52 / 63
鬼動きます(サブリナ)
しおりを挟む
鬼動きます
異邦人とはどういう意味なのか、とりあえず流しておこう。
そんな事よりも、クラリスの方が重要だから。
そもそも、なぜクラリスがいなくなったのか、そこから話を聞かないといけない。
「ところで、なぜ、クラリスはいなくなったのかしら」
「え、そこから?」
「異邦人は無視なの?」
私の質問にジャスパーは呆れ果て、クラウス方がはツッコミを入れた。
「とりあえず、時系列から教えてくれるかしら」
「わかった」
ジャスパーは、何があったのか色々と教えてくれた。
「なんっで、スッてぇ!?瘴気が復活したんですの?そんな事ってありえますの?」
ちょっと、いや、全く信じられない。
本の中の展開とは全く違うからだ。
「実際に起きてるからジーク達は旅に出たんだろ」
「まあ、そうですけど、それならジークムント達がどこに行くのか知らないと、なんの対策もできないじゃない」
クラリスがジークムントを追いかけたというのなら、彼らがどこに行ったのか知らないと話にならない。
ただ、危険の伴う旅だからどこから行くのかという情報は流さないはずだ。
「……とりあえず、どこに行くかは知ってる」
「ついてきなさい!」
やはりジャスパーは知っているのか、私は彼の首根っこを掴む。
「いや、困るって、俺皇太子!俺いないと困るって!」
「ライナーがいるわ。あの子、尻拭いの天才だからこういう時に才能が発揮されるわよ」
ジャスパーが必死に抵抗するが気にしない。
ライナーの方がこういう時に、おろそしいほどに的確に動けるのを私は知っているからだ。
「……ライナーくん、気の毒すぎる」
クラウスが何か言っているが、私は気にしない。
「ほら、来なさい!」
「困るって!」
私はジャスパーの首根っこをつかみ引きずりながら、周囲の制止を「お黙りなさい!」の一喝で制して場所に乗り込んだ。
「……サンキュー助かった。俺には無理だ。アレは、ライナーに任せよう」
ジャスパーは、馬車に乗り込むなりすぐさま座席に座り行く気満々の様子を醸し出していた。
この男はそう言う男なのだ。
皇太子のくせに腹芸は苦手だし、有事にはパニックを起こすような奴なのだ。
反対に、ライナーはというと日頃から、ストレ……、いや、かなり精神面を鍛えられているので、こういう時に恐ろしいほどの落ち着きを見せて的確に動けるのだ。
馬車にクラウスが乗り込むのを確認して、私は気になっていた事を質問する。
「で、異邦人って何かしら?」
「え、そこでぶっこむの!?」
クラウスは、唐突に聞かれてかなり驚いている。
精神の鍛え方が足りないようだ。
「気になったことはその場で知るのが一番だと誰かが話していたわ」
「……まあ、貴女がそう思うなら」
クラウスは納得してくれたようだ。
「異邦人とは……」
クラウスはそこから長ったらしく話し出した。
要約すると、異世界転移してきた人のことを指しているようだ。
そういえば、「君も異邦人か?」とクラウスは私に聞いてきていた。
「なるほどね。それで、私も異邦人だと貴方は言ったけれど、誰か思い当たる人がいるのかしら?」
「アルネだ」
「え?」
「旅から戻ってきたら別人になっていた」
クラウスがアルネが異邦人だとキッパリと言い切る様子に私は違和感を覚える。
気がついたのに、なぜ、彼は何も言わなかったのだろう。
「そう思ったのに、なぜ、誰にも言わなかったの?」
「僕の頭がおかしくなったと思われるか、アルネに何かされると思ったからさ」
確かにその通りかもしれない。
「俺、これ聞いていいの?」
ジャスパーは、話がまずい方向に進んでいると察したのか、不安そうな顔で私に聞いてきた。
情けない。本当に皇太子なのだろうか。
「アンタは、黙ってなさい!」
「はい」
私が一喝すると、ジャスパーはしおしおと萎びた。
「で、君はどうなんだい?」
「そうね。私も異邦人に当たるのかしら?でも、もともと、サブリナだったわよ。私の場合は異世界の前世の記憶があるの」
隠すこともできたが、言わなかったら話が進まない気がしたので私は認めることにした。
「君の話を聞きたい」
「こんな荒唐無稽な話を信じてくれるとは思わないけど、聞いてくれる?」
信じるかどうかはクラウス次第だが、アルネが別人になっていたことに気がついた彼なら信じてくれそうな気がした。
「……俺、聞かなきゃダメ?」
ジャスパーは、往生際悪くそんな事を聞いてきた。
「アンタは、今からこの馬車のシミだと思いなさい」
異邦人とはどういう意味なのか、とりあえず流しておこう。
そんな事よりも、クラリスの方が重要だから。
そもそも、なぜクラリスがいなくなったのか、そこから話を聞かないといけない。
「ところで、なぜ、クラリスはいなくなったのかしら」
「え、そこから?」
「異邦人は無視なの?」
私の質問にジャスパーは呆れ果て、クラウス方がはツッコミを入れた。
「とりあえず、時系列から教えてくれるかしら」
「わかった」
ジャスパーは、何があったのか色々と教えてくれた。
「なんっで、スッてぇ!?瘴気が復活したんですの?そんな事ってありえますの?」
ちょっと、いや、全く信じられない。
本の中の展開とは全く違うからだ。
「実際に起きてるからジーク達は旅に出たんだろ」
「まあ、そうですけど、それならジークムント達がどこに行くのか知らないと、なんの対策もできないじゃない」
クラリスがジークムントを追いかけたというのなら、彼らがどこに行ったのか知らないと話にならない。
ただ、危険の伴う旅だからどこから行くのかという情報は流さないはずだ。
「……とりあえず、どこに行くかは知ってる」
「ついてきなさい!」
やはりジャスパーは知っているのか、私は彼の首根っこを掴む。
「いや、困るって、俺皇太子!俺いないと困るって!」
「ライナーがいるわ。あの子、尻拭いの天才だからこういう時に才能が発揮されるわよ」
ジャスパーが必死に抵抗するが気にしない。
ライナーの方がこういう時に、おろそしいほどに的確に動けるのを私は知っているからだ。
「……ライナーくん、気の毒すぎる」
クラウスが何か言っているが、私は気にしない。
「ほら、来なさい!」
「困るって!」
私はジャスパーの首根っこをつかみ引きずりながら、周囲の制止を「お黙りなさい!」の一喝で制して場所に乗り込んだ。
「……サンキュー助かった。俺には無理だ。アレは、ライナーに任せよう」
ジャスパーは、馬車に乗り込むなりすぐさま座席に座り行く気満々の様子を醸し出していた。
この男はそう言う男なのだ。
皇太子のくせに腹芸は苦手だし、有事にはパニックを起こすような奴なのだ。
反対に、ライナーはというと日頃から、ストレ……、いや、かなり精神面を鍛えられているので、こういう時に恐ろしいほどの落ち着きを見せて的確に動けるのだ。
馬車にクラウスが乗り込むのを確認して、私は気になっていた事を質問する。
「で、異邦人って何かしら?」
「え、そこでぶっこむの!?」
クラウスは、唐突に聞かれてかなり驚いている。
精神の鍛え方が足りないようだ。
「気になったことはその場で知るのが一番だと誰かが話していたわ」
「……まあ、貴女がそう思うなら」
クラウスは納得してくれたようだ。
「異邦人とは……」
クラウスはそこから長ったらしく話し出した。
要約すると、異世界転移してきた人のことを指しているようだ。
そういえば、「君も異邦人か?」とクラウスは私に聞いてきていた。
「なるほどね。それで、私も異邦人だと貴方は言ったけれど、誰か思い当たる人がいるのかしら?」
「アルネだ」
「え?」
「旅から戻ってきたら別人になっていた」
クラウスがアルネが異邦人だとキッパリと言い切る様子に私は違和感を覚える。
気がついたのに、なぜ、彼は何も言わなかったのだろう。
「そう思ったのに、なぜ、誰にも言わなかったの?」
「僕の頭がおかしくなったと思われるか、アルネに何かされると思ったからさ」
確かにその通りかもしれない。
「俺、これ聞いていいの?」
ジャスパーは、話がまずい方向に進んでいると察したのか、不安そうな顔で私に聞いてきた。
情けない。本当に皇太子なのだろうか。
「アンタは、黙ってなさい!」
「はい」
私が一喝すると、ジャスパーはしおしおと萎びた。
「で、君はどうなんだい?」
「そうね。私も異邦人に当たるのかしら?でも、もともと、サブリナだったわよ。私の場合は異世界の前世の記憶があるの」
隠すこともできたが、言わなかったら話が進まない気がしたので私は認めることにした。
「君の話を聞きたい」
「こんな荒唐無稽な話を信じてくれるとは思わないけど、聞いてくれる?」
信じるかどうかはクラウス次第だが、アルネが別人になっていたことに気がついた彼なら信じてくれそうな気がした。
「……俺、聞かなきゃダメ?」
ジャスパーは、往生際悪くそんな事を聞いてきた。
「アンタは、今からこの馬車のシミだと思いなさい」
717
あなたにおすすめの小説
はっきり言ってカケラも興味はございません
みおな
恋愛
私の婚約者様は、王女殿下の騎士をしている。
病弱でお美しい王女殿下に常に付き従い、婚約者としての交流も、マトモにしたことがない。
まぁ、好きになさればよろしいわ。
私には関係ないことですから。
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
2番目の1番【完】
綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。
騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。
それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。
王女様には私は勝てない。
結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。
※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです
自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。
批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…
私のことはお気になさらず
みおな
恋愛
侯爵令嬢のティアは、婚約者である公爵家の嫡男ケレスが幼馴染である伯爵令嬢と今日も仲睦まじくしているのを見て決意した。
そんなに彼女が好きなのなら、お二人が婚約すればよろしいのよ。
私のことはお気になさらず。
【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです
との
恋愛
結婚して12年目のシエナは白い結婚継続中。
白い結婚を理由に離婚したら、全てを失うシエナは漸く離婚に向けて動けるチャンスを見つけ・・
沈黙を続けていたルカが、
「新しく商会を作って、その先は?」
ーーーーーー
題名 少し改変しました
妻よりも幼馴染が大事? なら、家と慰謝料はいただきます
佐藤 美奈
恋愛
公爵令嬢セリーヌは、隣国の王子ブラッドと政略結婚を果たし、幼い娘クロエを授かる。結婚後は夫の王領の離宮で暮らし、義王家とも程よい関係を保ち、領民に親しまれながら穏やかな日々を送っていた。
しかし数ヶ月前、ブラッドの幼馴染である伯爵令嬢エミリーが離縁され、娘アリスを連れて実家に戻ってきた。元は豊かな家柄だが、母子は生活に困っていた。
ブラッドは「昔から家族同然だ」として、エミリー母子を城に招き、衣装や馬車を手配し、催しにも同席させ、クロエとアリスを遊ばせるように勧めた。
セリーヌは王太子妃として堪えようとしたが、だんだんと不満が高まる。
幼馴染を溺愛する彼へ ~婚約破棄はご自由に~
佐藤 美奈
恋愛
公爵令嬢アイラは、婚約者であるオリバー王子との穏やかな日々を送っていた。
ある日、突然オリバーが泣き崩れ、彼の幼馴染である男爵令嬢ローズが余命一年であることを告げる。
オリバーは涙ながらに、ローズに最後まで寄り添いたいと懇願し、婚約破棄とアイラが公爵家当主の父に譲り受けた別荘を譲ってくれないかと頼まれた。公爵家の父の想いを引き継いだ大切なものなのに。
「アイラは幸せだからいいだろ? ローズが可哀想だから譲ってほしい」
別荘はローズが気に入ったのが理由で、二人で住むつもりらしい。
身勝手な要求にアイラは呆れる。
※物語が進むにつれて、少しだけ不思議な力や魔法ファンタジーが顔をのぞかせるかもしれません。
もうあなた達を愛する心はありません
佐藤 美奈
恋愛
セラフィーナ・リヒテンベルクは、公爵家の長女として王立学園の寮で生活している。ある午後、届いた手紙が彼女の世界を揺るがす。
差出人は兄ジョージで、内容は母イリスが兄の妻エレーヌをいびっているというものだった。最初は信じられなかったが、手紙の中で兄は母の嫉妬に苦しむエレーヌを心配し、セラフィーナに助けを求めていた。
理知的で優しい公爵夫人の母が信じられなかったが、兄の必死な頼みに胸が痛む。
セラフィーナは、一年ぶりに実家に帰ると、母が物置に閉じ込められていた。幸せだった家族の日常が壊れていく。魔法やファンタジー異世界系は、途中からあるかもしれません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる