今から婚約者に会いに行きます。〜私は運命の相手ではないから

ありがとうございました。さようなら

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オチそうなポーリーン

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「飽きもせず。なんで、運命の相手だなんて言って口説くのかしら。バリエーションがないわよね」

 流石に20人になってくると飽きるどころか、うんざりしてくる。
 先ほどの男のように、婚約者がいたり結婚していたりする男が何人かいた。
 私には婚約者と別れろと言うくせに、自分は別れずにアプローチしに来る。
 不誠実極まりない。一瞬だけどこかの誰かさんの顔が頭に浮かんだ。

「ふふふ、サナったら」

 私は笑いながら、小さくため息を吐いた。
 田舎にいた時は、出会いが少なく運命の相手というものに強く憧れを持っていた。
 でも、ここで働き出して、毎日のように初対面の人と会うことになって気がついた。

 運命の相手なんて本当は存在しないのでは?と。

 なぜなら、彼らは運命の相手を私だと言うが、私の運命の相手は彼らではないから。

「運命って何なんだろうね」

 出会いで何かを感じるのは、きっと、どこかで好意を持っているからなのだと私は思うのだ。
 それが運命の相手かどうかは、後から決まる。
 好きじゃない相手でも、後から運命の相手になるのかもしれない。

「さあ?彼らにとってはただの口説き文句でしかないんじゃないんですかね」

 確かにサナの言う通りだ。
 私は運命の相手という言葉に「恋」をしていたのだ。
 ここで働くようになって、「運命の相手」という言葉がありふれたものだと気付かされた。
 それよりももっと大切なものがある。
 すぐ側で、私を慈しんで大切にしてくれていた人たちの存在だ。

「そうかもね」

 私はみんなからとても愛されていた。それはもう、過保護になるほどに。
 当然だ。もしも、クロエやロータスが過去に攫われたと知っていたら同じことをすると思う。
 帰ったら謝らないとな。
 少しだけ故郷が恋しくなった。あそこには私の大切なものがたくさんあるから。

「ロータス兄様への手紙にこの事を書いたら心配されそうね」

 私が苦笑すると、サナは困った顔をして笑った。
 
「やめておいた方がよろしいかと、乗り込んできますよ」

 確かにそうかもしれない。
 過保護な兄とクロエならやってきそうだ。
 ……トリスタンはどうなのだろうか。
 ふとそんな事を考えてしまう。
 結局、あれから彼と話すことができなかった。怖くて逃げたのだ。
 彼が浮気したと打ち明けられるのが怖くて。それでも、どこかで信じたいと私は思っていた。

「……ポーリーン」

 一番聞きたくて聞きたくない男の声が後ろから聞こえた。
 振り返ると、誰よりも会いたくなくて、会いたい男が立っていた。

 トリスタンは、私の名前を呼んだくせに動きもせずにじっと見て、ポロポロを通り越してボトボトと涙をこぼしてきた。
 ん?涙?

 なぜトリスタンは泣いているのだろう。
 他に好きな人がいるくせに。

「……」

 気がついたら視界が真っ暗になり、急に息苦しくなった。

「トリスタン様、あまり絞めすぎるとポーリーン様がオチてしまいますよ」

 サナの冷静なツッコミにトリスタンは慌てて私から離れた。
 
 

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