婚約破棄を告げる責務

岡暁舟

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責務

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「クリス……。私は君との婚約を破棄しなくてはならない」

「どうしてですか!!!」

クリスは私を見て脅えていた。それもそうだろう。随分と痩せこけてしまった。いや、それ以上に、私が婚約破棄を宣言したことが衝撃的だったのだろうか?

「私は……旅に出ようと思っているんだ。そして、パートナーもいる……」

「パートナーですって!?」

私はもっとうまく婚約破棄する方法が知りたかった。クリスは……このままだと未練を残していくんだろうな、と思いながら。

「王子様?パートナーって、一体誰のことなんですか?一体、どこへ旅に行くんですか?」

私は喉から精一杯声を絞り出した。

「君にはもう関係のないことなんだ……。君と私は、もう何も関係がないんだ……。クリス、私が君に恋をしたのは、まだ子供の頃の話だ。私は男だからな、随分と身勝手なんだ。この前のパーティーの後にな、魅力的な令嬢を見つけて声をかけてみた。そして、そのまま一夜を共にした……。なあ、これでいいだろう?」

「ウソですわ!王子様がそんなことをするはずありませんもの!!!そんな酷いお方でしたら、私は最初からあなた様のことを愛していませんでした!!!」

クリス……私も君を愛せて本当に幸せだった。しかしながら、新しいパートナーと共に、旅に出なければいけないのだ……。

「男というものは、みんなそうなんだよ。古い恋がどうしたって言うのさ?ちょっと目移りしただけで、すぐに乗り換えてしまう……今は婚約破棄が流行っているそうじゃないか……」

クリスは涙ながらに、

「王子様はそんな男たちとは違うはずです!!!」

と言った。

「クリス……これ以上私を苦しめないでくれるかな……。私は真実の恋に気が付いてしまったんだ。分かったね!」

私は最後にクリスの顔を見ないで、王宮に閉じこもった。扉を一枚隔てて、何日も何日もクリスの嘆きと、ささめなる涙の音が聞こえてきた。私は自ら言い聞かせた。これが、クリスにとって一番ベストなんだと。


それから数か月経った。私はパートナーを呼び出した。

「いよいよですか……」

私は中々打ち解けることができなかった。

「クリスさん、でしたっけ?お別れはすみましたか?」

「ええ、最近になって、私のところに姿を見せなくなりました。最初は足繁く通ってくれたものでしたが……彼女なりに吹っ切れたのでしょう……」

「やっぱり、あなたは正直な人ですね。とても悲しそう……」

「それは……そうですね。でも、私はあなたと旅をすることで、クリスという女性を忘れることができるのですね」

「最大限フォローさせて頂きます」

「そうですか……。では、そろそろ行くとしましょうか」

私はパートナーに手を添えてもらった。行く宛ての知らない長い旅……不安に決まっていた。そんな私の不安をきれいさっぱり取り除いてくれたのは……。

「王子様!!!ご達者で!!!」

クリス?

「どうかなさいましたか?」

「えっ……ああ、いや、なんでもないんですよ……。早く行きましょう……」


もう一度あなたと出会うことができたなら、その場でもう一度婚約しよう。

ちょっと、都合がよすぎるかな?

「そんなことありませんよ。愛しています。王子様!!」

ありがとう。君もお元気で。

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