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テセウスは見ていた
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A級冒険者テセウスは、S級冒険者試験を控えていた。
そんな彼がダリアの護衛を引き受ける事になったのはたまたまだった。
ギルドから個別に依頼があったのだ。
S級冒険者を護衛として雇いたいけれど、長期間拘束される仕事は受け入れてくれないから、誰よりも強い冒険者を雇いたい。というものだった。
S級冒険者を雇いたいなんて、とんでもなくわがままな貴族だな。
テセウスは、貴族のわがままで大したことのない依頼だと思った。
けれど、「誰よりも強い」という譲歩の条件に対して悪い気がしなかったので依頼を受けることにした。
顔合わせの時、どうせ代理人が依頼に来るとテセウスは思っていた。
そこにやってきたのは恐ろしいほどに身なりのいい男だった。
……こいつ、間違いなく貴族だ。
今まで貴族からの依頼を受けた事は何度かあったが、全て代理人とのやり取りだった。
目の前の男の立ち振る舞いはどう見ても、洗練されていて高貴な身分の人間だとすぐにわかった。
「姉さんの護衛をお願いしたい。報酬は弾む。命の危険もあるかもしれない。面倒な事に巻き込まれるかもしれない。それでも、お願いだから断らないでほしい」
身なりのいい男は、銀色の髪の毛に青い瞳をしていて不安を隠せない様子だった。
目の前の男はおそらく冒険者の仕事を理解していない。
彼の言った事全てが冒険者にはよくある事だった。
……断られると思ってそれでも俺に頼みにきたんだよなぁ。断ったら可哀想だな。
A級冒険者の中で、テセウス以上に強い者はいないとテセウスは自負していた。
かなり厄介な仕事なのは見て取れた。
貴族が関わる仕事に碌なものはない。
それでも目の前の必死になって頼み込む男の情けない姿に、テセウスはその依頼を受けることにした。
こうしてテセウスはダリアの護衛につく事になった。
報酬が良かったのも引き受けた理由でもあった。
テセウスは誰にも気づかれないようにきっちりと護衛の義務を果たしていた。
ダリアを見ていたテセウスが真っ先に思った事は。
「可哀想」
だった。
味方もいない状況でやらなくてはならない事のために走り回っている。
本来なら風紀を守る人間達がそれを乱しているのだ。
「あれがトップならこの国も終わりだな」
テセウスはそんなことを思っていた。
それに、あれはなんなんだ。
殿下の護衛も担っている。騎士も魔術師もテセウスの気配に全く気がついていない。
自分の将来が決まっている驕りから来ているのだろうか。
「腐ってるな」
テセウスは吐き捨てた。
疲弊していくダリアの姿を見ながらテセウスは心を痛める。
卒業記念のダンジョンに潜入するのも彼にとっては容易いことだった。
「何にもないといいけどな」
今までの様子を見ると、王子たちがダリアに王妃として不適格になるようなことをしでかしそうな気がテセウスにはしていた。
それは一番最悪な形で実現された。
「いやいやいや、ダンジョンでモンスターキューブを解放するなって!」
皇太子たちはよりによってモンスターキューブを解放したのだ。
しかもそれはS級冒険者が複数人で連携しないと討伐できないヒドラだった。
ミノタウロスだのワイバーンだの奴らは騒いでいたけれど、そもそも彼らにそのどちらも討伐する技量はない。
どうすんだよ!これ!
テセウスが戦闘体制に入り。ダリアに向かおうとした瞬間。
奴らはダリアに向かって一斉に攻撃魔法を放ったのをテセウスは見た。
~~~~~
お読みくださりありがとうございます!
感想もらえると嬉しいです
昨日、子供のスポ少の大会があって忙しくて更新遅くなってごめんなさい!
そんな彼がダリアの護衛を引き受ける事になったのはたまたまだった。
ギルドから個別に依頼があったのだ。
S級冒険者を護衛として雇いたいけれど、長期間拘束される仕事は受け入れてくれないから、誰よりも強い冒険者を雇いたい。というものだった。
S級冒険者を雇いたいなんて、とんでもなくわがままな貴族だな。
テセウスは、貴族のわがままで大したことのない依頼だと思った。
けれど、「誰よりも強い」という譲歩の条件に対して悪い気がしなかったので依頼を受けることにした。
顔合わせの時、どうせ代理人が依頼に来るとテセウスは思っていた。
そこにやってきたのは恐ろしいほどに身なりのいい男だった。
……こいつ、間違いなく貴族だ。
今まで貴族からの依頼を受けた事は何度かあったが、全て代理人とのやり取りだった。
目の前の男の立ち振る舞いはどう見ても、洗練されていて高貴な身分の人間だとすぐにわかった。
「姉さんの護衛をお願いしたい。報酬は弾む。命の危険もあるかもしれない。面倒な事に巻き込まれるかもしれない。それでも、お願いだから断らないでほしい」
身なりのいい男は、銀色の髪の毛に青い瞳をしていて不安を隠せない様子だった。
目の前の男はおそらく冒険者の仕事を理解していない。
彼の言った事全てが冒険者にはよくある事だった。
……断られると思ってそれでも俺に頼みにきたんだよなぁ。断ったら可哀想だな。
A級冒険者の中で、テセウス以上に強い者はいないとテセウスは自負していた。
かなり厄介な仕事なのは見て取れた。
貴族が関わる仕事に碌なものはない。
それでも目の前の必死になって頼み込む男の情けない姿に、テセウスはその依頼を受けることにした。
こうしてテセウスはダリアの護衛につく事になった。
報酬が良かったのも引き受けた理由でもあった。
テセウスは誰にも気づかれないようにきっちりと護衛の義務を果たしていた。
ダリアを見ていたテセウスが真っ先に思った事は。
「可哀想」
だった。
味方もいない状況でやらなくてはならない事のために走り回っている。
本来なら風紀を守る人間達がそれを乱しているのだ。
「あれがトップならこの国も終わりだな」
テセウスはそんなことを思っていた。
それに、あれはなんなんだ。
殿下の護衛も担っている。騎士も魔術師もテセウスの気配に全く気がついていない。
自分の将来が決まっている驕りから来ているのだろうか。
「腐ってるな」
テセウスは吐き捨てた。
疲弊していくダリアの姿を見ながらテセウスは心を痛める。
卒業記念のダンジョンに潜入するのも彼にとっては容易いことだった。
「何にもないといいけどな」
今までの様子を見ると、王子たちがダリアに王妃として不適格になるようなことをしでかしそうな気がテセウスにはしていた。
それは一番最悪な形で実現された。
「いやいやいや、ダンジョンでモンスターキューブを解放するなって!」
皇太子たちはよりによってモンスターキューブを解放したのだ。
しかもそれはS級冒険者が複数人で連携しないと討伐できないヒドラだった。
ミノタウロスだのワイバーンだの奴らは騒いでいたけれど、そもそも彼らにそのどちらも討伐する技量はない。
どうすんだよ!これ!
テセウスが戦闘体制に入り。ダリアに向かおうとした瞬間。
奴らはダリアに向かって一斉に攻撃魔法を放ったのをテセウスは見た。
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感想もらえると嬉しいです
昨日、子供のスポ少の大会があって忙しくて更新遅くなってごめんなさい!
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