘われる。 そこでの生活は主に雑用ばかりで、冒険に行く時でも荷物持ちと管理しかさせて貰えなかった。 それに雑用だけならと給料も安く、何度申請しても値段が上がる事はなかった。 ある時、お前より役に立つ奴が加入すると言われて、チームを追い出される事になった。 散々こき使われたにも関わらず、退職金さえ貰えなかった。 そしてリュカは、ギルドの依頼をこなして行き… 【烈火の羽ばたき】より早くランクを上げる事になるのだが…? このリュカという少年は、チームで戦わせてもらえなかったけど… 魔女の祖母から魔法を習っていて、全属性の魔法が使え… 剣聖の祖父から剣術を習い、同時に鍛治を学んで武具が作れ… 研究者の父親から錬金術を学び、薬学や回復薬など自作出来て… 元料理人の母親から、全ての料理のレシピを叩き込まれ… 更に、母方の祖父がトレジャーハンターでダンジョンの知識を習い… 母方の祖母が魔道具製作者で魔道具製作を伝授された。 努力の先に掴んだチート能力… リュカは自らのに能力を駆使して冒険に旅立つ! リュカの活躍を乞うご期待! HOTランキングで1位になりました! 更に【ファンタジー・SF】でも1位です! 皆様の応援のお陰です! 本当にありがとうございます! HOTランキングに入った作品は幾つか有りましたが、いつも2桁で1桁は今回初です。 しかも…1位になれるなんて…夢じゃ無いかな?…と信じられない気持ちでいっぱいです。

処理中です...