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54. フィルが伝える
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「え? 家族会議?」
二人の気持ちを確かめ合い、ふわふわと幸せな気分に浸っていた僕に、聞き慣れない言葉が飛び込んできた。
「そう、家族会議。そろそろみんな集まっている頃だと思う。……俺達も行こう」
「ちょ、ちょっと待って、どういうこと? 僕、全然意味がわからないんだけど」
先程まであんなに優しくて甘い雰囲気になっていたのに、フレッドはピンと背筋を伸ばし、キリッとした表情に戻っていた。
せっかく気持ちも確かめあったし、プロポーズもしてくれたし、もうちょっと二人きりの時間をゆっくり過ごしたって良いじゃない。
心の中でそう思ってしまった僕は、顔に不満の色が出てしまったのかもしれない。フレッドは、ちょっと困ったような笑みを浮かべた。
「俺も、二人きりでもっとゆっくりしたいけど、大切な話があるんだ」
「大切な話?」
「奥様からのご命令で、水面下で調査をしていたんだ。先日、そのことを旦那様にお伝えしたんだよ」
「お父様に!?」
僕はびっくりして声が裏返ってしまった。
ペーターから水面下で調査しているという話は聞いていたから、そのこと自体には驚かなかった。だけど、その結果をお父様に直接お話してるとは思わなかった。
「家族全員が集まった場所で、いきなり調査結果を出されても、混乱するだけだろう。だから事前に、フィルから旦那様にお伝えしたんだ」
「フィルから……」
お父様は、アルファ至上主義の家系で育った。代々アルファが世の中を動かす存在であり、オメガは何も出来ない役立たずな存在だと思っている。そのうえ、怪しい香りでアルファを誘惑する、卑しく恥ずべき存在だと教えられてきた。
しかも、ハイネル家には代々アルファしか生まれないと言われてきた。お父様もそう聞いて育ったし、お母様の家系も同じような考えを持っていたので、当然自分の子もアルファだと何の疑いも持たなかった。
なのに、僕がオメガだと判明した。
今思えば、バース検査に行ったあと、検査結果が出ると言われていた日を過ぎても、まだ知らせが来なかった。それに、別の日にまた違う検査があると呼ばれていった。
おそらく、お父様が先に検査結果を知って、検査のやり直しをさせたのだろう。それでもやはり結果は変わらなかった。
そこで出した結論が『僕を隠して、初めからいないものとして扱う』だったのだろう。
あの日から、お父様は変わってしまった。
お母様にも相談することなく、単独で行動し、強引に話を進めるようになった。
フィルの婚約のために資金調達が必要になって、使用人も減らした。挙句の果てに、借金まで作ったと聞いた。
お父様の行動は、もうめちゃくちゃだった。
「俺や奥様が言っても、おそらく聞く耳は持たないだろう。それなら、次期当主となるフィルから伝えることにしたんだ」
「でも、そう簡単に受け入れられるものなのかな……」
「いっぺんにお伝えしたわけじゃないんだ。数日に分け、少しずつ話を進めていった」
「僕の知らない間に、フィルが頑張っていたんだね」
僕はフレッドの話を、フィルは成長したなあ……と思いながら、感慨深く聞いていた。
「そして今日、最終的な答えを旦那様にお聞きするんだ」
家族が集まった中で、これからのハイネル家をどうしていくのか、お父様自身の口から語られる。
「僕がオメガと判明してから、お父様は人が変わったようだった……。それでも僕は、優しかった頃のお父様が嘘だとは思えないし、ちゃんと話せば伝わると信じたい……」
僕の言葉に、フレッドも賛同するように、大きくうなずいた。
二人の気持ちを確かめ合い、ふわふわと幸せな気分に浸っていた僕に、聞き慣れない言葉が飛び込んできた。
「そう、家族会議。そろそろみんな集まっている頃だと思う。……俺達も行こう」
「ちょ、ちょっと待って、どういうこと? 僕、全然意味がわからないんだけど」
先程まであんなに優しくて甘い雰囲気になっていたのに、フレッドはピンと背筋を伸ばし、キリッとした表情に戻っていた。
せっかく気持ちも確かめあったし、プロポーズもしてくれたし、もうちょっと二人きりの時間をゆっくり過ごしたって良いじゃない。
心の中でそう思ってしまった僕は、顔に不満の色が出てしまったのかもしれない。フレッドは、ちょっと困ったような笑みを浮かべた。
「俺も、二人きりでもっとゆっくりしたいけど、大切な話があるんだ」
「大切な話?」
「奥様からのご命令で、水面下で調査をしていたんだ。先日、そのことを旦那様にお伝えしたんだよ」
「お父様に!?」
僕はびっくりして声が裏返ってしまった。
ペーターから水面下で調査しているという話は聞いていたから、そのこと自体には驚かなかった。だけど、その結果をお父様に直接お話してるとは思わなかった。
「家族全員が集まった場所で、いきなり調査結果を出されても、混乱するだけだろう。だから事前に、フィルから旦那様にお伝えしたんだ」
「フィルから……」
お父様は、アルファ至上主義の家系で育った。代々アルファが世の中を動かす存在であり、オメガは何も出来ない役立たずな存在だと思っている。そのうえ、怪しい香りでアルファを誘惑する、卑しく恥ずべき存在だと教えられてきた。
しかも、ハイネル家には代々アルファしか生まれないと言われてきた。お父様もそう聞いて育ったし、お母様の家系も同じような考えを持っていたので、当然自分の子もアルファだと何の疑いも持たなかった。
なのに、僕がオメガだと判明した。
今思えば、バース検査に行ったあと、検査結果が出ると言われていた日を過ぎても、まだ知らせが来なかった。それに、別の日にまた違う検査があると呼ばれていった。
おそらく、お父様が先に検査結果を知って、検査のやり直しをさせたのだろう。それでもやはり結果は変わらなかった。
そこで出した結論が『僕を隠して、初めからいないものとして扱う』だったのだろう。
あの日から、お父様は変わってしまった。
お母様にも相談することなく、単独で行動し、強引に話を進めるようになった。
フィルの婚約のために資金調達が必要になって、使用人も減らした。挙句の果てに、借金まで作ったと聞いた。
お父様の行動は、もうめちゃくちゃだった。
「俺や奥様が言っても、おそらく聞く耳は持たないだろう。それなら、次期当主となるフィルから伝えることにしたんだ」
「でも、そう簡単に受け入れられるものなのかな……」
「いっぺんにお伝えしたわけじゃないんだ。数日に分け、少しずつ話を進めていった」
「僕の知らない間に、フィルが頑張っていたんだね」
僕はフレッドの話を、フィルは成長したなあ……と思いながら、感慨深く聞いていた。
「そして今日、最終的な答えを旦那様にお聞きするんだ」
家族が集まった中で、これからのハイネル家をどうしていくのか、お父様自身の口から語られる。
「僕がオメガと判明してから、お父様は人が変わったようだった……。それでも僕は、優しかった頃のお父様が嘘だとは思えないし、ちゃんと話せば伝わると信じたい……」
僕の言葉に、フレッドも賛同するように、大きくうなずいた。
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