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「なんなのよ……もう。」
わたくしは、呟きながら内心溜息を吐いてしまいました。
わたくしの目の前には、天敵とも呼べる忌々しいアイツがいたから……。
「やぁっだ!ま~た眉間に皺を作ちゃって~、可愛い顔が台無しよぉ~。」
「誰のせいだと思っているのよ!」
わたくしこと侯爵令嬢のヴィヴィアーナ・フォレスは、突然やって来た招かれざる客のせいで一気に気分が急下降していったのでした。
――折角、庭に咲いた薔薇の花を堪能しながら優雅にティータイムを楽しんでいたのに……こいつのせいで気分が台無しよ!!
ヴィヴィアーナは、目の前に現れた目の上のタン瘤――もとい、幼馴染である人物を見上げながら胸中で悪態を吐いていた。
目の前の幼馴染――侯爵家の摘男であるジュリアス・ランドルフは、国王直属の近衛騎士の副隊長を務めるエリート中のエリートだ。
しかも、金髪碧眼の超絶美形の顔と騎士団で鍛え上げられた立派な体躯を持つ彼は、老若男女年齢問わず人気があり、しかも勤勉で剣の腕も立つため国王陛下からの覚えもめでたかった。
まさに十全十美、将来を約束された完璧エリートな青年なのである。
そんな、連れて歩けば十人中十人の女性が揃って振り返る様な完璧な幼馴染が、わたくしは大大大大っ嫌いだった。
それは何故かというと――――
「ちょっと、やめて!それ以上近寄らないで!!」
「な~によ、あんた、まだソレ治ってないの~?」
断りもなく勝手に庭に入って来たジュリアスは、悪びれる様子も無くそう言うと、喚くヴィヴィアーナの腕を徐に掴んできた。
その途端、ヴィヴィアーナが激しく震えだしたのだった。
そして、ドレスに隠れていない肌という肌が粟立ち、一瞬にして鳥肌が立ったかと思うと、みるみる内にポツポツと赤い発疹が表れ始めたのである。
「あら、ごめんなさい。」
「か、痒!ちょっ、あなた、わざとやったでしょう!!」
「え~、そ~んな事無いわよ~♪」
猛烈な痒みに苛まれたヴィヴィアーナが抗議の声を上げると、ジュリアスは手を離しながら否定してきたが明らかに目が笑っていた。
ヴィヴィアーナは体中を掻きながら、そんなジュリアスを涙目で睨む。
しかしジュリアスは、その視線をあざ笑うかのように口元を弧の字に引き上げながら、ヴィヴィアーナを見下ろしていたのだった。
こいつは昔っから、こういう奴だった。
やれエリートだ、真面目な好青年だと貴族の間では持て囃されている彼だが、何故か幼馴染であるヴィヴィアーナには、こうやって嫌がらせをしてくるのだ。
ジュリアスとは親同士が仲が良かった為、物心つく頃には既に遊び友達だった。
しかし、その頃からジュリアスは、ヴィヴィアーナに嫌がらせや悪戯をしてきていたので、ヴィヴィアーナはすっかり男の人が苦手になってしまったのだった。
いや、苦手という生易しいレベルではない。
気が付いたら、男性恐怖症にまでなってしまっていたのだ。
近付くのはもちろんのこと、話をしたり、ましてや触れられたりすると、先程のように蕁麻疹が出てしまうのだ。
そのお陰で、17歳になろうというこの歳になっても、貴族の令息の友達など一人もできないでいた。
そんな体質のヴィヴィアーナなので、もちろん出会いなんてものも無く、居るのはこの幼馴染で許嫁のジュリアスくらいだった。
そう、許嫁なのだ……悲しい事に。
――何が悲しくて、意地悪をしてくる相手と婚約しなきゃならないのかしら……。
それもこれも、自分が男性恐怖症なのがいけないのだが……。
ヴィヴィアーナは、肩を落としながら溜息を吐いた。
実は婚約が決まったのは、ヴィヴィアーナの両親が娘が男性恐怖症で行き遅れるのを恐れて、なんとジュリアスの実家に泣き付いたのがきっかけだった。
元々お互いの両親が仲が良かった為、ゆくゆくは結婚させたいと、どちらも思っていたらしい。
ヴィヴィアーナの父が相談した所、ジュリアスの両親は手放しで喜び二つ返事で婚約が決まってしまったのだそうだ。
何故ビビアーナがこの事を知っているのかというと、婚約が決まった時に、うちの家令が涙ながらに「お嬢様、良かったですねぇ」と、こっそり教えてくれたからであった。
――お父様もおじ様たちも、余計な事をしてくれたわ……。
ヴィヴィアーナは、勝手にジュリアスとの婚約を決めてしまった大人達に胸中で悪態を吐く。
そしてもう一つ、幼馴染に対して不満があった。
――意地悪もそうだけど、あいつのアレも考えものよねぇ……。
ヴィヴィアーナは、ちらりとジュリアスを見ながら溜息を吐いたのだった。
わたくしは、呟きながら内心溜息を吐いてしまいました。
わたくしの目の前には、天敵とも呼べる忌々しいアイツがいたから……。
「やぁっだ!ま~た眉間に皺を作ちゃって~、可愛い顔が台無しよぉ~。」
「誰のせいだと思っているのよ!」
わたくしこと侯爵令嬢のヴィヴィアーナ・フォレスは、突然やって来た招かれざる客のせいで一気に気分が急下降していったのでした。
――折角、庭に咲いた薔薇の花を堪能しながら優雅にティータイムを楽しんでいたのに……こいつのせいで気分が台無しよ!!
ヴィヴィアーナは、目の前に現れた目の上のタン瘤――もとい、幼馴染である人物を見上げながら胸中で悪態を吐いていた。
目の前の幼馴染――侯爵家の摘男であるジュリアス・ランドルフは、国王直属の近衛騎士の副隊長を務めるエリート中のエリートだ。
しかも、金髪碧眼の超絶美形の顔と騎士団で鍛え上げられた立派な体躯を持つ彼は、老若男女年齢問わず人気があり、しかも勤勉で剣の腕も立つため国王陛下からの覚えもめでたかった。
まさに十全十美、将来を約束された完璧エリートな青年なのである。
そんな、連れて歩けば十人中十人の女性が揃って振り返る様な完璧な幼馴染が、わたくしは大大大大っ嫌いだった。
それは何故かというと――――
「ちょっと、やめて!それ以上近寄らないで!!」
「な~によ、あんた、まだソレ治ってないの~?」
断りもなく勝手に庭に入って来たジュリアスは、悪びれる様子も無くそう言うと、喚くヴィヴィアーナの腕を徐に掴んできた。
その途端、ヴィヴィアーナが激しく震えだしたのだった。
そして、ドレスに隠れていない肌という肌が粟立ち、一瞬にして鳥肌が立ったかと思うと、みるみる内にポツポツと赤い発疹が表れ始めたのである。
「あら、ごめんなさい。」
「か、痒!ちょっ、あなた、わざとやったでしょう!!」
「え~、そ~んな事無いわよ~♪」
猛烈な痒みに苛まれたヴィヴィアーナが抗議の声を上げると、ジュリアスは手を離しながら否定してきたが明らかに目が笑っていた。
ヴィヴィアーナは体中を掻きながら、そんなジュリアスを涙目で睨む。
しかしジュリアスは、その視線をあざ笑うかのように口元を弧の字に引き上げながら、ヴィヴィアーナを見下ろしていたのだった。
こいつは昔っから、こういう奴だった。
やれエリートだ、真面目な好青年だと貴族の間では持て囃されている彼だが、何故か幼馴染であるヴィヴィアーナには、こうやって嫌がらせをしてくるのだ。
ジュリアスとは親同士が仲が良かった為、物心つく頃には既に遊び友達だった。
しかし、その頃からジュリアスは、ヴィヴィアーナに嫌がらせや悪戯をしてきていたので、ヴィヴィアーナはすっかり男の人が苦手になってしまったのだった。
いや、苦手という生易しいレベルではない。
気が付いたら、男性恐怖症にまでなってしまっていたのだ。
近付くのはもちろんのこと、話をしたり、ましてや触れられたりすると、先程のように蕁麻疹が出てしまうのだ。
そのお陰で、17歳になろうというこの歳になっても、貴族の令息の友達など一人もできないでいた。
そんな体質のヴィヴィアーナなので、もちろん出会いなんてものも無く、居るのはこの幼馴染で許嫁のジュリアスくらいだった。
そう、許嫁なのだ……悲しい事に。
――何が悲しくて、意地悪をしてくる相手と婚約しなきゃならないのかしら……。
それもこれも、自分が男性恐怖症なのがいけないのだが……。
ヴィヴィアーナは、肩を落としながら溜息を吐いた。
実は婚約が決まったのは、ヴィヴィアーナの両親が娘が男性恐怖症で行き遅れるのを恐れて、なんとジュリアスの実家に泣き付いたのがきっかけだった。
元々お互いの両親が仲が良かった為、ゆくゆくは結婚させたいと、どちらも思っていたらしい。
ヴィヴィアーナの父が相談した所、ジュリアスの両親は手放しで喜び二つ返事で婚約が決まってしまったのだそうだ。
何故ビビアーナがこの事を知っているのかというと、婚約が決まった時に、うちの家令が涙ながらに「お嬢様、良かったですねぇ」と、こっそり教えてくれたからであった。
――お父様もおじ様たちも、余計な事をしてくれたわ……。
ヴィヴィアーナは、勝手にジュリアスとの婚約を決めてしまった大人達に胸中で悪態を吐く。
そしてもう一つ、幼馴染に対して不満があった。
――意地悪もそうだけど、あいつのアレも考えものよねぇ……。
ヴィヴィアーナは、ちらりとジュリアスを見ながら溜息を吐いたのだった。
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