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60.謹んで叱られます
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「――――感情に任せた応対をしてしまい、申し訳ありませんでした」
エクセに連れられて青の間へ入ったユーリは、騙されてあの部屋に案内されてからの一連の言動を報告すると、深々と頭を下げた。その隣で「ユーリが謝る必要はない」とフィルが慌てているが、やらかしたのは事実だと、頭を上げない。
「とりあえず、頭を上げてくれるかな、ユーリさん」
向かいに座るエクセの許可に、ユーリはゆっくりと頭を上げる。きつい叱責を覚悟していた彼女だが、予想に反してエクセの顔は穏やかなものだった。
「今回のことは、そこまで強引な手口に出ると想定していなかった、こちらの落ち度でもあるからね。ユーリさんがそうだとバレる前からそんなに興味を持たれるとは――番という理由で隠し過ぎたかな」
「いや、獣人の国でも同じようなことを仕出かしていたようだし、エルフにはない『番』というものに、そもそも興味があったのだろう」
「おや、フィルにしては珍しく冷静だね」
「まさか、冷静でなどいられるか。いますぐアレを追いかけて八つ裂きにしたいとも」
物騒なことを言い出した隣のフィルに、ユーリはちょんちょん、と二の腕をつついて注意を向けさせた。
「フィルさんが思ったより早く来てくれて助かりました。ありがとうございました」
「あ……たり前だろう! 俺は、ユーリがいなくなったと聞いて……!」
「やっぱり、このアンクレットで位置把握をしてました?」
一応今後のために確認しておこうと口にしただけなのだが、フィルは一気にしゅんとしぼむ。
「……すまない」
「いえ、お店で加護を付けて貰ったときに、なんとなくそうじゃないかな、と思っていたので。むしろ、最初に確認しておかずにすみませんでした?」
「いい、のか?」
「あまりよくはないと思うんですけど、でも、私のことを守ろうと思ってくれた結果ですよね? 実際、今回は助かったわけですし」
やり取りを眺めていたエクセが「随分と寛大だな」と呟いたが無視することにした。本音を言えば、あまり気持ちのいい話ではない。それでも、身の危険の回避のためには仕方のないことだと割り切っただけだ。
「それで……その、あの人、あれで諦めるんでしょうか」
「さて、どうだろうね。フィルはどう思う? 戦地でそれなりに交流はあったんだろう?」
エクセに尋ねられ、フィルは渋い顔をした。
「正直なところ、まだ諦めていないと思う。あの魔女は研究のこととなると貪欲になるからな。竜人の番について知りたいのなら、市井の番持ちの竜人を探すかもしれないが、ユーリの魔力の特異性に気付いたのなら――――」
フィルは自然と俯いてしまっていたユーリの肩を抱き寄せ、「大丈夫だ、俺が守る」と囁いた。
「弟に目の前でイチャつかれると面映ゆいな。まぁ、しばらくは要警戒だろうね。ユーリさんも本当に申し訳ないが、そのアンクレットはまだ肌身離さず身につけてもらえるかい? 愚弟の執着が詰まって気持ち悪いかもしれないけどさ」
「エクセ兄上、さすがにひどくないか?」
「じゃぁ、フィル。それ、本当に気持ち悪くないと思うか?」
「俺の愛情が詰まっているんです!」
「まぁ、盗聴をつけなかったことだけは褒めておくよ」
ぽんぽんとテンポ良く交わされる兄弟間の気の置けない会話を聞きながら(盗聴機能もつけられるのか……)とユーリは若干遠い目をした。
とりあえず気を取り直して今後のことを考えたユーリは、ふと、確認しようとしてまだ聞いていなかったことを思い出した。
「あの、あの人が逃げたきっかけの、えぇと、『ゼツエンノカセ』というのは、どういうものなんですか?」
その質問に、エクセは「よく覚えていたね。ちゃんと人の話を聞いている人は好きだよ」とにっこり微笑み「ユーリは俺のですから!」とフィルに怒られていた。
「はぁ、見苦しい愚弟ですまないね。――――『絶縁の枷』は身につけた者の魔力を封じる道具だよ。古い遺跡などでまれに発見される遺物で、仕組みも材料もよく分かっていないのに、使用法だけはしっかり伝わっているんだ。魔女殿はフィルなんかと違って魔術特化だからね。脅しとしては効果覿面だったようだ」
確かに魔法使いキャラに魔封じをされたら、役立たずになるもんなぁ、とユーリは元の世界でプレイしたRPGゲームを思い出す。そうなったら状態異常付きの武器で叩くしかないんだよね、と懐かしく思い出す。
(あ、そうか。もしかしたら……?)
国民的RPGを物理攻撃特化のパーティーでクリアしたことを思い出したユーリは、絶縁の枷についていくつか確認をしたところで、うん、と頷いた。
「あの、もしも可能なら、なんですけど――――」
ユーリの申し出に、フィルは間髪入れず却下を叫び、逆にエクセは「一考の価値あり」と評価した。
エクセに連れられて青の間へ入ったユーリは、騙されてあの部屋に案内されてからの一連の言動を報告すると、深々と頭を下げた。その隣で「ユーリが謝る必要はない」とフィルが慌てているが、やらかしたのは事実だと、頭を上げない。
「とりあえず、頭を上げてくれるかな、ユーリさん」
向かいに座るエクセの許可に、ユーリはゆっくりと頭を上げる。きつい叱責を覚悟していた彼女だが、予想に反してエクセの顔は穏やかなものだった。
「今回のことは、そこまで強引な手口に出ると想定していなかった、こちらの落ち度でもあるからね。ユーリさんがそうだとバレる前からそんなに興味を持たれるとは――番という理由で隠し過ぎたかな」
「いや、獣人の国でも同じようなことを仕出かしていたようだし、エルフにはない『番』というものに、そもそも興味があったのだろう」
「おや、フィルにしては珍しく冷静だね」
「まさか、冷静でなどいられるか。いますぐアレを追いかけて八つ裂きにしたいとも」
物騒なことを言い出した隣のフィルに、ユーリはちょんちょん、と二の腕をつついて注意を向けさせた。
「フィルさんが思ったより早く来てくれて助かりました。ありがとうございました」
「あ……たり前だろう! 俺は、ユーリがいなくなったと聞いて……!」
「やっぱり、このアンクレットで位置把握をしてました?」
一応今後のために確認しておこうと口にしただけなのだが、フィルは一気にしゅんとしぼむ。
「……すまない」
「いえ、お店で加護を付けて貰ったときに、なんとなくそうじゃないかな、と思っていたので。むしろ、最初に確認しておかずにすみませんでした?」
「いい、のか?」
「あまりよくはないと思うんですけど、でも、私のことを守ろうと思ってくれた結果ですよね? 実際、今回は助かったわけですし」
やり取りを眺めていたエクセが「随分と寛大だな」と呟いたが無視することにした。本音を言えば、あまり気持ちのいい話ではない。それでも、身の危険の回避のためには仕方のないことだと割り切っただけだ。
「それで……その、あの人、あれで諦めるんでしょうか」
「さて、どうだろうね。フィルはどう思う? 戦地でそれなりに交流はあったんだろう?」
エクセに尋ねられ、フィルは渋い顔をした。
「正直なところ、まだ諦めていないと思う。あの魔女は研究のこととなると貪欲になるからな。竜人の番について知りたいのなら、市井の番持ちの竜人を探すかもしれないが、ユーリの魔力の特異性に気付いたのなら――――」
フィルは自然と俯いてしまっていたユーリの肩を抱き寄せ、「大丈夫だ、俺が守る」と囁いた。
「弟に目の前でイチャつかれると面映ゆいな。まぁ、しばらくは要警戒だろうね。ユーリさんも本当に申し訳ないが、そのアンクレットはまだ肌身離さず身につけてもらえるかい? 愚弟の執着が詰まって気持ち悪いかもしれないけどさ」
「エクセ兄上、さすがにひどくないか?」
「じゃぁ、フィル。それ、本当に気持ち悪くないと思うか?」
「俺の愛情が詰まっているんです!」
「まぁ、盗聴をつけなかったことだけは褒めておくよ」
ぽんぽんとテンポ良く交わされる兄弟間の気の置けない会話を聞きながら(盗聴機能もつけられるのか……)とユーリは若干遠い目をした。
とりあえず気を取り直して今後のことを考えたユーリは、ふと、確認しようとしてまだ聞いていなかったことを思い出した。
「あの、あの人が逃げたきっかけの、えぇと、『ゼツエンノカセ』というのは、どういうものなんですか?」
その質問に、エクセは「よく覚えていたね。ちゃんと人の話を聞いている人は好きだよ」とにっこり微笑み「ユーリは俺のですから!」とフィルに怒られていた。
「はぁ、見苦しい愚弟ですまないね。――――『絶縁の枷』は身につけた者の魔力を封じる道具だよ。古い遺跡などでまれに発見される遺物で、仕組みも材料もよく分かっていないのに、使用法だけはしっかり伝わっているんだ。魔女殿はフィルなんかと違って魔術特化だからね。脅しとしては効果覿面だったようだ」
確かに魔法使いキャラに魔封じをされたら、役立たずになるもんなぁ、とユーリは元の世界でプレイしたRPGゲームを思い出す。そうなったら状態異常付きの武器で叩くしかないんだよね、と懐かしく思い出す。
(あ、そうか。もしかしたら……?)
国民的RPGを物理攻撃特化のパーティーでクリアしたことを思い出したユーリは、絶縁の枷についていくつか確認をしたところで、うん、と頷いた。
「あの、もしも可能なら、なんですけど――――」
ユーリの申し出に、フィルは間髪入れず却下を叫び、逆にエクセは「一考の価値あり」と評価した。
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