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「……君は何をやっているんだ」
ジークムントは、怒りを露わにして今にもアルネに掴みかかりそうだ。
アルネはそれに動じた様子もなく笑っている。
私はそれが怖い。
おそらくサプライズとしてこういう話はしてあったはずだ。それでもわかっていてするなんて、アルネは何を考えているのか。
「え、だって私がどんなドレス着ても問題はないでしょう?」
「白は着るなって言ったじゃないか!しかもそれは」
どう見てもウエディングドレスで、私が着ているものよりも上等なものだ。
ジークムントが怒る気持ちもわかる。
アルネによって全部台無しにされたのだから。
ただ、アルネの気持ちもわかるのだ。
旅で一番負担があるのは彼女で、彼女への感謝や応援の意味の食事会がジークムントと私のささやかな結婚式のようなものにされているのだから。
嫌な気分になるのはわかる。
「私、間違ってない!どうしてよ。なんでこの子を優遇するのよ」
「……食事会は明後日することになってるだろ?教えたはずだ」
え、そうなのか。
思わず家族の顔を見ると、三人ともわかりやすいほどに顔を逸らす。
……こいつら全部知っていたのか。
「知ってるわよ!でも、私が浄化しないと誰も助からないのに、なぜ、私に気を使わないのよ」
子供の癇癪だ。
でも、可哀想だと私は思った。
だってそうじゃないか。「彼女」しか瘴気を祓うことができないのに、それなのに私を優遇しているようにしか見えないからだ。
でも、彼女に可哀想。だと、言ったら絶対にいけない気がするのだ。
だって、ババァ……、いや、お婆様が「逆らおうと思わせないくらい叩きのめせ、だけど、人を奈落に突き落とすな」とも教えてくれたのだ。
私が何か言ったら彼女を確実に傷つけてしまう。
それに、私は彼女のような力も持たない。安全なところにずっといるのだから。
「アルネ、ジークがこれを望んだんだ。僕は気まずくなるといけないから来なくてもいい。って言ったよ。なぜ来て台無しにしたんだ」
クラウスが、アルネを責めた。
「……みんなも止めればよかったのに!こんなもの!私は仲間なのに!」
「ジークさんも仲間です。彼の望みなら止めるつもりはありません」
「それに、立場上、貴族の彼の結婚式に呼ばれる事なんて絶対にないので、こういう場に参加できてとても嬉しいです」
アルネの怒りに仲間の何人かが、そう返した。
「……もし、機会があったらみんな呼びたい」
ジークムントは、照れくさそうにそう言うけれど、アルネの怒りの炎に油を注ぐようなものだ。
「な、なによ。私が悪いっていうの!?」
アルネの怒りはさらに強くなった。
みんな、アルネを責めてばかりだ。
「アルネ、やめよう。君の行動は間違っているよ」
「クラウスも!」
「瘴気の影響を受けて君が不安定なのはわかってる。でも、やっていいことと悪いことがあるよ」
クラウスは諭すようにアルネが間違っていると言った。
「酷い!」
アルネは、その場に座り込み泣きじゃくる。
「帰って来たら、一緒に療養しよう」
「……」
それはどういう意味なのか。
ただ、わかるのはクラウスはアルネの事を本当に心配しているという事だけ。
……私も何か言わないと。
アルネの味方にはなれないけど、でも、やっぱり、奈落に突き落とすような事は言いたくなかった。
「アルネさん。私、別に怒ってないし、台無しにされたなんて思ってないから、一番不安でナーバスな時期にこんな事されたらモヤモヤする気持ちもわかるよ。……何て言ったらいいんだろうな、上手く伝えられなくてごめん」
私が思った事を伝えると、アルネは一瞬だけ驚いた顔をして、唇を噛み締めて自己嫌悪をしているかのような表情になりくるりと背中を向けた。
「……もういい、飽きたわ」
アルネは、それ以上何も言わずに帰って行った。
~~~
お読みくださりありがとうございます
感想、エール、しおり、いいね、お気に入りに登録してもらえると嬉しいです
コンテストみなさまのおかげで五位キープできています。ありがとうございます!
没にしたんですけど
本当はウェディングドレスの衣装合わせで、アルネがクラリスのドレスを着る予定でした
そこで、固まるジークムントに、クラリスが
「おう、喪服で結婚式しようか、結婚って人生の墓場って言うしな」
と、言わせる予定でした
それやったら取り返しがつかなくなるのでやめましたが……
今日の朝に、ネタバレ感想くれた方
一部当たってます
本当に申し訳ないのですが感想は反映していません
本当に申し訳ありません
「……君は何をやっているんだ」
ジークムントは、怒りを露わにして今にもアルネに掴みかかりそうだ。
アルネはそれに動じた様子もなく笑っている。
私はそれが怖い。
おそらくサプライズとしてこういう話はしてあったはずだ。それでもわかっていてするなんて、アルネは何を考えているのか。
「え、だって私がどんなドレス着ても問題はないでしょう?」
「白は着るなって言ったじゃないか!しかもそれは」
どう見てもウエディングドレスで、私が着ているものよりも上等なものだ。
ジークムントが怒る気持ちもわかる。
アルネによって全部台無しにされたのだから。
ただ、アルネの気持ちもわかるのだ。
旅で一番負担があるのは彼女で、彼女への感謝や応援の意味の食事会がジークムントと私のささやかな結婚式のようなものにされているのだから。
嫌な気分になるのはわかる。
「私、間違ってない!どうしてよ。なんでこの子を優遇するのよ」
「……食事会は明後日することになってるだろ?教えたはずだ」
え、そうなのか。
思わず家族の顔を見ると、三人ともわかりやすいほどに顔を逸らす。
……こいつら全部知っていたのか。
「知ってるわよ!でも、私が浄化しないと誰も助からないのに、なぜ、私に気を使わないのよ」
子供の癇癪だ。
でも、可哀想だと私は思った。
だってそうじゃないか。「彼女」しか瘴気を祓うことができないのに、それなのに私を優遇しているようにしか見えないからだ。
でも、彼女に可哀想。だと、言ったら絶対にいけない気がするのだ。
だって、ババァ……、いや、お婆様が「逆らおうと思わせないくらい叩きのめせ、だけど、人を奈落に突き落とすな」とも教えてくれたのだ。
私が何か言ったら彼女を確実に傷つけてしまう。
それに、私は彼女のような力も持たない。安全なところにずっといるのだから。
「アルネ、ジークがこれを望んだんだ。僕は気まずくなるといけないから来なくてもいい。って言ったよ。なぜ来て台無しにしたんだ」
クラウスが、アルネを責めた。
「……みんなも止めればよかったのに!こんなもの!私は仲間なのに!」
「ジークさんも仲間です。彼の望みなら止めるつもりはありません」
「それに、立場上、貴族の彼の結婚式に呼ばれる事なんて絶対にないので、こういう場に参加できてとても嬉しいです」
アルネの怒りに仲間の何人かが、そう返した。
「……もし、機会があったらみんな呼びたい」
ジークムントは、照れくさそうにそう言うけれど、アルネの怒りの炎に油を注ぐようなものだ。
「な、なによ。私が悪いっていうの!?」
アルネの怒りはさらに強くなった。
みんな、アルネを責めてばかりだ。
「アルネ、やめよう。君の行動は間違っているよ」
「クラウスも!」
「瘴気の影響を受けて君が不安定なのはわかってる。でも、やっていいことと悪いことがあるよ」
クラウスは諭すようにアルネが間違っていると言った。
「酷い!」
アルネは、その場に座り込み泣きじゃくる。
「帰って来たら、一緒に療養しよう」
「……」
それはどういう意味なのか。
ただ、わかるのはクラウスはアルネの事を本当に心配しているという事だけ。
……私も何か言わないと。
アルネの味方にはなれないけど、でも、やっぱり、奈落に突き落とすような事は言いたくなかった。
「アルネさん。私、別に怒ってないし、台無しにされたなんて思ってないから、一番不安でナーバスな時期にこんな事されたらモヤモヤする気持ちもわかるよ。……何て言ったらいいんだろうな、上手く伝えられなくてごめん」
私が思った事を伝えると、アルネは一瞬だけ驚いた顔をして、唇を噛み締めて自己嫌悪をしているかのような表情になりくるりと背中を向けた。
「……もういい、飽きたわ」
アルネは、それ以上何も言わずに帰って行った。
~~~
お読みくださりありがとうございます
感想、エール、しおり、いいね、お気に入りに登録してもらえると嬉しいです
コンテストみなさまのおかげで五位キープできています。ありがとうございます!
没にしたんですけど
本当はウェディングドレスの衣装合わせで、アルネがクラリスのドレスを着る予定でした
そこで、固まるジークムントに、クラリスが
「おう、喪服で結婚式しようか、結婚って人生の墓場って言うしな」
と、言わせる予定でした
それやったら取り返しがつかなくなるのでやめましたが……
今日の朝に、ネタバレ感想くれた方
一部当たってます
本当に申し訳ないのですが感想は反映していません
本当に申し訳ありません
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