私のことは愛さなくても結構です

ありがとうございました。さようなら

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原因は自分……?

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 違う。そんなことはない。と、私は否定したかった。
 でも、わからない。アイツが言うには本来なら私は死んでいたはずなのだから。
 そんな私が何かしら悪く作用した可能性もある。
 悪い方向に物事を考えてしまう。

「クラリス?どうした?」
「なんでもない」
「本当に?」
「ああ、何もない」

 ジークムントが心配そうに私に声をかけてくる。
 この話をして彼は信じてくれるだろうか。
 ……わからない。
 
「急に瘴気が活発化したと言われても戸惑うよね。かなり前から知らされていんだけど、言えなくてごめん」

 買い物の時に逸れて、彼が必死になって探したのは、そういう理由だったからなのか。
 少し悪いことをした。
 
「もっと早く知りたかったけど、向こうも調べるのに手こずったんだろう。文句なんて言えないよ」
「調べたんだけど、原因がわからないんだ。過去の書物を読んでも祓った後の瘴気が活発化した事なんてないんだ」
「そうなんだ」

 人は信じられないことは想定できないものだ。
 見つけるのが遅れたのも、被害がそれなりに出てからなのだと思う。
 それに、原因がわからない上に下準備のない状況で公表すると大騒ぎになってしまう。
 旅の準備もあるだろうし、慎重になるのもわかる。
 
「きっと、発表するのも準備が必要だったと思うし」

 それよりも再び旅に出ることになるジークムントの方が心配だ。
 気になる事もある。

「ところで、お前、なんで結婚前倒しにしたんだよ!バカじゃないのか?」
「僕が希望したんだ」
「なんでだよ。そもそもお姉様と結婚するはずだったのに」

 瘴気を祓えば私ではなくて姉と結婚するのではないか。
 ジークムントは、「クラリスがいいんだ」と言い出す。
 臭い愛の告白かよ。
 そもそも、私たちはそんな関係ではなかったはずだ。
 
「僕が死んだらクラリスは未亡人になるけど、財産は全て君のものになる」
「……勝手に死ぬなよ」

 なんで死ぬ気でいるんだよ。と、私は思った。
 しかし、前回の旅も同じような気持ちで出たのだと気がつく。……それは、アルネもそうだ。
 化け物が出る前の段階で祓う旅には出れたが、「それでも」危険なのだ。
 それに、間隔を空けないで瘴気が活発になっている。ということは、前よりも状況が悪い可能性が高い。

 ……酷いことを言ってしまった。今まで私は彼らの頑張りを軽く見ていたのだ。
 ここまでの覚悟で旅に出ていたのに。
 
「話を最後まで聞いて」
「……はい」

 珍しく静かに圧力をかけてくるジークムントに、私はコイツも意外と怒らせたら怖いのかもしれないと思って黙った。
 
「クラリスは結婚願望ないでしょ、サブリナ嬢さえいればいいって思ってるだろ?」
「否定はしない」

 その通りだが、肯定したらダメな気がしてあえてそう言った。
 そうだと言ったらジークムントが傷つきそうだったから。

「僕が死んだら、もしも、瘴気が残っていたら、しばらくは混乱すると思うんだ」
「……」

 なんだよ。コイツそこまで考えてるのかよ。

「君と君のお姉さんは、僕の領地に逃げるといい。僕の財産で生活できるはずだ」
「お、おい、なんてことを言うんだ!」

 何で、結婚するのに死ぬ気でいるんだよ。バカじゃないのか。
 生きて帰るって嘘一つでもつけよ。
 信じられない。生きて帰ってくるのがこいつのやるべき事じゃないのか。

「聞いてくれ、僕の領地は籠城に向いている。状況が悪くなったら家族を連れて逃げるんだ」
「わかった。でも、なるべくたくさんの人を連れていくよ。その方がいいだろう?」

 自分とその大切な人だけ助けるために逃げるのはダメだ。
 それに、ジークムントもきっと一人でも多くを助けたいと思っているはずだ。

「ありがとう。君と結婚できてよかったよ」

 ジークムントは、私に抱きつくと頬に口付けをしてきた。

「お、おい!」
「婚約者なんだから別にいいだろう?」

 私がそれを咎めると、彼はクスリと笑った。

「……」

 多分、これが人生経験の差なのだと思う。

「結婚の準備をしないとな、サブリナ嬢にクラリスの花嫁姿を見せてやりたかったが」
「やらなくていいよ。そんなの、今はそんな事してる余裕なんてない。書面でのサインだけで十分だよ」

 私が、キッパリとやらない。と言い切るとジークムントは黙り込む。
 私たちの結婚は書面だけで終わらせることにした。

「でも、旅に出る前に仲間や家族を紹介したいから、小さな会食でもしようかと考えてる。家族も呼ぶといい」

 大切な仲間を紹介してもらえるなんて嬉しかった。

 
 
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