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悪女はダンジョンで裏切られる
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悪女はダンジョンで裏切られる
ダリアは公爵家の第一子として生まれた。
公爵家のたった一人の娘として、溺愛されて育てられた彼女は、わがままいっぱいの癇癪持ちの令嬢にはならなかった。
聡明で心が穏やかな令嬢に育った。
そんな彼女に目をつけたのは王族だった。
この国では国王になるには、一番年上の息子がなることに決まっていた。
そのため、第一王子でもあるベリアルが皇太子に決まっていた。
しかし、彼は利己的で冷淡な性格をしていて、国王になるには不安要素があった。
そこで、穏やかで優しくて性格の良いダリアが、彼の内面の優しさが育つように婚約者として当てがわれた。
この婚約は表面上はうまくいっていた。
けれどダリアは、無力感が常にあった。
どれだけ彼女が心を砕いても、ベリアルはいつも壁を作り心のうちを見せる事はなかったのだ。
ベリアルは、品行方正な皇太子だったが、残虐性や身勝手さが垣間見えるたびにダリアは自分の未来が不安になっていた。
そんなある日だった。
義弟のミカエルが家にやってきたのだ。
ダリアがベリアルと婚姻してしまえば、家を継ぐものがいなくなってしまうからだった。
ダリアは、自分の「帰る場所」がなくなってしまうのを感じながらも、その不安は絶対に表に出さないようにしようと思った。
ミカエルは、聡明でとても思慮深く優しい性格だったので、ダリアは仲良くできそうだと安堵した。
けれど、一つの不安が頭に浮かんだ。
ベリアルとは表面上は仲がいいものの、もしも、自分が邪魔な存在になった時に、間違いなく彼はダリアを排除するのが目に見えていたからだ。
もしも、そうなった時、真っ先に槍玉に挙げられるのが、ミカエルとの関係性ではないか。と、思い至ったのだ。
だから、彼女は、ミカエルにはあえて仲良くするのはやめましょう。と言った。
それでも、ミカエルのことを家族として気に入ったダリアは、彼の好きなお菓子をこっそりと差し入れしたり。気付かれにくい交流を図っていた。
もちろんミカエルもダリアに、ヴィンテージのお揃いのブローチを贈ったりしていた。
つまり二人は話すことはできなかったけれど、とても仲良いい家族だったのだ。
そして、ダリアの不安は的中した。
リリスとベリアルは恋に落ちたのだ。
そうなってからの王立学園の雰囲気は最悪だった。
リリスは、政略結婚は間違っている。愛し合うことが大切だといい。
それを間に受けた下位貴族は、婚約者に肉体関係を迫るような事件が多発した。
もちろん、婚姻前の肉体関係は禁止されていないけれど、するべきではない。と、貴族間では取り決められていた。
そうなるとそれを解決できるのは、ダリアしかいなかったため。
彼女は必然的に、下位貴族に立ち振る舞いに対して注意をして回ることになってしまったのだ。
ダリアに感謝するものもいれば、そうではないものもいる。
ダリアが徒党を組んで下位貴族に圧力をかけて回ったように見えている者もいた。
また、ダリアは風紀の乱れに対して、リリスの発言や行動が理由でもあるため、どうしても彼女に注意する必要があった。
王族に次ぐ地位である聖女に物申したら、ただではすまない。
彼女は友達と距離を取りあえて孤独になる道を選んだ。
リリスに注意をする時は、教員に立ち会ってもらい。
言いすぎた時は注意してもらうようにお願いした。
何度か彼女は注意したが、リリスの行動は変わらなかった。
ダリアが右往左往している間に、いつのまにか卒業が秒読みになり、追われるように卒業試験を受けた。
その結果は学年一位だった。
当然の結果でもあった。
頭がいいと言われた。宰相令息のフェレスは、勉強をサボりがちになっていたのだ。
サボっていたフェレスと真面目に勉強したダリア。当たり前と言えばその通りだった。
しかし、彼らはその結果には納得していなかった。
彼らは教師に掛け合い。ダリアの順位を抹消した。
「……申し訳ありません」
順位を抹消したとダリアに伝えた時の教師の顔は一生忘れないだろう。
申し訳なさと無力感に苛まれて苦しみに満ちた表情。あれを思い出すだけでダリアの胸が苦しくなる。
再テストの結果は良かったので、卒業はできるらしくそこだけは良かった。
もし、卒業できなかったとしても、一つ年下のミカエルと卒業する事になる。
あとは、卒業を控えるだけだと思っていたダリアだったが、予想外のことが起こった。
なぜか、卒業ダンジョンのパーティに選ばれてしまったのだ。
彼女は嫌な予感がした。
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ダリアは公爵家の第一子として生まれた。
公爵家のたった一人の娘として、溺愛されて育てられた彼女は、わがままいっぱいの癇癪持ちの令嬢にはならなかった。
聡明で心が穏やかな令嬢に育った。
そんな彼女に目をつけたのは王族だった。
この国では国王になるには、一番年上の息子がなることに決まっていた。
そのため、第一王子でもあるベリアルが皇太子に決まっていた。
しかし、彼は利己的で冷淡な性格をしていて、国王になるには不安要素があった。
そこで、穏やかで優しくて性格の良いダリアが、彼の内面の優しさが育つように婚約者として当てがわれた。
この婚約は表面上はうまくいっていた。
けれどダリアは、無力感が常にあった。
どれだけ彼女が心を砕いても、ベリアルはいつも壁を作り心のうちを見せる事はなかったのだ。
ベリアルは、品行方正な皇太子だったが、残虐性や身勝手さが垣間見えるたびにダリアは自分の未来が不安になっていた。
そんなある日だった。
義弟のミカエルが家にやってきたのだ。
ダリアがベリアルと婚姻してしまえば、家を継ぐものがいなくなってしまうからだった。
ダリアは、自分の「帰る場所」がなくなってしまうのを感じながらも、その不安は絶対に表に出さないようにしようと思った。
ミカエルは、聡明でとても思慮深く優しい性格だったので、ダリアは仲良くできそうだと安堵した。
けれど、一つの不安が頭に浮かんだ。
ベリアルとは表面上は仲がいいものの、もしも、自分が邪魔な存在になった時に、間違いなく彼はダリアを排除するのが目に見えていたからだ。
もしも、そうなった時、真っ先に槍玉に挙げられるのが、ミカエルとの関係性ではないか。と、思い至ったのだ。
だから、彼女は、ミカエルにはあえて仲良くするのはやめましょう。と言った。
それでも、ミカエルのことを家族として気に入ったダリアは、彼の好きなお菓子をこっそりと差し入れしたり。気付かれにくい交流を図っていた。
もちろんミカエルもダリアに、ヴィンテージのお揃いのブローチを贈ったりしていた。
つまり二人は話すことはできなかったけれど、とても仲良いい家族だったのだ。
そして、ダリアの不安は的中した。
リリスとベリアルは恋に落ちたのだ。
そうなってからの王立学園の雰囲気は最悪だった。
リリスは、政略結婚は間違っている。愛し合うことが大切だといい。
それを間に受けた下位貴族は、婚約者に肉体関係を迫るような事件が多発した。
もちろん、婚姻前の肉体関係は禁止されていないけれど、するべきではない。と、貴族間では取り決められていた。
そうなるとそれを解決できるのは、ダリアしかいなかったため。
彼女は必然的に、下位貴族に立ち振る舞いに対して注意をして回ることになってしまったのだ。
ダリアに感謝するものもいれば、そうではないものもいる。
ダリアが徒党を組んで下位貴族に圧力をかけて回ったように見えている者もいた。
また、ダリアは風紀の乱れに対して、リリスの発言や行動が理由でもあるため、どうしても彼女に注意する必要があった。
王族に次ぐ地位である聖女に物申したら、ただではすまない。
彼女は友達と距離を取りあえて孤独になる道を選んだ。
リリスに注意をする時は、教員に立ち会ってもらい。
言いすぎた時は注意してもらうようにお願いした。
何度か彼女は注意したが、リリスの行動は変わらなかった。
ダリアが右往左往している間に、いつのまにか卒業が秒読みになり、追われるように卒業試験を受けた。
その結果は学年一位だった。
当然の結果でもあった。
頭がいいと言われた。宰相令息のフェレスは、勉強をサボりがちになっていたのだ。
サボっていたフェレスと真面目に勉強したダリア。当たり前と言えばその通りだった。
しかし、彼らはその結果には納得していなかった。
彼らは教師に掛け合い。ダリアの順位を抹消した。
「……申し訳ありません」
順位を抹消したとダリアに伝えた時の教師の顔は一生忘れないだろう。
申し訳なさと無力感に苛まれて苦しみに満ちた表情。あれを思い出すだけでダリアの胸が苦しくなる。
再テストの結果は良かったので、卒業はできるらしくそこだけは良かった。
もし、卒業できなかったとしても、一つ年下のミカエルと卒業する事になる。
あとは、卒業を控えるだけだと思っていたダリアだったが、予想外のことが起こった。
なぜか、卒業ダンジョンのパーティに選ばれてしまったのだ。
彼女は嫌な予感がした。
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