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山﨑晴人 ⑧
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今の晴人にできることといえば、スーツの上着の内ポケットに入れたスマホが震えるのを待つだけだ。
知らず知らずのうちに、小さなため息が出た。
「晴人も休憩したら?」
いつの間に用意したのか、昴は晴人に缶のカフェオレを差し出す。
「常温保存だから、ぬるいぞ」
どうやらそのカフェオレは昴のデスクの引き出しにしまわれていたようだ。
「いつの間に、そんなところに隠してたんですか?」
「菓子もある」
カフェオレが出てきた引き出しから、クッキーが出てくる。
「あはは、どうしてそんなところから、クッキーが出てくるんですか?」
「ちょっとした息抜きをしたい時に、すぐあった方がいいだろう?」
小学生が机にお菓子を隠し持っているのと、同じ感覚だ。
いつもは頼り甲斐がある昴だが、長い付き合いの晴人が見ても予想以上のことをする昴の行動がおもしろい。
「それではいただきます」
缶の蓋をあけ、ぬるく甘いカフェオレを飲む。
瑞稀は、甘いカフェオレが好きだったな。
瑞稀は晴人とコーヒーを飲むとき、晴人が飲むブラックと自分が飲む甘いカフェオレを淹れ、晴人の隣にちょこんと座りながら、一緒にコーヒーを飲むのが好きだった。
コーヒーのお供は、チョコチップ入りのクッキー……。
スーパーに売っているクッキー。
それを買って帰ると、瑞稀は喜んだ。
今日は瑞稀と再会したからだろうか?瑞稀との楽しかった思い出が、ふわふわと頭の中に浮かんでくる。
瑞稀は今どうしているだろうか?
今日、何十回も同じことを考えていると、ブーンと晴人の内ポケットのスマホが震えた。
「!!」
慌てて、晴人はスマホを取り出すと、メールが一件届いていた。
送り主は知らない番号。
だが晴人は送り主が瑞稀であって欲しいと願った。
ふぅ~と息を吐き、心を落ち着かせてからメールを開ける。
『晴人さん。
午後5時半までか、夜9時半以降で晴人さんのいい時間帯を教えていただけませんか?こちらからご連絡させていただきたいと思います。
お忙しいとは思いおますが、よろしくお願いします。
瑞稀 』
「瑞稀……」
瑞稀からの返信メールが届いただけで泣きそうになる。
何度もメールを読み腕時計で時間を確認する。
今から5時半までに折り返し電話をするのは、時間的に無理だ。
9時半以降なら大丈夫そうだが……。
もう瑞稀のことが気になって仕方ない。
「行ってこいよ」
スマホを見続けている晴人の方を、昴はポンポンと二回叩く。
「行くってどういうことですか?」
「今から瑞稀くんに連絡して、居場所を教えてもらえたら、会いに行けってこと。気になるんだろ?」
「それは……」
会いたい。
メッセージだけじゃなくて、電話だけじゃなくて、瑞稀に会いたい。
ちゃんと目を見て話したい。
微笑みながら晴人を見つめる瑞稀の顔が、脳裏に浮かぶ。
「行ってこい」
「でもまだ仕事中ですし、この後の予定もあります」
仕事は仕事。プライベートはプライベート。
晴人はしっかりと線引きをしている。
「晴人が仕事を真剣にしていることを俺は知っているし、そんな晴人だから秘書の仕事を安心して任せられる。でもな、今は例外だ。今は会いに行かないとダメな時だ。それは晴人もわかっているだろ?」
「しかし……」
「毎回はダメだ。でも今回だけは行ってこい。上司命令だ」
昴は晴人の背中を押し、部屋のドアまで連れて行く。
「今日のメインどころは済んだ。時間は気にせずゆっくりしてこい」
廊下に押し出した。
先輩……。
まだ仕事は残っている。
それでも『ゆっくりしてこい』と言ってくれる昴の気遣いが嬉しかった。
ドアの向こうで昴が「全く、手がかかる奴だ」と心配そうにしている時、晴人は震える手で瑞稀に電話をかけた。
知らず知らずのうちに、小さなため息が出た。
「晴人も休憩したら?」
いつの間に用意したのか、昴は晴人に缶のカフェオレを差し出す。
「常温保存だから、ぬるいぞ」
どうやらそのカフェオレは昴のデスクの引き出しにしまわれていたようだ。
「いつの間に、そんなところに隠してたんですか?」
「菓子もある」
カフェオレが出てきた引き出しから、クッキーが出てくる。
「あはは、どうしてそんなところから、クッキーが出てくるんですか?」
「ちょっとした息抜きをしたい時に、すぐあった方がいいだろう?」
小学生が机にお菓子を隠し持っているのと、同じ感覚だ。
いつもは頼り甲斐がある昴だが、長い付き合いの晴人が見ても予想以上のことをする昴の行動がおもしろい。
「それではいただきます」
缶の蓋をあけ、ぬるく甘いカフェオレを飲む。
瑞稀は、甘いカフェオレが好きだったな。
瑞稀は晴人とコーヒーを飲むとき、晴人が飲むブラックと自分が飲む甘いカフェオレを淹れ、晴人の隣にちょこんと座りながら、一緒にコーヒーを飲むのが好きだった。
コーヒーのお供は、チョコチップ入りのクッキー……。
スーパーに売っているクッキー。
それを買って帰ると、瑞稀は喜んだ。
今日は瑞稀と再会したからだろうか?瑞稀との楽しかった思い出が、ふわふわと頭の中に浮かんでくる。
瑞稀は今どうしているだろうか?
今日、何十回も同じことを考えていると、ブーンと晴人の内ポケットのスマホが震えた。
「!!」
慌てて、晴人はスマホを取り出すと、メールが一件届いていた。
送り主は知らない番号。
だが晴人は送り主が瑞稀であって欲しいと願った。
ふぅ~と息を吐き、心を落ち着かせてからメールを開ける。
『晴人さん。
午後5時半までか、夜9時半以降で晴人さんのいい時間帯を教えていただけませんか?こちらからご連絡させていただきたいと思います。
お忙しいとは思いおますが、よろしくお願いします。
瑞稀 』
「瑞稀……」
瑞稀からの返信メールが届いただけで泣きそうになる。
何度もメールを読み腕時計で時間を確認する。
今から5時半までに折り返し電話をするのは、時間的に無理だ。
9時半以降なら大丈夫そうだが……。
もう瑞稀のことが気になって仕方ない。
「行ってこいよ」
スマホを見続けている晴人の方を、昴はポンポンと二回叩く。
「行くってどういうことですか?」
「今から瑞稀くんに連絡して、居場所を教えてもらえたら、会いに行けってこと。気になるんだろ?」
「それは……」
会いたい。
メッセージだけじゃなくて、電話だけじゃなくて、瑞稀に会いたい。
ちゃんと目を見て話したい。
微笑みながら晴人を見つめる瑞稀の顔が、脳裏に浮かぶ。
「行ってこい」
「でもまだ仕事中ですし、この後の予定もあります」
仕事は仕事。プライベートはプライベート。
晴人はしっかりと線引きをしている。
「晴人が仕事を真剣にしていることを俺は知っているし、そんな晴人だから秘書の仕事を安心して任せられる。でもな、今は例外だ。今は会いに行かないとダメな時だ。それは晴人もわかっているだろ?」
「しかし……」
「毎回はダメだ。でも今回だけは行ってこい。上司命令だ」
昴は晴人の背中を押し、部屋のドアまで連れて行く。
「今日のメインどころは済んだ。時間は気にせずゆっくりしてこい」
廊下に押し出した。
先輩……。
まだ仕事は残っている。
それでも『ゆっくりしてこい』と言ってくれる昴の気遣いが嬉しかった。
ドアの向こうで昴が「全く、手がかかる奴だ」と心配そうにしている時、晴人は震える手で瑞稀に電話をかけた。
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