悪女はダンジョンから消えた

ありがとうございました。さようなら

文字の大きさ
10 / 26

悪女はダンジョンで裏切られる

しおりを挟む
悪女はダンジョンで裏切られる

 ダリアは公爵家の第一子として生まれた。
 公爵家のたった一人の娘として、溺愛されて育てられた彼女は、わがままいっぱいの癇癪持ちの令嬢にはならなかった。
 聡明で心が穏やかな令嬢に育った。
 そんな彼女に目をつけたのは王族だった。
 この国では国王になるには、一番年上の息子がなることに決まっていた。
 そのため、第一王子でもあるベリアルが皇太子に決まっていた。
 しかし、彼は利己的で冷淡な性格をしていて、国王になるには不安要素があった。
 そこで、穏やかで優しくて性格の良いダリアが、彼の内面の優しさが育つように婚約者として当てがわれた。

 この婚約は表面上はうまくいっていた。

 けれどダリアは、無力感が常にあった。
 どれだけ彼女が心を砕いても、ベリアルはいつも壁を作り心のうちを見せる事はなかったのだ。

 ベリアルは、品行方正な皇太子だったが、残虐性や身勝手さが垣間見えるたびにダリアは自分の未来が不安になっていた。

 そんなある日だった。

 義弟のミカエルが家にやってきたのだ。
 ダリアがベリアルと婚姻してしまえば、家を継ぐものがいなくなってしまうからだった。
 ダリアは、自分の「帰る場所」がなくなってしまうのを感じながらも、その不安は絶対に表に出さないようにしようと思った。

 ミカエルは、聡明でとても思慮深く優しい性格だったので、ダリアは仲良くできそうだと安堵した。

 けれど、一つの不安が頭に浮かんだ。

 ベリアルとは表面上は仲がいいものの、もしも、自分が邪魔な存在になった時に、間違いなく彼はダリアを排除するのが目に見えていたからだ。

 もしも、そうなった時、真っ先に槍玉に挙げられるのが、ミカエルとの関係性ではないか。と、思い至ったのだ。

 だから、彼女は、ミカエルにはあえて仲良くするのはやめましょう。と言った。

 それでも、ミカエルのことを家族として気に入ったダリアは、彼の好きなお菓子をこっそりと差し入れしたり。気付かれにくい交流を図っていた。

 もちろんミカエルもダリアに、ヴィンテージのお揃いのブローチを贈ったりしていた。

 つまり二人は話すことはできなかったけれど、とても仲良いい家族だったのだ。

 そして、ダリアの不安は的中した。

 リリスとベリアルは恋に落ちたのだ。
 そうなってからの王立学園の雰囲気は最悪だった。

 リリスは、政略結婚は間違っている。愛し合うことが大切だといい。
 それを間に受けた下位貴族は、婚約者に肉体関係を迫るような事件が多発した。
 もちろん、婚姻前の肉体関係は禁止されていないけれど、するべきではない。と、貴族間では取り決められていた。

 そうなるとそれを解決できるのは、ダリアしかいなかったため。
 彼女は必然的に、下位貴族に立ち振る舞いに対して注意をして回ることになってしまったのだ。

 ダリアに感謝するものもいれば、そうではないものもいる。
 ダリアが徒党を組んで下位貴族に圧力をかけて回ったように見えている者もいた。

 また、ダリアは風紀の乱れに対して、リリスの発言や行動が理由でもあるため、どうしても彼女に注意する必要があった。
 王族に次ぐ地位である聖女に物申したら、ただではすまない。
 彼女は友達と距離を取りあえて孤独になる道を選んだ。

 リリスに注意をする時は、教員に立ち会ってもらい。
 言いすぎた時は注意してもらうようにお願いした。
 何度か彼女は注意したが、リリスの行動は変わらなかった。

 ダリアが右往左往している間に、いつのまにか卒業が秒読みになり、追われるように卒業試験を受けた。

 その結果は学年一位だった。
 当然の結果でもあった。
 頭がいいと言われた。宰相令息のフェレスは、勉強をサボりがちになっていたのだ。
 サボっていたフェレスと真面目に勉強したダリア。当たり前と言えばその通りだった。
 しかし、彼らはその結果には納得していなかった。

 彼らは教師に掛け合い。ダリアの順位を抹消した。

「……申し訳ありません」

 順位を抹消したとダリアに伝えた時の教師の顔は一生忘れないだろう。
 申し訳なさと無力感に苛まれて苦しみに満ちた表情。あれを思い出すだけでダリアの胸が苦しくなる。

 再テストの結果は良かったので、卒業はできるらしくそこだけは良かった。
 もし、卒業できなかったとしても、一つ年下のミカエルと卒業する事になる。
 あとは、卒業を控えるだけだと思っていたダリアだったが、予想外のことが起こった。

 なぜか、卒業ダンジョンのパーティに選ばれてしまったのだ。
 彼女は嫌な予感がした。



 
 
~~~~

お読みくださりありがとうございます

お気に入り登録、しおり、感想、エール、いいねもらえると嬉しいです!
しおりを挟む
感想 79

あなたにおすすめの小説

9時から5時まで悪役令嬢

西野和歌
恋愛
「お前は動くとロクな事をしない、だからお前は悪役令嬢なのだ」 婚約者である第二王子リカルド殿下にそう言われた私は決意した。 ならば私は願い通りに動くのをやめよう。 学園に登校した朝九時から下校の夕方五時まで 昼休憩の一時間を除いて私は椅子から動く事を一切禁止した。 さあ望むとおりにして差し上げました。あとは王子の自由です。 どうぞ自らがヒロインだと名乗る彼女たちと仲良くして下さい。 卒業パーティーもご自身でおっしゃった通りに、彼女たちから選ぶといいですよ? なのにどうして私を部屋から出そうとするんですか? 嫌です、私は初めて自分のためだけの自由の時間を手に入れたんです。 今まで通り、全てあなたの願い通りなのに何が不満なのか私は知りません。 冷めた伯爵令嬢と逆襲された王子の話。 ☆別サイトにも掲載しています。 ※感想より続編リクエストがありましたので、突貫工事並みですが、留学編を追加しました。 これにて完結です。沢山の皆さまに感謝致します。

全てから捨てられた伯爵令嬢は。

毒島醜女
恋愛
姉ルヴィが「あんたの婚約者、寝取ったから!」と職場に押し込んできたユークレース・エーデルシュタイン。 更に職場のお局には強引にクビを言い渡されてしまう。 結婚する気がなかったとは言え、これからどうすればいいのかと途方に暮れる彼女の前に帝国人の迷子の子供が現れる。 彼を助けたことで、薄幸なユークレースの人生は大きく変わり始める。 通常の王国語は「」 帝国語=外国語は『』

婚約破棄と言われても、どうせ好き合っていないからどうでもいいですね

うさこ
恋愛
男爵令嬢の私には婚約者がいた。 伯爵子息の彼は帝都一の美麗と言われていた。そんな彼と私は平穏な学園生活を送るために、「契約婚約」を結んだ。 お互い好きにならない。三年間の契約。 それなのに、彼は私の前からいなくなった。婚約破棄を言い渡されて……。 でも私たちは好きあっていない。だから、別にどうでもいいはずなのに……。

デネブが死んだ

ありがとうございました。さようなら
恋愛
弟との思い出の土地で、ゆっくりと死を迎えるつもりのアデラインの隣の屋敷に、美しい夫婦がやってきた。 夫のアルビレオに強く惹かれるアデライン。 嫉妬心を抑えながら、妻のデネブと親友として接する。 アデラインは病弱のデネブを元気付けた。 原因となる病も完治した。それなのに。 ある日、デネブが死んだ。 ふわっとしてます

笑う令嬢は毒の杯を傾ける

無色
恋愛
 その笑顔は、甘い毒の味がした。  父親に虐げられ、義妹によって婚約者を奪われた令嬢は復讐のために毒を喰む。

婚約者に嫌われた伯爵令嬢は努力を怠らなかった

有川カナデ
恋愛
オリヴィア・ブレイジャー伯爵令嬢は、未来の公爵夫人を夢見て日々努力を重ねていた。その努力の方向が若干捻れていた頃、最愛の婚約者の口から拒絶の言葉を聞く。 何もかもが無駄だったと嘆く彼女の前に現れた、平民のルーカス。彼の助言のもと、彼女は変わる決意をする。 諸々ご都合主義、気軽に読んでください。数話で完結予定です。

貴方のことなんて愛していませんよ?~ハーレム要員だと思われていた私は、ただのビジネスライクな婚約者でした~

キョウキョウ
恋愛
妹、幼馴染、同級生など数多くの令嬢たちと愛し合っているランベルト王子は、私の婚約者だった。 ある日、ランベルト王子から婚約者の立場をとある令嬢に譲ってくれとお願いされた。 その令嬢とは、新しく増えた愛人のことである。 婚約破棄の手続きを進めて、私はランベルト王子の婚約者ではなくなった。 婚約者じゃなくなったので、これからは他人として振る舞います。 だから今後も、私のことを愛人の1人として扱ったり、頼ったりするのは止めて下さい。

【完結】ロザリンダ嬢の憂鬱~手紙も来ない 婚約者 vs シスコン 熾烈な争い

buchi
恋愛
後ろ盾となる両親の死後、婚約者が冷たい……ロザリンダは婚約者の王太子殿下フィリップの変容に悩んでいた。手紙もプレゼントも来ない上、夜会に出れば、他の令嬢たちに取り囲まれている。弟からはもう、婚約など止めてはどうかと助言され…… 視点が話ごとに変わります。タイトルに誰の視点なのか入っています(入ってない場合もある)。話ごとの文字数が違うのは、場面が変わるから(言い訳)

処理中です...