70 / 202
再会 ⑦
しおりを挟む
——カランカラン——
店のドアが開き、かけられていたベルが鳴る。
「ああ山崎さん。いらっしゃい。何かお忘れですか?」
店のオーナーが晴人を見て、不思議そうに言った。
「いえ、今はある人に会いに」
そう言いながら晴人があたりを見回すと、晴人の方を見ていた瑞稀と目が合い手を振る。
そう言ってから晴人は瑞稀の前に座った。
「注文はまだ? 俺はコーヒーにするけど、瑞稀はカフェオレでもいい? 昔、好きだったよね」
目の前に晴人が座り、昔のように話しかけてくれ、好きなものまで覚えてえくれている。
「はい……」
「じゃあ……」
と、晴人は自分のコーヒーと瑞稀のカフェオレを頼む。
一気に昔に戻ったみたいで……。
でもそれは幻だとわかっていて……。
時間は確実にあの日から5年の月日が流れている。
奥歯を噛み締め、膝の上に置いている両手に力を入れ、瑞稀は泣きそうになるのを我慢した。
「あの……お忙しいのに時間を割いていただいて、すみません」
晴人の顔を見ることができず、瑞稀は下を向く。
「それは気にしないで。俺が時間をつくって欲しいって頼んだんだから……」
多分晴人は瑞稀の方をしっかり見ながら言っていると、瑞稀は思った。
だがどうしても瑞稀自身は罪悪感で顔を上げることができない。
「瑞稀……元気にしてた?」
もう一度聞かれた。
「はい」
俯き、膝の上で握る拳を見つづけながら瑞稀は答える。
「千景君は元気?」
「え!?」
晴人の口から突然千景の名前が出てき、虚をつかれた瑞稀は頭を上げた。
「副社長から聞いたんだ。瑞稀には『千景君』っていう男の子がいるって」
ああ、内藤さんから聞いたんだ。
できるなら晴人には千景のことは知られたくなかった。
だが副社長の秘書をしている晴人なら、千景のことは知っていてもおかしくない。
「はい、元気です」
緊張で顔が引き攣りそうだが、晴人から目を逸らさないようにする。
「5歳だって?」
「はい。4月で6歳になります」
「そうなんだ。瑞稀に似て可愛いんだろうな」
「僕には似てないですよ。どちらかといえば……」
そこまで言って、もう少しで『晴人さんにそっくりです』そう言いそうになり、瑞稀はハッとし口をつぐんだ。
「父親似?」
「……はい……」
「父親って、瑞稀が手紙に書いていた『好きな人』?」
「……」
長い沈黙の後、
「はい……」
答えた。
店のドアが開き、かけられていたベルが鳴る。
「ああ山崎さん。いらっしゃい。何かお忘れですか?」
店のオーナーが晴人を見て、不思議そうに言った。
「いえ、今はある人に会いに」
そう言いながら晴人があたりを見回すと、晴人の方を見ていた瑞稀と目が合い手を振る。
そう言ってから晴人は瑞稀の前に座った。
「注文はまだ? 俺はコーヒーにするけど、瑞稀はカフェオレでもいい? 昔、好きだったよね」
目の前に晴人が座り、昔のように話しかけてくれ、好きなものまで覚えてえくれている。
「はい……」
「じゃあ……」
と、晴人は自分のコーヒーと瑞稀のカフェオレを頼む。
一気に昔に戻ったみたいで……。
でもそれは幻だとわかっていて……。
時間は確実にあの日から5年の月日が流れている。
奥歯を噛み締め、膝の上に置いている両手に力を入れ、瑞稀は泣きそうになるのを我慢した。
「あの……お忙しいのに時間を割いていただいて、すみません」
晴人の顔を見ることができず、瑞稀は下を向く。
「それは気にしないで。俺が時間をつくって欲しいって頼んだんだから……」
多分晴人は瑞稀の方をしっかり見ながら言っていると、瑞稀は思った。
だがどうしても瑞稀自身は罪悪感で顔を上げることができない。
「瑞稀……元気にしてた?」
もう一度聞かれた。
「はい」
俯き、膝の上で握る拳を見つづけながら瑞稀は答える。
「千景君は元気?」
「え!?」
晴人の口から突然千景の名前が出てき、虚をつかれた瑞稀は頭を上げた。
「副社長から聞いたんだ。瑞稀には『千景君』っていう男の子がいるって」
ああ、内藤さんから聞いたんだ。
できるなら晴人には千景のことは知られたくなかった。
だが副社長の秘書をしている晴人なら、千景のことは知っていてもおかしくない。
「はい、元気です」
緊張で顔が引き攣りそうだが、晴人から目を逸らさないようにする。
「5歳だって?」
「はい。4月で6歳になります」
「そうなんだ。瑞稀に似て可愛いんだろうな」
「僕には似てないですよ。どちらかといえば……」
そこまで言って、もう少しで『晴人さんにそっくりです』そう言いそうになり、瑞稀はハッとし口をつぐんだ。
「父親似?」
「……はい……」
「父親って、瑞稀が手紙に書いていた『好きな人』?」
「……」
長い沈黙の後、
「はい……」
答えた。
44
あなたにおすすめの小説
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
トップアイドルα様は平凡βを運命にする【完】
新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。 ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。 翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。 運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。
『聖クロノア学院恋愛譚 』記憶を失ったベータと王族アルファ、封印された過去が愛を試すまで
るみ乃。
BL
聖クロノア学院で、記憶と感情が静かに交差する。
「君の中の、まだ知らない“俺”に、触れたかった」
記憶を失ったベータの少年・ユリス。
彼の前に現れたのは、王族の血を引くアルファ・レオンだった。
封じられた記憶。
拭いきれない心の傷。
噛み合わない言葉と、すれ違う想い。
謎に包まれた聖クロノア学院のなかで、
ふたりの距離は、近づいては揺れ、また離れていく。
触れたいのに、触れられない。
心を開けば、過去が崩れてしまう。
それでも彼らは、確かめずにはいられなかった。
――やがて、学院の奥底に眠る真実が、静かに目を覚ます。
過去と向き合い、誰かと繋がることでしか見えない未来がある。
許し、選びなおし、そしてささやかな祈り。
孤独だった少年たちは、いつしか「願い」を知っていく。
これは、ふたりの愛の物語であると同時に、
誰かの傷が、誰かの救いへと変わっていく物語。
運命に抗うのは、誰か。
未来を選ぶのは、誰なのか。
優しさと痛みが交差する場所で、物語は紡がれる。
オメガの僕が、最後に恋をした騎士は冷酷すぎる
虹湖🌈
BL
死にたかった僕を、生かしたのは――あなたの声だった。
滅びかけた未来。
最後のオメガとして、僕=アキは研究施設に閉じ込められていた。
「資源」「道具」――そんな呼び方しかされず、生きる意味なんてないと思っていた。
けれど。
血にまみれたアルファ騎士・レオンが、僕の名前を呼んだ瞬間――世界が変わった。
冷酷すぎる彼に守られて、逃げて、傷ついて。
それでも、彼と一緒なら「生きたい」と思える。
終末世界で芽生える、究極のバディ愛×オメガバース。
命を懸けた恋が、絶望の世界に希望を灯す。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
8/16番外編出しました!!!!!
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭
4/29 3000❤️ありがとうございます😭
8/13 4000❤️ありがとうございます😭
12/10 5000❤️ありがとうございます😭
わたし5は好きな数字です💕
お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭
【完結】この契約に愛なんてないはずだった
なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。
そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。
数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。
身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。
生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。
これはただの契約のはずだった。
愛なんて、最初からあるわけがなかった。
けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。
ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。
これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。
白銀オメガに草原で愛を
phyr
BL
草原の国ヨラガンのユクガは、攻め落とした城の隠し部屋で美しいオメガの子どもを見つけた。
己の年も、名前も、昼と夜の区別も知らずに生きてきたらしい彼を置いていけず、連れ帰ってともに暮らすことになる。
「私は、ユクガ様のお嫁さんになりたいです」
「ヒートが来るようになったとき、まだお前にその気があったらな」
キアラと名づけた少年と暮らすうちにユクガにも情が芽生えるが、キアラには自分も知らない大きな秘密があって……。
無意識溺愛系アルファ×一途で健気なオメガ
※このお話はムーンライトノベルズ様にも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる