22 / 26
卒業ダンジョン
しおりを挟む
卒業ダンジョン2
マモンは潜在的な魔力量の多さから、いずれは魔術師団長になることが有力視されていた。
昨今、能力のある魔術師達が冒険者へと流れていくことが問題視されていて、マモンという存在は魔術師団にとっては救世主でもあった。
持て囃されたマモンは努力をしなかった。
それでも周囲は、マモンに強く言うことはしなかった。
彼が冒険者になることを止めたかったからだ。
このままではと危惧した魔術師達は、新しくダンジョンを発見した家門とマモンとの婚約を取り付けた。
今のままでは魔術師団の存続の危機もあったからだった。
婚約の重要性について魔術師達は、懇切丁寧にマモンに説明した。
しかしマモンは、自分の実力不足を不甲斐なく思うどころか、勝手に婚約を決めた魔術師達や婚約者に対して怒りを覚えただけだった。
なぜ、なぜ自由が基本の魔術師団なのに、僕は勝手に婚約者を決められたんだ!
アイツら好き勝手するために、僕を生贄にして婚約を決めたんだな!
いや、僕を魔術師団に縛り付けるために婚約者を決めたのかもしれない。
マモンは、自分の能力を過信していた。
だからこそ恐ろしいほどに勘違いをしていた。
これで、何かのきっかけがあって己の身を顧みる事があれば、彼は次期魔術師団長としての責任感を持ち自己研鑽と婚約者との関係の改善の為に努力をしたのかもしれない。
しかし、それはなかった。
彼はリリスと出会ってしまったのだ。
リリスは、純粋さの中に妖艶さを隠し持った魅惑的な少女だった。
艶やかな漆黒の髪の毛に、濡れた漆黒の瞳。
その瞳に映し出される自分は、誰よりも素晴らしい人間にマモンは見えたのだ。
それが魅了の力だとも彼は知らずに。
マモンは最低限の努力すらしなくなった。
婚約者には辛く当たるようになっていった。
それでも、次期魔術師団長候補としての自覚は、少なからずあったマモンは婚約者と婚姻した後にお飾りの妻としてリリスへの操を立てようとしていた。
そんなある日だった。リリスは、「仲間達」の前で涙をこぼしながらこう言い出した。
「私、やっぱりベリアル様の一番になりたい」
マモンのリリスへの愛は叶わないものだと思っていた。
それでも、彼女を幸せにしてあげたかった。
だから「仲間達」は、ダリアを殺そうと考えた。
「モンスターキューブを解放させよう」
フェレスが禁止されている事を提案してきた。
「それは、絶対にしてはいけないことだ」
マモンはそれを止めようとしたが、クロノスは「腰抜けが」とマモンの事を嘲笑った。
「バレなければ何も問題ないはずです」
「モンスターさえ倒せば消えてしまうものね」
同意するリリスを見たマモンは何も言えなくなった。
強いモンスターを解放しても討伐できなければ意味がない。
マモンは「ミノタウロスならクロノスと二人で討伐出来る」と、仲間に伝えた。
しかし、その結果は……。
マモンは、ヒドラをダンジョンで解放した罰として魔術師団から除名された。
それでも、身柄は保護されていたので、ほとぼりが冷めればまた元通りになると彼は信じていた。
しかし、彼に待っていたのは卒業ダンジョンだった。
ダンジョンまで送ってくれたかつて友達だった魔術師はマモンにこう言った。
「このダンジョン攻略さえ成功させれば冒険者として生きていけるから」
と、マモンはその言葉に縋りついた。
しかし、目の前にいるミノタウロスにマモンは絶望した。
「リリス!」
マモンは絶命したリリスの名前を呼んだ。
クロノスと自分が協力すればミノタウロスなら倒す事ができたのに、それをしなかった。
見殺しにしたようなものだ。
「マモン、連携を取るぞ。リリスが時間稼ぎをしてくれたから倒せるはずだ。今、魔法を放て」
いや、無理だ倒せない。
マモンは本能的にそれが無理であることを悟った。
ミノタウロスの方が自分達よりも遥かに格上だ。
その上、リリスの魅了の能力がミノタウロスの神経を逆撫でして興奮状態にさせてしまった。
つまり、状況を最悪なものにさせてしまったのだ。
魔法を放ったところで、意味がない。
ミノタウロスをさらに怒らせるだけだ。
「何をしている!早くやるんだ!このまま戻ったところでお前に居場所があるのか?」
フェレスの言葉はマモンの心を抉った。
確かにその通りだった。
マモンは自分を叱咤して攻撃魔法をミノタウロスに放った。
「行け!」
攻撃魔法がミノタウロスに到達する前に、マモンの首は吹き飛んだ。
マモンは自分の立ったままの胴体を不思議に見つめながら絶命した。
~~~~
お読みくださりありがとうございます!
そろそろ終わりが近づいてますね!
新作書いてます
ヒーローを殺害予告して殺しに行って返り討ちに遭うヒロインの話です!
マモンは潜在的な魔力量の多さから、いずれは魔術師団長になることが有力視されていた。
昨今、能力のある魔術師達が冒険者へと流れていくことが問題視されていて、マモンという存在は魔術師団にとっては救世主でもあった。
持て囃されたマモンは努力をしなかった。
それでも周囲は、マモンに強く言うことはしなかった。
彼が冒険者になることを止めたかったからだ。
このままではと危惧した魔術師達は、新しくダンジョンを発見した家門とマモンとの婚約を取り付けた。
今のままでは魔術師団の存続の危機もあったからだった。
婚約の重要性について魔術師達は、懇切丁寧にマモンに説明した。
しかしマモンは、自分の実力不足を不甲斐なく思うどころか、勝手に婚約を決めた魔術師達や婚約者に対して怒りを覚えただけだった。
なぜ、なぜ自由が基本の魔術師団なのに、僕は勝手に婚約者を決められたんだ!
アイツら好き勝手するために、僕を生贄にして婚約を決めたんだな!
いや、僕を魔術師団に縛り付けるために婚約者を決めたのかもしれない。
マモンは、自分の能力を過信していた。
だからこそ恐ろしいほどに勘違いをしていた。
これで、何かのきっかけがあって己の身を顧みる事があれば、彼は次期魔術師団長としての責任感を持ち自己研鑽と婚約者との関係の改善の為に努力をしたのかもしれない。
しかし、それはなかった。
彼はリリスと出会ってしまったのだ。
リリスは、純粋さの中に妖艶さを隠し持った魅惑的な少女だった。
艶やかな漆黒の髪の毛に、濡れた漆黒の瞳。
その瞳に映し出される自分は、誰よりも素晴らしい人間にマモンは見えたのだ。
それが魅了の力だとも彼は知らずに。
マモンは最低限の努力すらしなくなった。
婚約者には辛く当たるようになっていった。
それでも、次期魔術師団長候補としての自覚は、少なからずあったマモンは婚約者と婚姻した後にお飾りの妻としてリリスへの操を立てようとしていた。
そんなある日だった。リリスは、「仲間達」の前で涙をこぼしながらこう言い出した。
「私、やっぱりベリアル様の一番になりたい」
マモンのリリスへの愛は叶わないものだと思っていた。
それでも、彼女を幸せにしてあげたかった。
だから「仲間達」は、ダリアを殺そうと考えた。
「モンスターキューブを解放させよう」
フェレスが禁止されている事を提案してきた。
「それは、絶対にしてはいけないことだ」
マモンはそれを止めようとしたが、クロノスは「腰抜けが」とマモンの事を嘲笑った。
「バレなければ何も問題ないはずです」
「モンスターさえ倒せば消えてしまうものね」
同意するリリスを見たマモンは何も言えなくなった。
強いモンスターを解放しても討伐できなければ意味がない。
マモンは「ミノタウロスならクロノスと二人で討伐出来る」と、仲間に伝えた。
しかし、その結果は……。
マモンは、ヒドラをダンジョンで解放した罰として魔術師団から除名された。
それでも、身柄は保護されていたので、ほとぼりが冷めればまた元通りになると彼は信じていた。
しかし、彼に待っていたのは卒業ダンジョンだった。
ダンジョンまで送ってくれたかつて友達だった魔術師はマモンにこう言った。
「このダンジョン攻略さえ成功させれば冒険者として生きていけるから」
と、マモンはその言葉に縋りついた。
しかし、目の前にいるミノタウロスにマモンは絶望した。
「リリス!」
マモンは絶命したリリスの名前を呼んだ。
クロノスと自分が協力すればミノタウロスなら倒す事ができたのに、それをしなかった。
見殺しにしたようなものだ。
「マモン、連携を取るぞ。リリスが時間稼ぎをしてくれたから倒せるはずだ。今、魔法を放て」
いや、無理だ倒せない。
マモンは本能的にそれが無理であることを悟った。
ミノタウロスの方が自分達よりも遥かに格上だ。
その上、リリスの魅了の能力がミノタウロスの神経を逆撫でして興奮状態にさせてしまった。
つまり、状況を最悪なものにさせてしまったのだ。
魔法を放ったところで、意味がない。
ミノタウロスをさらに怒らせるだけだ。
「何をしている!早くやるんだ!このまま戻ったところでお前に居場所があるのか?」
フェレスの言葉はマモンの心を抉った。
確かにその通りだった。
マモンは自分を叱咤して攻撃魔法をミノタウロスに放った。
「行け!」
攻撃魔法がミノタウロスに到達する前に、マモンの首は吹き飛んだ。
マモンは自分の立ったままの胴体を不思議に見つめながら絶命した。
~~~~
お読みくださりありがとうございます!
そろそろ終わりが近づいてますね!
新作書いてます
ヒーローを殺害予告して殺しに行って返り討ちに遭うヒロインの話です!
1,456
あなたにおすすめの小説
9時から5時まで悪役令嬢
西野和歌
恋愛
「お前は動くとロクな事をしない、だからお前は悪役令嬢なのだ」
婚約者である第二王子リカルド殿下にそう言われた私は決意した。
ならば私は願い通りに動くのをやめよう。
学園に登校した朝九時から下校の夕方五時まで
昼休憩の一時間を除いて私は椅子から動く事を一切禁止した。
さあ望むとおりにして差し上げました。あとは王子の自由です。
どうぞ自らがヒロインだと名乗る彼女たちと仲良くして下さい。
卒業パーティーもご自身でおっしゃった通りに、彼女たちから選ぶといいですよ?
なのにどうして私を部屋から出そうとするんですか?
嫌です、私は初めて自分のためだけの自由の時間を手に入れたんです。
今まで通り、全てあなたの願い通りなのに何が不満なのか私は知りません。
冷めた伯爵令嬢と逆襲された王子の話。
☆別サイトにも掲載しています。
※感想より続編リクエストがありましたので、突貫工事並みですが、留学編を追加しました。
これにて完結です。沢山の皆さまに感謝致します。
全てから捨てられた伯爵令嬢は。
毒島醜女
恋愛
姉ルヴィが「あんたの婚約者、寝取ったから!」と職場に押し込んできたユークレース・エーデルシュタイン。
更に職場のお局には強引にクビを言い渡されてしまう。
結婚する気がなかったとは言え、これからどうすればいいのかと途方に暮れる彼女の前に帝国人の迷子の子供が現れる。
彼を助けたことで、薄幸なユークレースの人生は大きく変わり始める。
通常の王国語は「」
帝国語=外国語は『』
婚約破棄と言われても、どうせ好き合っていないからどうでもいいですね
うさこ
恋愛
男爵令嬢の私には婚約者がいた。
伯爵子息の彼は帝都一の美麗と言われていた。そんな彼と私は平穏な学園生活を送るために、「契約婚約」を結んだ。
お互い好きにならない。三年間の契約。
それなのに、彼は私の前からいなくなった。婚約破棄を言い渡されて……。
でも私たちは好きあっていない。だから、別にどうでもいいはずなのに……。
デネブが死んだ
ありがとうございました。さようなら
恋愛
弟との思い出の土地で、ゆっくりと死を迎えるつもりのアデラインの隣の屋敷に、美しい夫婦がやってきた。
夫のアルビレオに強く惹かれるアデライン。
嫉妬心を抑えながら、妻のデネブと親友として接する。
アデラインは病弱のデネブを元気付けた。
原因となる病も完治した。それなのに。
ある日、デネブが死んだ。
ふわっとしてます
婚約者に嫌われた伯爵令嬢は努力を怠らなかった
有川カナデ
恋愛
オリヴィア・ブレイジャー伯爵令嬢は、未来の公爵夫人を夢見て日々努力を重ねていた。その努力の方向が若干捻れていた頃、最愛の婚約者の口から拒絶の言葉を聞く。
何もかもが無駄だったと嘆く彼女の前に現れた、平民のルーカス。彼の助言のもと、彼女は変わる決意をする。
諸々ご都合主義、気軽に読んでください。数話で完結予定です。
貴方のことなんて愛していませんよ?~ハーレム要員だと思われていた私は、ただのビジネスライクな婚約者でした~
キョウキョウ
恋愛
妹、幼馴染、同級生など数多くの令嬢たちと愛し合っているランベルト王子は、私の婚約者だった。
ある日、ランベルト王子から婚約者の立場をとある令嬢に譲ってくれとお願いされた。
その令嬢とは、新しく増えた愛人のことである。
婚約破棄の手続きを進めて、私はランベルト王子の婚約者ではなくなった。
婚約者じゃなくなったので、これからは他人として振る舞います。
だから今後も、私のことを愛人の1人として扱ったり、頼ったりするのは止めて下さい。
【完結】ロザリンダ嬢の憂鬱~手紙も来ない 婚約者 vs シスコン 熾烈な争い
buchi
恋愛
後ろ盾となる両親の死後、婚約者が冷たい……ロザリンダは婚約者の王太子殿下フィリップの変容に悩んでいた。手紙もプレゼントも来ない上、夜会に出れば、他の令嬢たちに取り囲まれている。弟からはもう、婚約など止めてはどうかと助言され……
視点が話ごとに変わります。タイトルに誰の視点なのか入っています(入ってない場合もある)。話ごとの文字数が違うのは、場面が変わるから(言い訳)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる