やんちゃな公爵令嬢の駆け引き~不倫現場を目撃して~

岡暁舟

文字の大きさ
1 / 21

1

しおりを挟む
 その連絡は突如もたらされた。私の人生を大きく狂わすことになる重大情報であった。


「エリザベート!大変だっ!!!」

 「エリザベート・キンダリー」ファンクラブ会員番号1番のフロイドが駆け込んできた。

「どうしたの?そんなに急いで……」

「どうしたのもこうしたのもない、大変なんだって!」

「だから、何がそんなに大変なのよ?あと1分もしたら地球が滅亡でもするの?」

「……場合によってはそれ以上に大変なことかもしれないんだ……」

「それ以上に大変なこと?そんなこと、あるわけないでしょう……」


 フロイドは一回落ち着いて、息をふうっ、と吐いた。

「いいかい、エリザベート。冷静になって聞くんだ。決して……僕が悪いわけじゃないからね……」

「ええ、分かったわ。聞いてやろうじゃないの。それで……どうしたっていうのよ?」

「それが……君の婚約者はトスカーナ様で間違いないよな?」

「ええ、もちろんよ。数多いる令嬢の中から私のことを選んでくださった、素敵な素敵な大好きなトスカーナ様よ!!!」

 名門公爵家の血筋を引くトスカーナ様……学院で埋もれていた私の女心に火をつけてくれた素敵な素敵な、私が最も尊敬し愛するトスカーナ様!!!私が15歳でトスカーナ様は18歳。プロポーズしてきたのは、なんとトスカーナ様の方からだった。信じられなかった。どうして、こんな私を婚約者に選んだのか?

 最初は信じられなかった。だって、私が幾ら愛しても、手の届かないところにいるのがトスカーナ様だったから。将来は王家の王女様と婚約するなんて噂されていたし。いや、今でも正直信じられないんだよね。

「私は君に一目ぼれしたんだ。私と婚約してくれないか?」なんて、本当にいきなりプロポーズしてきたんだから!!!ひょっとして、相手を間違えている?私はなんの変哲もない、お金もコネも大してない平凡な公爵令嬢エリザベート・キンダリーである!!!

 でもね、トスカーナ様の熱い視線に嘘偽りはないと思ったの。だから、私は強引にトスカーナ様の手をとって、「不束者ではございますが、末永くよろしくお願いします!!!」と答えたわけ。

 私が20歳を迎える日、正式に婚約することに決まった。そのトスカーナ様に関する話のようだった。


「ああ、そのトスカーナ様がだな……君とは別の令嬢と会っていたんだ……」

 フロイドは私の顔を見て恐れた。

「ああ、そうなの?ふーん……別に怒ってなんかないわよ!?」

「あのお、エリザベートさん?」

「だからね、別に怒ってなんかないわよ。そりゃそうよ、トスカーナ様は八方美人で、誰にも公平に接するお優しい貴族様なんだから、別に他のどこの馬の骨だか知らない女と話していても不思議ではないでしょう。そんなことで一々怒るほど、野暮な令嬢ではないわよっ!!!」

「エリザベート……声が怒っているぞ……」

「怒ってない、怒ってなんかないわよ。ほら、鏡を見て。いつも通りみんなのアイドル、エリザベート・キンダリーでしょう。なによ、少しくらい顔が歪んで見えても……これは鏡の問題なのよ!!!」


 パリン、と鏡の割れる音がした。でもね、このくらい気にしない、気にしない。

「別に、私は何も気にしていないし、怒っていないわ。でもね……まさかとは思うけど、私の愛するトスカーナ様に万が一のことがあっては困るから、一体どんな女と話をしているのか、会ってみようかしら。フロイド、現場に案内してくれる???」

「……本当に行くのかい?」

 フロイドは躊躇した。

「当たり前でしょう。万が一にも間違いがあったら、絶対そんなことはないと思うけどね、世界を訂正しないといけないからね!!!さあ、早く連れて行って……」

 フロイドは私の言う通り、トスカーナ様のところに連れて行ってくれた。トスカーナ様の姿を直ぐに確認することは出来なかった。どうやら、小さな空き教室の中にトスカーナ様はいるようだった。

「ダメです、こんなことをしては……」

「いいではないか、ほら遠慮せずに……」

「誰かに見られてしまったら……」

「遠慮することはない。この場にいるのは私と君の……2人だけだ……」


 トスカーナ様と知らない女の声が聞こえた。もちろん、分かっている。直ぐに覗いてしまっては、婚約者としてあまりにもはしたなすぎると。2人の様子を暫く音だけで空想することにした。

 フロイドの言葉を借りれば、この時の私の表情は、それこそ世界を壊すのに十分と想えたそうだ……。

















しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あの夏の日、私は確かに恋をした

田尾風香
恋愛
夏の祭礼の終盤、私は婚約者である王子のエーリスに婚約破棄を言い渡されて、私が"精霊の愛し子"であることも「嘘だ」と断じられた。 何も言えないまま、私は国に送り返されることになり、馬車に乗ろうとした時だった。 「見つけた、カリサ」 どこかで見たことがあるような気がする男性に、私は攫われたのだった。 ***全四話。毎日投稿予定。四話だけ視点が変わります。一話当たりの文字数は多めです。一話完結の予定が、思ったより長くなってしまったため、分けています。設定は深く考えていませんので、サラッとお読み頂けると嬉しいです。

運命の番より真実の愛が欲しい

サトウミ
恋愛
田舎娘のゾーイは龍族の王子・シャウロンの『運命の番』だった。 ロマンチックな恋を夢見るゾーイは『運命の番』であるシャウロンと会えるのを楽しみにしていた。 しかし、シャウロンはゾーイに対して素っ気ない。 運命の番だからといって、必ずしも愛し合う関係だとは限らないらしい。 それを悟ったゾーイは、シャウロンのもとから去ることを決意した。

恋して舞い上がっていましたが、熱烈な告白は偽りのようです~ポンコツ前向き聖女と俺様不機嫌騎士団長のすれ違い~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
聖女として隣国の問題解決を命じられノースウッド大国に訪れたキャロラインだったが、他の聖女たちのやらかしの後で、挽回すべく妖精や精霊との交渉で国に貢献していた。  そんなキャロラインの傍にいたのが、護衛兼世話係のリクハルドだった。  最悪の出会いから、一緒に過ごして恋に落ちたのだが──。 「あと少しで聖女殿も落とせる。全部、当初の計画通りだよ」  黒の騎士団長と正体を明かし、リクハルドからプロポーズを受けて舞い上がっていた聖女キャロラインは、偶然国王との会話を耳にしてしまう。  それぞれの立場、幼馴染の再会と状況の変化などで──すれ違う。様々な悪意と思惑が交錯する中で、キャロラインは幼馴染の手を取るのか、あるいはリクハルドと関係が修復するのか?

ナタリーの騎士 ~婚約者の彼女が突然聖女の力に目覚めました~

りつ
恋愛
 リアンは幼馴染のナタリーに昔から淡い恋心を抱いていた。それは彼が成長して、王女殿下の護衛騎士となっても変わりはしなかった。両親や王女に反対されても、ナタリーと結婚したい、ずっと一緒にいたい……そう願い続けた彼の望みはようやく叶い、ナタリーと婚約することができた。あと少しで彼女は自分の妻となる。そう思っていたリアンだが、ある日ナタリーが王女に呼ばれ……

そんな世界なら滅んでしまえ

キマイラ
恋愛
魔王を倒す勇者パーティーの聖女に選ばれた私は前世の記憶を取り戻した。貞操観念の厳しいこの世界でパーティーの全員と交合せよだなんてありえないことを言われてしまったが絶対お断りである。私が役目をほうきしたくらいで滅ぶ世界なら滅んでしまえばよいのでは? そんなわけで私は魔王に庇護を求めるべく魔界へと旅立った。

聖女だと呼び出しておいて無能ですか?〜捨てられた私は魔王様に溺愛される〜

みおな
恋愛
 学校帰りにいきなり眩い光に包まれて連れて来られたのは異世界でした。  王子はこんなちんちくりんは聖女ではないと言い放ち、私を王宮から追い出しました。  元の世界に帰る方法は、魔王の持つ帰還の指輪が必要と言われ、途方にくれた私の前に現れたのは、美形の魔王でした。

罪人聖女の幸せな身請け~「死んだ」私を探し続けた彼が、妻にしたいと迎えに来ました~

八重
恋愛
元伯爵令嬢であり教会で聖女として働くフィーネは、親友だと思っていた人に嵌められて、礼拝堂の火事の犯人にされてしまう。 神秘力も低く、『罪人聖女』の烙印を押された彼女は神父によって貴族に売られては、難癖をつけられて出戻る日々。 そんな時、王太子の従兄弟として王政を支えるオスヴァルト・エルツェ公爵が、フィーネを身請けしにくる。 「今日から私の妻だ、フィーネ」 大きな牙を覗かせた口で囁いた彼は、吸血鬼だった。 そして彼は、こう言う。 「まだ気づかない?」 その言葉を聞いたフィーネは、自分の過去と『ある少年』の存在を思い出す。 さらに、吸血鬼だったオスヴァルトの妻になって溺愛されるフィーネには実はある秘密があって……。 ※昔投稿した作品のリメイク版です ※昔の作品タイトル:「吸血鬼の花嫁」  (現作品の旧タイトル:罪人聖女の幸せな結婚) ※他サイトでも公開しております

醜貌の聖女と呼ばれ、婚約破棄されましたが、実は本物の聖女でした

きまま
恋愛
王国の夜会で、第一王子のレオンハルトから婚約破棄を言い渡された公爵令嬢リリエル・アルヴァリア。 顔を銀の仮面で隠していることから『醜貌の聖女』と嘲られ、不要と切り捨てられた彼女は、そのまま王城を追われることになる。 しかし、その後に待ち受ける国の運命は滅亡へと向かっていた——

処理中です...