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騎士団長子息
「ダリア様についてですか?」
騎士団長子息のクロノスは、硬い表情で捜査官を見た。
「そうですね。高位貴族の令嬢にありがちな人でしたね。とても綺麗な人でしたよ」
クロノスは、高位貴族令嬢に対しての忌避感を持っている様子だった。
忌避感は持ちつつもダリアの美貌については評価している口ぶりだ。
「当然ですよね。自分の身を着飾る事に命をかけているのですから。僕の婚約者もそうですけど、ありのままの姿でなぜ勝負できないんですかね。リリスのように」
クロノスは着飾れば当たり前のように綺麗になると信じている様子だ。
ダリアや自分の婚約者に対して中身のない人間だと決めつけている。
着飾る事をせずに、「平民として」ありのままを生きるリリスこそが正しいと言わんばかりだ。
「あまり言いたくないのですが、身分を笠に好き勝手やっていて好きではなかったです。貴族令嬢としての慎みとか自分に自信がないから周囲にそうやって圧力をかけていたと僕は感じました」
クロノスは、貴族令嬢としてのルールというものを全く理解できていない様子でうんざりとした表情をした。
「つまり、気が小さくて心が弱かったんですよ。徒党を組まなければ何もできない弱虫なんです」
クロノスの唇から騎士とは信じられないような言葉が飛び出てきた。
「君は、遠くない未来に騎士団長だと見られているのに、そうやって守るべき存在を見下しても問題がないのですか?」
「見下すも何も、事実を僕は述べているだけです。正々堂々としていない卑怯者ではないですか!」
捜査官の質問に、クロノスは自分は間違っていないと返す。
「なぜ、リリスに面と向かって注意するのですか、僕たちの行動が間違っているのなら彼女ではなくて僕たちに言うべきです!」
「それは本気で言っているのですか?」
捜査官は、彼らの周囲から聞き取りをした資料を見ながら頭を抱えたくなった。
何を言っているのだろうか。このバカは。
「はい、そうですね」
「話しかけようとすると威嚇する。時間を作ろうとするとのらりくらりと逃げ出す。家に抗議すると怒り出す。調べたらそのようですが」
聞き取り調査をした資料にはそう記されてあった。
おそらく彼の婚約者は、彼に変わって欲しくて色々と言ったのだろう。
しかし、彼は聞き入れず。むしろ腹を立てて威嚇する。
そうなったら相手の女性に立ち振る舞いを注意するものではないだろうか。
そもそも、王族に次ぐ地位を持っている聖女ならば、正しい立ち振る舞いをするべきだ。
高い地位を持っているのなら、それに伴う責任もついて回る。
「でもだから。ってリリスに言うのは間違ってます。彼女は王族に次ぐ身分の持ち主なんですよ?不敬もいいところですよ
捜査官がそれを咎めると、クロノスはそれでも彼女達が悪いと言う。
「でしたら、そのような身分を持った人間が上の見本となる行動を取れないなら、注意されて当然ではないでしょうか?」
捜査官の一言にクロノスは唇を噛み締めた。
言い返すことができなかったからだ。
「ところでなぜあなたはここにいるのですか?」
「は?」
捜査官の質問にクロノスは、意味がわからないと首を傾けた。
「本来なら貴方がダンジョンに残るべきなのでないでしょうか」
「な、何を言っているんだ。僕が残ったら死んでしまうじゃないか」
「貴方は騎士ですよ?殿下とダリア様を身を挺してお守りするのが本来の仕事なのでは?」
捜査官の質問にクロノスは、一瞬だけ目を見開いた。
しかし、すぐさま何もなかったかのように笑った。
「いいえ、未来の王妃となる者が身を挺してこの国を牽引していくであろう者を守るべきだと僕は思います」
つまり、誰よりも価値のある自分たちのために、ダリアが命を投げ出すのが当然だと彼は思っているようだった。
……それは騎士として正しい考えなのだろうか。
「それが、次期騎士団長候補の考えなんですね。わかりました」
調査官はそう言って聞き取り調査を締め括った。
クロノスは何か腑に落ちない顔をして去っていった。
~~~~~
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「ダリア様についてですか?」
騎士団長子息のクロノスは、硬い表情で捜査官を見た。
「そうですね。高位貴族の令嬢にありがちな人でしたね。とても綺麗な人でしたよ」
クロノスは、高位貴族令嬢に対しての忌避感を持っている様子だった。
忌避感は持ちつつもダリアの美貌については評価している口ぶりだ。
「当然ですよね。自分の身を着飾る事に命をかけているのですから。僕の婚約者もそうですけど、ありのままの姿でなぜ勝負できないんですかね。リリスのように」
クロノスは着飾れば当たり前のように綺麗になると信じている様子だ。
ダリアや自分の婚約者に対して中身のない人間だと決めつけている。
着飾る事をせずに、「平民として」ありのままを生きるリリスこそが正しいと言わんばかりだ。
「あまり言いたくないのですが、身分を笠に好き勝手やっていて好きではなかったです。貴族令嬢としての慎みとか自分に自信がないから周囲にそうやって圧力をかけていたと僕は感じました」
クロノスは、貴族令嬢としてのルールというものを全く理解できていない様子でうんざりとした表情をした。
「つまり、気が小さくて心が弱かったんですよ。徒党を組まなければ何もできない弱虫なんです」
クロノスの唇から騎士とは信じられないような言葉が飛び出てきた。
「君は、遠くない未来に騎士団長だと見られているのに、そうやって守るべき存在を見下しても問題がないのですか?」
「見下すも何も、事実を僕は述べているだけです。正々堂々としていない卑怯者ではないですか!」
捜査官の質問に、クロノスは自分は間違っていないと返す。
「なぜ、リリスに面と向かって注意するのですか、僕たちの行動が間違っているのなら彼女ではなくて僕たちに言うべきです!」
「それは本気で言っているのですか?」
捜査官は、彼らの周囲から聞き取りをした資料を見ながら頭を抱えたくなった。
何を言っているのだろうか。このバカは。
「はい、そうですね」
「話しかけようとすると威嚇する。時間を作ろうとするとのらりくらりと逃げ出す。家に抗議すると怒り出す。調べたらそのようですが」
聞き取り調査をした資料にはそう記されてあった。
おそらく彼の婚約者は、彼に変わって欲しくて色々と言ったのだろう。
しかし、彼は聞き入れず。むしろ腹を立てて威嚇する。
そうなったら相手の女性に立ち振る舞いを注意するものではないだろうか。
そもそも、王族に次ぐ地位を持っている聖女ならば、正しい立ち振る舞いをするべきだ。
高い地位を持っているのなら、それに伴う責任もついて回る。
「でもだから。ってリリスに言うのは間違ってます。彼女は王族に次ぐ身分の持ち主なんですよ?不敬もいいところですよ
捜査官がそれを咎めると、クロノスはそれでも彼女達が悪いと言う。
「でしたら、そのような身分を持った人間が上の見本となる行動を取れないなら、注意されて当然ではないでしょうか?」
捜査官の一言にクロノスは唇を噛み締めた。
言い返すことができなかったからだ。
「ところでなぜあなたはここにいるのですか?」
「は?」
捜査官の質問にクロノスは、意味がわからないと首を傾けた。
「本来なら貴方がダンジョンに残るべきなのでないでしょうか」
「な、何を言っているんだ。僕が残ったら死んでしまうじゃないか」
「貴方は騎士ですよ?殿下とダリア様を身を挺してお守りするのが本来の仕事なのでは?」
捜査官の質問にクロノスは、一瞬だけ目を見開いた。
しかし、すぐさま何もなかったかのように笑った。
「いいえ、未来の王妃となる者が身を挺してこの国を牽引していくであろう者を守るべきだと僕は思います」
つまり、誰よりも価値のある自分たちのために、ダリアが命を投げ出すのが当然だと彼は思っているようだった。
……それは騎士として正しい考えなのだろうか。
「それが、次期騎士団長候補の考えなんですね。わかりました」
調査官はそう言って聞き取り調査を締め括った。
クロノスは何か腑に落ちない顔をして去っていった。
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