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39. 双子の約束
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フィルからの手紙は近況報告が中心で、学校での生活や婚約者とのことなど、元気に楽しく過ごしているよという、僕を心配させまいとする気遣いを感じる内容だった。
フィルの婚約者は『コンラート・リヒター』で、リヒター公爵家の三男でアルファだ。公爵家なので、伯爵家のうちとは位が違う。格上の家のアルファが、ハイネル家に嫁いでくることになったいきさつはわからないけど、とても誇らしいことなのだと思う。
手紙には、お互いを知ることから始めようと、時間を見つけては出かけていると書いてあった。親同士が決めた婚約者とはいえ、一生の伴侶なのだから歩み寄りは大切だと思う。
幸せになってほしいなと願いながら、何度も手紙を読み返し、大切に引き出しの奥にしまった。
リヒター公爵家の滞在二日目。朝の軽い食事を持ってきてくれた使用人が、フィルと婚約者のコンラート……フィルは親しみを込めてコニーと愛称で呼んでいるらしい。そのコニーとの仲良さそうな姿を目撃したと報告してくれた。
上座にはリヒター公爵家の面々が座り、下座にはハイネル家が座る。けれど、今回は正式婚約を交わす前の交流目的ということもあって、コニーとフィルが並んで座ることになったらしい。
使用人からは「時折お二人がお顔を見合わせながら微笑んで、美味しそうにお食事をお召し上がりになっていらっしゃいましたよ」と、様子を教えてもらった。僕に心配をかけないように付いた嘘などでは無いみたいで安心した。
昨日は緊張で十分な食事も摂れなかったけど、思いがけずフィルの顔も見られたし、手紙も受け取れた。フィルとコニーの仲良さそうな報告も聞けたから、僕の心もだいぶ落ち着き、朝の軽い食事は残さず食べることができた。
いつものようにドアを開けたその先に、空になった容器を乗せたトレイをそっと置いた。昨日心配をしてくれた使用人も、この空の容器を見たら喜んでくれるだろう。
ここの離れは念入りに隠されているとはいえ、万が一外部から侵入されないとは限らない。トレイを置くとすぐさま扉を閉めた。
少しすると、書斎側の扉が開けられたのだろう。わずかに聞こえる物音に、僕は息を潜める。使用人だとわかっていても、やはり体がこわばってしまう。
足音が扉の前で止まったあと、軽くノックされた。でも向こうから声がかけられるまでは、こちらからは声を発してはいけない。
「ミッチ、僕だよ」
正直、また来るような予感はしていた。それに僕たちは双子だ。不思議なことに、気持ちがシンクロすることが度々ある。
「フィル、見つかったら困るから、何度も来てはダメ」
僕は扉を開けることなく、フィルをたしなめた。
「だって、明日またすぐに寮に帰っちゃうんだよ? そしたら次はいつ会えるか……」
昔から、僕はフィルに甘い自覚はある。双子と言っても中身は年上の転生者だ。年下の可愛い弟という気持ちが抜けきれない。
甘やかしたい気持ちは山々だけど、前に塔の部屋に閉じ込められていた僕を部屋から出そうとした時、お父様に見つかってしまった。もし二度目があるならば、ただでは済まされないだろう。
それでも……。
「一度顔を見るだけだよ。そうしたらすぐ戻るんだ。良いね?」
そう念を押して、ゆっくりと扉を開けた。
そして、顔を見合わせたあと、二人でぎゅっと抱きあった。
やっぱり双子だ。カチッとパズルがハマったように、しっくりくる。僕の半身が戻ってきたみたいだ。
「ミッチ。絶対僕がこの家を変えるからね」
耳元でフィルは自身の決意を僕に伝えた。フィルなりの思いがあるのだろうけど、この短い時間の中で伝える言葉は、これが精一杯だったのだろう。
僕は何も言葉を発することはできずに、ただ黙ってうなずいた。
フィルの婚約者は『コンラート・リヒター』で、リヒター公爵家の三男でアルファだ。公爵家なので、伯爵家のうちとは位が違う。格上の家のアルファが、ハイネル家に嫁いでくることになったいきさつはわからないけど、とても誇らしいことなのだと思う。
手紙には、お互いを知ることから始めようと、時間を見つけては出かけていると書いてあった。親同士が決めた婚約者とはいえ、一生の伴侶なのだから歩み寄りは大切だと思う。
幸せになってほしいなと願いながら、何度も手紙を読み返し、大切に引き出しの奥にしまった。
リヒター公爵家の滞在二日目。朝の軽い食事を持ってきてくれた使用人が、フィルと婚約者のコンラート……フィルは親しみを込めてコニーと愛称で呼んでいるらしい。そのコニーとの仲良さそうな姿を目撃したと報告してくれた。
上座にはリヒター公爵家の面々が座り、下座にはハイネル家が座る。けれど、今回は正式婚約を交わす前の交流目的ということもあって、コニーとフィルが並んで座ることになったらしい。
使用人からは「時折お二人がお顔を見合わせながら微笑んで、美味しそうにお食事をお召し上がりになっていらっしゃいましたよ」と、様子を教えてもらった。僕に心配をかけないように付いた嘘などでは無いみたいで安心した。
昨日は緊張で十分な食事も摂れなかったけど、思いがけずフィルの顔も見られたし、手紙も受け取れた。フィルとコニーの仲良さそうな報告も聞けたから、僕の心もだいぶ落ち着き、朝の軽い食事は残さず食べることができた。
いつものようにドアを開けたその先に、空になった容器を乗せたトレイをそっと置いた。昨日心配をしてくれた使用人も、この空の容器を見たら喜んでくれるだろう。
ここの離れは念入りに隠されているとはいえ、万が一外部から侵入されないとは限らない。トレイを置くとすぐさま扉を閉めた。
少しすると、書斎側の扉が開けられたのだろう。わずかに聞こえる物音に、僕は息を潜める。使用人だとわかっていても、やはり体がこわばってしまう。
足音が扉の前で止まったあと、軽くノックされた。でも向こうから声がかけられるまでは、こちらからは声を発してはいけない。
「ミッチ、僕だよ」
正直、また来るような予感はしていた。それに僕たちは双子だ。不思議なことに、気持ちがシンクロすることが度々ある。
「フィル、見つかったら困るから、何度も来てはダメ」
僕は扉を開けることなく、フィルをたしなめた。
「だって、明日またすぐに寮に帰っちゃうんだよ? そしたら次はいつ会えるか……」
昔から、僕はフィルに甘い自覚はある。双子と言っても中身は年上の転生者だ。年下の可愛い弟という気持ちが抜けきれない。
甘やかしたい気持ちは山々だけど、前に塔の部屋に閉じ込められていた僕を部屋から出そうとした時、お父様に見つかってしまった。もし二度目があるならば、ただでは済まされないだろう。
それでも……。
「一度顔を見るだけだよ。そうしたらすぐ戻るんだ。良いね?」
そう念を押して、ゆっくりと扉を開けた。
そして、顔を見合わせたあと、二人でぎゅっと抱きあった。
やっぱり双子だ。カチッとパズルがハマったように、しっくりくる。僕の半身が戻ってきたみたいだ。
「ミッチ。絶対僕がこの家を変えるからね」
耳元でフィルは自身の決意を僕に伝えた。フィルなりの思いがあるのだろうけど、この短い時間の中で伝える言葉は、これが精一杯だったのだろう。
僕は何も言葉を発することはできずに、ただ黙ってうなずいた。
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