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特異点
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「あれ?またか」
ジークムントはいない。
「まあ、彼は向こうの人間だからね」
魔女は、苦笑いした。
私はいったい何者なのだろうか。
それにしても、魔女は前に会った時とは別人になっていた。
「なんで、今日は違うんだ?」
「魔女は姿を変えられるのよ」
魔女は、笑いながら姿を男の子に変えた。
「……!」
私を揶揄うつもりでやったのだとわかるのだけれど、やはり驚いてしまう。
「お前に教えてもらいたくて来た」
「どうぞ」
たくさん聞きたいことがあった。
私のせいでこんな事になってしまったのではないか。という、不安でいっぱいだった。
もしそうなら、姉の目が覚めないのは私のせいだ。
「瘴気が完全に祓えていない。瘴気を祓えばしばらくはそのままなんだ。でも、今回は残っていて化け物が出てきて、それって私のせいなのか?」
「まず最初に、君はこの世界の特異点だけど、君が死のうが生きようが、それには関係ない」
「……そうなのか?」
「特異点って意外と多いんだよね。君もそうだけど他にもいる。僕も、正確には違うけど、そうだし。ねえ、君が世界に与える影響は大きいと思う?君の存在なんて砂つぶみたいな物だよ」
言われてみればその通りかもしれない。
でも、私の存在のせいで瘴気に悪い影響を与えているのかもしれない。
「魔女も世界を変えられるわけではないんだよ」
「……」
魔女は悲しげな顔でそう言ったので、何かが過去にあったのかもしれない。
聞けるような話しでもなさそうなので、聞かないけれど。
「魔女にも魔女の理があってね。それに従わないといけないんだ。色々とできるけど、この世界に干渉する事はできないんだよ。まあ、個人には出来るけどね。小さな願いを叶えたりね」
「そうなんだ」
「だから君は気にしなくていい。君という存在が瘴気に影響を与えることはないよ。もしそうなら、君が死ななかった段階でそうなっていたから」
確かにそうかもしれない。
私が原因ではないなら、何が原因なのか。
魔女は近くにはいないと言っていたが、特異点は他にはどこにいるのか。
彼らがもしかしたら原因を知っているのかもしれない。
「……あのさ、特異点って私の他にもいるのか?」
「君のすぐそばにいると思うよ」
意外すぎる答え。
「そうなのか?」
「君はなぜ死ななかった?なぜ家は没落しなかった?それは、誰かが食い止めていたからだよ」
「あっ!そうか」
言われてみればその通りだ。
自分が死ななかったのは、その特異点が助けてくれたからだ。
「で、そいつは誰なんだ?」
「……自分で考えなよ」
だが、考えても浮かばない。
わからないなら、そいつと話す事ができないじゃないか。
私一人じゃ何もできない。
特異点なのに、私はちっぽけで何もできない。
「なあ、協力してくれないか?」
私はちっぽけな存在だ。
特異点に助けられて生きられたのに、私は何もできないで見ているだけだ。
一人じゃ何もできない。変えられない。誰かに懇願して助けを求めないと何も変えられる事ができない。
「なんで、僕がそんな事をしなくちゃならないんだ」
「お願いだ。助けて欲しい。お願いします」
子供の頃、自分は一人でもなんでもできると思っていた。
今は、こんなにも無力なのだと思い知らされている。
「瘴気が活発化した原因を知りたい。助けてください」
「対価は?」
魔女は意外にも断る事はしなくて、対価は何かと聞いて来た。
「対価……、私の持っている物ならなんでもやる」
「大丈夫。対価は貰ったから聞いてあげるよ」
「もらった?」
何かを渡したのだろうか。思い当たる事が全くない。
「君、忘れ物しただろう?」
言われて思い出す。
ジークムントがくれた、あの姉の色とは違う髪飾りを。
「薔薇?」
「そう、あれもらって凄く嬉しかったでしょ?」
魔女に言い当てられて、私は恥ずかしくなった。
「べ、別に!そんな事ないし!」
嬉しくない。と否定すると魔女は、「うん。わかるよ。わかる」となぜか知ったような顔をした。
「自分はね。長く生きてるから、こういう感情がとても久しぶりでね。くすぐったくて楽しいね。……魔女はね。人の想いのこもったものが大好きなんだ。弱点でもあるんだけどね」
「……からかってる?」
「いや、全然。自分は二度と経験できないから、みんなそうだけど、仲良くなってもどうせ死ぬし」
魔女があまり人と関わりたくなさそうな理由がわかった。
別れを何度も経験しているからだ。
だったら、魔女と一緒にいればいいじゃないか。
「そうか、なあ、お前以外の魔女って近くにはいないのか?」
「今はいない」
「ふーん」
いない。というのことは、遠くにいるわけで、たまに会っているのだろう。
関わったら大変なことになりそうなので、会いたいとは言わないでおいた。
「これからは、一緒に行動しよう」
言って魔女は真っ白な猫の姿に変わった。
「お前、本当にこの世界に何もできないのか?」
「うん、何もできないよ」
絶対に嘘な気がする。
「わかった。お前の話、誰かにしてもいいのか?」
姉に見せてやりたい。
「問題ないよ。信じてくれるかは別だけどね」
確かにその通りだ。
~~~
更新するところを間違えました
申し訳ありません
「あれ?またか」
ジークムントはいない。
「まあ、彼は向こうの人間だからね」
魔女は、苦笑いした。
私はいったい何者なのだろうか。
それにしても、魔女は前に会った時とは別人になっていた。
「なんで、今日は違うんだ?」
「魔女は姿を変えられるのよ」
魔女は、笑いながら姿を男の子に変えた。
「……!」
私を揶揄うつもりでやったのだとわかるのだけれど、やはり驚いてしまう。
「お前に教えてもらいたくて来た」
「どうぞ」
たくさん聞きたいことがあった。
私のせいでこんな事になってしまったのではないか。という、不安でいっぱいだった。
もしそうなら、姉の目が覚めないのは私のせいだ。
「瘴気が完全に祓えていない。瘴気を祓えばしばらくはそのままなんだ。でも、今回は残っていて化け物が出てきて、それって私のせいなのか?」
「まず最初に、君はこの世界の特異点だけど、君が死のうが生きようが、それには関係ない」
「……そうなのか?」
「特異点って意外と多いんだよね。君もそうだけど他にもいる。僕も、正確には違うけど、そうだし。ねえ、君が世界に与える影響は大きいと思う?君の存在なんて砂つぶみたいな物だよ」
言われてみればその通りかもしれない。
でも、私の存在のせいで瘴気に悪い影響を与えているのかもしれない。
「魔女も世界を変えられるわけではないんだよ」
「……」
魔女は悲しげな顔でそう言ったので、何かが過去にあったのかもしれない。
聞けるような話しでもなさそうなので、聞かないけれど。
「魔女にも魔女の理があってね。それに従わないといけないんだ。色々とできるけど、この世界に干渉する事はできないんだよ。まあ、個人には出来るけどね。小さな願いを叶えたりね」
「そうなんだ」
「だから君は気にしなくていい。君という存在が瘴気に影響を与えることはないよ。もしそうなら、君が死ななかった段階でそうなっていたから」
確かにそうかもしれない。
私が原因ではないなら、何が原因なのか。
魔女は近くにはいないと言っていたが、特異点は他にはどこにいるのか。
彼らがもしかしたら原因を知っているのかもしれない。
「……あのさ、特異点って私の他にもいるのか?」
「君のすぐそばにいると思うよ」
意外すぎる答え。
「そうなのか?」
「君はなぜ死ななかった?なぜ家は没落しなかった?それは、誰かが食い止めていたからだよ」
「あっ!そうか」
言われてみればその通りだ。
自分が死ななかったのは、その特異点が助けてくれたからだ。
「で、そいつは誰なんだ?」
「……自分で考えなよ」
だが、考えても浮かばない。
わからないなら、そいつと話す事ができないじゃないか。
私一人じゃ何もできない。
特異点なのに、私はちっぽけで何もできない。
「なあ、協力してくれないか?」
私はちっぽけな存在だ。
特異点に助けられて生きられたのに、私は何もできないで見ているだけだ。
一人じゃ何もできない。変えられない。誰かに懇願して助けを求めないと何も変えられる事ができない。
「なんで、僕がそんな事をしなくちゃならないんだ」
「お願いだ。助けて欲しい。お願いします」
子供の頃、自分は一人でもなんでもできると思っていた。
今は、こんなにも無力なのだと思い知らされている。
「瘴気が活発化した原因を知りたい。助けてください」
「対価は?」
魔女は意外にも断る事はしなくて、対価は何かと聞いて来た。
「対価……、私の持っている物ならなんでもやる」
「大丈夫。対価は貰ったから聞いてあげるよ」
「もらった?」
何かを渡したのだろうか。思い当たる事が全くない。
「君、忘れ物しただろう?」
言われて思い出す。
ジークムントがくれた、あの姉の色とは違う髪飾りを。
「薔薇?」
「そう、あれもらって凄く嬉しかったでしょ?」
魔女に言い当てられて、私は恥ずかしくなった。
「べ、別に!そんな事ないし!」
嬉しくない。と否定すると魔女は、「うん。わかるよ。わかる」となぜか知ったような顔をした。
「自分はね。長く生きてるから、こういう感情がとても久しぶりでね。くすぐったくて楽しいね。……魔女はね。人の想いのこもったものが大好きなんだ。弱点でもあるんだけどね」
「……からかってる?」
「いや、全然。自分は二度と経験できないから、みんなそうだけど、仲良くなってもどうせ死ぬし」
魔女があまり人と関わりたくなさそうな理由がわかった。
別れを何度も経験しているからだ。
だったら、魔女と一緒にいればいいじゃないか。
「そうか、なあ、お前以外の魔女って近くにはいないのか?」
「今はいない」
「ふーん」
いない。というのことは、遠くにいるわけで、たまに会っているのだろう。
関わったら大変なことになりそうなので、会いたいとは言わないでおいた。
「これからは、一緒に行動しよう」
言って魔女は真っ白な猫の姿に変わった。
「お前、本当にこの世界に何もできないのか?」
「うん、何もできないよ」
絶対に嘘な気がする。
「わかった。お前の話、誰かにしてもいいのか?」
姉に見せてやりたい。
「問題ないよ。信じてくれるかは別だけどね」
確かにその通りだ。
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