【完結】たとえ彼の身代わりだとしても貴方が僕を見てくれるのならば… 〜初恋のαは双子の弟の婚約者でした〜

葉月

文字の大きさ
4 / 105

初恋の人 

しおりを挟む
 僕は父様達にミカの体調のことは秘密にしたけれど、僕の様子がおかしいと父様に問いただされ、ミカの体調が悪い事を話した。
 僕はたっぷりと叱られ、結局サイモンに会えたのはミカだけで、僕は自室で反省しなさいとのことだった。
 
 僕だってサイモンに会いたかったのに……。
 自分のベッドにうつ伏せで寝、枕で耳を塞ぐが聞こえないはずの父様、母様、ミカ、サイモンの楽しそうな話し声が聞こえてくるようで、余計に悲しくなった。

 僕だってサイモンと会うのを楽しみにしていた。
 2週間ほどサイモンは家にいてくれるけれど、その間父様が許してくださらなかったら、僕はサイモンに会えないままかもしれない。
 そう思うと涙が溢れてきて、ゴシゴシと服の袖で涙を拭き取った。

「サイモンに、会いたいよ……」
「誰に会いたいって?」
 頭の上から声がして、ガバっと頭をあげると、
「サイモン!」
 そこには会いたかったサイモンの姿が。
 どこまでも深く濃い黒い瞳が、黒髪の間から見えドキンと胸が跳ねた。
「レオ泣いてたの?目が赤いよ」
 サイモンが僕の頬に手を当て、親指で涙の跡を拭いてくれた。

「泣いてないよ……」
 サイモンに心配をかけないようにと、僕は嘘をついた。
「レオはすぐに我慢をする。俺の前では我慢しなくていいって、いつも言ってるだろ?」
 サイモンはベッドのへりに座り、僕の頭をその大きな手で撫でてくれる。
 さっきまであった悲しさが、嘘のように消えていく。

「で、本当はどうして泣いていたの?」
「サイモンに会えなくて……。僕だってサイモンにあいたかったんだ……」
「レオは俺に会いたかったんだね。じゃ俺と一緒だ。俺もレオに会いたかったよ。だから会いにきた」
 僕の前髪をサイモンが上げ、額にキスをする。

 僕より7歳も年上のサイモンからしてみれば、僕の額にキスをするなんて、歳の離れた弟にするようなものだとわかっている。
 でも嬉しい。
 嬉しくて、顔が真っ赤になっていくのがわかって、それをサイモンに気づかれたんじゃないかと思うと、恥ずかしくて仕方なくて下を向いてしまった。

「レオ、顔をあげて」
 僕がフルフルと首を横に振ると、サイモンはより僕の方に近づいて、
「照れてないで、ね」
 もう一度僕の額にキスをした。

「もう!サイモン、からかわないで!」
 全身が爆発したぐらい熱くなって、「あはは」と楽しそうに笑うサイモンの胸をポカポカと叩く。
「からかってないよ。本当にレオは可愛いね」
 サイモンは僕の長い髪を指で掬い取り、髪にキスをした。

 僕が髪を伸ばす理由。
 それは昔、サイモンに「レオの髪は絹のように艶やかで美しいね」と褒めてもらったから。
 それから僕はサイモンに褒めて欲しくて、髪を長く伸ばし手入れもおこたらなかった。

「レオ、この前の乗馬大会で一位だっただろ?明日、街がよく見える丘の上まで一緒に乗馬しよう」
「え?本当!?」
 サイモンと乗馬できる。

 僕が乗馬を始めたきっかけは、サイモンが乗馬の名手でいつか一緒に馬に乗って、草原を駆け回りたいと思っていたから。

「だって約束だろ?乗馬大会で一位になったら、一緒に走ろうって」
「覚えててくれたの?」
「レオとの約束は忘れないよ」
 嬉しい。

 父様も母様も僕が乗馬大会で一位になっても見向きもしてくれなかったのに、サイモンは僕との約束を覚えててくれて、僕との約束は忘れないとまで言ってくれる。
 サイモンとの乗馬、絶対に行きたい!
 でも……。

「僕、行けない」
 さっきまであった嬉しい気持ちは、風船が萎んでいくように消えていく。
「どうして?」
「だってミカは乗馬、できないから。ミカができないことは、僕もしたらだめなんだ……」
 これはカトラレル家の暗黙の了解。

「誰が決めたの?」
「誰もはっきりとは決めてないよ。でもそう決まってるんだ」
「カトラレル子爵が決めたんじゃないんだね」
「うん……でも……」
「じゃあ大丈夫だ」
「どうして?」
「黙っていっちゃえばいいんだ」
 爽やかにサイモンは微笑む。

「そんなのしたら怒られちゃうよ」
「大丈夫、俺が無理やり連れていったって言うし、現にレオは行かないって言ってるのを俺が無理にでも連れていこうとしてる。だからレオは嘘をついてないし、あとのことを心配する必要もないんだよ」
 今度はイタズラを思いついた少年のように笑った。

「ほんとに連れていってくれるの?」
「ああ、俺がレオに嘘をついたことがある?」
「う~ん……ない!」
「な、だから今日はゆっくりおやすみ。朝食の後、厩舎きゅうしゃの前で」
 サイモンは僕を抱き上げベッドに寝かせると布団をかけてくれ、
「おやすみ」
 と、頬にキスをして部屋を出ていった。
 明日サイモンと乗馬できることと、約束覚えてくれたことと、そして落ち込む僕に会いに来てくれて優しく宥めてくれたことが嬉しくて、なかなか寝付けなかった。
しおりを挟む
感想 158

あなたにおすすめの小説

巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】

晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。 発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。 そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。 第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

ちゃんちゃら

三旨加泉
BL
軽い気持ちで普段仲の良い大地と関係を持ってしまった海斗。自分はβだと思っていたが、Ωだと発覚して…? 夫夫としてはゼロからのスタートとなった二人。すれ違いまくる中、二人が出した決断はー。 ビター色の強いオメガバースラブロマンス。

当たり前の幸せ

ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。 初投稿なので色々矛盾などご容赦を。 ゆっくり更新します。 すみません名前変えました。

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

【運命】に捨てられ捨てたΩ

あまやどり
BL
「拓海さん、ごめんなさい」 秀也は白磁の肌を青く染め、瞼に陰影をつけている。 「お前が決めたことだろう、こっちはそれに従うさ」 秀也の安堵する声を聞きたくなく、逃げるように拓海は音を立ててカップを置いた。 【運命】に翻弄された両親を持ち、【運命】なんて言葉を信じなくなった医大生の拓海。大学で入学式が行われた日、「一目惚れしました」と眉目秀麗、頭脳明晰なインテリ眼鏡風な新入生、秀也に突然告白された。 なんと、彼は有名な大病院の院長の一人息子でαだった。 右往左往ありながらも番を前提に恋人となった二人。卒業後、二人の前に、秀也の幼馴染で元婚約者であるαの女が突然現れて……。 前から拓海を狙っていた先輩は傷ついた拓海を慰め、ここぞとばかりに自分と同居することを提案する。 ※オメガバース独自解釈です。合わない人は危険です。 縦読みを推奨します。

僕がそばにいる理由

腐男子ミルク
BL
佐藤裕貴はΩとして生まれた21歳の男性。αの夫と結婚し、表向きは穏やかな夫婦生活を送っているが、その実態は不完全なものだった。夫は裕貴を愛していると口にしながらも、家事や家庭の負担はすべて裕貴に押し付け、自分は何もしない。それでいて、裕貴が他の誰かと関わることには異常なほど敏感で束縛が激しい。性的な関係もないまま、裕貴は愛情とは何か、本当に満たされるとはどういうことかを見失いつつあった。 そんな中、裕貴の職場に新人看護師・宮野歩夢が配属される。歩夢は裕貴がΩであることを本能的に察しながらも、その事実を意に介さず、ただ一人の人間として接してくれるαだった。歩夢の純粋な優しさと、裕貴をありのまま受け入れる態度に触れた裕貴は、心の奥底にしまい込んでいた孤独と向き合わざるを得なくなる。歩夢と過ごす時間を重ねるうちに、彼の存在が裕貴にとって特別なものとなっていくのを感じていた。 しかし、裕貴は既婚者であり、夫との関係や社会的な立場に縛られている。愛情、義務、そしてΩとしての本能――複雑に絡み合う感情の中で、裕貴は自分にとって「真実の幸せ」とは何なのか、そしてその幸せを追い求める覚悟があるのかを問い始める。 束縛の中で見失っていた自分を取り戻し、裕貴が選び取る未来とは――。 愛と本能、自由と束縛が交錯するオメガバースの物語。

処理中です...