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12. 提案
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先生の「大丈夫」という言葉をもらったその日から、フレッドはみるみるうちに回復していった。
熱が長引いたのは栄養不足など、もともとの健康状態が不安定だったことが大きな要因だった。
フレッドは一目でわかるほど痩せていたし、身なりもあまり良くなく、生活環境が良いとは到底思えなかった。その上、あんな場所で高熱で倒れていたのに、医者にも診てもらえなかった。
詳しい事情はわからないけど、訪ねたあの家には何か問題があるのかもしれないと、お父様もお母様も、とても心配そうな顔をしていた。
「このままぼくたちのいえで、フレッドといっしょにいられないの?」
フレッドの体調もすっかり良くなった頃、フレッドは「お世話になりました」と、お礼の言葉を口にした。その言葉に続けて、「もう帰らないと」と言い出したので、不安そうにフィルが口を挟んだ。
幼いフィルにだって、フレッドの生活環境がおかしいということくらい分かるだろう。またあの家に戻ったら、何があるかわからないと思ってしまうのは、僕も一緒の気持ちだ。
「その話なんだけど……」
お母様は、少し悩んだように言葉を止めたあと、ゆっくりと再び口をひらいた。
「住み込みの使用人として、うちで働いてもらうというのはどうかしら?」
「使用人?」
「しようにん?」
僕もフィルも、イマイチ意味がわからず、首を傾げた。
「ミッチェルとフィラットの話し相手とか……。そうね、ふたりの身の回りのお世話をしてもらおうかと思うの」
お母様は、僕たちの会話のあとに、そのままフレッドに向き合って、ニッコリと微笑んだ。
「今の雇い主さんとは、話はついているから、心配しなくて大丈夫よ」
「え、でも……。本当に良いんですか……?」
フレッドは困惑したようにそう言うと、目を大きく開いたまま、僕たち双子とお母様の顔を交互に見た。
「もちろんよ。同じ歳くらいの方が話しやすいこともあるだろうし、うちの子達のお世話係として働いてくれるなら、こちらとしても助かるわ」
お母様はそう言うと、もう一度ニッコリと微笑んだ。
フレッドはあんな状況で働いていたとはいえ、正式雇用されていたはずだ。それを勝手に連れて来るわけにはいかないから、不安要素としてはそこだろう。けれどお母様が言うように、あちらの雇い主として話がついているのなら、何ら問題はない。
僕もフィルも、ドキドキしながらフレッドの返事を待った。
「……お世話に、なります」
まだ少し戸惑いながらも、フレッドはそう言って深く頭を下げた。
「やったー!」
その言葉を待ってましたと言わんばかりに、僕とフィルは歓声をあげて抱き合った。
高熱を出して倒れていたフレッドを発見した時は、どうなるかと思ったけど、もっと一緒にいたいという願いが叶うなんて、夢みたいだ。
「フレッド、僕たちはもう家族だね!」
僕はとても嬉しい気持ちになって、晴れ晴れしい気持ちでフレッドにそう言った。
特に深い意味があったわけでなく、とにかく嬉しくて放ったその言葉だったけど、なにか懐かしいような感覚に包まれた。
温かな気持ちのままフレッドを見ると、同じように僕を見て、少し照れたように微笑んだ。
フィルは、お母様にありがとうって言いながら抱きついていたので、僕たちのこのやり取りには気付いていないようだった。だから僕とフレッドの二人だけの秘密のように感じて、くすぐったいような不思議な気持ちになった。
熱が長引いたのは栄養不足など、もともとの健康状態が不安定だったことが大きな要因だった。
フレッドは一目でわかるほど痩せていたし、身なりもあまり良くなく、生活環境が良いとは到底思えなかった。その上、あんな場所で高熱で倒れていたのに、医者にも診てもらえなかった。
詳しい事情はわからないけど、訪ねたあの家には何か問題があるのかもしれないと、お父様もお母様も、とても心配そうな顔をしていた。
「このままぼくたちのいえで、フレッドといっしょにいられないの?」
フレッドの体調もすっかり良くなった頃、フレッドは「お世話になりました」と、お礼の言葉を口にした。その言葉に続けて、「もう帰らないと」と言い出したので、不安そうにフィルが口を挟んだ。
幼いフィルにだって、フレッドの生活環境がおかしいということくらい分かるだろう。またあの家に戻ったら、何があるかわからないと思ってしまうのは、僕も一緒の気持ちだ。
「その話なんだけど……」
お母様は、少し悩んだように言葉を止めたあと、ゆっくりと再び口をひらいた。
「住み込みの使用人として、うちで働いてもらうというのはどうかしら?」
「使用人?」
「しようにん?」
僕もフィルも、イマイチ意味がわからず、首を傾げた。
「ミッチェルとフィラットの話し相手とか……。そうね、ふたりの身の回りのお世話をしてもらおうかと思うの」
お母様は、僕たちの会話のあとに、そのままフレッドに向き合って、ニッコリと微笑んだ。
「今の雇い主さんとは、話はついているから、心配しなくて大丈夫よ」
「え、でも……。本当に良いんですか……?」
フレッドは困惑したようにそう言うと、目を大きく開いたまま、僕たち双子とお母様の顔を交互に見た。
「もちろんよ。同じ歳くらいの方が話しやすいこともあるだろうし、うちの子達のお世話係として働いてくれるなら、こちらとしても助かるわ」
お母様はそう言うと、もう一度ニッコリと微笑んだ。
フレッドはあんな状況で働いていたとはいえ、正式雇用されていたはずだ。それを勝手に連れて来るわけにはいかないから、不安要素としてはそこだろう。けれどお母様が言うように、あちらの雇い主として話がついているのなら、何ら問題はない。
僕もフィルも、ドキドキしながらフレッドの返事を待った。
「……お世話に、なります」
まだ少し戸惑いながらも、フレッドはそう言って深く頭を下げた。
「やったー!」
その言葉を待ってましたと言わんばかりに、僕とフィルは歓声をあげて抱き合った。
高熱を出して倒れていたフレッドを発見した時は、どうなるかと思ったけど、もっと一緒にいたいという願いが叶うなんて、夢みたいだ。
「フレッド、僕たちはもう家族だね!」
僕はとても嬉しい気持ちになって、晴れ晴れしい気持ちでフレッドにそう言った。
特に深い意味があったわけでなく、とにかく嬉しくて放ったその言葉だったけど、なにか懐かしいような感覚に包まれた。
温かな気持ちのままフレッドを見ると、同じように僕を見て、少し照れたように微笑んだ。
フィルは、お母様にありがとうって言いながら抱きついていたので、僕たちのこのやり取りには気付いていないようだった。だから僕とフレッドの二人だけの秘密のように感じて、くすぐったいような不思議な気持ちになった。
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