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初恋の人
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僕は父様達にミカの体調のことは秘密にしたけれど、僕の様子がおかしいと父様に問いただされ、ミカの体調が悪い事を話した。
僕はたっぷりと叱られ、結局サイモンに会えたのはミカだけで、僕は自室で反省しなさいとのことだった。
僕だってサイモンに会いたかったのに……。
自分のベッドにうつ伏せで寝、枕で耳を塞ぐが聞こえないはずの父様、母様、ミカ、サイモンの楽しそうな話し声が聞こえてくるようで、余計に悲しくなった。
僕だってサイモンと会うのを楽しみにしていた。
2週間ほどサイモンは家にいてくれるけれど、その間父様が許してくださらなかったら、僕はサイモンに会えないままかもしれない。
そう思うと涙が溢れてきて、ゴシゴシと服の袖で涙を拭き取った。
「サイモンに、会いたいよ……」
「誰に会いたいって?」
頭の上から声がして、ガバっと頭をあげると、
「サイモン!」
そこには会いたかったサイモンの姿が。
どこまでも深く濃い黒い瞳が、黒髪の間から見えドキンと胸が跳ねた。
「レオ泣いてたの?目が赤いよ」
サイモンが僕の頬に手を当て、親指で涙の跡を拭いてくれた。
「泣いてないよ……」
サイモンに心配をかけないようにと、僕は嘘をついた。
「レオはすぐに我慢をする。俺の前では我慢しなくていいって、いつも言ってるだろ?」
サイモンはベッドのへりに座り、僕の頭をその大きな手で撫でてくれる。
さっきまであった悲しさが、嘘のように消えていく。
「で、本当はどうして泣いていたの?」
「サイモンに会えなくて……。僕だってサイモンにあいたかったんだ……」
「レオは俺に会いたかったんだね。じゃ俺と一緒だ。俺もレオに会いたかったよ。だから会いにきた」
僕の前髪をサイモンが上げ、額にキスをする。
僕より7歳も年上のサイモンからしてみれば、僕の額にキスをするなんて、歳の離れた弟にするようなものだとわかっている。
でも嬉しい。
嬉しくて、顔が真っ赤になっていくのがわかって、それをサイモンに気づかれたんじゃないかと思うと、恥ずかしくて仕方なくて下を向いてしまった。
「レオ、顔をあげて」
僕がフルフルと首を横に振ると、サイモンはより僕の方に近づいて、
「照れてないで、ね」
もう一度僕の額にキスをした。
「もう!サイモン、からかわないで!」
全身が爆発したぐらい熱くなって、「あはは」と楽しそうに笑うサイモンの胸をポカポカと叩く。
「からかってないよ。本当にレオは可愛いね」
サイモンは僕の長い髪を指で掬い取り、髪にキスをした。
僕が髪を伸ばす理由。
それは昔、サイモンに「レオの髪は絹のように艶やかで美しいね」と褒めてもらったから。
それから僕はサイモンに褒めて欲しくて、髪を長く伸ばし手入れもおこたらなかった。
「レオ、この前の乗馬大会で一位だっただろ?明日、街がよく見える丘の上まで一緒に乗馬しよう」
「え?本当!?」
サイモンと乗馬できる。
僕が乗馬を始めたきっかけは、サイモンが乗馬の名手でいつか一緒に馬に乗って、草原を駆け回りたいと思っていたから。
「だって約束だろ?乗馬大会で一位になったら、一緒に走ろうって」
「覚えててくれたの?」
「レオとの約束は忘れないよ」
嬉しい。
父様も母様も僕が乗馬大会で一位になっても見向きもしてくれなかったのに、サイモンは僕との約束を覚えててくれて、僕との約束は忘れないとまで言ってくれる。
サイモンとの乗馬、絶対に行きたい!
でも……。
「僕、行けない」
さっきまであった嬉しい気持ちは、風船が萎んでいくように消えていく。
「どうして?」
「だってミカは乗馬、できないから。ミカができないことは、僕もしたらだめなんだ……」
これはカトラレル家の暗黙の了解。
「誰が決めたの?」
「誰もはっきりとは決めてないよ。でもそう決まってるんだ」
「カトラレル子爵が決めたんじゃないんだね」
「うん……でも……」
「じゃあ大丈夫だ」
「どうして?」
「黙っていっちゃえばいいんだ」
爽やかにサイモンは微笑む。
「そんなのしたら怒られちゃうよ」
「大丈夫、俺が無理やり連れていったって言うし、現にレオは行かないって言ってるのを俺が無理にでも連れていこうとしてる。だからレオは嘘をついてないし、あとのことを心配する必要もないんだよ」
今度はイタズラを思いついた少年のように笑った。
「ほんとに連れていってくれるの?」
「ああ、俺がレオに嘘をついたことがある?」
「う~ん……ない!」
「な、だから今日はゆっくりおやすみ。朝食の後、厩舎の前で」
サイモンは僕を抱き上げベッドに寝かせると布団をかけてくれ、
「おやすみ」
と、頬にキスをして部屋を出ていった。
明日サイモンと乗馬できることと、約束覚えてくれたことと、そして落ち込む僕に会いに来てくれて優しく宥めてくれたことが嬉しくて、なかなか寝付けなかった。
僕はたっぷりと叱られ、結局サイモンに会えたのはミカだけで、僕は自室で反省しなさいとのことだった。
僕だってサイモンに会いたかったのに……。
自分のベッドにうつ伏せで寝、枕で耳を塞ぐが聞こえないはずの父様、母様、ミカ、サイモンの楽しそうな話し声が聞こえてくるようで、余計に悲しくなった。
僕だってサイモンと会うのを楽しみにしていた。
2週間ほどサイモンは家にいてくれるけれど、その間父様が許してくださらなかったら、僕はサイモンに会えないままかもしれない。
そう思うと涙が溢れてきて、ゴシゴシと服の袖で涙を拭き取った。
「サイモンに、会いたいよ……」
「誰に会いたいって?」
頭の上から声がして、ガバっと頭をあげると、
「サイモン!」
そこには会いたかったサイモンの姿が。
どこまでも深く濃い黒い瞳が、黒髪の間から見えドキンと胸が跳ねた。
「レオ泣いてたの?目が赤いよ」
サイモンが僕の頬に手を当て、親指で涙の跡を拭いてくれた。
「泣いてないよ……」
サイモンに心配をかけないようにと、僕は嘘をついた。
「レオはすぐに我慢をする。俺の前では我慢しなくていいって、いつも言ってるだろ?」
サイモンはベッドのへりに座り、僕の頭をその大きな手で撫でてくれる。
さっきまであった悲しさが、嘘のように消えていく。
「で、本当はどうして泣いていたの?」
「サイモンに会えなくて……。僕だってサイモンにあいたかったんだ……」
「レオは俺に会いたかったんだね。じゃ俺と一緒だ。俺もレオに会いたかったよ。だから会いにきた」
僕の前髪をサイモンが上げ、額にキスをする。
僕より7歳も年上のサイモンからしてみれば、僕の額にキスをするなんて、歳の離れた弟にするようなものだとわかっている。
でも嬉しい。
嬉しくて、顔が真っ赤になっていくのがわかって、それをサイモンに気づかれたんじゃないかと思うと、恥ずかしくて仕方なくて下を向いてしまった。
「レオ、顔をあげて」
僕がフルフルと首を横に振ると、サイモンはより僕の方に近づいて、
「照れてないで、ね」
もう一度僕の額にキスをした。
「もう!サイモン、からかわないで!」
全身が爆発したぐらい熱くなって、「あはは」と楽しそうに笑うサイモンの胸をポカポカと叩く。
「からかってないよ。本当にレオは可愛いね」
サイモンは僕の長い髪を指で掬い取り、髪にキスをした。
僕が髪を伸ばす理由。
それは昔、サイモンに「レオの髪は絹のように艶やかで美しいね」と褒めてもらったから。
それから僕はサイモンに褒めて欲しくて、髪を長く伸ばし手入れもおこたらなかった。
「レオ、この前の乗馬大会で一位だっただろ?明日、街がよく見える丘の上まで一緒に乗馬しよう」
「え?本当!?」
サイモンと乗馬できる。
僕が乗馬を始めたきっかけは、サイモンが乗馬の名手でいつか一緒に馬に乗って、草原を駆け回りたいと思っていたから。
「だって約束だろ?乗馬大会で一位になったら、一緒に走ろうって」
「覚えててくれたの?」
「レオとの約束は忘れないよ」
嬉しい。
父様も母様も僕が乗馬大会で一位になっても見向きもしてくれなかったのに、サイモンは僕との約束を覚えててくれて、僕との約束は忘れないとまで言ってくれる。
サイモンとの乗馬、絶対に行きたい!
でも……。
「僕、行けない」
さっきまであった嬉しい気持ちは、風船が萎んでいくように消えていく。
「どうして?」
「だってミカは乗馬、できないから。ミカができないことは、僕もしたらだめなんだ……」
これはカトラレル家の暗黙の了解。
「誰が決めたの?」
「誰もはっきりとは決めてないよ。でもそう決まってるんだ」
「カトラレル子爵が決めたんじゃないんだね」
「うん……でも……」
「じゃあ大丈夫だ」
「どうして?」
「黙っていっちゃえばいいんだ」
爽やかにサイモンは微笑む。
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「大丈夫、俺が無理やり連れていったって言うし、現にレオは行かないって言ってるのを俺が無理にでも連れていこうとしてる。だからレオは嘘をついてないし、あとのことを心配する必要もないんだよ」
今度はイタズラを思いついた少年のように笑った。
「ほんとに連れていってくれるの?」
「ああ、俺がレオに嘘をついたことがある?」
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