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15.侯爵令嬢のお茶3
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「貴様……。」
「あ、終わりましたか?」
まるで寸劇でも見せられていたような物言いに、第一王子の眦が吊り上がる。
「ああ、すみません。あまりにも茶番が長かったので、お菓子を頂いておりました。」
そう言って、いつの間にかテーブルに出されていたクッキーを一つ摘まんでは、ぽりぽりと食べていた。
その緊張感のない行動に、第一王子の怒り度が益々上がっていく。
「貴様……さっきのを茶番だというのか?」
「はい、茶番です。」
「なっ!!」
第一王子の言葉を、さらりと肯定し、すっと居住まいを正してきた。
「そういえば、だいぶ話が先送りになってしまいましたが、侯爵令嬢のお茶の件について、はっきりさせないといけませんわね。」
その言葉に、入口の方で息を呑む音が聞こえてきたが、それを無視して第一王子妃は話を続けた。
「まず、侯爵令嬢様のお茶ですが、皆さまがここに来る前に、宮廷薬師の方に調べて貰うように頼んでおきました。」
「なっ、何勝手な事してるのよ!!」
それまで震えていた侯爵令嬢は、かっと目を見開き抗議してきた。
その時、サロンの扉が開き先程話に出てきた宮廷薬師が姿を現した。
「第一王子妃様、ご命令頂いていた茶葉の検査結果が出ました。」
そう言って、宮廷薬師は深々と一礼してきた。
「ありがとう。ここで報告してくださいます?」
「はい。」
第一王子妃が宮廷薬師にそう頼むと、彼は徐に頷き報告し始めた。
「検査の結果、茶葉には蓄積型の毒が検出されました。簡単に言えば、飲む回数を重ねれば重ねるほど、毒の効果は高くなっていくというものです。それと……」
薬師は一旦言葉を切ると、すぐに続けた。
「それと、この茶葉は乾燥させる前に精製し、濃度を上げた状態で薬液にすると、効果は弱いですが即効性の毒薬になるそうです。」
「そう……それで、その毒は以前に使われた形跡はあったかしら?」
「??」
第一王子妃の質問に、その場にいた無関係な者たちは何の事だと首を傾げる。
しかし、侯爵令嬢だけは、目を見開き小さな悲鳴を上げていた。
「そ、そんな事あるわけないでしょう!!」
「一度だけ……二年前、国王陛下がお倒れになった時です。」
「!!!!!!」
宮廷薬師の言葉に、その場は騒然となった。
どういう事だと、皆口々に囁く。
それを遮るかのように、国王が口を開いた。
「左様。予は二年前、その毒で一時期生死の境を彷徨ったのじゃ。」
低く良く通る声に、場が一瞬静まり返る。
そして、サロンの入り口で座り込む侯爵令嬢に視線が集中した。
その視線に気づいた侯爵令嬢は、慌てて声を張り上げてきた。
「こ、国王様!わ、わたくしはその時、王宮にはおりませんでしたわ!それこそが、わたくしがやっていない確かな証拠です!」
侯爵令嬢の言葉に、第一王子ははっと我に返る。
「そうだ、確かその日は、フリージアと共に出かけていたはず!外出記録にも残っているであろう、調べればわかる事だ!」
「第一王子様、そうですわたくしと一緒にお出かけなさっておりましたわよね。これはわたくしを貶めるための陰謀ですわ。きっと第一王子妃様がわたくしを蹴落とさんとして、こんなでたらめな事を……。」
侯爵令嬢はそう言って、第一王子の許に駆け寄って行った。
第一王子も、先程の騎士団長との遣り取りは奇麗さっぱり忘れてしまったのか、駆け寄ってきた侯爵令嬢と抱き合っている。
その光景を見ながら、第一王子妃は一つ咳払いすると口を開いた。
「そうですね、その日はお二人は王宮にはいらっしゃらなかったようですわ。」
第一王子妃は、どこからか一冊の記録簿を取り出すと、ぱらぱらと捲りながら言ってきた。
その言葉に、第一王子は勝ち誇った顔をする。
「そうだろう。どうせ、今までお前が話していた事も全て作り話に過ぎない。私とフリージアの仲を引き裂こうとしても、そうはいかないぞ!!」
完全に勝利を確信したような顔で言ってくる第一王子に、第一王子妃はやれやれと首を振ってきた。
「もう一つ、報告があがっているのですが。私の言葉が嘘かどうかは、それを聞いてから判断してくださいませ。」
そう言って、従者が持ってきた報告書を開くと告げてきた。
「侯爵令嬢様。」
「なにかしら?」
第一王子妃が声をかけると、侯爵令嬢は勝ち誇った顔で返事をしてきた。
「貴女が王宮内で、複数の殿方と二人きりで会っていたという報告が幾つかあがっておりますが、それに相違ありませんか!?」
「なっ!?」
第一王子妃の質問に、侯爵令嬢は瞠目する。
「そこに居る騎士団長のご子息様、それに宰相のご令息様、あら、時々王宮に商品を届けに来る商会のご子息とまで……随分と羽振りがよろしいようですわね。」
そう言って、第一王子妃はフードから覗く口元で、にやりと笑ってきた。
まるで老魔女が悪だくみをしているようなその笑いに、侯爵令嬢は「ひっ」と悲鳴を上げる。
そして、はっと目の前の王子を振り仰いだ。
そこには、第一王子妃の報告を聞いて、またぶるぶると怒りに震える第一王子が居た。
「お、お前は騎士団長の息子だけでなく、宰相と商会の息子にまで!!」
「ち、違います誤解です!!」
と、突然目の前で痴話喧嘩が始まってしまった。
突然目の前で始まった遣り取りを、第一王子妃は止めることなく暫く眺めていた。
そして、サロンの隅で完全に壁と同化しようとしている人物の方へ、ゆっくりと視線を動かしていった。
視線と言ってもフードで顔が隠れているため、傍からは王子妃が顔を横に向けたように見えているのだが。
その突然の行動に、周りの者たちも気づき、自然とその視線を追っていく。
ぴたりと、ある場所で王子妃の視線が止まった。
「あ、終わりましたか?」
まるで寸劇でも見せられていたような物言いに、第一王子の眦が吊り上がる。
「ああ、すみません。あまりにも茶番が長かったので、お菓子を頂いておりました。」
そう言って、いつの間にかテーブルに出されていたクッキーを一つ摘まんでは、ぽりぽりと食べていた。
その緊張感のない行動に、第一王子の怒り度が益々上がっていく。
「貴様……さっきのを茶番だというのか?」
「はい、茶番です。」
「なっ!!」
第一王子の言葉を、さらりと肯定し、すっと居住まいを正してきた。
「そういえば、だいぶ話が先送りになってしまいましたが、侯爵令嬢のお茶の件について、はっきりさせないといけませんわね。」
その言葉に、入口の方で息を呑む音が聞こえてきたが、それを無視して第一王子妃は話を続けた。
「まず、侯爵令嬢様のお茶ですが、皆さまがここに来る前に、宮廷薬師の方に調べて貰うように頼んでおきました。」
「なっ、何勝手な事してるのよ!!」
それまで震えていた侯爵令嬢は、かっと目を見開き抗議してきた。
その時、サロンの扉が開き先程話に出てきた宮廷薬師が姿を現した。
「第一王子妃様、ご命令頂いていた茶葉の検査結果が出ました。」
そう言って、宮廷薬師は深々と一礼してきた。
「ありがとう。ここで報告してくださいます?」
「はい。」
第一王子妃が宮廷薬師にそう頼むと、彼は徐に頷き報告し始めた。
「検査の結果、茶葉には蓄積型の毒が検出されました。簡単に言えば、飲む回数を重ねれば重ねるほど、毒の効果は高くなっていくというものです。それと……」
薬師は一旦言葉を切ると、すぐに続けた。
「それと、この茶葉は乾燥させる前に精製し、濃度を上げた状態で薬液にすると、効果は弱いですが即効性の毒薬になるそうです。」
「そう……それで、その毒は以前に使われた形跡はあったかしら?」
「??」
第一王子妃の質問に、その場にいた無関係な者たちは何の事だと首を傾げる。
しかし、侯爵令嬢だけは、目を見開き小さな悲鳴を上げていた。
「そ、そんな事あるわけないでしょう!!」
「一度だけ……二年前、国王陛下がお倒れになった時です。」
「!!!!!!」
宮廷薬師の言葉に、その場は騒然となった。
どういう事だと、皆口々に囁く。
それを遮るかのように、国王が口を開いた。
「左様。予は二年前、その毒で一時期生死の境を彷徨ったのじゃ。」
低く良く通る声に、場が一瞬静まり返る。
そして、サロンの入り口で座り込む侯爵令嬢に視線が集中した。
その視線に気づいた侯爵令嬢は、慌てて声を張り上げてきた。
「こ、国王様!わ、わたくしはその時、王宮にはおりませんでしたわ!それこそが、わたくしがやっていない確かな証拠です!」
侯爵令嬢の言葉に、第一王子ははっと我に返る。
「そうだ、確かその日は、フリージアと共に出かけていたはず!外出記録にも残っているであろう、調べればわかる事だ!」
「第一王子様、そうですわたくしと一緒にお出かけなさっておりましたわよね。これはわたくしを貶めるための陰謀ですわ。きっと第一王子妃様がわたくしを蹴落とさんとして、こんなでたらめな事を……。」
侯爵令嬢はそう言って、第一王子の許に駆け寄って行った。
第一王子も、先程の騎士団長との遣り取りは奇麗さっぱり忘れてしまったのか、駆け寄ってきた侯爵令嬢と抱き合っている。
その光景を見ながら、第一王子妃は一つ咳払いすると口を開いた。
「そうですね、その日はお二人は王宮にはいらっしゃらなかったようですわ。」
第一王子妃は、どこからか一冊の記録簿を取り出すと、ぱらぱらと捲りながら言ってきた。
その言葉に、第一王子は勝ち誇った顔をする。
「そうだろう。どうせ、今までお前が話していた事も全て作り話に過ぎない。私とフリージアの仲を引き裂こうとしても、そうはいかないぞ!!」
完全に勝利を確信したような顔で言ってくる第一王子に、第一王子妃はやれやれと首を振ってきた。
「もう一つ、報告があがっているのですが。私の言葉が嘘かどうかは、それを聞いてから判断してくださいませ。」
そう言って、従者が持ってきた報告書を開くと告げてきた。
「侯爵令嬢様。」
「なにかしら?」
第一王子妃が声をかけると、侯爵令嬢は勝ち誇った顔で返事をしてきた。
「貴女が王宮内で、複数の殿方と二人きりで会っていたという報告が幾つかあがっておりますが、それに相違ありませんか!?」
「なっ!?」
第一王子妃の質問に、侯爵令嬢は瞠目する。
「そこに居る騎士団長のご子息様、それに宰相のご令息様、あら、時々王宮に商品を届けに来る商会のご子息とまで……随分と羽振りがよろしいようですわね。」
そう言って、第一王子妃はフードから覗く口元で、にやりと笑ってきた。
まるで老魔女が悪だくみをしているようなその笑いに、侯爵令嬢は「ひっ」と悲鳴を上げる。
そして、はっと目の前の王子を振り仰いだ。
そこには、第一王子妃の報告を聞いて、またぶるぶると怒りに震える第一王子が居た。
「お、お前は騎士団長の息子だけでなく、宰相と商会の息子にまで!!」
「ち、違います誤解です!!」
と、突然目の前で痴話喧嘩が始まってしまった。
突然目の前で始まった遣り取りを、第一王子妃は止めることなく暫く眺めていた。
そして、サロンの隅で完全に壁と同化しようとしている人物の方へ、ゆっくりと視線を動かしていった。
視線と言ってもフードで顔が隠れているため、傍からは王子妃が顔を横に向けたように見えているのだが。
その突然の行動に、周りの者たちも気づき、自然とその視線を追っていく。
ぴたりと、ある場所で王子妃の視線が止まった。
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