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変わらせてくれた人
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アルネと共に王城に行くと、国王ではなくて皇太子が待っていた。
案内された場所も謁見室ではなくて私室だ。
なんだろう。とても嫌な予感がする。
「ああ、すまない。公式の場じゃないから楽にしててくれ」
ジャスパーは、明らかに疲れた様子で僕たちに座るように促した。
「は、はい」
アルネが緊張した顔で座ったので、僕も同じように座った。
ところで、なぜジャスパーだけしかいないのだろうか。
「国王陛下は?」
「それも、ついでに話す」
僕の質問をジャスパーは軽く流した。
「ついでって」
アルネが、軽く引いている。僕もだ。
やはり、クラリスと血縁関係だからなのか、「そういう面」がたまに出るようだ。
ジャスパーは「堅苦しいのは苦手だから本題に入る」と、前置きした。
「瘴気が活発化している」
ジャスパーの一言に、僕は言葉を失った。
信じられない。という気持ちとやはり。という気持ちが少なからずある。
というのも、サブリナのことが実はずっと気になっていたのだ。
瘴気は人の精神にも影響があり、サブリナが起きない理由も精神的な物だと診断されているからだ。
「え、そんな」
アルネは、驚きながらも少しだけ喜んでいるように見えた。
「親父もその影響で寝込んでる」
「……あの、サブリナ嬢は」
「その可能性が高いな。クソっ……!もっと早く気がついてたら」
ジャスパーは、悔しそうに唇を噛み締めた。
「それで、帰ってきたばかりで申し訳ないのだが、瘴気を祓う旅に出て欲しい」
「承知しました」
ジャスパーの頼みにアルネは、間髪置かずに返事をした。
対して僕はすぐに返事ができなかった。
クラリスと離れるのが嫌だったのだ。
「……承知しました」
「お前は、特に嫌だよな。結婚するんだから」
時間を置いて返事をすると、ジャスパーは苦笑いを浮かべた。
彼も負い目があるようだ。
「大丈夫ですわ。政略結婚ですもの、ねぇ?」
アルネは、お互いの気持ちなどないから気にするな。と言い出す。
それに、ジャスパーは明らかに腹を立てた様子でアルネを睨みつける。
「なんだと?」
「いえ、そんなつもりでは」
アルネは慌てて言い訳を始めた。
「そうですね。とても、寂しいです」
寂しい。と、口に出してそうだった。と気がつく。
「正直、あまり状況がよろしくない。だから、早く旅に出て欲しいんだ」
初めて旅に出た自分の心境を思い出す。
死を覚悟していた。そして、何度か死にかけたこともある。
……もしかして、僕はこの旅で死ぬかもしれない。
「夜会を開くことにしたから、その場で報告するつもりだ」
「わかりました」
「……アイツまだ未成年だから、絶対に手だけは出すなよ」
ジャスパーは、言いにくそうにとんでもない事を言い出す。
途端に僕の顔は熱くなった。
結婚した先のことを考えてしまったのだ。
それにしても、僕ってこの人から見てどんな男に見えるのだろう……。
「な、なんて事を言うんですか!ぼ、僕そんなに手が早く見えますか?」
「いや、全然、むしろ奥手に見えるわ」
「……」
だったら、言わないでくれ。
「でもな、未成年相手に何かしでかしそうに見える顔してるんだよな」
「僕は変態ではありません!」
なんとかそれだけ反論するが、実際に未成年と婚約しているから、そう見られても仕方ないのかもしれない。
「いい相手と結婚できてよかったな。今までずっとシケた面してたからさ、取れたての魚みたいに目が生き生きしてる」
「その魚、すでに死んでるんではないんですか?」
言い返すと、ジャスパーは楽しそうに笑い出した。
「そういうところもクラリスの影響だろうな」
ポンポンと肩を叩かれる。
確かに、彼女と出会ってから毎日がとても楽しく感じられるようになった気がする。
ジャスパーに、話が終わったから帰っていい。と言われて、僕とアルネは二人で城内を歩き出した。
早く帰ろう。クラリスには何も言えないけれど、自分の死後のことも考えて色々と準備しないといけない。
それに、仲間にも声をかけなくては。
考えていると、アルネが突然僕に抱きついてきた。
「ねぇ、ジーク。あの時みたいに、私たち戻れるかしら」
あろう事か、アルネは昔の関係に戻りたいと言い出した。
お読みくださりありがとうございます
しばらくはこの更新ペースです
今日は腰痛くて寝込みます
案内された場所も謁見室ではなくて私室だ。
なんだろう。とても嫌な予感がする。
「ああ、すまない。公式の場じゃないから楽にしててくれ」
ジャスパーは、明らかに疲れた様子で僕たちに座るように促した。
「は、はい」
アルネが緊張した顔で座ったので、僕も同じように座った。
ところで、なぜジャスパーだけしかいないのだろうか。
「国王陛下は?」
「それも、ついでに話す」
僕の質問をジャスパーは軽く流した。
「ついでって」
アルネが、軽く引いている。僕もだ。
やはり、クラリスと血縁関係だからなのか、「そういう面」がたまに出るようだ。
ジャスパーは「堅苦しいのは苦手だから本題に入る」と、前置きした。
「瘴気が活発化している」
ジャスパーの一言に、僕は言葉を失った。
信じられない。という気持ちとやはり。という気持ちが少なからずある。
というのも、サブリナのことが実はずっと気になっていたのだ。
瘴気は人の精神にも影響があり、サブリナが起きない理由も精神的な物だと診断されているからだ。
「え、そんな」
アルネは、驚きながらも少しだけ喜んでいるように見えた。
「親父もその影響で寝込んでる」
「……あの、サブリナ嬢は」
「その可能性が高いな。クソっ……!もっと早く気がついてたら」
ジャスパーは、悔しそうに唇を噛み締めた。
「それで、帰ってきたばかりで申し訳ないのだが、瘴気を祓う旅に出て欲しい」
「承知しました」
ジャスパーの頼みにアルネは、間髪置かずに返事をした。
対して僕はすぐに返事ができなかった。
クラリスと離れるのが嫌だったのだ。
「……承知しました」
「お前は、特に嫌だよな。結婚するんだから」
時間を置いて返事をすると、ジャスパーは苦笑いを浮かべた。
彼も負い目があるようだ。
「大丈夫ですわ。政略結婚ですもの、ねぇ?」
アルネは、お互いの気持ちなどないから気にするな。と言い出す。
それに、ジャスパーは明らかに腹を立てた様子でアルネを睨みつける。
「なんだと?」
「いえ、そんなつもりでは」
アルネは慌てて言い訳を始めた。
「そうですね。とても、寂しいです」
寂しい。と、口に出してそうだった。と気がつく。
「正直、あまり状況がよろしくない。だから、早く旅に出て欲しいんだ」
初めて旅に出た自分の心境を思い出す。
死を覚悟していた。そして、何度か死にかけたこともある。
……もしかして、僕はこの旅で死ぬかもしれない。
「夜会を開くことにしたから、その場で報告するつもりだ」
「わかりました」
「……アイツまだ未成年だから、絶対に手だけは出すなよ」
ジャスパーは、言いにくそうにとんでもない事を言い出す。
途端に僕の顔は熱くなった。
結婚した先のことを考えてしまったのだ。
それにしても、僕ってこの人から見てどんな男に見えるのだろう……。
「な、なんて事を言うんですか!ぼ、僕そんなに手が早く見えますか?」
「いや、全然、むしろ奥手に見えるわ」
「……」
だったら、言わないでくれ。
「でもな、未成年相手に何かしでかしそうに見える顔してるんだよな」
「僕は変態ではありません!」
なんとかそれだけ反論するが、実際に未成年と婚約しているから、そう見られても仕方ないのかもしれない。
「いい相手と結婚できてよかったな。今までずっとシケた面してたからさ、取れたての魚みたいに目が生き生きしてる」
「その魚、すでに死んでるんではないんですか?」
言い返すと、ジャスパーは楽しそうに笑い出した。
「そういうところもクラリスの影響だろうな」
ポンポンと肩を叩かれる。
確かに、彼女と出会ってから毎日がとても楽しく感じられるようになった気がする。
ジャスパーに、話が終わったから帰っていい。と言われて、僕とアルネは二人で城内を歩き出した。
早く帰ろう。クラリスには何も言えないけれど、自分の死後のことも考えて色々と準備しないといけない。
それに、仲間にも声をかけなくては。
考えていると、アルネが突然僕に抱きついてきた。
「ねぇ、ジーク。あの時みたいに、私たち戻れるかしら」
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