2 / 25
八方美人のヒーロー
しおりを挟む
メイドに連れて行かれて、私は部屋へと戻った。
使用人は、私に対して最低限のことはしてくれるが、優しいわけではない。
それは、私が貴族だからだ。
不貞の子供だと疑われてるが、それは、あくまでも疑惑があるだけ。
そもそも、私の顔立ちは父によく似ているので、不貞などあり得ないのだ。
微妙な立ち位置ではあるけれど、どの方向へ転がるかわからないからこそ、最低限の礼儀はつくしてくれている。
……物を盗んだり、危害を加えないだけマシよね。
私を部屋へと連れてきたメイドが身支度を整えてくれているが、「仕事」としてそれをこなしてくれている。
母に叩かれた頬は、赤く腫れているが化粧のおかげで赤みは目立たなくなっていた。
「アルシェ家のクロード様がきました」
声がかかり、私は応接間へと向かった。
「久しぶりだね。アイオラ嬢」
クロードが人好きのする笑みを浮かべる。
アルシェ家の爵位は、カドラ家と同じ伯爵だ。
祖父同士が仲が良く。生まれた子供の年齢があえば婚姻させよう。という、口約束から私とクロードの婚約は生まれる前から決まっていた。
クロードは金髪碧眼の彼は心優しき王子様のような見た目をしている。
実際に、彼は「婚約者だった時のアイオラ」に対しては、冷たく接することはなかった。
どちらかというと優しかったと思う。
だから、アイオラはクロードに執着してしまった。
この物語のヒーローはクロードだ。
「クロード様。お久しぶりです」
私が笑みを浮かべると、クロードは笑みを崩すことなく私の顔を見ている。
腫れがあっている頬に気がつかないはずがないのに。
「お元気そうですね」
クロードは、何も見えていないかのようにそう言った。
「何一つ変わらずです」
母は私に辛く当たり。他の家族はそれを見て見ぬふりをしている。
そして、婚約者ですら心を通わせるつもりもない様子なのが見て取れる。
何一つ変わらない地獄みたいな状況だ。
今なら、物語の中でアイオラが傲慢で性悪な女だった理由がわかるような気がした。
孤独だったのだ。誰からも愛されず。人の愛し方も知らない。
見せかけの優しさに縋りつき執着した。アイオラは、どれだけ寂しく悲しい思いをして生きてきたのだろうか。
彼女はなるべくして悪女になったのだと私は思う。
「クロード様!」
私の思考を遮るように、明るい声が応接間に響いた。
妹のシエナの声だ。
「クロード様!お会いしたかったです」
シエナは、私など見えない様子でクロードの隣に座る。
クロードは少し戸惑った様子で、笑みを浮かべる。
「シエナ嬢。お久しぶりですね」
こうして、二人だけの時間が始まった。
私はそれを冷めた目で見ながら立ち上がる。
「気分が悪いので部屋に戻ります」
シエナは、ようやく私の存在に気がついた様子で、意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「あら、いらしていたの?」
彼女が私を透明人間にするのはいつものことだ。
人前でそれをするのはどうかと思うのだけれど。
「ええ、ずっといました」
「アイオラ嬢、大丈夫ですか?」
私がにっこりと笑い返すと、クロードが気遣わしげな顔で問いかけてきた。
これも、いつものことだ。
婚約者が交代する可能性は高く。だから、どちらに対してもいい顔をしないといけないのだ。
シエナの顔が悔しげに歪むのがわかる。
本当に最低な男だ。誰に対してもいい顔をしようとする。
「お気になさらず。では失礼します。ごゆっくりお過ごしください」
部屋に戻り。ベッドに横になり目を閉じる。
これから自分はどうしたらいいのか考えなくてはいけない。
傲慢な聖女にならなくても、このままでは「悪役」に仕立て上げられる可能性が高い。
なぜなら、この物語そのものが、カオリのための物語になっているからだ。
使用人は、私に対して最低限のことはしてくれるが、優しいわけではない。
それは、私が貴族だからだ。
不貞の子供だと疑われてるが、それは、あくまでも疑惑があるだけ。
そもそも、私の顔立ちは父によく似ているので、不貞などあり得ないのだ。
微妙な立ち位置ではあるけれど、どの方向へ転がるかわからないからこそ、最低限の礼儀はつくしてくれている。
……物を盗んだり、危害を加えないだけマシよね。
私を部屋へと連れてきたメイドが身支度を整えてくれているが、「仕事」としてそれをこなしてくれている。
母に叩かれた頬は、赤く腫れているが化粧のおかげで赤みは目立たなくなっていた。
「アルシェ家のクロード様がきました」
声がかかり、私は応接間へと向かった。
「久しぶりだね。アイオラ嬢」
クロードが人好きのする笑みを浮かべる。
アルシェ家の爵位は、カドラ家と同じ伯爵だ。
祖父同士が仲が良く。生まれた子供の年齢があえば婚姻させよう。という、口約束から私とクロードの婚約は生まれる前から決まっていた。
クロードは金髪碧眼の彼は心優しき王子様のような見た目をしている。
実際に、彼は「婚約者だった時のアイオラ」に対しては、冷たく接することはなかった。
どちらかというと優しかったと思う。
だから、アイオラはクロードに執着してしまった。
この物語のヒーローはクロードだ。
「クロード様。お久しぶりです」
私が笑みを浮かべると、クロードは笑みを崩すことなく私の顔を見ている。
腫れがあっている頬に気がつかないはずがないのに。
「お元気そうですね」
クロードは、何も見えていないかのようにそう言った。
「何一つ変わらずです」
母は私に辛く当たり。他の家族はそれを見て見ぬふりをしている。
そして、婚約者ですら心を通わせるつもりもない様子なのが見て取れる。
何一つ変わらない地獄みたいな状況だ。
今なら、物語の中でアイオラが傲慢で性悪な女だった理由がわかるような気がした。
孤独だったのだ。誰からも愛されず。人の愛し方も知らない。
見せかけの優しさに縋りつき執着した。アイオラは、どれだけ寂しく悲しい思いをして生きてきたのだろうか。
彼女はなるべくして悪女になったのだと私は思う。
「クロード様!」
私の思考を遮るように、明るい声が応接間に響いた。
妹のシエナの声だ。
「クロード様!お会いしたかったです」
シエナは、私など見えない様子でクロードの隣に座る。
クロードは少し戸惑った様子で、笑みを浮かべる。
「シエナ嬢。お久しぶりですね」
こうして、二人だけの時間が始まった。
私はそれを冷めた目で見ながら立ち上がる。
「気分が悪いので部屋に戻ります」
シエナは、ようやく私の存在に気がついた様子で、意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「あら、いらしていたの?」
彼女が私を透明人間にするのはいつものことだ。
人前でそれをするのはどうかと思うのだけれど。
「ええ、ずっといました」
「アイオラ嬢、大丈夫ですか?」
私がにっこりと笑い返すと、クロードが気遣わしげな顔で問いかけてきた。
これも、いつものことだ。
婚約者が交代する可能性は高く。だから、どちらに対してもいい顔をしないといけないのだ。
シエナの顔が悔しげに歪むのがわかる。
本当に最低な男だ。誰に対してもいい顔をしようとする。
「お気になさらず。では失礼します。ごゆっくりお過ごしください」
部屋に戻り。ベッドに横になり目を閉じる。
これから自分はどうしたらいいのか考えなくてはいけない。
傲慢な聖女にならなくても、このままでは「悪役」に仕立て上げられる可能性が高い。
なぜなら、この物語そのものが、カオリのための物語になっているからだ。
575
あなたにおすすめの小説
【完結】王位に拘る元婚約者様へ
凛 伊緒
恋愛
公爵令嬢ラリエット・ゼンキースア、18歳。
青みがかった銀の髪に、金の瞳を持っている。ラリエットは誰が見ても美しいと思える美貌の持ち主だが、『闇魔法使い』が故に酷い扱いを受けていた。
虐げられ、食事もろくに与えられない。
それらの行為の理由は、闇魔法に対する恐怖からか、或いは彼女に対する嫉妬か……。
ラリエットには、5歳の頃に婚約した婚約者がいた。
名はジルファー・アンドレイズ。このアンドレイズ王国の王太子だった。
しかし8歳の時、ラリエットの魔法適正が《闇》だということが発覚する。これが、全ての始まりだった──
婚約破棄された公爵令嬢ラリエットが名前を変え、とある事情から再び王城に戻り、王太子にざまぁするまでの物語──
※ご感想・ご指摘 等につきましては、近況ボードをご確認くださいませ。
【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい
春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。
そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか?
婚約者が不貞をしたのは私のせいで、
婚約破棄を命じられたのも私のせいですって?
うふふ。面白いことを仰いますわね。
※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。
※カクヨムにも投稿しています。
【完結】姉を追い出して当主になった悪女ですが、何か?
堀多 ボルダ
恋愛
「お姉様、このマクレディ伯爵家は私が後を継ぎます。お姉様は邪魔なので今すぐこの家から出ていってください」
両親の急逝後、伯爵家を切り盛りしていた姉を強引に追い出して妹ダリアは当主となった。しかし、それが原因で社交界からは稀代の悪女として嫌われるようになった。
そんな彼女の元を訪ねたのは、婿に来てほしい男ナンバーワンと噂される、社交界で人気の高い幼馴染だった……。
◆架空の世界にある架空の国が舞台の架空のお話です。
◆カクヨムにも掲載しています。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
【完結】私の婚約者の、自称健康な幼なじみ。
❄️冬は つとめて
恋愛
「ルミナス、すまない。カノンが…… 」
「大丈夫ですの? カノン様は。」
「本当にすまない。ルミナス。」
ルミナスの婚約者のオスカー伯爵令息は、何時ものようにすまなそうな顔をして彼女に謝った。
「お兄様、ゴホッゴホッ! ルミナス様、ゴホッ! さあ、遊園地に行きましょ、ゴボッ!! 」
カノンは血を吐いた。
居候と婚約者が手を組んでいた!
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
グリンマトル伯爵家の一人娘のレネットは、前世の記憶を持っていた。前世は体が弱く入院しそのまま亡くなった。その為、病気に苦しむ人を助けたいと思い薬師になる事に。幸いの事に、家業は薬師だったので、いざ学校へ。本来は17歳から通う学校へ7歳から行く事に。ほらそこは、転生者だから!
って、王都の学校だったので寮生活で、数年後に帰ってみると居候がいるではないですか!
父親の妹家族のウルミーシュ子爵家だった。同じ年の従姉妹アンナがこれまたわがまま。
アンアの母親で父親の妹のエルダがこれまたくせ者で。
最悪な事態が起き、レネットの思い描いていた未来は消え去った。家族と末永く幸せと願った未来が――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる