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ベリアル
「どうなっているんだ!」
ベリアルは余裕なく捜査官を怒鳴りつけた。
それに捜査官は気分よく微笑んだ。
「なぜこうなっているのか一番わかっているのは貴方ではありませんか?」
「……なぜリリスやフェレスに会えないんだ」
捜査官の質問に、ベリアルは質問で返した。
彼らと会って口裏でも合わせたいのだろう。
「ダンジョンでモンスターキューブを解放した疑いがありますからね。口裏合わせをさせないためですよ」
「何のことだ。身に覚えがない」
ベリアルは、本当に何も知らなかったような顔をした。
それが嘘であることは捜査官がよく知っている。
「皆さん、自白されているんですよね。貴方が首謀者だと証言しています」
捜査官が嘘を織り交ぜてベリアルに教えると、ベリアルは途端に申し訳なさそうに目を伏せた。
「……彼らを守るために否定してもダメだな」
ベリアルはしらを切るのはやめたようだ。
「確かにモンスターキューブを解放した。だが、私が首謀者ではない。そう、あれは、アイツらがダリアの事を疎んじるから適当に話を合わせただけだ」
しかし、あくまで自分は無実であるとベリアルは証言する。
「……こんな結果になるなんて思いもしなかったんだ」
ベリアルは、眉を下げて申し訳なさそうに俯いた。
自分だけは上手く罪から逃れようとする様子に捜査官は嫌悪感を持った。
「それは本気で言っているんですか?」
「私に落ち度はあったかもしれない。しかし、行動に移したのは彼らだ」
ベリアルはあくまで自分は悪くない。と言う。
それが嘘か事実か証明しようにも、証人になってくれる人は誰ひとりいないと彼は知っているから。
ベリアルは平気で嘘をつく。
だから、捜査官はベリアルに一つ大きな爆弾を落とすことにした。
「一つお知らせしたい事があります。ダンジョンは閉鎖する必要がなくなりました」
捜査官は、ベリアル達が何よりも望んでいた。ダンジョンの閉鎖をしない事を決めたと教えることにした。
「何だと!?ヒドラがいるのにか?」
「討伐はすでに済んでいます」
実はヒドラの討伐はすでに終わっている。
最悪の条件が重なってヒドラが彼らの手元に渡ってしまったけれど、最高の条件が重なりヒドラの討伐はすでに完了に至っていた。
「嘘をつくな!S級冒険者がいなければ討伐など無理だ!」
「たまたまS級冒険者の部隊がいたんですよ」
そう、ある任務でS級冒険者達が集まっていたのだ。
S級冒険者に昇格予定だったテセウスの貢献もかなり大きい。
おそらく彼がいなかったら被害を少なくしてヒドラの討伐なんてなし得なかったはずだ。
「貴方達は、とんでもないものに手を出しましたね」
そう、全ては彼らが手に入れたモンスターキューブのせいだった。
「貴方達が手に入れたモンスターキューブは死ぬまで働かされた聖女が作ったものです。S級冒険者がそれを探していたんですよ。解放されたらとんでもないことになりますからね」
「……」
ベリアルは黙り込んだ。
「もう、自分が皇太子ではいられないとわかりますよね?いや、王子という立場すらなくなるかもしれませんね」
ベリアルは項垂れる。
「確かに、ダンジョン内でモンスターキューブは解放したがダリアを殺害したとは証明されていない。彼女はダンジョンから消えたからな」
ベリアルはダンジョンにダリアの死体がない事を持ち出して、殺人を認めようとはしなかった。
殺人という罪が追加されるというのだけは阻止したいのだろう。
やらかしたことは冗談で済まなかった。しかし、結果論だが大きな問題にはならなかった。
ヒドラが討伐されたことを加味すると、ベリアルの罰としては王位継承権の剥奪程度で済むだろう。
しかし、ダリアを殺害しようとした事を認めたら、王子としての立場も危うくなる。
捜査官はベリアルがダリアを殺そうとした事を絶対に認めさせる証拠を持っていた。
「どうなっているんだ!」
ベリアルは余裕なく捜査官を怒鳴りつけた。
それに捜査官は気分よく微笑んだ。
「なぜこうなっているのか一番わかっているのは貴方ではありませんか?」
「……なぜリリスやフェレスに会えないんだ」
捜査官の質問に、ベリアルは質問で返した。
彼らと会って口裏でも合わせたいのだろう。
「ダンジョンでモンスターキューブを解放した疑いがありますからね。口裏合わせをさせないためですよ」
「何のことだ。身に覚えがない」
ベリアルは、本当に何も知らなかったような顔をした。
それが嘘であることは捜査官がよく知っている。
「皆さん、自白されているんですよね。貴方が首謀者だと証言しています」
捜査官が嘘を織り交ぜてベリアルに教えると、ベリアルは途端に申し訳なさそうに目を伏せた。
「……彼らを守るために否定してもダメだな」
ベリアルはしらを切るのはやめたようだ。
「確かにモンスターキューブを解放した。だが、私が首謀者ではない。そう、あれは、アイツらがダリアの事を疎んじるから適当に話を合わせただけだ」
しかし、あくまで自分は無実であるとベリアルは証言する。
「……こんな結果になるなんて思いもしなかったんだ」
ベリアルは、眉を下げて申し訳なさそうに俯いた。
自分だけは上手く罪から逃れようとする様子に捜査官は嫌悪感を持った。
「それは本気で言っているんですか?」
「私に落ち度はあったかもしれない。しかし、行動に移したのは彼らだ」
ベリアルはあくまで自分は悪くない。と言う。
それが嘘か事実か証明しようにも、証人になってくれる人は誰ひとりいないと彼は知っているから。
ベリアルは平気で嘘をつく。
だから、捜査官はベリアルに一つ大きな爆弾を落とすことにした。
「一つお知らせしたい事があります。ダンジョンは閉鎖する必要がなくなりました」
捜査官は、ベリアル達が何よりも望んでいた。ダンジョンの閉鎖をしない事を決めたと教えることにした。
「何だと!?ヒドラがいるのにか?」
「討伐はすでに済んでいます」
実はヒドラの討伐はすでに終わっている。
最悪の条件が重なってヒドラが彼らの手元に渡ってしまったけれど、最高の条件が重なりヒドラの討伐はすでに完了に至っていた。
「嘘をつくな!S級冒険者がいなければ討伐など無理だ!」
「たまたまS級冒険者の部隊がいたんですよ」
そう、ある任務でS級冒険者達が集まっていたのだ。
S級冒険者に昇格予定だったテセウスの貢献もかなり大きい。
おそらく彼がいなかったら被害を少なくしてヒドラの討伐なんてなし得なかったはずだ。
「貴方達は、とんでもないものに手を出しましたね」
そう、全ては彼らが手に入れたモンスターキューブのせいだった。
「貴方達が手に入れたモンスターキューブは死ぬまで働かされた聖女が作ったものです。S級冒険者がそれを探していたんですよ。解放されたらとんでもないことになりますからね」
「……」
ベリアルは黙り込んだ。
「もう、自分が皇太子ではいられないとわかりますよね?いや、王子という立場すらなくなるかもしれませんね」
ベリアルは項垂れる。
「確かに、ダンジョン内でモンスターキューブは解放したがダリアを殺害したとは証明されていない。彼女はダンジョンから消えたからな」
ベリアルはダンジョンにダリアの死体がない事を持ち出して、殺人を認めようとはしなかった。
殺人という罪が追加されるというのだけは阻止したいのだろう。
やらかしたことは冗談で済まなかった。しかし、結果論だが大きな問題にはならなかった。
ヒドラが討伐されたことを加味すると、ベリアルの罰としては王位継承権の剥奪程度で済むだろう。
しかし、ダリアを殺害しようとした事を認めたら、王子としての立場も危うくなる。
捜査官はベリアルがダリアを殺そうとした事を絶対に認めさせる証拠を持っていた。
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