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「そのブルーダイヤモンド素敵ね。私に譲ってくれないかしら?」
アルネは事もあろうに、ジークムントが目をつけていたブルーダイアを譲れと言い出す。
譲れというのもおかしな話だが。
「アルネ。やめるんだ」
クラウスは、いつもの困った顔を通り越して怒りを露わにさせてアルネを止めた。
彼がこんなに怒るのも珍しい。
「クラウス!ジークムントが買うのだから、あの子が買うわけじゃないわ。私もこの石の指輪が欲しいわ」
何なんだろうな。こいつ。
気に入ったから寄越せ。でも、金はクラウスが払う。
今までそれが通って来た環境なのか、甘やかしすぎじゃないのか。
まあ、姉にデロッデロに甘やかされて、溺愛されまくって、その上のさらに上の上の上くらい溺愛された私が言うのはおかしなことではあるけれど。
わがまますぎではないのか。この女。
危険な場所に行くから不安で八つ当たりしたくなる気持ちはわかるし、自分もそうなると思う。
でもだからって、何をしても許されるわけではない。
踏み越えてはいけないラインはあるんだ。
自分でも驚くほどに、この女にジークムントと同じ瞳の色の宝石を渡したくないと思ってしまった。
「……やっぱり、これ買ってもらう。ジークムント、高いけどいいか?本当にいいか?」
こんな高いものを人に強請るのは、何だかとても気が引ける。
だから、二度も念押ししてしまう。
それでも足りないくらいだし、なんなら、断ってくれた方が気が楽にすら思えて来た。
「もちろん。これ売ったら一生働かなくても大丈夫だから」
ジームントは、当然のように買うと言ってくれた。しかも嬉しそうに。
こいついつか破産しそうだよな。
しかし、問題は金額だ。
そ、そんなとんでもないものが私の指に……!
私は少し恐怖した。落としたら大変な事になるのではないか。
「なんでよ、おかしいわ。ジークは弟なのになんで兄嫁の私よりもいいものをあの子に買ってあげるのよ!おかしいわ」
アルネは、「おかしい」を二回も言った。
そんなにおかしいのか。おかしくないだろ。
「なぜ、私たちは結婚できないのよ。ジークの方が先に結婚するのよ!」
アルネの不満が爆発した。
「旅から帰って来たら結婚しようって言っていたじゃない。でも、先延ばしにされて」
え、そうなのか。それは今知った。
もしそうなら、アルネがなかなか結婚できないことに不安と不満を持っている気持ちもわかる。
私にやたらと張り合おうとしたのもそういう理由なのか。
「……アルネ、旅から戻って落ち着いたら、結婚について大切な話があるからそれまでは待てるかい?」
クラウスは、癇癪を起こす子供に言って聞かせるように優しくアルネに声をかけた。
何というか、日頃から彼の苦労がどことなく透けて見えた気がした。
「私はブルーダイヤモンドが欲しかったのに……」
アルネは、静かに泣き出した。
欲しいものを手に入れるためなら、本当に手を替え品を替えだ。
ジークムントがせっかく私のためにこの場を作ってくれたのに、「ケチ」をつけられたような気分だ。
これから、死地に行く相手にこんな事を言ってはいけない。と、思う気持ちと、ジークムントの気持ちに「ケチ」をつけられた事への怒りで私は、口を開けては閉じてはを繰り返す。
『言っても無駄だと思うよ』
さくら。は、何とも冷静だ。
「アルネ、いい加減にしたらどうだ」
意外にも怒り出したのはジークムントだった。
クラウスが軽く注意をすると思っていたのだけれど。
「ジーク!」
「君がやっていることは、とても低俗で大人気ない」
どれを指しているのかはわからないが、おそらく今までの私への態度のことを全ての事だと思う。
「酷い……!」
アルネは、涙をハラハラとこぼしながら走り去っていった。
残された私たちは、軽く葬式のような空気でしばらく気まずかった。
「兄さん、ごめん。耐えきれなかった」
ジークムントは、本当に申し訳なさそうにクラウスに謝った。
「いや、いいよ。僕も同じことをされたら間違いなく怒っていたと思うから、僕の方こそごめん。止めればよかった。実は旅を終えたら彼女との今後を話し合おうかと考えているんだ」
意外なカミングアウトに、私は少し驚いて納得してしまった。
帰り際。宝石商にこっそり声をかけた。
ローズクォーツのブローチをジークムントのために作ってもらうためだ。
「そのブルーダイヤモンド素敵ね。私に譲ってくれないかしら?」
アルネは事もあろうに、ジークムントが目をつけていたブルーダイアを譲れと言い出す。
譲れというのもおかしな話だが。
「アルネ。やめるんだ」
クラウスは、いつもの困った顔を通り越して怒りを露わにさせてアルネを止めた。
彼がこんなに怒るのも珍しい。
「クラウス!ジークムントが買うのだから、あの子が買うわけじゃないわ。私もこの石の指輪が欲しいわ」
何なんだろうな。こいつ。
気に入ったから寄越せ。でも、金はクラウスが払う。
今までそれが通って来た環境なのか、甘やかしすぎじゃないのか。
まあ、姉にデロッデロに甘やかされて、溺愛されまくって、その上のさらに上の上の上くらい溺愛された私が言うのはおかしなことではあるけれど。
わがまますぎではないのか。この女。
危険な場所に行くから不安で八つ当たりしたくなる気持ちはわかるし、自分もそうなると思う。
でもだからって、何をしても許されるわけではない。
踏み越えてはいけないラインはあるんだ。
自分でも驚くほどに、この女にジークムントと同じ瞳の色の宝石を渡したくないと思ってしまった。
「……やっぱり、これ買ってもらう。ジークムント、高いけどいいか?本当にいいか?」
こんな高いものを人に強請るのは、何だかとても気が引ける。
だから、二度も念押ししてしまう。
それでも足りないくらいだし、なんなら、断ってくれた方が気が楽にすら思えて来た。
「もちろん。これ売ったら一生働かなくても大丈夫だから」
ジームントは、当然のように買うと言ってくれた。しかも嬉しそうに。
こいついつか破産しそうだよな。
しかし、問題は金額だ。
そ、そんなとんでもないものが私の指に……!
私は少し恐怖した。落としたら大変な事になるのではないか。
「なんでよ、おかしいわ。ジークは弟なのになんで兄嫁の私よりもいいものをあの子に買ってあげるのよ!おかしいわ」
アルネは、「おかしい」を二回も言った。
そんなにおかしいのか。おかしくないだろ。
「なぜ、私たちは結婚できないのよ。ジークの方が先に結婚するのよ!」
アルネの不満が爆発した。
「旅から帰って来たら結婚しようって言っていたじゃない。でも、先延ばしにされて」
え、そうなのか。それは今知った。
もしそうなら、アルネがなかなか結婚できないことに不安と不満を持っている気持ちもわかる。
私にやたらと張り合おうとしたのもそういう理由なのか。
「……アルネ、旅から戻って落ち着いたら、結婚について大切な話があるからそれまでは待てるかい?」
クラウスは、癇癪を起こす子供に言って聞かせるように優しくアルネに声をかけた。
何というか、日頃から彼の苦労がどことなく透けて見えた気がした。
「私はブルーダイヤモンドが欲しかったのに……」
アルネは、静かに泣き出した。
欲しいものを手に入れるためなら、本当に手を替え品を替えだ。
ジークムントがせっかく私のためにこの場を作ってくれたのに、「ケチ」をつけられたような気分だ。
これから、死地に行く相手にこんな事を言ってはいけない。と、思う気持ちと、ジークムントの気持ちに「ケチ」をつけられた事への怒りで私は、口を開けては閉じてはを繰り返す。
『言っても無駄だと思うよ』
さくら。は、何とも冷静だ。
「アルネ、いい加減にしたらどうだ」
意外にも怒り出したのはジークムントだった。
クラウスが軽く注意をすると思っていたのだけれど。
「ジーク!」
「君がやっていることは、とても低俗で大人気ない」
どれを指しているのかはわからないが、おそらく今までの私への態度のことを全ての事だと思う。
「酷い……!」
アルネは、涙をハラハラとこぼしながら走り去っていった。
残された私たちは、軽く葬式のような空気でしばらく気まずかった。
「兄さん、ごめん。耐えきれなかった」
ジークムントは、本当に申し訳なさそうにクラウスに謝った。
「いや、いいよ。僕も同じことをされたら間違いなく怒っていたと思うから、僕の方こそごめん。止めればよかった。実は旅を終えたら彼女との今後を話し合おうかと考えているんだ」
意外なカミングアウトに、私は少し驚いて納得してしまった。
帰り際。宝石商にこっそり声をかけた。
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