悪女はダンジョンから消えた

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卒業ダンジョン

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卒業ダンジョン2

 マモンは潜在的な魔力量の多さから、いずれは魔術師団長になることが有力視されていた。
 昨今、能力のある魔術師達が冒険者へと流れていくことが問題視されていて、マモンという存在は魔術師団にとっては救世主でもあった。
 持て囃されたマモンは努力をしなかった。
 それでも周囲は、マモンに強く言うことはしなかった。
 彼が冒険者になることを止めたかったからだ。
 このままではと危惧した魔術師達は、新しくダンジョンを発見した家門とマモンとの婚約を取り付けた。
 今のままでは魔術師団の存続の危機もあったからだった。
 婚約の重要性について魔術師達は、懇切丁寧にマモンに説明した。
 しかしマモンは、自分の実力不足を不甲斐なく思うどころか、勝手に婚約を決めた魔術師達や婚約者に対して怒りを覚えただけだった。

 なぜ、なぜ自由が基本の魔術師団なのに、僕は勝手に婚約者を決められたんだ!
 アイツら好き勝手するために、僕を生贄にして婚約を決めたんだな!
 いや、僕を魔術師団に縛り付けるために婚約者を決めたのかもしれない。

 マモンは、自分の能力を過信していた。
 だからこそ恐ろしいほどに勘違いをしていた。

 これで、何かのきっかけがあって己の身を顧みる事があれば、彼は次期魔術師団長としての責任感を持ち自己研鑽と婚約者との関係の改善の為に努力をしたのかもしれない。
 しかし、それはなかった。
 彼はリリスと出会ってしまったのだ。
 リリスは、純粋さの中に妖艶さを隠し持った魅惑的な少女だった。
 艶やかな漆黒の髪の毛に、濡れた漆黒の瞳。
 その瞳に映し出される自分は、誰よりも素晴らしい人間にマモンは見えたのだ。
 それが魅了の力だとも彼は知らずに。
 マモンは最低限の努力すらしなくなった。
 婚約者には辛く当たるようになっていった。

 それでも、次期魔術師団長候補としての自覚は、少なからずあったマモンは婚約者と婚姻した後にお飾りの妻としてリリスへの操を立てようとしていた。

 そんなある日だった。リリスは、「仲間達」の前で涙をこぼしながらこう言い出した。

「私、やっぱりベリアル様の一番になりたい」

 マモンのリリスへの愛は叶わないものだと思っていた。
 それでも、彼女を幸せにしてあげたかった。
 だから「仲間達」は、ダリアを殺そうと考えた。

「モンスターキューブを解放させよう」

 フェレスが禁止されている事を提案してきた。

「それは、絶対にしてはいけないことだ」

 マモンはそれを止めようとしたが、クロノスは「腰抜けが」とマモンの事を嘲笑った。

「バレなければ何も問題ないはずです」
「モンスターさえ倒せば消えてしまうものね」
 
 同意するリリスを見たマモンは何も言えなくなった。
 強いモンスターを解放しても討伐できなければ意味がない。
 マモンは「ミノタウロスならクロノスと二人で討伐出来る」と、仲間に伝えた。

 しかし、その結果は……。

 マモンは、ヒドラをダンジョンで解放した罰として魔術師団から除名された。
 それでも、身柄は保護されていたので、ほとぼりが冷めればまた元通りになると彼は信じていた。

 しかし、彼に待っていたのは卒業ダンジョンだった。

 ダンジョンまで送ってくれたかつて友達だった魔術師はマモンにこう言った。

「このダンジョン攻略さえ成功させれば冒険者として生きていけるから」

 と、マモンはその言葉に縋りついた。

 しかし、目の前にいるミノタウロスにマモンは絶望した。
 
「リリス!」

 マモンは絶命したリリスの名前を呼んだ。
 クロノスと自分が協力すればミノタウロスなら倒す事ができたのに、それをしなかった。
 見殺しにしたようなものだ。

「マモン、連携を取るぞ。リリスが時間稼ぎをしてくれたから倒せるはずだ。今、魔法を放て」

 いや、無理だ倒せない。
 マモンは本能的にそれが無理であることを悟った。
 ミノタウロスの方が自分達よりも遥かに格上だ。
 その上、リリスの魅了の能力がミノタウロスの神経を逆撫でして興奮状態にさせてしまった。
 つまり、状況を最悪なものにさせてしまったのだ。

 魔法を放ったところで、意味がない。
 ミノタウロスをさらに怒らせるだけだ。

「何をしている!早くやるんだ!このまま戻ったところでお前に居場所があるのか?」

 フェレスの言葉はマモンの心を抉った。
 確かにその通りだった。
 マモンは自分を叱咤して攻撃魔法をミノタウロスに放った。

「行け!」

 攻撃魔法がミノタウロスに到達する前に、マモンの首は吹き飛んだ。
 マモンは自分の立ったままの胴体を不思議に見つめながら絶命した。






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お読みくださりありがとうございます!

そろそろ終わりが近づいてますね!

新作書いてます
ヒーローを殺害予告して殺しに行って返り討ちに遭うヒロインの話です!
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