夫の不倫劇・危ぶまれる正妻の地位

岡暁舟

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 修道院からの迎えは、離縁の署名が交わされて3日後にやって来た。

「あなたみたいな女は…修道服がお似合いよ!」

 お母様は最後まで私のことを罵倒してくれた。そんなお母様にさえ、私は感謝していた。常に私の敵で居続けてくれたことで、この世界から去る決断をすることが出来たのだから。

「色々とありがとうございました…」

 私はそう言って頭を下げた。

「ありがとうって…それは当てつけかしら?」

「いいえ、そのようなことはありません。短い間ですが、お世話になった感謝の気持ちです…」

「あら、そうなの。それならそれでいいわ…」


 旦那様はベランダから…こっそりと私のことを見送っていた。根本的に憶病なんだ。


「お待ちくださーい!」

 出発の間際、私に声をかけてきた人…それは晴れて正妻となったカーチャであった。

「カーチャ?はしたないわよ。由緒ある公爵家の妻として…相応しい行動をとらないと…」

 カーチャはお母様の言葉を聞いていなかった。

「アンナ様?本当に行かれてしまうのですか?」

 カーチャが私の旅路を止める理由が分からなかった…ひょっとすると独りぼっちになってしまうのが不安なのか。

「カーチャ?アンナさんを止める必要はないでしょう?」

 お母様の意見は最もだが、カーチャの耳には響いていないようだった。

「私は平気…ほら、公爵家の正妻なんだから…そんな悲しそうな顔をしないで、旦那様のところに行ってあげなさい…」

 最後に諭してあげた。

「はいっ…分かりました。ああ、そうだ、アンナ様。案外早いうちに再開出来るかもしれませんね?」

 カーチャが最後にこう言った…その真意はもちろんこの時は分からなかった。

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