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14. 変わりゆく関係
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僕たち双子は十一歳で、フレッドは十三歳になっていた。
この頃になると、僕たち双子とフレッドの関係性が少しだけ変わってきていた。
僕はフレッドに初めて会った時、とても懐かしいような、温かな気持ちに包まれた。それ以来、何かデジャヴのような不思議な感覚に陥ることが度々あった。一緒にいる時間が長くなればなるほど、その気持ちは大きくなる一方だった。
そして、それを確かめたくて、意識的に二人きりになる時間を作ろうとしてしまい、それはよくないことだと自分に言い聞かせる日々が続いていた。僕とフィルは双子だし、フレッドにとっては雇い主の愛息子たち。差別などしてはいけない存在なのだから。
それに、僕には再会を約束した恋人の『リク』がいる。きっとリクも転生をし、どこかで僕を探しているはずだ。そのリクを裏切ることは出来ない。
それでも、ずっと一緒に過ごしているフレッドに対する感情が変わってきているのは、確かだった。
フィルがフレッドに抱く感情もまた、変わってきているように思う。
フレッドが家に来たばかりの頃は、うるさいくらいにまとわりついて懐いていたのに、最近は何か様子が少し違う。
ゲオルクさんやお父様が、フレッドとフィルを良きライバルとして見ていたようだし、お互いに高め合うように煽っているようにも感じた。フィルはそのせいなのか、特にフレッドをライバル視しているように思えた。
なぜ僕がその中に入っていないのか。それは、僕にも心当たりがあった。
もともと身体の強い方ではなかったけれど、最近は体調が不安定になる日が増えた。せっかくゲオルクさんが勉強のために外へ連れ出してくれるはずだったのに、僕だけが行けなくなることが何度かあった。
◇
「ミッチが行かないなら、ぼくも行かない!」
ベッドで横たわる僕の横で、フィルが不満そうに頬を膨らませている。
「ごめんね、フィル……」
「ミッチは悪くないよ! ぼくはミッチが心配だから、そばにいて看病したいんだ。……なのにお父様は、ぼくだけ連れて行くって! なんでフレッドは看病していいのに、ぼくはだめなの!?」
フィルが、僕のことを大好きで慕ってくれているのはよく知っている。だから一緒に行きたがっているのも分かるし、体調を崩しているのなら、看病したいと言い出すのも想像できた。
「フィルは、この家の次期当主になるからだ」
「それならミッチだってそうじゃないか!」
年の違う兄弟だったら、長男の僕が次期当主として選ばれる可能性が高い。けれど僕達は双子だ。どちらがこのハイネル伯爵家を継いでもおかしくない。
だから、どちらが継いでもいいように、僕達は少しずつたくさんのことを学んでいる。
「熱を出しているのに、無理やり連れて行くのか?」
キャンキャンと喚くフィルに、フレッドが答えた。
本来ならば使用人がこんな口の聞き方をしてはいけないのだけど、僕たちだけしかいない場所では、友達のように話してほしいとお願いしたんだ。
だからフレッドは、遠慮などせずスッパリと言い切った。
本当なら、今日は僕も街へ出て実際の商談に同席する予定だった。それなのに体調を崩してしまって、今こうやってベッドで寝ている。
今までなら、僕が体調を崩してしまった日は、フィルとフレッドだけついて行き、僕は一人で留守番だった。
そういう時は、体調を崩したとはいえ、最低限のことは一人でどうにかできたので、それでも問題はなかったんだ。
けれど今日はどうだろう。体が鉛のように重く、熱い。それに、なんとなく体も心もざわざわして落ち着かない。
前世の記憶のある僕は、この体のだるさには覚えがある。
まさか……ね。
僕は、この世界に転生してきたばかりの頃にも感じた嫌な予感を、再び気付かないふりをして、無理やり心の奥に閉じ込めた。
この頃になると、僕たち双子とフレッドの関係性が少しだけ変わってきていた。
僕はフレッドに初めて会った時、とても懐かしいような、温かな気持ちに包まれた。それ以来、何かデジャヴのような不思議な感覚に陥ることが度々あった。一緒にいる時間が長くなればなるほど、その気持ちは大きくなる一方だった。
そして、それを確かめたくて、意識的に二人きりになる時間を作ろうとしてしまい、それはよくないことだと自分に言い聞かせる日々が続いていた。僕とフィルは双子だし、フレッドにとっては雇い主の愛息子たち。差別などしてはいけない存在なのだから。
それに、僕には再会を約束した恋人の『リク』がいる。きっとリクも転生をし、どこかで僕を探しているはずだ。そのリクを裏切ることは出来ない。
それでも、ずっと一緒に過ごしているフレッドに対する感情が変わってきているのは、確かだった。
フィルがフレッドに抱く感情もまた、変わってきているように思う。
フレッドが家に来たばかりの頃は、うるさいくらいにまとわりついて懐いていたのに、最近は何か様子が少し違う。
ゲオルクさんやお父様が、フレッドとフィルを良きライバルとして見ていたようだし、お互いに高め合うように煽っているようにも感じた。フィルはそのせいなのか、特にフレッドをライバル視しているように思えた。
なぜ僕がその中に入っていないのか。それは、僕にも心当たりがあった。
もともと身体の強い方ではなかったけれど、最近は体調が不安定になる日が増えた。せっかくゲオルクさんが勉強のために外へ連れ出してくれるはずだったのに、僕だけが行けなくなることが何度かあった。
◇
「ミッチが行かないなら、ぼくも行かない!」
ベッドで横たわる僕の横で、フィルが不満そうに頬を膨らませている。
「ごめんね、フィル……」
「ミッチは悪くないよ! ぼくはミッチが心配だから、そばにいて看病したいんだ。……なのにお父様は、ぼくだけ連れて行くって! なんでフレッドは看病していいのに、ぼくはだめなの!?」
フィルが、僕のことを大好きで慕ってくれているのはよく知っている。だから一緒に行きたがっているのも分かるし、体調を崩しているのなら、看病したいと言い出すのも想像できた。
「フィルは、この家の次期当主になるからだ」
「それならミッチだってそうじゃないか!」
年の違う兄弟だったら、長男の僕が次期当主として選ばれる可能性が高い。けれど僕達は双子だ。どちらがこのハイネル伯爵家を継いでもおかしくない。
だから、どちらが継いでもいいように、僕達は少しずつたくさんのことを学んでいる。
「熱を出しているのに、無理やり連れて行くのか?」
キャンキャンと喚くフィルに、フレッドが答えた。
本来ならば使用人がこんな口の聞き方をしてはいけないのだけど、僕たちだけしかいない場所では、友達のように話してほしいとお願いしたんだ。
だからフレッドは、遠慮などせずスッパリと言い切った。
本当なら、今日は僕も街へ出て実際の商談に同席する予定だった。それなのに体調を崩してしまって、今こうやってベッドで寝ている。
今までなら、僕が体調を崩してしまった日は、フィルとフレッドだけついて行き、僕は一人で留守番だった。
そういう時は、体調を崩したとはいえ、最低限のことは一人でどうにかできたので、それでも問題はなかったんだ。
けれど今日はどうだろう。体が鉛のように重く、熱い。それに、なんとなく体も心もざわざわして落ち着かない。
前世の記憶のある僕は、この体のだるさには覚えがある。
まさか……ね。
僕は、この世界に転生してきたばかりの頃にも感じた嫌な予感を、再び気付かないふりをして、無理やり心の奥に閉じ込めた。
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