53 / 86
52. これからも
しおりを挟む
「ミッチの大切にしてる指輪なんだけど……」
「あ……っ! 指輪……?」
正直、ちょっとだけ僕の想像していた質問と違った。
けれど、全く違うというわけでもない。
だって、僕の大切にしている指輪は『リク』にもらったものだから。
前世の記憶を思い出したってことは……。
僕の心臓が再び激しく鼓動し始めた。
「誰に、もらったものなのかな……って」
フレッドは、まだ確信を持てずにいるのか、言葉を選びながらゆっくりと問いかけてきた。
きっと、大切なことだから、慎重になっているのだろう。
「……これは……リクにもらったもの、だよ」
僕も、焦らず、大切に言葉を伝える。
前は引き出しにしまってあった指輪。
でも塔に閉じ込められ、もう出られないと絶望したあと、奇跡的に出ることができた。
だから、何があっても離したくないと思って、チェーンを付けて首から下げている。
僕は胸元に大切にしまってある指輪を取り出し、フレッドの前に差し出した。
「これ、だよ」
「手に取って、見てもいい?」
「……うん」
フレッドは、大切に僕の指輪を手に乗せると、じっくりと眺めた。
僕の心臓は、これ以上鼓動が速くなったら、爆発してしまうんじゃないかと思うくらい、激しく脈を打つ。
「やっぱり……」
「やっぱり……?」
フレッドの次の言葉を待つ。
もう、そんなに焦らさないで。僕の考えは、きっと間違っていない。
だから……。
「これは、俺……『リク』が、『ミチ』のために買った、婚約指輪だ……」
手元の指輪を愛おしそうに見つめたあと、その優しい眼差しで、僕を見た。
そして、泣きそうな笑みを浮かべた。
「やっと会えたな……ミチ……」
「リク、なの……?」
夢みたいで、半信半疑で問いかけてしまう。
だって、もう、諦めかけていたから……。
あまりにもいろいろなことが起きすぎて、何度ももうだめだって思ったから……。
「そうだよ……。まだ忘れずにいてくれて、ありがとう」
「……リクっ……!!」
僕は、これは夢じゃないと分かった瞬間、リクの名を呼びながら、フレッドの胸に飛び込んだ。
転生してからの怒涛のような人生の記憶が、次から次へと思い出されて、僕は胸に込み上げてくる感情を止めることはできなかった。
まるで子どものように、わんわんと声をあげて泣きじゃくる。
そんな僕を、ぎゅっと抱きしめたまま、「大丈夫、大丈夫」と言いながら優しく頭を撫でてくれた。
……そうだ。僕がお守りのようにずっと言っていた「大丈夫」という言葉は、リクが口癖のように使っていた言葉だ。
僕になにかあると、いつもこうやって抱きしめて、頭を撫でて「大丈夫、大丈夫」と心が落ち着くまでそばにいてくれた。
「俺も、お揃いの指輪、持ってるんだ」
泣きじゃくっていた僕が、やっと落ち着いた頃、フレッドはおもむろに指輪を取り出した。
「あっ……」
フレッドが出してきたのは、サイズが違うけれど、明らかに対になっている指輪だった。
「俺が孤児院に置き去りにされたとき、手紙と共に添えられていたものだと聞いたから、ずっと俺を産んだ人のものだと思っていた。……けど違ったんだな」
フレッドはそう言いながら、僕にその指輪を渡した。そして、僕の持っている指輪を「かして」といって持っていった。
何をするんだろう? と、不思議に思いながら見ていると、フレッドは僕の前ですっとひざまずいて、静かに指輪を差し出した。
「生まれ変わって再会出来たのは、やっぱり運命なんだと思う。……これからもずっと一緒にいたい。俺の生涯の伴侶になってくれませんか?」
……っ!
僕は大きく目を見開いて、フレッドを見た。
僕の、聞き間違いではないのだろうか?
思わず、自分の頬をギューッと引っ張ってみた。
「いたい……」
夢じゃ、ない……?
もう一度、目の前のフレッドを見ると、不安げに瞳を揺らしていた。
「ミッチ、返事は……?」
僕の答えは、ただひとつ。他の選択肢なんて、あるわけがない。
「はい! よろしくお願いします!」
僕は溢れ出しそうになる涙をこらえながら、大きな声で返事をした。
「あ……っ! 指輪……?」
正直、ちょっとだけ僕の想像していた質問と違った。
けれど、全く違うというわけでもない。
だって、僕の大切にしている指輪は『リク』にもらったものだから。
前世の記憶を思い出したってことは……。
僕の心臓が再び激しく鼓動し始めた。
「誰に、もらったものなのかな……って」
フレッドは、まだ確信を持てずにいるのか、言葉を選びながらゆっくりと問いかけてきた。
きっと、大切なことだから、慎重になっているのだろう。
「……これは……リクにもらったもの、だよ」
僕も、焦らず、大切に言葉を伝える。
前は引き出しにしまってあった指輪。
でも塔に閉じ込められ、もう出られないと絶望したあと、奇跡的に出ることができた。
だから、何があっても離したくないと思って、チェーンを付けて首から下げている。
僕は胸元に大切にしまってある指輪を取り出し、フレッドの前に差し出した。
「これ、だよ」
「手に取って、見てもいい?」
「……うん」
フレッドは、大切に僕の指輪を手に乗せると、じっくりと眺めた。
僕の心臓は、これ以上鼓動が速くなったら、爆発してしまうんじゃないかと思うくらい、激しく脈を打つ。
「やっぱり……」
「やっぱり……?」
フレッドの次の言葉を待つ。
もう、そんなに焦らさないで。僕の考えは、きっと間違っていない。
だから……。
「これは、俺……『リク』が、『ミチ』のために買った、婚約指輪だ……」
手元の指輪を愛おしそうに見つめたあと、その優しい眼差しで、僕を見た。
そして、泣きそうな笑みを浮かべた。
「やっと会えたな……ミチ……」
「リク、なの……?」
夢みたいで、半信半疑で問いかけてしまう。
だって、もう、諦めかけていたから……。
あまりにもいろいろなことが起きすぎて、何度ももうだめだって思ったから……。
「そうだよ……。まだ忘れずにいてくれて、ありがとう」
「……リクっ……!!」
僕は、これは夢じゃないと分かった瞬間、リクの名を呼びながら、フレッドの胸に飛び込んだ。
転生してからの怒涛のような人生の記憶が、次から次へと思い出されて、僕は胸に込み上げてくる感情を止めることはできなかった。
まるで子どものように、わんわんと声をあげて泣きじゃくる。
そんな僕を、ぎゅっと抱きしめたまま、「大丈夫、大丈夫」と言いながら優しく頭を撫でてくれた。
……そうだ。僕がお守りのようにずっと言っていた「大丈夫」という言葉は、リクが口癖のように使っていた言葉だ。
僕になにかあると、いつもこうやって抱きしめて、頭を撫でて「大丈夫、大丈夫」と心が落ち着くまでそばにいてくれた。
「俺も、お揃いの指輪、持ってるんだ」
泣きじゃくっていた僕が、やっと落ち着いた頃、フレッドはおもむろに指輪を取り出した。
「あっ……」
フレッドが出してきたのは、サイズが違うけれど、明らかに対になっている指輪だった。
「俺が孤児院に置き去りにされたとき、手紙と共に添えられていたものだと聞いたから、ずっと俺を産んだ人のものだと思っていた。……けど違ったんだな」
フレッドはそう言いながら、僕にその指輪を渡した。そして、僕の持っている指輪を「かして」といって持っていった。
何をするんだろう? と、不思議に思いながら見ていると、フレッドは僕の前ですっとひざまずいて、静かに指輪を差し出した。
「生まれ変わって再会出来たのは、やっぱり運命なんだと思う。……これからもずっと一緒にいたい。俺の生涯の伴侶になってくれませんか?」
……っ!
僕は大きく目を見開いて、フレッドを見た。
僕の、聞き間違いではないのだろうか?
思わず、自分の頬をギューッと引っ張ってみた。
「いたい……」
夢じゃ、ない……?
もう一度、目の前のフレッドを見ると、不安げに瞳を揺らしていた。
「ミッチ、返事は……?」
僕の答えは、ただひとつ。他の選択肢なんて、あるわけがない。
「はい! よろしくお願いします!」
僕は溢れ出しそうになる涙をこらえながら、大きな声で返事をした。
156
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されて追放された僕、実は森羅万象に愛される【寵愛者】でした。冷酷なはずの公爵様から、身も心も蕩けるほど溺愛されています
水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男アレンは、「魔力なし」を理由に婚約者である第二王子から婚約破棄を言い渡され、社交界の笑い者となる。家族からも見放され、全てを失った彼の元に舞い込んだのは、王国最強と謳われる『氷の貴公子』ルシウス公爵からの縁談だった。
「政略結婚」――そう割り切っていたアレンを待っていたのは、噂とはかけ離れたルシウスの異常なまでの甘やかしと、執着に満ちた熱い眼差しだった。
「君は私の至宝だ。誰にも傷つけさせはしない」
戸惑いながらも、その不器用で真っ直ぐな愛情に、アレンの凍てついた心は少しずつ溶かされていく。
そんな中、領地を襲った魔物の大群を前に、アレンは己に秘められた本当の力を解放する。それは、森羅万象の精霊に愛される【全属性の寵愛者】という、規格外のチート能力。
なぜ彼は、自分にこれほど執着するのか?
その答えは、二人の魂を繋ぐ、遥か古代からの約束にあった――。
これは、どん底に突き落とされた心優しき少年が、魂の番である最強の騎士に見出され、世界一の愛と最強の力を手に入れる、甘く劇的なシンデレラストーリー。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
マリオネットが、糸を断つ時。
せんぷう
BL
異世界に転生したが、かなり不遇な第二の人生待ったなし。
オレの前世は地球は日本国、先進国の裕福な場所に産まれたおかげで何不自由なく育った。確かその終わりは何かの事故だった気がするが、よく覚えていない。若くして死んだはずが……気付けばそこはビックリ、異世界だった。
第二生は前世とは正反対。魔法というとんでもない歴史によって構築され、貧富の差がアホみたいに激しい世界。オレを産んだせいで母は体調を崩して亡くなったらしくその後は孤児院にいたが、あまりに酷い暮らしに嫌気がさして逃亡。スラムで前世では絶対やらなかったような悪さもしながら、なんとか生きていた。
そんな暮らしの終わりは、とある富裕層らしき連中の騒ぎに関わってしまったこと。不敬罪でとっ捕まらないために背を向けて逃げ出したオレに、彼はこう叫んだ。
『待て、そこの下民っ!! そうだ、そこの少し小綺麗な黒い容姿の、お前だお前!』
金髪縦ロールにド派手な紫色の服。装飾品をジャラジャラと身に付け、靴なんて全然汚れてないし擦り減ってもいない。まさにお貴族様……そう、貴族やら王族がこの世界にも存在した。
『貴様のような虫ケラ、本来なら僕に背を向けるなどと斬首ものだ。しかし、僕は寛大だ!!
許す。喜べ、貴様を今日から王族である僕の傍に置いてやろう!』
そいつはバカだった。しかし、なんと王族でもあった。
王族という権力を振り翳し、盾にするヤバい奴。嫌味ったらしい口調に人をすぐにバカにする。気に入らない奴は全員斬首。
『ぼ、僕に向かってなんたる失礼な態度っ……!! 今すぐ首をっ』
『殿下ったら大変です、向こうで殿下のお好きな竜種が飛んでいた気がします。すぐに外に出て見に行きませんとー』
『なにっ!? 本当か、タタラ! こうしては居られぬ、すぐに連れて行け!』
しかし、オレは彼に拾われた。
どんなに嫌な奴でも、どんなに周りに嫌われていっても、彼はどうしようもない恩人だった。だからせめて多少の恩を返してから逃げ出そうと思っていたのに、事態はどんどん最悪な展開を迎えて行く。
気に入らなければ即断罪。意中の騎士に全く好かれずよく暴走するバカ王子。果ては王都にまで及ぶ危険。命の危機など日常的に!
しかし、一緒にいればいるほど惹かれてしまう気持ちは……ただの忠誠心なのか?
スラム出身、第十一王子の守護魔導師。
これは運命によってもたらされた出会い。唯一の魔法を駆使しながら、タタラは今日も今日とてワガママ王子の手綱を引きながら平凡な生活に焦がれている。
※BL作品
恋愛要素は前半皆無。戦闘描写等多数。健全すぎる、健全すぎて怪しいけどこれはBLです。
.
【完】三度目の死に戻りで、アーネスト・ストレリッツは生き残りを図る
112
BL
ダジュール王国の第一王子アーネストは既に二度、処刑されては、その三日前に戻るというのを繰り返している。三度目の今回こそ、処刑を免れたいと、見張りの兵士に声をかけると、その兵士も同じように三度目の人生を歩んでいた。
★本編で出てこない世界観
男同士でも結婚でき、子供を産めます。その為、血統が重視されています。
不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる