悪女はダンジョンから消えた

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卒業ダンジョン1

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卒業ダンジョン

 一人ずつ視点が変わります!

 リリスは、魅了を使えないように封印されて牢屋で拘束されていた。

「おかしいじゃない。なんで、私がこんな目にあっているの。私は聖女なのに」

 実のところリリスは魅了の力を使い聖女になったのだが、彼女はそんなことすら忘れていた。
 もしも、彼女に向上心があったのなら魅了の力を使わないで、努力をして上位の神官になれたはずだった。
 
 彼女はいつまでも神殿から助けが来ると信じていた。
 神殿はというとリリスを聖女にした事への糾弾を受けていて、その後始末でそれどころではなかった。
 正直なところ。彼女を「処分」してくれるなら誰でもいい。とすら考えていた。

 そんな事などリリスは知らない。

 ある日の事だった。

「出ろ」

 リリスは牢屋から出された。
 それと同時に魅了の封印まで解かれたのだ。

「早く神殿に帰して!」

 リリスが必死になって訴えるが、聞き入れられず荷馬車に押し込められた。

「お前にはお勤めがある」
「お勤め……?」
「やり残したコトがあるだろう?」

 やり残した事とはなんだろう。
 リリスは、戸惑った。
 荷馬車に揺られながら、到着したのは見覚えのある場所だった。
 そこにいたのは、かつての卒業ダンジョンのパーティメンバーだった。
 みんなやつれていて、薄汚れていた。
 そういえば、ベリアル以外は廃嫡や地位を奪われた。と聞いた。

「リリス!」

 ベリアルに声をかけられて、リリスは嬉しくなった。
 ベリアルは、やつれているものの身なりは綺麗で、王子として扱われているのが見て取れたからだ。

「ベリアル!ねえ、私、皇太子妃じゃなくても王子妃でもいいわよ」

 リリスは周囲の様子など目に入らない様子で嬉しそうに微笑んだ。
 きっと、彼女なりの譲歩のつもりなのだろう。

「……」
 
 ベリアルは無表情でリリスの顔を勢いよく叩いた。

「すべてお前のせいだ!」

 頬を勢いよく叩かれたリリスはその場に倒れた。
 彼女はなぜベリアルが怒っているのか理解できなかった。

「な、何を言っているの?」
「お前のせいだ。お前がダリアを殺そうとみんなを唆さなければこんな事にはならなかった!」

 確かにダリアを殺そうとリリスは言ったが同意したのは彼らだ。
 彼らだって同罪なのに……。

 リリスは恐る恐る顔を上げて彼らを見ると、誰一人として彼女を見ることはなかった。

「ベリアル様はいいですよ。王位継承権はなくしたけど王子のままなんですから。僕たちは貴族ですらないんですよ」

 フェレスが今にも泣き出しそうな顔をしていた。

「だから、チャンスを与えるんだ」

 見覚えのある。というか、リリスたちを地獄に叩き落とした男。……捜査官が声をかけてきた。

「この卒業ダンジョンをクリアできたら平民としてでも巻き返しができる。協力して攻略するんだ」

 恐ろしいほどに冷えた目でリリスたちに声をかけてきた。
 ベリアル達以外に人はいるけれど、知った顔は誰一人としておらず。
 リリスは嫌な予感がした。

「さっさと終わらせよう。どうせ初級のダンジョンなんだ」

 クロノスはそう言いながら、リリスをかなり強引に立ち上がらせた。

「早く行けよ!お前のせいでこうなったんだから先頭はお前だ!」

 リリスは、フェレスやマモンに助けを求めようと目線を向けたけれど、彼らは信じられないほどに冷めた目でリリスを見ている。
 リリスはもう誰も助けてくれないのだと察した。

 けれど、卒業ダンジョンさえ上手くいけばなんとかなる。と、楽天的に考えていた。

「っ!」

 クロノスに何度も蹴りを入れられながらリリスはダンジョンの奥へと向かった。
 ヒドラが一時的にいた割にモンスターは弱く何とかリリス一人で退治できていた。

 ダンジョンの最下層へと到着して、リリスは自分の目を疑った。
 そこにいたのはミノタウロスだった。

「あ、何で」

 リリスは驚いて腰を抜かした。
 ミノタウロスは、リリスを見るなり咆哮を上げて当然興奮状態になった。

「クソ、こいつの魅了のせいか」
「おい、時間稼ぎしてろ!」

 ベリアルが悪態をつき、クロノスはリリスをミノタウロスの目の前に彼女を蹴り出した。

「あ、やだ来ないで」

 リリスは腰を抜かしてしまい。動く事ができなかった。

「……!」

 ミノタウロスは、目にも止まらぬ早さでリリスの首を掴みそのまま持ち上げた。
 リリスは、首の骨が折れる音を感じながら意識を真っ黒に染めた。
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